冷暖房空調機とエアコン業界の市場シェア・売上高ランキング・規模・再編

空調機やエアコン業界の世界市場シェア・売上高ランキング・市場規模・M&A(合併買収)について分析。ダイキン、三菱電機、パナソニック、米国大手キャリア、ヨーク、トレイン・テクノロジーや中国大手の格力(グリー)、美的集団、ハイアールの概要も記載。三菱電機によるイタリアのデルクリマ買収、ダイキンによるグッドマン、OYL社の買収など業界再編が継続。

世界シェア

空調機・エアコンメーカー各社の2021年度のHVAC事業の売上高(⇒参照したデータの詳細情報)を分子に、後述する市場規模を分母にして、2021年の空調機・エアコン業界の世界市場シェアを簡易に算出すると、1位はダイキン、2位は美的集団、3位は珠海格力電器となります。

空調機・エアコン業界の世界市場シェアと業界ランキング(2021年)

順位会社名市場シェア
1位ダイキン12.3%
2位美的集団11.3%
3位珠海格力電器10.5%
4位トレイン・テクノロジー7.1%
5位キャリア5.7%
6位三菱電機3.5%
7位ジョンソン・コントロールズ(York)3.1%
8位パナソニック3.0%
9位ハイセンス2.4%
10位ハイアール2.2%
11位エマソン2.0%
12位ボッシュ2.0%
13位レノックス1.8%
14位ダンフォス1.6%
15位ヴァイヨン1.5%
空調機・エアコン業界の世界市場シェアと業界ランキング(2021年)
©ディールラボ

エアコン・空調業界の市場シェア(2021年)
エアコン・空調業界の市場シェア(2021年)

2018年以降業界順位がおおきく変動しております。躍進著しいしいのは、格力(グリー)と美的集団(マイディア)で、主に家庭用の空調機分野で中国市場を席巻しています。巨大な中国市場をバックにした中国勢が、グローバル展開を目指すダイキンと熾烈な首位争いを繰り広げており、これら日中の3社が空調分野の新御三家として4位以下を引き離しております。
かつての御三家であった米3社(トレイン、キャリア、ヨーク)は再編のタイミングとなっています。インガソールランドは空調事業をトレイン・テクノロジーズとして分社化、ユナイテッド・テクノロジーズも航空機部品・エンジン事業、エレベーター事業(Otis)とHVAC事業(冷凍庫事業、セキュリティ事業を含む)に3分割して、独立した事業体として運営をしています。ジョンソンコントロールズは防火・セキュリティ事業のタイコ・インターナショナルと経営統合をする一方で、自動車部品事業(アディエント)を分社化する等、ポートフォリオを大きく入れ替えています。
市場シェア6位には、三菱電機が主に産業用ニーズをとらえ、ジョンソンコントロールズ(ヨーク)を上回りました。8位には日本の家庭向けに強いパナソニック、10位には中国のハイアールが入っています。欧州は、緯度的に歴史的に夏場の空調が必要なかったこともあり、12位のボッシュが最高位です。14位にデンマークのダンフォス(Danfoss)、15位にドイツのヴァイヨン(Vaillant)が入っていますが、群雄割拠の時代が続いています。

市場規模

当サイトでは、HVAC業界(空調及びエアコン)の2021年の市場規模を2000億ドルとしております。参照した統計や調査情報は以下の通りです。

調査会社グランドビューリサーチによると、同業界の2021年の市場規模は1363億ドルです。2030年にかけて年平均6.3%の成長が見込まれます。
調査会社のエキスパートマーケットリサーチによると、同年同業界の市場規模は1984億ドルです。2027年にかけて年平均5.1%の成長を見込みます。

調査会社のマーケッツアンドマーケッツによれば、同業界の2020年の規模は2020億ドルです。2025年までに年平均6.5%での成長を見込みます。
調査会社のグランドビューリサーチによると2020年の同市場規模は1274億ドルです。2028年にかけて5.9%の成長を見込みます。
調査会社のエキスパートマーケットリサーチによると、同年同業界の市場規模は2410億ドルです。2026年にかけて年平均4%の成長を見込みます。⇒参照したデータの詳細情報

なお、台数ベースでは、2015年の住宅向けのエアコンは、約8,000~9,000万台程度、産業用の冷暖房空調機は1,200~1,400万台程度でした。冷暖房空調機の市場規模を分析する場合には、用途で区分するのか、それとも種類で区分するのか(暖房装置か冷房装置か、暖房装置でもヒートポンプなのか温風暖房機か、冷房装置でも単一式エアコンか分離型のルームエアコンか冷却器なのか、等)で市場規模が変化してくる点に留意する必要があります。

