ABB(エービービー)は、スイスに本拠を置く重電・重工業大手です。ABBはAsea Brown Boveri(アセア・ブラウン・ボベリ)の略です。1988年にスウェーデンのアセアとスイスのブラウン・ボベリが経営統合して誕生しました。アセアとブラウン・ボベリは1890年代に創業された両国を代表する老舗重電メーカーです。発電・送変電機器と自動化機器やソフトウェア事業に強みを持ちます。原子力発電と火力発電における発電機器事業は、それぞれWestinghouse(ウェスティングハウス)とAlstom(アルストム)に売却し撤退しました。2018年にGEよりエレクトリフィケーション事業を行うGEインダストリアルソリューションを買収しました。2020年には電力システムやパワーグリッド事業を日立に売却し、事業ポートフォリオの入れ替えを行っています。
2021年度は、売上高 289億ドル、営業利益は57億ドルの前年度比増収増益となりました。プロセスオートメーション関連の事業が好調でした。
2020年度の売上高は、前年同期比7%減の26,134百万米ドルとなりました。すべての事業分野で収益は低迷しました。モーション分野の売上高は2%減、電化分野の売上高は6%減となりました。産業用自動機器の売上は8%減、ロボット・ディスクリート・オートメーションの売上は12%減となりました。営業利益も、構造改革および構造改革関連費用や売却した事業に関連する義務の変更による費用約2億ドルが発生し減益となっています。
好調な業績を受け、希薄化後EPSは大幅に増加しました。
ABBの事業は大きくエレクトリフィケーション、ロボティクス、モーション、プロセスオートメーションに分かれます。
エレクトリフィケーション
質の高い電力供給に関係するソリューションを提供しています。低圧から高圧まで幅広く商品群を供給しており、電気自動車向け充電インフラ、太陽光向けパワーコンディショナ、モジュラー型変電所、スイッチギヤ、サーキットブレーカ、計測およびセンシング機器、制御製品、データ通信ネットワーク、保護機器等が含まれます。競合相手には、電圧機器・配線機器ではシュナイダー、シーメンス、イートン等、ブレーカーではルグラン、直流電源機器はバーティブやデルタがあげられます。北米市場強化を狙い、GEのエレクトリカルソリューション事業を担うGEインダストリアルソリューションを買収しました。
プロセスオートメーション
制御技術等を駆使してオートメーションの推進・最適化サービスを提供しています。エネルギー、プロセス、港湾業種向けのオートメーションや分散制御システム分野では世界シェア上位に位置しており、船舶や石油ガス施設向けのターボチャージャーにも強みを持ちます。また、産業の自動化と電力供給の効率化に関連する事業ポートフォリオを構築している点が特徴で、計測分野もカバーしています。
ロボティクス
産業用ロボットや分散型制御システム(DCS)、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、プロセス間通信 (Inter-Process Communication、IPC)を手掛けています。
モーション
モータ、発電機、低/高圧ACドライブ,DCドライブ、産業用ロボットを展開しています。駆動制御を行う低中圧のサーボ・モーション、モーターの制御をするモータードライブでは大手です。なお、モータードライブとは、固定電圧を可変電圧に変換して、モーターの速度を調整する技術の総称です。直流送電 (HVDC)技術に強みを持ち、送電、配電のソリューションを提供していたパワーグリッド事業は、2020年に日立へ売却しました。
現在はInvestor AB(インベストールAB)が筆頭株主となっています。インベストールはスウェーデン有数の富裕ファミリーであるヴァレンベリ家の投資会社です。また、インベストールは傘下に北欧有数の投資ファンドであるEQTパートナーズを所有しています。物言う株主のCevian Capitalも大株主となっています。
2013年 米インバータ大手のパワーワンを買収
2015年 ドイツの産業用ロボットメーカー大手Gomtecを買収
2016年 高圧ケーブル事業をNKTケーブルズに売却
2018年 GEよりGEインダストリアルソリューションズを買収
2020年 電力システム事業を日立に売却
2020年 ターボチャージング、メカニカルパワートランスミッション、パワーコンバージョン事業の戦略レビューを発表
2021年 ベアリング、ギア、パワートランスミッションコンポーネントなどを手掛けるパワートランスミッション部門(Dodge)をRBC Bearings Incorporatedに29億ドルで売却