ABB(エービービー)は、スイス・チューリッヒに本拠を置く、電化(Electrification)と自動化(Automation)分野の世界的リーダーです。
社名は Asea Brown Boveri(アセア・ブラウン・ボベリ)の略で、1988年にスウェーデンのアセアとスイスのブラウン・ボベリが経営統合して誕生しました。両社はいずれも19世紀末に創業された老舗重電メーカーでした。
現在の ABB は、重電中心の事業から脱却し、配電機器やEV充電などの電力インフラを担う「Electrification」、モーターやドライブなど回転機器を扱う「Motion」、そして産業制御や計測、プロセス自動化を担う「Automation」の3セグメントで事業を展開しています。
原子力・火力発電向けの発電機器事業はすでに売却済みで、2018年には GE Industrial Solutions を買収して電化事業を強化、2020年には電力システム・パワーグリッド事業を日立に売却しました(現在は Hitachi Energy として独立運営)。
さらに 2022年には過給機事業を Accelleron としてスピンオフしたほか、2025年にはロボティクス事業をソフトバンクグループへ売却することを決定。かつて強みとしていたロボット本体の製造から事実上撤退し、販売・技術シナジーの強い「電化・モーション・自動化」の3領域へリソースを完全に集中させる体制へと移行しました。
2020年以降は「ABB Way」と呼ばれる分権型経営モデルを導入し、20以上の事業単位が自律的に運営される体制を確立しています。また、2050年ネットゼロを掲げたサステナビリティ戦略を推進し、エネルギー効率化と脱炭素社会の実現に貢献しています。
業績推移(年次)
2021年度
売上高は前年度比10.76%増の289.45億ドル になりました。営業利益は258.95%増の57.18億ドルになりました。営業利益率は19.75%になりました。
コロナ後の需要回復と電化・自動化投資の加速により、全セグメントで需要が拡大し、売上・利益ともに大幅に改善しました。
2022年度
売上高は前年度比1.73%増の294.46億ドルになりました。営業利益は41.64%減の33.37億ドル になりました。営業利益率は11.33%になりました。
インフレやコスト上昇、事業ポートフォリオ調整の影響で収益性が圧迫され、利益率が大きく低下しました。
2023年度
売上高は前年度比9.47%増の322.35億ドルになりました。営業利益は45.97%増の48.71億ドル になりました。営業利益率は15.11%になりました。
価格調整(pricing)の浸透と市場の正常化により、収益性が回復し、利益率が改善しました。
2024年度
売上高は前年度比5.12%減の305.83億ドル になりました。営業利益は2.79%減の47.35億ドル になりました。営業利益率は15.48%になりました。
一部市場(特にロボティクス)で需要が鈍化したものの、価格設定とコスト管理により利益率を維持しました。
2025年度
売上高は前年度比8.62%増の332.20億ドル になりました。営業利益は27.64%増の60.47億ドルになりました。営業利益率は18.20%になりました。
電化・モーション・プロセスオートメーションなど全セグメントが成長をけん引し、利益率が大幅に改善しました。

ABBの業績推移
業績推移(四半期)
2024年第4四半期(10–12月)
売上高は前年同期比 4%増 の 85.9億ドル になりました。
営業利益は 11.7億ドル、営業利益率は 13.6% になりました。
2025年第1四半期(1–3月)
売上高は前年同期比 1%増 の 79.4億ドル になりました。
営業利益は 15.7億ドル、営業利益率は 19.7% になりました。
2025年第2四半期(4–6月)
売上高は前年同期比 8%増 の 89.0億ドル になりました。
営業利益は 15.7億ドル、営業利益率は 17.7% になりました。
2025年第3四半期(7–9月)
売上高は前年同期比 11%増 の 90.8億ドル になりました。
営業利益は 16.6億ドル、営業利益率は 18.3% になりました。
2025年第4四半期(10–12月)
売上高は前年同期比 13%増 の 90.5億ドル になりました。
営業利益は 12.5億ドル、営業利益率は 13.8%になりました。

ABBの四半期業績推移
EPS・配当額・配当性向の推移
希薄化後EPSは前年度比21.6%増の2.59ドルになりました。1株当たりの配当は前年度比9.62%増の1.19ドルになりました。配当性向は46.09%になりました。

ABBのEPS・1株配当・配当性向の推移
業績予想
2026年4月
通期の業績を上方修正しました。
今期は受注残高対売上高比率がプラスとなり、比較可能な売上高は前年比で一桁台後半から二桁台前半の成長が見込まれます。
営業EBITAマージンは、前年比で改善(Q1の不動産売却益除外ベースでも改善)を見込みます。
2026年第2四半期(4-6月)
売上高、営業利益の業績予想に対する進捗率は順調です。
営業EBITAマージンは予想より上回っています(※Q1時点で通期目標を上回る高水準を達成)。
⑥売上構成
ABB のセグメントは、Electrification・Motion・Automation の3つに分類されます。
セグメント別の売上構成は以下の通りです。

ABBのセグメント別売上構成(2025年度)
◆ Electrification(エレクトリフィケーション)
Electrification は ABB の 電化事業の1つに分類されるセグメントで、低圧・中圧の配電機器、スイッチギア、保護機器、EV充電インフラ、建物・産業向け電力供給ソリューションを主に製造・販売しています。その他の商品としては、スマートビルディング向け製品、エネルギー管理システム、住宅向け電気設備などがあります。
2025年度は建物・産業・インフラの電化投資が堅調で、EV充電や配電機器が成長領域として示されています。
◆ Motion(モーション)
Motion は ABB の モーター・ドライブ事業の1つに分類されるセグメントで、高効率モーター、周波数変換器(ドライブ)、産業用ギアドモーター、回転機器の状態監視ソリューションを主に製造・販売しています。その他の商品としては、サーボモーターや産業用駆動システムがあります。
2025年度は高効率モーター・ドライブの需要が継続し、エネルギー効率改善を目的とした顧客投資が売上を支えたと記載されています。
◆ Automation(オートメーション)
Automation は ABB の 産業オートメーション事業の1つに分類されるセグメントで、DCS(分散制御システム)、計測機器、プロセス制御、産業向けソフトウェア、PLC、ロボティクスなどを主に製造・販売しています。その他の商品としては、産業用ロボットやデジタル化ソリューションがあります。
2025年度はプロセス産業のデジタル化投資が増加し、DCS・計測・ロボティクスが主要製品として位置づけられています。
2013年
米インバータ大手のパワーワンを買収
2015年
ドイツの産業用ロボットメーカー大手Gomtecを買収
2016年
高圧ケーブル事業をNKTケーブルズに売却
2017年
B&R (Bernecker + Rainer Industrie-Elektronik GmbH) を買収
2018年
GEよりGEインダストリアルソリューションズを買収
2020年
電力システム事業を日立に売却
2020年
ターボチャージング、メカニカルパワートランスミッション、パワーコンバージョン事業の戦略レビューを発表
2021年
ベアリング、ギア、パワートランスミッションコンポーネントなどを手掛けるパワートランスミッション部門(Dodge)をRBC Bearings Incorporatedに29億ドルで売却
2023年
Siemensの低電圧モーター事業を買収
2023年
ABBが保有していた電力変換事業をAcBelへ売却
2024年
SEAM Groupを買収
2025年
ロボティクス部門をソフトバンクグループに売却