市場規模成長率
2021年1363~1984億ドル5.1~6.3%
2020年1274~2410億ドル5.9~6.5%
HVAC業界の市場規模の推移
©ディールラボ

売上高ランキング

2022年1-3月四半期売上高(一部推計を含む)をベースとしたエアコン・空調メーカーのランキングでは、1位美的集団、2位ダイキン、3位珠海格力電器となっています。

2021年度のランキングではダイキンが首位となっています。ダイキンと美的集団のトップ2が他社を引き離しつつあります。⇒参照したデータの詳細情報

空調・エアコンの売上高ランキング(四半期ベース)
空調・エアコンの売上高ランキング(四半期ベース)
2022年1-3月の売上高

業界の再編

ダイキン、ジョンソンコントロール、三菱電機等の大手空調機メーカーによるM&Aの歴史を時系列でまとめています。空調・エアコン業界のM&Aマルチプル(売上高倍率)は概ね1~3倍弱のレンジで推移しています。

  • 1979年 ユナイテッド・テクノロジーズ社によるキャリア買収
  • 2007年 投資ファンドによるスイスのFlakt Woods買収
  • 2007年 Ingersoll-Rand(インガソールランド)による米Traneの買収
  • 2007年 ダイキンによるマレーシアの大手空調メーカーOYLを買収
  • 2009年 英Baxiと蘭De Dietrich Remehaが経営統合してBDR Thermaが誕生
  • 2011年 美的集団によるCarrierの南米事業の買収
  • 2011年 LGによるLS Mtronの買収
  • 2011年 ダイキンによるトルコのAIRFELの買収
  • 2012年 ダイキンによるGoodman Global買収
  • 2014年 ジョンソンコントロールによる米Air Distribution Technologiesの買収
  • 2014年 投資ファンドによる仏GEA Heat Exchngaersの買収
  • 2015年 三菱電機による伊DeLclimaの買収
  • 2015年 ジョンソンコントロールと日立との空調機合弁会社の設立
  • 2016年 ダイキンによる米Flandersの買収
  • 2017年 ダイキンによるオーストリアの空調メンテナンス会社のAirmasterを買収
  • 2017年 ボッシュによるイタリアの空調機メーカーMTAの買収(その後破談)
  • 2018年 三菱電機とインガソールランドによるダクトレス空調機販売の合弁会社設立
  • 2018年 ダイキンによる商業用冷凍器メーカーのAHTの買収
  • 2019年 Chequers Capitalによるイタリアの空調機メーカーMTAの買収
  • 2020年 インガソール・ランドによるトレインテクノロジーズの分社化
  • 2021年 Madison IndustriesがMelroseの保有している空調機メーカーのNortekを買収
  • 2021年 キャリアが東芝キャリアを子会社化
  • 2022年 パナソニックがスウェーデンの空調大手システムエアから業務用空調事業を買収

空調・エアコン業界の買収マルチプル(売上高倍率)
空調・エアコン業界の買収マルチプル(売上高倍率)

ダクト式空調とダクトレス式空調について

ダクト式空調は中南米で一般的。建物の天井等にダクトを通して機械室に設置した空調機から送風を行うものです。建物全体の空調を一元管理できメンテナンスも容易である一方、個別の部屋の温度や風量設定が難しいとされています。
ダクトレス式空調とは、日本やアジア、欧州等で主流の空調方式で、部屋ごとに室内機に置くため、部屋ごとの温度調整ができ省エネに効果的な一方、メンテナンス等は個別に行う必要があります。

冷暖房空調機・エアコンメーカー世界大手の動向

ダイキン

ダイキンは、1924年に設立された日本を代表する空調機メーカーです。産業用の冷暖房空調機では世界トップ級です。ダクト方式に強い米グッドマンやマレーシアのエアコン大手OYL社を買収する等して世界的に事業を展開しています。国内ではパナソニックと家庭用エアコンの分野で競っています。フッ素化合物などの化学品事業も行っています。さらに詳しく

Carrier Corporation(キヤリア)

キャリアグローバルは、米国に本拠を置く冷暖房空調機の大手メーカーです。元々は航空機エンジン、エレベーター等の大手であるUnited Technologies(ユナイテッド・テクノロジーズ)の子会社でした。2020年にユナイテッド・テクノロジーズは、空調機事業(キャリアグローバル)、エレベーター事業(Otis)と航空機部品事業へと分社化しました。冷暖房空調に加え、輸送用冷蔵機器や火災報知器にも強みを持ちます。さらに詳しく

York International Corporation(ヨーク・インターナショナル・コーポレーション)

