水まわり・トイレ・衛生陶器業界の世界市場シェアの分析

水まわり業界(トイレ、衛生陶器、浴室、シャワ-、水栓金具)の世界市場シェアと市場規模について分析をしています。マスコ、コーラー、リクシル、ゲベリット、ロカといった水回り企業の概要や動向も掲載しています。

【市場シェア】

水回り会社各社の2021年度の売上高を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2021年の水まわり業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はリクシル、2位はコーラー、3位はTOTOとなります。(⇒参照したデータの詳細情報

水回り業界の市場シェアと業界ランキング(2021年)

順位 会社名 市場シェア
1位 リクシル 16.6%
2位 コーラー 15.5%
3位 TOTO 12.4%
4位 マスコ 11.3%
5位 パナソニック 8.7%
6位 ゲベリット 8.3%
7位 フォーチュンブランズ 6.1%
8位 ロカ 5.1%
9位 ビレロイ&ボッホ 2.4%
10位 アイディアルスタンダード 1.8%
11位 デュラビット 1.5%
12位 デクスコ 0.7%
水回り業界の市場シェアと業界ランキング(2021年) ©ディールラボ

トイレや浴室メーカーの世界市場シェア(2021年)
トイレや浴室メーカーの世界市場シェア(2021年)

世界1位は日本のリクシルです。水栓金具に強いドイツのグロエを買収して、トイレからお風呂場までの水回りで世界展開をしています。

2位は米国のコーラーです。コーラー家が率いる非上場会社です。

3位はTOTOとなります。同社は水回りの中でも特にトイレに強く、ウォシュレットなどの高級路線でグローバル展開をしております。

4位は米国のマスコです。ハンスグロエを傘下に有し、お風呂場から洗面所といった水回り全般に強みを発揮しています。

5位はパナソニックです。樹脂系のトイレや浴室に強みを持ちます。

6位はスイスのゲベリットです。トイレのタンクの技術に優れています。

【市場規模】

当サイトでは、各調査会社等の公表データを参考にし、水まわり業界の2021年の世界市場規模を452億ドルとしております。参照にしたデータは以下の通りです。

調査会社フォーチュンビジネスインサイトによると、2021年の同市場規模は452億ドルです。2028年にかけて年平均7.4%で成長し、同年には745億ドルへと拡大する見込みです。

調査会社のマーケッツアンドマーケッツによれば、2020年の同市場規模は321億ドルです。2025年にかけて年平均6.8%での成長を見込みます。

調査会社のグランビューリサーチによれば、2018年の同業界の世界市場規模は402億ドルです。⇒参照したデータの詳細情報

【M&Aの動向】

海外展開の加速や水回り領域の補完といった観点から同業間での買収が相次いでいます。

  • 2003年 マスコによるドイツの水栓金具大手であるハンスグローエの買収
  • 2007年 ロカによるスイスの水栓金具メーカーであるSimilorHoldingの買収
  • 2009年 リクシルによるアメリカンスタンダードの北米事業の買収
  • 2014年 リクシルによるドイツの水栓金具大手であるグロエ買収
  • 2014年 ゲベリットによるフィンランドの浴室メーカーであるサニテックの買収
  • 2015年 フォーチュンブランズによる浴室器具メーカーであるNorcraftの買収
  • 2015年 ゲベリットによるイタリアのバスルームセラミック大手であるPozzi-Ginoriの買収
  • 2016年 スイスの空気清浄機大手であるFrankeによるデュラビットの株式の一部買収
  • 2019年 デュラテックスがセラミックタイル大手であるCecrisaを買収
  • 2021年 アッサアブロイがスペクトラムブランズのHardware & Home Improvement事業を買収

上記の水回り業界における買収案件について、企業価値に対する売上高の倍率(企業価値売上高マルチプル)は約1.6倍です。

水回り業界の買収マルチプルの推移
水回り業界の買収マルチプルの推移

さらに業界に詳しくなるためのお薦め書籍と関連サイト

The 2021-2026 World Outlook for Ceramic Sanitary Wares
水洗トイレの産業史
ウォシュレット開発物語
シャッター業界の世界市場シェアの分析

【会社の概要】

MASCO(マスコ)

米NYSEに上場する内装製品や水まわり製品大手メーカーです。傘下に独Grohe(グロへ)の同根の独Hansgrohe(ハンスグロエ)社を所有しています。水回り製品のその他主要ブランドは、Axor、BrassCraft、BristanTM Brizo、Cadence、CalderaSpas、Cobra、Delta、Endless Pools、Fantasy Spas、Freeflow Spas、GingerHeritageTM HotSpring、Hüppe、Master Plumber、Mercury Plastics、Mirolin、Newport Brass、Peerless、Plumb Shop、VaporTech、Waltecなどが挙げられます。内装製品は、木製家具、ドア、アウトドア照明、窓枠などを取り扱っています。

Geberit(ゲベリット)

1874年にAlbert Gebert氏によって設立されたスイスに本社を置く水まわりの配管や施工サービス会社大手です。インサイドウォールと言われるトイレのタンクやその水量をコントロールする技術(ダブルフラッシュトイレなど)で圧倒的な地位を築いています。1995年に創業一族は持分を英国系投資先ファンドであるDoughtly Hansonに売却し、1999年にスイス証券取引所に上場しています。2014年にフィンランドの衛生陶器大手のサニテック社を買収しています。

