冷暖房空調機とエアコン業界の世界市場シェアの分析

産業用空調機や家庭用エアコン業界の世界市場シェア、市場規模、業界ランキングや再編について分析をしています。三菱電機のデルクリマ、ダイキンのグッドマン、OYL社買収等、業界再編が続いています。米御三家であるキャリア、ヨーク(ジョンソンコントロールズ)、トレインテクノロジーや中国御三家である格力(グリー)、美的(ミデア)、ハイアールの動向等も記載しています。

2020年空調・エアコン世界市場シェア

空調機・エアコン等を含むHVAC業界の市場シェアを算定するにあたり、分子には「空調機・エアコンメーカーの世界売上高ランキング(2020年版)」における各社のドル建て売上高を採用しています。
分母にはHVAC機器業界の2020年の市場規模2020億ドルを採用しています。
これらの数値をもとに空調機・エアコンメーカーの市場シェアを算出すると、1位は珠海格力電器、2位はダイキン、3位は美的集団 7.6%となります。

1位 珠海格力電器 10.8%
2位 ダイキン 10.0%
3位 美的集団 7.6%

4位 トレーン・テクノロジーズ 6.5%
5位 ユナイテッド・テクノロジーズ(Carrier) 4.8%
6位 三菱電機 4.1%
7位 ジョンソン・コントロールズ(York) 3.1%
8位 パナソニック 2.4%
9位 ハイアール 2.0%
10位 ボッシュ 1.8%
11位 レノックス 1.6%
12位 ダンフォス 1.4%
13位 ヴァイヨン 1.3%

2018年以降業界順位がおおきく変動しております。躍進著しいしいのは、格力(グリー)と美的集団(ミディア)で、主に家庭用の空調機分野で中国市場を席巻しています。巨大な中国市場をバックに、グローバル展開を目指すダイキンと熾烈な首位争いを繰り広げており、これら日中の3社が空調分野の新御三家として4位以下を引き離しております。
かつての御三家であった米3社は再編のタイミングとなっています。インガソールランドは空調事業をトレーン・テクノロジーズとして分社化、ユナイテッド・テクノロジーズも航空機部品・エンジン事業、エレベーター事業(Otis)とHVAC事業(冷凍庫事業、セキュリティ事業を含む)に3分割して、独立じた事業体として運営をしています。ジョンソンコントロールズは防火・セキュリティ事業のタイコ・インターナショナルと経営統合をする一方で、自動車部品事業(アディエント)を分社化する等、ポートフォリオを大きく入れ替えています。
市場シェア6位には、三菱電機が主に産業用ニーズをとらえ、ジョンソンコントロールズ(ヨーク)を上回りました。8位には日本の家庭向けに強いパナソニック、9位には中国のハイアールが入っています。10位はドイツのボッシュが入っておりますが、欧州は、緯度的に歴史的に夏場の空調が必要なかったこともあり、12位、13位にデンマークとダンフォス(Danfoss)とドイツのヴァイヨン(Vaillant)が入っていますが、群雄割拠の時代が続いています。

産業用空調機世界ランキング
産業用冷暖房空調機分野では、2016年は日本のダイキンが、世界1位となっております。ダクト方式に強い米グッドマンを買収して、産業用空調の米国御三家と真っ向勝負を挑みます。産業用空調の世界2位は、米国の誇る航空宇宙・重電メーカーの老舗である、ユナイテッド・テクノロジーズ社が1979年に買収をし、現在は分社化独立したキヤリアとなっています。世界3位には、自動車用部品大手である、ジョンソンコントロールズ傘下のヨーク・インターナショナル・コーポレーションとなっています。4位には、1871年に創業された産業機器メーカーである、元インガソール・ランド傘下で現在は独立したトレインテクノロジーとなっています。キャリア、ヨーク、トレインは米国の産業用空調御三家と言われており、5位につけるレノックスと併せ、四天王との称されます。欧州メーカーは、緯度が高く、夏は比較的涼しかったこともあり、エアコンや空調分野で強いメーカーは育ってきませんでした。

家庭用エアコン世界ランキング
2016年の家庭用エアコンの世界シェア1位は、中国の珠海格力電器(グリー)となりました。家庭用エアコンでは、日本のダイキンから生産を受託して、技術力を蓄えてきました。中国の国内での、旺盛な需要をとらえて、ガリバーとして存在感を示します。中興の祖と呼ばれた、ドンミンジュ氏が退任後も、引き続き世界1位の座を、保っています。世界2位には、同じく中国の美的集団(ミデアグループ)となっています。ミデアはエアコン以外にも、白物家電の国際展開に積極的です。最近では、東芝から、家電子会社の東芝アプライアンスを、買収しました。世界3位は、日本の三洋電機を買収した、ハイアール社となっています。世界4位は、パナソニックとなっており、東南アジアやインドでの市場を拡大しています。