米国に本拠を置く産業用冷暖房空調機メーカーです。建物用自動空調制御装置や自動車用バッテリー等の製造を行うJohnson Controls(ジョンソンコントロールズ)の子会社です。2015年に日立アプライアンスと空調機分野で合弁会社を設立しました。Johnson Controlsは米タイコ・インターナショナルと2016年に経営統合し、その後自動車部品事業などを分社化しています。

ジョンソンコントロールズについて

Johnson Controls(ジョンソンコントロールズ)は、1885年に設立された米国に本社を置く業務用空調制御システム、セキュリティシステム、火災検知システム、ビル管理サービスを提供する会社です。電気式サーモスタットを発明した歴史を持ちます。2016年に火災警報分野に強いTyco(タイコ・インターナショナル)と経営統合をしました。世界150ヵ国で展開し、エネルギー効率ソリューションや各種オートメーション事業を展開しています。自動車用のバッテリー等の分野に強みがありましたが2018年に売却しました。さらに詳しく

Trane Technologies(トレイン・テクノロジーズ)

トレイン・テクノロジーズは、米国に本拠を置く産業用冷暖房空調機メーカーです。輸送温度コントロール設備、ゴルフカート、エアコンプレッサー等を手掛ける米Ingersoll-Rand(インガソール・ランド)の子会社でしたが、2020年トレイン・テクノロジーズとして分社化独立を果たしています。インガソールランド以前は、衛生陶器等も手掛けたAmerican Standard(アメリカンスタンダード)社のグループ会社であったこともあります。さらに詳しく

インガソール・ランドについて

Ingersoll-Rand(インガソール・ランド)は、1871年に創業された米国に本拠を置く産業機器メーカーです。2020年に真空ポンプ、コンプレッサー等の産業機械メーカーであるGardner Denver(ガードナーデンバー)と経営統合を行いました。統合に先立ち、空調事業はトレーン・テクノロジーズとして分社化しています。インガソール・ランドからは、過去、鍵のアレジオン、冷凍ショーケースのハスマン(2015年にパナソニックへ売却)等各分野でトップクラスの企業が巣立っております。コンプレッサー・エアツールや輸送用冷凍装置の分野でも強いです。ゴルフカートでは、クラブカーブランドを展開し、世界最大級の規模ですが、2021年にプラチナムエクイティへ売却をしました。さらに詳しく

パナソニック

パナソニックは、1917年に松下幸之助氏によって設立された日本を代表する電機メーカーです。松下電工や三洋電機と統合し、総合電機メーカーとして世界的なプレゼンスを有します。アプライアンス(家電、空調、AV機器、累計2000億個を売り上げた約90年の歴史を持つ電池等)、オートモーティブ(蓄電池、音響機器等)、インダストリアル(電池やモーター等)、ライフソリューション(照明や水まわり等)、コネクティッドソリューションズ(フライトエンターテイメント、航空機向け電子機器、監視カメラ等)といった事業部制に特徴がありましたが、2022年にパナソニックホールディングスを設立し、事業部はホールディング傘下の独立した子会社となりました。さらに詳しく

Lennox International(レノックス)

1895年に設立された米国に本拠を置く冷暖房空調機メーカーです。住宅及び産業向けの空調事業と商業用冷蔵庫事業に強みを持ちます。冷蔵庫事業では、生鮮品を保存のためのユニットクーラー、流体冷却器、空冷式コンデンサー、エアハンドラー、冷蔵ラックシステムといった製品をスーパーマーケット、コンビニエンスストア、レストラン、倉庫、配送センターに納入しています。

Midea Group(美的集団)

1968年に何亮健(He Xiangjian)氏によって設立された中国に本拠を置く家電メーカーです。1993年に深セン証券取引所に上場しています。家庭用エアコンや洗濯機等に強みを持ち、2016年には東芝の家電部門とドイツの産業ロボット大手のKUKAを買収して事業規模を拡大しています。創業者の何享健が持ち株会社を通じて大株主となっています。さらに詳しく

Haier(ハイアール)

Haier Smart Home (ハイアールスマートホーム)は、1984年に張瑞敏(チャン・ルエミン)氏によって設立された、中国の青島に本拠を置く白物家電世界大手会社です。 グループ傘下で上場会社のHaier Smart Homeが冷蔵庫、洗濯機、テレビ、エアコン、パソコン等を世界的に展開しています。2011年に日本のメーカーである三洋電機の白物家電事業を買収し、アクア株式会社を傘下としました。また、2016年には米国のメーカーGEの家電部門を買収し、事業拡大を図っています。ハイアール、カサルテ、リーダー、GEアプライアンス、フィッシャー&ペイケル、AQUA、キャンディといったブランドで展開しています。さらに詳しく

