パナソニックの市場シェア・業績推移・売上構成・株価の分析

パナソニックは、1917年に松下幸之助氏によって設立された日本を代表する電機メーカーです。松下電工や三洋電機と統合し、総合電機メーカーとして世界的なプレゼンスを有します。アプライアンス(家電、空調、AV機器、累計2000億個を売り上げた約90年の歴史を持つ電池等)、オートモーティブ(蓄電池、音響機器等)、インダストリアル(電池やモーター等)、ライフソリューション(照明や水まわり等)、コネクティッドソリューションズ(フライトエンターテイメント、航空機向け電子機器、監視カメラ等)といった事業部制に特徴がありましたが、2022年にパナソニックホールディングスを設立し、事業部はホールディング傘下の独立した子会社となりました。

業績推移(年次)

2018年度
売上高は前年度比0.26%増の8,002,733百万円になりました。営業利益は8.14%増の411,498百万円になりました。営業利益率は5.14%になりました。売上は前年度比ほぼ横ばいですが、車載関連が好調で増販益が得られたため、前年度比増益となりました。

2019年度
売上高は前年度比6.4%減の7,490,601百万円になりました。営業利益は28.61%減の293,751百万円になりました。営業利益率は3.92%になりました。中国向け電子部品や家電製品の売上減少、売り上げ減による利益減などで前年度比減収減益となりました。

2020年度
売上高は前年度比10.57%減の6,698,794百万円になりました。営業利益は11.97%減の258,600百万円になりました。営業利益率は3.86%になりました。新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、前年度比減収減益となりました。

2021年度
売上高は前年度比10.30%増の7,388,791百万円になりました。営業利益は38.25%増の357,526百万円になりました。営業利益率は4.84%になりました。電気自動車(EV)向け電池事業、中国の白物家電、産業用モーターや電子部品などが好調で、前年度比増収増益を達成しました。

2022年度
売上高は前年度比13.40%増の8,378,942百万円になりました。営業利益は19.29%減の288,570百万円になりました。営業利益率は3.44%になりました。売上高は自動車生産の回復によって車載機器・電池の需要が増加したこと、ブルーヨンダー買収による新規連結などの影響で前年度比増収でした。一方、営業利益は原材料価格の高騰・固定費増加などにより、前年度比減益となりました。

パナソニックの業績推移

パナソニックの業績推移

業績推移(四半期)

2021年第4四半期(1ー3月)
売上高は前年同期比7.67%増の1,965,435百万円になりました。営業利益は83,375百万円、営業利益率は4.24%になりました。国内では産業・情報通信向け商品、海外では車載電池の売上が伸び、前年同期比増収増益となりました。

2022年第1四半期(4ー6月)
売上高は前年同期比10.12%増の1,973,861百万円になりました。営業利益は63,700百万円、営業利益率は3.23%になりました。車載電池は販売が伸びましたが、半導体・部材不足と原材料・物流費高騰が響き、前年同期比増収減益となりました。

2022年第2四半期(7ー9月)
売上高は前年同期比20.04%増の2,090,068百万円になりました。営業利益は86,059百万円、営業利益率は4.12%になりました。資材や固定費の増加、上海でのロックダウンなどの影響を受け前年同期比増収減益となりました。

2022年第3四半期(10ー12月)
売上高は前年同期比14.33%増の2,160,592百万円になりました。営業利益は84,461百万円、営業利益率は3.91%になりました。車載機器などの販売増加などにより、前年同期比増収増益となりました。

2022年第4四半期(1ー3月)
売上高は前年同期比9.62%増の2,154,421百万円になりました。営業利益は54,350百万円、営業利益率は2.52%になりました。自動車販売の伸びを受けた車載電池や車載機器などの販売増加は続きましたが、原料価格高騰・固定価格増加などをカバーできず、前年同期比増収減益となりました。

パナソニックの四半期業績推移

パナソニックの四半期業績推移

EPS・配当額・配当性向の推移

希薄化後EPSは前年度比23.06%減の28.53円になりました。1株当たりの配当は前年度比横ばいの30円になりました。配当性向は105.10%になりました。

パナソニックのEPS・1株配当・配当性向の推移

パナソニックのEPS・1株配当・配当性向の推移

業績予想

2023年度
売上高の業績予想は、8,500百万円で、前年度比1.44%増を見込んでいます。営業利益は前年度比49.01%の430百万円を見込んでいます。

売上構成

セグメントは、くらし事業、オートモーティブ、コネクト、インダストリー、エナジー、その他に分類されます。セグメント別の売り上げ構成は以下の通りです。

パナソニックのセグメント別売上構成(2021年度)