市場規模

当サイトでは、各種統計レポートを参考にしながら、空調やエアコン等HVAC業界の2019年の市場規模を2020億ドルとして市場シェアを計算しております。調査会社のマーケッツアンドマーケッツによれば、同業界の2020年の規模は2020億ドルです。2025年までに年平均6.5%での成長を見込みます。⇒参照したデータの詳細情報

2015年の空調機の世界市場規模は概ね8兆円~10兆円程度と推計されます。その内、いわゆる住宅向けのエアコンは約2~3兆円、台数で約8,000~9,000万台程度、産業用の冷暖房空調機は6兆円~7兆円程度、台数ベースで1,200~1,400万台程度と言われています。冷暖房空調機の市場規模を分析する場合には、上記のように用途で区分するのか、それとも種類で区分するのか(暖房装置か冷房装置か、暖房装置でもヒートポンプなのか温風暖房機か、冷房装置でも単一式エアコンか分離型のルームエアコンか冷却器なのか、等)で市場規模が変化してくる点に留意する必要があります。

業界の再編

ダイキン、ジョンソンコントロール、三菱電機等の大手空調機メーカーによるM&Aの歴史を時系列でまとめています。

  • 1979年 ユナイテッド・テクノロジーズ社によるキャリア買収
  • 2007年 投資ファンドによるスイスのFlakt Woods買収
  • 2007年 Ingersoll-Rand(インガソールランド)による米Traneの買収
  • 2009年 英Baxiと蘭De Dietrich Remehaが経営統合してBDR Thermaが誕生
  • 2011年 美的集団によるCarrierの南米事業の買収
  • 2011年 LGによるLS Mtronの買収
  • 2011年 ダイキンによるトルコのAIRFELの買収
  • 2012年 ダイキンによるGoodman Global買収
  • 2014年 ジョンソンコントロールによる米Air Distribution Technologiesの買収
  • 2014年 投資ファンドによる仏GEA Heat Exchngaersの買収
  • 2015年 三菱電機による伊DeLclimaの買収
  • 2015年 ジョンソンコントロールと日立との空調機合弁会社の設立
  • 2016年 ダイキンによる米Flandersの買収
  • 2017年 ダイキンによるオーストリアの空調メンテナンス会社のAirmasterを買収
  • 2017年 ボッシュによるイタリアの空調機メーカーMTAの買収(その後破談)
  • 2018年 三菱電機とインガソールランドによるダクトレス空調機販売の合弁会社設立
  • 2018年 ダイキンによる商業用冷凍器メーカーのAHTの買収
  • 2019年 Chequers Capitalによるイタリアの空調機メーカーMTAの買収
  • 2020年 インガソールランドによるトレーンテクノロジーズの分社化

ダクト式空調とダクトレス式空調について

ダクト式空調は中南米で一般的。建物の天井等にダクトを通して機械室に設置した空調機から送風を行うものです。建物全体の空調を一元管理できメンテナンスも容易である一方、個別の部屋の温度や風量設定が難しいとされています。
ダクトレス式空調とは、日本やアジア、欧州等で主流の空調方式で、部屋ごとに室内機に置くため、部屋ごとの温度調整ができ省エネに効果的な一方、メンテナンス等は個別に行う必要があります。

冷暖房空調機・エアコンメーカー世界大手の動向

ダイキン

日本を代表する空調機メーカーです。産業用の冷暖房空調機では世界トップ級です。ダクト方式に強い米グッドマンやマレーシアのエアコン大手OYL社を買収する等して世界的に事業を展開しています。国内ではパナソニックと家庭用エアコンの分野で競っています。

Carrier Corporation(キヤリア)

米国に本拠を置く産業用冷暖房空調機の大手メーカーです。元々は航空機エンジン、エレベーター等の大手であるUnited Technologies(ユナイテッド・テクノロジーズ)の子会社です。なお、ユナイテッド・テクノロジーズは、空調機事業(Carrier)、エレベーター事業(Otis)と航空機部品事業へと分社化しました。

York International Corporation(ヨーク・インターナショナル・コーポレーション)

米国に本拠を置く産業用冷暖房空調機メーカーです。建物用自動空調制御装置や自動車用バッテリー等の製造を行うJohnson Controls(ジョンソンコントロールズ)の子会社です。2015年に日立アプライアンスと空調機分野で合弁会社を設立しました。Johnson Controlsは米タイコ・インターナショナルと2016年に経営統合し、その後自動車部品事業などを分社化しています。