Roca(ロカ)

スペインを本拠とする衛生陶器メーカーです。衛生陶器以外に、配管や浴室付属品を製造しています。

Fortune Brands Home & Security(フォーチュンブランズ)

米上場企業で水まわり、内装材の大手メーカーです。サントリーが買収した米Beam(ビーム)社も元々はFortune Brandsよりスピンオフして誕生しています。洗面化粧台はMasterBrand、水栓金具はMoen、玄関ドアはTherma-Tru、鍵やロックはMasterLockおよびSentrySafeブランドというように、商品構成毎に異なるブランド名で事業を展開しています。

Sanitec(サニテック)

フィンランドを本拠とする大手衛生陶器メーカーです。プライベートエクイティファンドのEQT傘下でしたが、2013年に上場しました。2014年スイスのGeberitに買収されました。

Ideal Standard(アイディアル・スタンダード)

元々はAmerican Standard(アメリカンスタンダード)の欧州・南米統括会社です。American Standard(アメリカンスタンダード)がプライベートエクイティファンドのBain Capital(べインキャピタル)に売却後、同社のアジア事業はLixilに、北米事業はSun Capitalに売却(その後北米事業はSun CapitalからLixilが買収)されました。

Villeroy & Boch(ビレロイ&ボッホ)

独陶磁器メーカーです。陶磁器においてはMeissen(マイセン)、Royal Copenhagen(ロイヤルコペンハーゲン)と並ぶブランド力。水回りの衛生陶器も手掛けています。

Duravit(デュラビット)

独に本社を置く衛生陶器大手メーカーです。ブランド力に優れています。スイスのキッチン関連メーカーのFranke(フランケ)の関連会社です。

KOHLER(コーラー)

米国に本社を置く1873年創業の非上場の水まわりメーカーです。衛生陶器、水洗金具、シャワーヘッド等の住設に加え、自動車エンジンや電力システムも手掛けています。

Dexco(デクスコ)

ブラジルを本拠とするウッドパネルメーカーです。旧社名はDuratex(デュラテックス)です。ブラジルのコングロマリット大手のItaúsa(イタウサ)傘下のグループ企業です。DECAブランドで水洗金具や衛生陶器事業を展開しています。他に展開するブランドとしては、Durafloor(ラミネート床)、Hydra(暖房システム)、Duratex(家具および住宅用の木製パネル)、Ceusa(セラミックタイル)があります。2019年には、セラミックタイル大手のブラジルのCecrisa Revestimentos Ceramicosを買収しました。サンパウロ証券取引所に上場しています。2021年にDexco(デクスコ)へと社名を変更しました。

Nobia(ノビア)

スウェーデンを本拠とする上場キッチンメーカーです。

Cersanit(セルサニット)

ポーランドを本拠とする上場会社です。浴室まわりの製品を提供しています。Rovese Capital Group傘下です。

HCG(和成集團)

台湾に上場している衛生陶器等を手掛ける水まわりメーカーです。

SVEDBERGS(スベドベルグス)

スウェーデンに上場する浴室まわりのメーカーです。水洗金具も手掛けています。

Globe Union(グローブユニオン)

台湾に上場している水まわりメーカーです。

GWA

豪に本拠を置く浴室まわりを手掛けるメーカーです。上場企業です。

リクシル(Lixil)

2011年にトステム(サッシ)、INAX(衛生陶器)、新日軽、サンウエーブ工業、東洋エクステリアが統合合併して誕生した住設・建材メーカーです。American Standard(アメリカンスタンダード)や独Grohe(グロへ)と中国Joyou(ジョウヨウ)を買収し、世界展開を強化しています。Joyouの買収では不正会計があり、大きな損失を計上しています。2020年に外壁装飾を手掛けるイタリアのermasteelisa(ペルマストリーザ)を米国の投資会社のAtlasへ売却しました。

Atlas Holdingsとは

AndrewBursky氏とTimFazio氏によって2002年に設立された投資会社です。米国の製紙工場の買収を皮切りにアルミニウム加工、建材、建設サービス、食品、包装、紙、製紙パルプ、木材製品といった分野で買収を行っています。特に、業績が振るわない企業について財務リストラクチャリングを通じて再生する手法を得意とします。

TOTO

1917年に森村グループの衛生陶器部門が分社化して誕生した日本を代表する衛生陶器メーカーです。住設機器の中では、トイレの他に水栓金具と浴槽を主軸にしており、高品質のブランドとして定評があります。独自に海外展開をしています。

パナソニック

パナソニックは、1917年に松下幸之助氏によって設立された日本を代表する電機メーカーです。松下電工や三洋電機と統合し、総合電機メーカーとして世界的なプレゼンスを有します。アプライアンス(家電、空調、AV機器、累計2000億個を売り上げた約90年の歴史を持つ電池等)、オートモーティブ(蓄電池、音響機器等)、インダストリアル(電池やモーター等)、ライフソリューション(照明や水まわり等)、コネクティッドソリューションズ(フライトエンターテイメント、航空機向け電子機器、監視カメラ等)といった事業部制に特徴がありましたが、2022年にパナソニックホールディングスを設立し、事業部はホールディング傘下の独立した子会社となりました。さらに詳しく

参照したデータの詳細情報について


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