ABBによるターボ過給機事業の戦略レビュー

2020年11月19日のキャピタルマーケットDayで、ABBがターボチャージング(ターボ過給機)、メカニカルパワートランスミッション(動力伝達機器)、パワーコンバージョン(電力変換機器)事業の戦略レビューを発表しました。
戦略レビューの対象となる3事業の売上高は約17.5億ドルで、ABB全体の約6%を占めます。

ABB概要

ABB(エービービー)は、スイスに本拠を置く重電・重工業大手です。ABBはAsea Brown Boveri(アセア・ブラウン・ボベリ)の略です。1988年にスウェーデンのアセアとスイスのブラウン・ボベリが経営統合して誕生しました。アセアとブラウン・ボベリは1890年代に創業された両国を代表する老舗重電メーカーです。発電・送変電機器と自動化機器やソフトウェア事業に強みを持ちます。原子力発電と火力発電における発電機器事業は、それぞれWestinghouse(ウェスティングハウス)とAlstom(アルストム)に売却し撤退しました。2018年にGEよりエレクトリフィケーション事業を行うGEインダストリアルソリューションを買収しました。2020年は電力システムやパワーグリッド事業を日立に売却し、事業ポートフォリオの入れ替えを行っています。

ABBの事業は大きくエレクトリフィケーション、ロボティクス、モーション、インダストリアル・オートメーションに分かれます。

ABB売上構成2019年

2019年のABB売上構成(単位:10億ユーロ)
出所:同社

エレクトリフィケーション事業では、質の高い電力供給に関係するソリューションを提供しています。低圧から高圧まで幅広く商品群を供給しており、電気自動車向け充電インフラ、太陽光向けパワーコンディショナ、モジュラー型変電所、スイッチギヤ、サーキットブレーカ、計測およびセンシング機器、制御製品、データ通信ネットワーク、保護機器等が含まれます。競合相手には、電圧機器・配線機器ではシュナイダー、シーメンス、イートン等、ブレーカーではルグラン、直流電源機器はバーティブやデルタがあげられます。北米市場強化を狙い、GEのエレクトリカルソリューション事業を担うGEインダストリアルソリューションを買収しました。

インダストリアル・オートメーション事業では制御技術等を駆使してオートメーションの推進・最適化サービスを提供しています。エネルギー、プロセス、港湾業種向けのオートメーションや分散制御システム分野では世界シェア上位に位置しており、船舶や石油ガス施設向けのターボチャージャーにも強みを持ちます。また、産業の自動化と電力供給の効率化に関連する事業ポートフォリオを構築している点が特徴で、計測分野もカバーしています。

ロボティクス事業では、産業用ロボットや分散型制御システム(DCS)、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、プロセス間通信 (Inter-Process Communication、IPC)を手掛けています。

モーション事業では、モータ、発電機、低/高圧ACドライブ,DCドライブ、産業用ロボットを展開しています。駆動制御を行う低中圧のサーボ・モーション、モーターの制御をするモータードライブでは大手です。なお、モータードライブとは、固定電圧を可変電圧に変換して、モーターの速度を調整する技術の総称です。直流送電 (HVDC)技術に強みを持ち、送電、配電のソリューションを提供していたパワーグリッド事業は、2020年に日立へ売却しました。

現在はInvestor AB(インベストールAB)が筆頭株主となっています。インベストールはスウェーデン有数の富裕ファミリーであるヴァレンベリ家の投資会社です。また、インベストールは傘下に北欧有数の投資ファンドであるEQTパートナーズを所有しています。

2013年 米インバータ大手のパワーワンを買収
2015年 ドイツの産業用ロボットメーカー大手Gomtecを買収
2016年  高圧ケーブル事業をNKTケーブルズに売却
2018年  GEよりGEインダストリアルソリューションズを買収
2020年 電力システム事業を日立に売却
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戦略レビューの対象資産の詳細と競合他社

ターボ過給機

ターボ過給機は、インダストリアルオートメーション本部の1事業で、売上高は約8億ユーロ、営業利益率は16%です。船舶、石油ガス、発電所、鉱山、鉄道向けの500kW~80MW 超のディーゼ ル及びガスエンジン用の過給機ターボ過給機を製造しています。
競合会社は、Garrett、三菱重工、Wabtec、マン、シーメンス、ロールスロイス等が挙げられます。同社資料によると、ターボ過給機メーカーでは世界1位です。

動力伝達機器

動力伝達機器は、モーション本部の1事業で、2011年に買収をしたBaldor社の事業ポートフォリオを引き継いでいます。特にDodgeブランドで展開する北米市場に強みがあります。セメント、化学、飲料、水処理といった分野で使用される動力伝達装置向けに、ころ軸受、玉軸受けといった各種ベアリング、ねじ歯車(ウォームギア)、はすば歯車(ヘリカルギア)やカスタム歯車といった各種ギア、減速機、防振装置(ブッシング)、カップリング(軸継手)、機械駆動用部品等を手掛けています。地域では、特に北米市場が強いとされています。売上規模は約5億ユーロです。

電力変換機器

電力変換機器は、エレクトリフィケーション本部の1事業で、2018年に買収したGEインダストリアルソリューションの事業ポートフォリオを引き継いでいます。同社によると直流電源(DCパワー)機器は世界4位です。特にデータセンターや通信会社向けに強みがあります。DC/DCコンバーター、インバーターなどの変圧器なども取り扱っています。競合他社はVertiv、デルタエレクトロニクス、エネシスなどが挙げられます。売上規模は約5億ユーロです。