ジョンソンコントロールズについて

Johnson Controls(ジョンソンコントロールズ)は、1885年に設立された米国に本社を置く業務用空調制御システム、セキュリティシステム、火災検知システム、ビル管理サービスを提供する会社です。電気式サーモスタットを発明した歴史を持ちます。2016年に火災警報分野に強いTyco(タイコ・インターナショナル)と経営統合をしました。世界150ヵ国で展開し、エネルギー効率ソリューションや各種オートメーション事業を展開しています。自動車用のバッテリー等の分野に強みがありましたが2018年に売却しました。さらに詳しく

Trane Technologies(トレイン・テクノロジーズ)

米国に本拠を置く産業用冷暖房空調機メーカーです。輸送温度コントロール設備、ゴルフ・カート、エアコンプレッサー等を手掛ける米Ingersoll-Rand(インガソール・ランド)の子会社でしたが、2020年トレイン・テクノロジーズとして分社化独立を果たしています。インガソールランド以前は、衛生陶器等も手掛けたAmerican Standard(アメリカンスタンダード)社のグループ会社であったこともあります。

インガソール・ランドについて

Ingersoll-Rand(インガソール・ランド)は、1871年に創業された米国に本拠を置く産業機器メーカーです。2020年に真空ポンプ、コンプレッサー等の産業機械メーカーであるGardner Denver(ガードナーデンバー)と経営統合を行いました。統合に先立ち、空調事業はトレーン・テクノロジーズとして分社化しています。インガソール・ランドからは、過去、鍵のアレジオン、冷凍ショーケースのハスマン(2015年にパナソニックへ売却)等各分野でトップクラスの企業が巣立っております。コンプレッサー・エアツールや輸送用冷凍装置の分野でも強いです。ゴルフカートでは、クラブカーブランドを展開し、世界最大級の規模です。

インガソール・ランドの事業は、Industrial Technologies(インダストリー・テクノロジーズ)Precision and Science Technologies(プレシジョン&サイエンス・テクノロジーズ)Specialty Vehicle Technologies(スペシャリティビークルテクノロジーズ)、High Pressure Solution(ハイプレッシャーソリューション)の4事業に分かれます。
インダストリー・テクノロジーズでは、主にコンプレッサーと真空ポンプを取り扱っています。空調機、冷凍機向けのコンプレッサーでは世界大手です。取り扱っているコンプレッサーブランドとして、CompAir、NASH、Garo、Emco Wheaton、Eimo Rietschleなどがあります。プレシジョン&サイエンス・テクノロジーズでは、定量ポンプ(metering pump)、膜ポンプ(diaphragm pump)、ピストンポンプ、薬投与ポンプ(dosing pump)、シリンジポンプ(輸液ポンプ、Syringe Pump)、Peristaltic Pump(投薬ポンプ)などのポンプを手がけています。スペシャリティビークルでは、クラブカーブランドのゴルフカートやその他カートなどの製品を手がけています。同分野ではTextron(テキストロン)やヤマハと並ぶ大手です。ハイプレッシャーソリューションは、エネルギーの上流権益開発のためのドリルポンプや粉砕ポンプを製造しています。

錠前や鍵の事業も手掛けていましたが、Allegion(アレジオン)として分社化独立しています。

2015年 商業用冷凍庫メーカーのハスマンの株式持分を売却
2014年 輸送用冷凍装置を手掛けるドイツのFRIGOBLOCKを買収
2014年 ポンプ向けコンプレッサー等を手掛ける事業をCameron International より買収
2012年 錠前や鍵事業をAllegion(アレジオン)を分社化上場
2007年 空調機大手のTrane(トレイン)を買収
2007年 建機向けパーツメーカーのBobcatを韓国の斗山インフラコアへ売却
2007年 ボルボによる道路工事機器事業の買収
2004年 鍵やセキュリティを手掛けるイタリアのCISAを買収
2004年 投資ファンドによるDresser-Randの買収
2002年 ティムケンによるベアリング事業の買収
2000年 超硬工具業界大手のIngersoll Cutting Toolsの売却
2015年 冷凍・冷蔵ショーケースのHussmann(ハスマン)をパナソニックに売却
2019年 トレイン・テクノロジーズの分社化上場
2020年 ガードナーデンバーとの経営統合

パナソニック

パナソニックは、1917年に松下幸之助氏によって設立された日本を代表する電機メーカーです。松下電工や三洋電機と統合し、総合電機メーカーとして世界的なプレゼンスを有します。アプライアンス(家電、空調、AV機器、累計2000億個を売り上げた約90年の歴史を持つ電池等)、オートモーティブ(蓄電池、音響機器等)、インダストリアル(電池やモーター等)、ライフソリューション(照明や水まわり等)、コネクティッドソリューションズ(フライトエンターテイメント、航空機向け電子機器、監視カメラ等)といった事業部制に特徴がありましたが、2022年にパナソニックホールディングスを設立し、事業部はホールディング傘下の独立した子会社となる予定です。