Gree Electric Appliances(グリー・エレクトリック・アプライアンシズ、珠海格力電器)

Gree Electric Appliances(グリー・エレクトリック・アプライアンシズ、珠海格力電器)は、1991年創業の中国の家庭用エアコンメーカーです。家庭用エアコン空調機の販売台数では世界最大手級です。家電事業も展開しています。2016年に中興の祖である董明珠・董事長がEV自動車への参入をめぐり解任されました。現在はHillhouse Capital系投資会社が筆頭株主となっています。さらに詳しく

ハイセンスホームアプライアンス(Hisense、海信家電)

ハイセンスホームアプライアンス(海信家電)は、1969年創業の中国山東省青島に本拠を置く家電メーカーです。広東科龍電器を買収し、冷蔵庫、食洗器、空調機器などの家電を海信、科龍、要声の3ブランドで展開しています。日立との空調合弁会社も運営しています。

LGエレクトロニクス(LG Electronics)

LGグループは1952年にク・インフェ氏によって設立された韓国を代表する財閥グループです。1958年にLuckyとGoldStarが経営統合をして設立されました。電機事業、化学事業、通信事業が3本柱です。子会社は、家電メーカーのLGエレクトロニクス、電子部品の製造を手掛けるLGイノテック、液晶ディスプレイを手掛けるLGディスプレイ、総合化学メーカーのLG化学など多岐にわたります。さらに詳しく

三菱電機

1921年に設立された日本を代表する総合電機メーカーです。重電システム、産業メカトロニクス、情報通信システム、電子デバイス、家庭電器のセグメントで事業を展開しています。エレベーターは重電システムのビルシステム事業で展開しています。産業用ロボットは産業メカトロニクスで、霧ヶ峰ブランドで有名な空調やエアコンは家庭電器セグメントに含まれます。空調分野は特にM&Aに積極的で、業務用空調分野では2015年にDe’Longhi(デロンギ)のイタリアの子会社のDeLclima(デルクリマ)社を買収して、欧州市場にて業績拡大を目指しています。北米では2018年にインガソールランドによるダクトレス空調機販売の合弁会社を設立しました。さらに詳しく

Danfoss(ダンフォス)

デンマークに本拠をおく複合企業です。建機・運搬機器向けの油圧ポンプ、電動モーター、コンプレッサー、空調・冷熱向けの各種部品、AC/DCドライバーなど製造しています。Clausen家による同族会社です。

Bosch Themotechnology(ボッシュ・サーモテクノロジー)

ボッシュはドイツの産業財・自動車部品製造大手です。家電等も手掛けています。空調関連はサーモテクノロジーが手掛けています。

Vaillant(ヴァイヨン)

ヴァイヨンはドイツの冷熱機器製造会社です。ボイラー、ヒートポンプ、ラジエーター、空調製品を手掛けています。同族会社です。

Emerson Electric(エマソンエレクトリック)

Emerson Electric(エマソンエレクトリック)は、1890年創業の米国を代表するコングロマリット企業です。交流モーターが祖業ですが、モーター事業は日本電産に売却しております。現在は自動制御装置、計測・分析機器や精密空調、配管工具といった分野で事業を展開しています。プラント向けのプロセスオートメーションにも強みを持ちます。オートメーション分野の更なる強化に向け、選択と集中を図っています。さらに詳しく

2016年 モーター・ドライブ、発電事業であるLeroy-SomerとControl Techniquesを日本電産へ売却
2016年 データセンター向けの電源やスイッチ等を手掛けるNetwork Power事業を投資ファンドのプラチナムエクイティへ売却
2016年 制御弁に強いPentair Valves & Controlsを買収
2016年 コールドチェーンマネジメントに強いPakSense&Locus Traxxを買収
2018年 プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)に強いIntelligent PlatformsをGEから買収
2020年 IoTプロバイダーのProgea Groupを買収

富士通ゼネラル

富士通の連結子会社です。「ノクリア(nocria)」シリーズのエアコンに強みを持ちます。

富士通について

富士通は、古河電気工業とシーメンスの合弁会社として設立された現富士電機の電話部門が1935年に分社化されて設立されました。ICT関連のハードウェアからソフトウェアを手掛けていますが、近年はITソリューションサービスへ事業ポートフォリオをシフトしています。ハードウェアではPC&サーバ、メインフレーム・スーパーコンピューター「富岳」(2012年に稼働した「京」の後継機)、ATM、通信ネットワーク機器などを開発製造しています。グループ関連会社には、富士通フロンテック、新光電気工業、FDK、富士通ゼネラルなどが含まれます。さらに詳しく

参照したデータの詳細情報について


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