ネスレは、1866年に薬剤師のアンリ・ネスレ氏によって設立されたスイスに本拠を置く世界最大級の総合食品・飲料メーカーです。食品ではパスタのブイトーニやコンソメのマギー等、飲料ではネスカフェやミロ、乳製品、菓子類ではKitKatやCrunch等のチョコレートのブランドにて世界展開しています。2018年以降、アクティビストファンドであるサードポイントからの要請で、事業ポートフォリオの再構築を急いでいます。2019年には、投資ファンドのEQTパートナーズ、アブダビ投資庁およびPSPインベストメントに、同社のスキンヘルスケア事業を売却しました。スキンヘルスケア事業は、Proactive(プロアクティブ)やCetaphil(セタフィル)などのにきび防止用の洗顔料、保湿剤などのスキンケア用品などを展開しています。
業績推移(年次)
2021年度
2021年度は、売上高が3.3%増の871億スイスフランと増収、営業利益はWyeth事業に関連した減損が響き減益となりました。
2020年度
ネスレ スキンヘルス、米国のアイスクリーム事業、ヘルタ社のシャルキュトリー事業の売却によって2020年度の売上高は4.6%減少したものの、既存事業の成長率(オーガニックグロース)は3.6%に達し、過去5年間で最高水準となりました。

ネスレの業績推移
業績推移(半期)
2022年1-6月
売上高は前年同期比9.16%増の45,580百万ユーロになりました。営業利益は-3.60%の6,619百万ユーロになりました。営業利益率は14.5%になりました。販売価格の向上による増収となったものの、インフレ圧力とサプライチェーンの逼迫により原材料費が増加した結果、減益となりました。

ネスレの半期業績推移
EPS成長
2021年度は希薄化後EPSが大幅に増加しました。

ネスレの希薄化後EPSの推移
事業構成
ネスレの商品構成は多岐に亘りますが、主な商品構成によって、以下のように分けられます。
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ネスレの売上構成(2021年度)
ネスレの各商品は、それぞれのカテゴリーで世界シェアが高いことも特徴です。
菓子・チョコレート事業
KitKatやCrunch等のチョコレートの分野で世界展開しています。ライバルのペプシコやモンデリーズと菓子・チョコレート業界の世界シェア上位を争っています。

菓子とチョコのブランド
出所:ネスレ
ミネラルウォーター・飲料事業
ミネラルウォーターの分野ではヴィッテル、コントレックス、サンペレグリノ、ペリエ、Pure Life、Poland Spring等を展開しています。フランスのダノンとの世界シェアの首位争いをしています。飲料分野では、麦芽飲料のミロシリーズを展開しています。

水ブランド
出所:ネスレ
冷凍食品事業
ドレイヤーズやマキシボン等のアイスクリーム商品やストーファーズ等の冷凍食品事業を展開しています。乳製品も含むアイスクリーム分野では世界シェア首位級です。冷凍食品事業の分野でもイグルーやコナグラ等の競合を抑えつつ世界シェア首位級となっています。アイスクリームの主要ブランドには、Dreyer's、Edy's、Outshine、Drumstick、Extreme、MovenPick、Haagen-Dazsがあります。2020年に北米のアイスクリーム事業をR&Rアイスとの合弁会社であるフロネリへ売却しました。
コーヒー事業
インスタントコーヒーのネスカフェ、カプセル式コーヒーメーカー(ネスプレッソ)、Dolce Gusto、コーヒー専用カプセル、Nesquick、ミロ、ブライト等のコーヒー用クリーム等を総合的に展開しています。コーヒー業界の世界シェアはJABホールディングスやチボーを寄せ付けないダントツの一位です。2017年にはプレミアムコーヒー製造やカフェ運営を手掛け、サードウエーブ(第3の波)と称されるコーヒーブルーボトルを、2018年には72億ドルでスターバックスのコーヒーを店舗以外で売る権利を買収しました。コーヒー粉末のネスカフェ、エスプレッソ機器のネスプレッソに続く成長分野での投資を積極化しています。ネスプレッソ事業は、ネスプレッソ機のみで使えるコーヒーカプセルを定期販売するという、コピー機のビジネスモデルに近い形で展開しています。