パナソニックのセグメント別売上構成(2022年度)

くらし事業
家電(洗濯機・冷蔵庫など)、空調、照明、電気設備、冷凍冷蔵ショーケース等の業務用機器などが分類されます。住宅用からオフィス、商業用など様々な空間に対応した商品。サービスを開発・販売しています。低コスト戦略のアジア勢、プレミアム戦略の欧米勢と競合しており、特に中国・北東アジア地域で家電・住宅設備事業を展開しています。

オートモーティブ
車載機器と車載電池が主要事業となります。車載電池は、テスラとの米ネバダ州でのギガファクトリー、日本、中国の大連工場(遼寧省)での3極の生産体制を構築しています。テスラ以外にもトヨタと協業し、全方位戦略で中国勢を迎えうっております。円筒形電池はテスラに供給し、角形電池はトヨタに供給しています。
装置産業化した事業におけるパワーゲームを制することができるか、に注目が集まります。自動車部品は、音響機器(カーオーディオ)やカーナビゲーション等の電子機器の分野に強みを持ちます。ディスプレイメーター、ヘッドアップディスプレイといった次世代コックピットやコネクティッドと言われている自動車のCASE対応では総合力を発揮できる立場におります。

コネクト
電子部品実装機、高性能堅牢タブレットPC、超高輝度プロジェクターなど、B2B向け商品を開発・販売しています。ハードウェアにソフトウェアやテクノロジーを負荷することで、現場の最適化や生産性向上を目指しています。

インダストリー
ハウジングシステム、エナジーシステム、エコシステムズが主要な事業部となります。トイレ・浴室:樹脂製のトイレ、浴室、システムキッチンといった水まわりの住設を手掛けています。その他、照明器具、配線器具、太陽光発電システム、建材、換気、空気清浄機、住宅、自転車、介護関連器具を開発製造しています。

エナジー
車載用円筒形リチウムイオン電池、蓄電システム、乾電池、リチウム一次電池などを開発・販売しています。車載用からデータセンター、家庭用に医療向けなど、様々な分野の電池を手がけており、日本国内だけでなくグローバルに展開しています。

その他
エンターテインメント&コミュニケーション事業とハウジング事業に分類されます。エンターテインメント&コミュニケーション事業では、テレビ、デジタルカメラ、ビデオ機器、オーディオ機器などを手がけています。
ハウジング事業では、水まわり製品、建材、外回り製品を手がけています。

M&A情報

近年のパナソニックのM&Aで注目を集めたのが、2021年のブルーヨンダーの大型買収です。買収額は71億ドル(約7,700億円)と過去最大級となりました。

パナソニックは1990年の米映画大手MCAの買収で、5年後に株式の80%を手放したという苦い過去があります。また、2011年には三洋電機とパナソニック電工を総額9290億円で買収しましたが、売上高は買収前とほぼ変わらずM&Aによる事業規模拡大には至りませんでした。

過去の失敗からか近年では大型M&Aに対して消極的でしたが、電機業界の再編・競争激化からの生き残りのため、再び大型M&Aに踏み切りました。

2015年 米国冷蔵ショーケースメーカーのハスマン社を子会社化
2016年 ドイツソフトウエア開発のオープンシナジー社の全株式を取得
2017年 米国の産業用レーザーメーカーのテラダイオード社の全株式を取得
2017年 米国のデータ解析会社アリモを買収
2017年 ブラジルの空調エンジニアリング会社のユニオンラックテクノロジーを買収
2017年 建築メーカーの松村組を買収
2017年 英国の空調機器販売AMP社を買収
2020年 パナソニック ライティングヨーロッパを投資ファンドのFidelium Partnersへ売却
2021年 欧州乾電池事業をオーレリウス(Aurelius)へ売却
2021年 パナソニックライティング アメリカズを投資ファンドのAtarへ売却
2021年 倉庫管理、輸送管理やSCMソフトウェアに強いブルーヨンダーをブラックストーン及びニューマウンテンキャピタルから買収(企業価値85億ドル)
2022年 スウェーデンの空調大手システムエアから業務用空調事業を買収
2023年 樹脂サッシメーカーの株式会社エクセルシャノンを子会社化

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