Lennox International(レノックス)

米国に本拠を置く冷暖房空調機メーカーです。米国の売上高ランキングではYorkに次ぐ4位です。

Midea Group(美的集団)

1968年に何亮健(He Xiangjian)氏によって設立された中国に本拠を置く家電メーカーです。1993年に深セン証券取引所に上場しています。家庭用エアコンや洗濯機等に強みを持ち、2016年には東芝の家電部門とドイツの産業ロボット大手のKUKAを買収して事業規模を拡大しています。創業者の何享健が持ち株会社を通じて大株主となっています。

Haier Electronics(ハイアール)

中国に本拠を置く白物家電世界最大手です。家庭用エアコンも強みを持ちます。

Gree Electric Appliances(グリー・エレクトリック・アプライアンシズ、珠海格力電器)

1991年創業の中国の家庭用エアコンメーカーです。家庭用空調機の販売台数では世界最大手級でs。2016年に中興の祖である董明珠・董事長がEV自動車への参入をめぐり解任されました。

ハイセンス(Hisense、海信)

1969年創業の中国山東省青島に本拠を置く新興家電メーカーです。

LGエレクトロニクス(LG Electronics)

LGグループは1952年にク・インフェ氏によって設立された韓国を代表する財閥グループです。1958年にLuckyとGoldStarが経営統合をして設立されました。電機事業、化学事業、通信事業が3本柱です。子会社は、家電メーカーのLGエレクトロニクス、電子部品の製造を手掛けるLGイノテック、液晶ディスプレイを手掛けるLGディスプレイ、総合化学メーカーのLG化学など多岐にわたります。

電機事業(LGエレクトロニクス):冷蔵庫等の白物家電業界では上位に位置しています。電子レンジや食洗機、スマートフォンや家庭用エアコン等を含む家電業界でも、フィリップスやハイアールと並び、世界上位に位置しています。テレビ製造や液晶パネル分野(LGディスプレイ)でも、サムスンと並び世界上位に位置しています。車載向け機器も手掛け、2018年にはオーストリアの自動車照明大手であるZKWを買収しました。

LGディスプレイ:韓国LGエレクトロニクス傘下の液晶メーカーです。サムスンディスプレイと双璧です。テレビ向け液晶に強みがあります。中小型液晶分野では日本の液晶メーカーとも競合しています。2008年まで蘭フィリップスと提携していました。テレビ向けの大型有機ELに強みを持ちます。

化学事業(LG化学):シリコンウエハ業界、偏光板業界やリチウムイオン電池業界では、日系企業と並び、世界トップクラスのシェアを維持しています。リチウムイオン電池にも注力をしており、スマートフォン向けや現代/起亜、ルノー向けの車載用に開発が進められています。水処理膜の分野ではRO膜に強みを持ちます。2014年に米国の水処理膜メーカーであるNanoH2Oを買収しました。

株主構成:創業ファミリーであるクー一族が、持株会社であるLGの株式を約50%保有しています。LGを通じて、LG化学、LGエレクトロニクス等のグループ会社の持分を保有し、緩やかなLGグループを構成ししています。

三菱電機

1921年に設立された日本を代表する総合電機メーカーです。重電システム、産業メカトロニクス、情報通信システム、電子デバイス、家庭電器のセグメントで事業を展開しています。エレベーターは重電システムのビルシステム事業で展開しています。産業用ロボットは産業メカトロニクスで、霧ヶ峰ブランドで有名な空調やエアコンは家庭電器セグメントに含まれます。空調分野は特にM&Aに積極的で、業務用空調分野では2015年にDe’Longhi(デロンギ)のイタリアの子会社のDeLclima(デルクリマ)社を買収して、欧州市場にて業績拡大を目指しています。北米では2018年にインガソールランドによるダクトレス空調機販売の合弁会社を設立しました。さらに詳しく

Danfoss(ダンフォス)

デンマークに本拠をおく複合企業です。建機・運搬機器向けの油圧ポンプ、電動モーター、コンプレッサー、空調・冷熱向けの各種部品、AC/DCドライバーなど製造しています。Clausen家による同族会社です。

Bosch Themotechnology(ボッシュ・サーモテクノロジー)

ボッシュはドイツの産業財・自動車部品製造大手です。家電等も手掛けています。空調関連はサーモテクノロジーが手掛けています。

Vaillant(ヴァイヨン)

ヴァイヨンはドイツの冷熱機器製造会社です。ボイラー、ヒートポンプ、ラジエーター、空調製品を手掛けています。同族会社です。

業界団体
一般社団法人 日本冷凍空調工業会