ボッシュの市場シェア・業績推移・売上構成・株価の分析

1886年にロバート・ボッシュ氏によってシュトゥットガルトに設立された精密機械と電気技術作業場を起源とするドイツを代表する総合電機メーカーです。産業用機器や車載用機器が主力事業ですが、電動工具事業も伝統的に強みを持ちます。他に住宅向けの家電やエネルギー関連機器等を手掛けています。ボッシュ一族が支配する非上場会社です。独VW社と関係が深いとされます。

2024年6月19日にドイツで開幕した「Bosch Tech Day 2024」では、2030年までにソフトウェアで数十億ユーロ規模の売上高を目指すと発表しました。自動車業界の新しいトレンドとなっているソフトウェア定義自動車(SDV)の成長市場に加わることが期待されています。

業績推移

2019年度
売上高は前年度比0.95%減の77,721百万ユーロになりました。営業利益は28.25%減の8,223百万ユーロになりました。営業利益率は10.58%になりました。売上高は前年と同水準を維持しましたが、自動車需要の低迷による生産台数の落ち込みの影響を受けて減益となりました。

2020年度
売上高は前年度比8.01%減の71,494百万ユーロになりました。営業利益は4.46%減の7,856百万ユーロになりました。営業利益率は10.99%になりました。新型コロナウイルス感染症の広がりによる景気低迷の影響を受け、減収減益となりました。しかし、大幅なコスト削減や下半期の売上改善により、業績予想よりも上回る結果を残しました。

2021年度
売上高は前年度比10.15%増の78,478百万ユーロになりました。営業利益は20.05%増の9,431百万ユーロになりました。営業利益率は11.98%になりました。原材料の価格高騰などの負担がありましたが、予想を上回る増収増益を達成しました。マイクロエレクトロニクスとeモビリティへの投資、自動運転分野でフォルクスワーゲンと業務提携するなど、主要分野を中心に戦略的に投資・パートナーシップを推進しました。

2022年度
売上高は前年度比12.0%増の88,201百万ユーロになりました。営業利益は12.89%増の10,647百万ユーロになりました。営業利益率は12.07%になりました。半導体不足・景気低迷のあおりを受けながらも、全セグメントで売上高を伸ばすことができ、増収を達成しました。今後は中国蘇州のエンジニアリング・製造センターへの投資、半導体事業への投資などを予定していると発表しました。

2023年度
売上高は前年度比3.85%増の91,596百万ユーロになりました。営業利益は2.44%減の10,387百万ユーロになりました。営業利益率は11.34%になりました。
Boschの売上が増加した理由の一つは、為替レート調整後の成長率が8.0%に達したことです。特にモビリティ、産業機器テクノロジー、エナジー&建築技術部門が大きく成長しました。産業技術部門の成長は、新しく買収した企業の初めての統合によるものです。一方、消費財部門の売上は、消費財市場の弱さが原因で減少しました。

ボッシュの業績推移

ボッシュの業績推移

業績予想

2024年通期
売上高は前年比5~7%の増加を見込んでいます。特にモビリティ事業部門では7~9%の成長を予測しています。産業技術部門では1%以内のわずかな成長を見込んでいます。消費財部門では3~5%の成長を計画しており、エネルギーおよびビル技術部門では2~4%の緩やかな成長を予測しています。

事業構成

セグメントは、モビリティソリューションズ、産業機器テクノロジー、消費財、エナジー&ビルディングテクノロジーに分類されます。セグメント別の売り上げ構成は以下の通りです。

ボッシュの2023年度売上構成

ボッシュの2023年度売上構成

モビリティソリューションズ
エンジン(ガソリン・ディーゼル)、シャシー、ブレーキ、パワーステアリング等のトランスミッション、車載ディスプレイ、センサー・電子機器、メーター等計測器、カーナビ・カーオーディオ機器等を幅広く展開しています。また、アフターサービス、カーサービス、モータースポーツ、電動自動車の事業も行っています。ドイツの自動車メーカーと親密です。自動車部品業界では世界シェア上位に位置します。

産業機器テクノロジー
ドライブ&コントロールテクノロジー大手のBosch Rexrothを中心に油圧機器、電気駆動・制御機器、ギアテクノロジー、直線運動・組立技術、ソフトウェアやIoTへのインターフェース関連機器を手掛けています。空気圧機器業界では世界シェア上位に位置します。
消費財
家電事業では、もともとはシーメンスとの合弁会社であった子会社のBSHを通じて大型家電から小型家電までを手掛けています。家電業界でも世界シェア上位に位置し、個別では食洗機、掃除機に強みを持ちます。
電動工具業界ではスタンレー・ブラック・アンド・デッカーと並ぶ強豪の一角です。
エナジー&ビルディングテクノロジー
エネルギー機器では、暖房・空調、給湯、分散型エネルギー管理といった分野でボイラー、太陽熱 太陽熱システム、ヒートポンプ、工業用ボイラー、熱電併給をBosch、Buderus、Worcesterなどのブランドで提供しています。ビルディングテクノロジーではビデオ監視システム、侵入検知システム、火災検知システム、音声認識システムなどを手掛けています。

株主構成

ボッシュは持株比率と議決権が異なる株主構造となっており、所有と経営が分離されています。ボッシュ家が設立した公益財団であるRobert Bosch Stiftung GmbH(ロバート・ボッシュ財団)が持株比率で94%を保有していますが、議決権は保有していません。議決権は、ロバート・ボッシュ工業信託合資会社とボッシュ家が株式を保有しています。

M&A情報

1992年 電気丸鋸大手のイタリアのSkil(スキル)を買収
1993年 ロータリーツール大手のDremel買収
2007年 イタリアの電動工具アクセサリ大手のFreud 社を買収
2008年 ソフトウェア会社のInnovationsを買収
2010年 製薬大手のエーザイより検査機メーカーのエーザイマシナリーを買収
2012年 車両診断機大手のSPX Service Solutionsを買収
2014年 ステアリングシステム(電動式と油圧式)大手のZF Lenksystemeを買収
2015年 米SEEOを買収
2015年 シーメンスより家電の合弁会社のBSH株式取得
2016年 ITK Engineeringを買収
2016年 シェブロンへのSkilの売却
2018年 米国のライドシェアリングサービスのスタートアップ企業SPLTを買収
2022年 ボッシュ傘下のボッシュ・レックスクロスがイスラエルのモーションコントローラメーカーのELMOモーションコントロールを買収
2022年 英国の自動運転のスタートアップ企業のFiveを買収
2022年 豪州のモータースポーツ用電子機器のモーテックを買収
2023年 ボッシュ傘下のボッシュ・レックスクロスが米油圧機器メーカーのHydraForceを買収
2023年 米国の半導体チップメーカーであるTSIを買収
2023年 北米でビルディングサービスを手がけるPaladin Technologiesを買収

EN