コーヒーブランド
出所:ネスレ
ベビーフード事業
ベビーフード分野はCerelac、Gerber、NaturNes、NaturNes等のブランドで展開し、ダノンやミード・ジョンソン等のライバルとともに世界シェア上位に位置します。
ペットフード事業
ペットフードではピュリナワンやFriskies(フリスキー)といった著名ブランドを有しています。ペットフード業界の世界シェアでは米マーズとともに世界首位級です。
調味料とスープ事業
Maggi(マギー、各種調味料)とThomy's(マヨネーズ、マスタード、サラダドレッシングなど)ブランドで展開しています。調味料の分野ではユニリーバ、クラフトハインツ等と競合しています。スープの分野ではユニリーバやキャンベルスープ等と競合しています。
乳製品事業
乳製品をCarnation、Nido、Coffee mateなどのブランドで展開しています。
ニュートリション
栄養補助食品を扱っています。2021年にKKRから栄養補助食品大手ザ・バウンティフル・カンパニーの主要ブランドであるネイチャーズバウンティ、ソルガー、オステオバイフレックスを買収しました。
パスタ事業
ブイトーニ(Buitoni)のブランドで世界展開していました。スペインのエブロ・フーズやバリラ・グループ等のパスタメーカーとパスタ業界の世界シェア上位を争っていましたが、2020年にBrynwood Partnersに売却をしています。
株主構成
機関投資家上位の株主となっております。
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ネスレの株主構成(直前期末時点) 出所:マーケットスクリーナー
M&A(合併買収)
ネスレによる買収案件を時系列でまとめています。ネスレの前身は1866年設立のAnglo-Swiss Condensed Milk Companyと1867年設立のSociéité Anonyme Farine Lactée Henri Nestlé社です。
- 1960年 イギリス調理用食品のクロス&ブラックウェルを買収
- 1985年 米国の乳製品大手カーネーション・カンパニーを買収
- 1988年 イタリアのパスタ大手のブイトーニ・ペルジーナグループを買収
- 1988年 イギリスの菓子大手ロントリーを買収
- 1992年 フランスの飲料大手ペリエを買収
- 1993年 イタリアの冷凍食品のフィニタルジェルを買収
- 1994年 米国のペットフード会社のアルポを買収
- 1998年 英国ペットフード会社のSpillers Petfoods(スピラーズ)を買収
- 2000年 米国栄養バーのPowerbarの買収
- 2001年 米国アイスクリーム関連のIce Cream Partnersの買収
- 2001年 米国のペットフード会社のラルストン・ピュリナを買収
- 2002年 米国冷凍食品のChef America(シェフ アメリカ)の買収
- 2003年 香港のミネラルウォーターのPower Waterを買収
- 2004年 フィンランドのバリオから乳製品・アイスクリーム関連事業を買収
- 2005年 フランスの機能性食品のプロティカを買収
- 2005年 ドイツの冷凍食品のワグナーを買収
- 2005年 オーストラリアの機能性飲料のムサシを買収
- 2006年 米国アイスクリーム関連のDreyer's Grand(ドライヤーズ・グランド)を買収
- 2006年 米国栄養剤メーカーのJenny Craigを買収
- 2006年 スイスの医療用栄養剤事業をノバルティスから買収
- 2007年 米国のベビーフード会社のGerber Products(ガーバー・プロダクツ)を買収
- 2008年 韓国の飲料会社のプルムウォンウォーターを買収
- 2010年 米国の冷凍ピザ事業をクラフトフーズから買収
- 2009年 米国の紅茶大手のスウィートリーフティーを買収
- 2011年 中国のスナック・キャンディ会社のHsu Fu Chi Internationalを買収
- 2012年 ファイザーから米国の栄養食事業を買収
- 2016年 イスラエルの栄養食会社のOsem Investmentへ出資
- 2017年 プレミアコーヒー大手のブルーボトルを買収
- 2018年 72億ドルでスターバックスのコーヒーを店舗以外で売る権利を取得
- 2020年 調理済みの食事宅配の米フレッシュリーを9億5000万ドルで買収
- 2020年 北米アイスクリーム事業をフロネリへ売却
- 2020年 北米パスタ事業をBrynwood Partnersへ売却
- 2021年 KKRから栄養補助食品大手ザ・バウンティフル・カンパニーの主要ブランドであるネイチャーズバウンティ、ソルガー、オステオバイフレックスを買収
- 2022年 植物由来の栄養食品に強い米国のオルゲインを買収