ハネウェルの市場シェア・業績推移・売上構成・株価の分析

ハネウェル(Honeywell)は、1886年に設立された米国に本拠を置く複合企業です。航空機エンジンや電子制御機器、自動化機器、特殊素材分野、自動車部品等幅広く展開しています。ビルディング・オートメーションやターボチャージャーの分野では世界大手の1社です。2017年にターボチャージャー事業と住宅向け空調機器、火災報知器事業を分社化しました。

ハネウェル社の事業構成は、大きく1999年に経営統合をしたアライドシグナル社を受け継ぐエアロスペース、ビルディングテクノロジーズ、高機能素材(パフォーマンスマテリアルズ)、セーフティ&プロダクティビティソリューションの4部門に分かれます。エアロスペース部門の中の輸送機器部門(トランスポーテーション)で、直近約30億ドルの売上のあるターボチャージャー事業と約45億ドルの売上のある住宅向け部門を分社化しました。オートメーション事業部門は、ビルディングテクノロジーズ事業として、今後商業やオフィースビル向けに特化することになります。

年次業績推移

2021年度は、前年度比増収増益になりました。セイフティやブルディングテクノロジー部門の業績が好調でした、
2020年度は、ターボチャージャー事業や住宅向け事業を分社化した結果、売上高は減少しましたが、営業利益率は18%を超え収益性が高まっていることが伺えます。

ハネウェルの業績推移

ハネウェルの業績推移

四半期業績推移

2022年7-9月
売上高は前年同期比1.65%増の8,953百万ドルになりました。営業利益は前年同期比-9.41%の1,704百万ドルになりました。営業利益率は19.0%になりました。

ハネウェルの四半期業績推移

ハネウェルの四半期業績推移

EPS成長(年次)

2021年度の業績は好調で、EPSも前年度比17.7%成長しました。

ハネウェルの希薄化後EPSの推移

ハネウェルの希薄化後EPSの推移

EPS成長(四半期)

2022年7-9月
希薄化後EPSは前年同期比-9.80%の1.84ドルになりました。

ハネウェルの希薄化後EPS(四半期)の推移

ハネウェルの希薄化後EPS(四半期)の推移

売上構成

事業セグメントは大きく、航空機部門、ビルディングテクノロジー、高機能素材、セイフティへと分かれます。

ハネウェルの売上構成(2021年度)

ハネウェルの売上構成(2021年度)

サブセグメントの製品別売上高では民間航空機部門が最大の規模となります。

ハネウェルの売上構成(サブセグメント、2021年度)

ハネウェルの売上構成(サブセグメント、2021年度)

エアロスペース部門

航空機エンジンの分野ではGEやロールスロイスと並び世界大手の一角となっています。民間航空機向けの補助動力装置(auxiliary power units)、エンジン、アビオニクス、無線接続サービスや軍用機向けの監視システム、レーダー、照明、軍用航空機、戦車向けのナビゲーションやディスプレイ等の各種製品を幅広く展開しています。

ビルディングテクノロジーズ

ビルディング・オートメーション業界の世界シェアではシーメンスやジョンソンコントロールズを抑えて世界最大級の規模を誇ります。センサー、スイッチ、制御システム機器、入退室管理、ビデオ監視、防火製品、遠隔患者監視システム等を提供しています。センサー分野では、2015年にElster(エルスター)を買収しスマートメーターを強化しております。火災報知器の分野では2016年に投資ファンドのPEPから、アイルランドに本拠を置くXtralisを買収しています。ハネウェルの火災報知器事業は世界大手です。

高機能素材部門

ユーリッド (JURID)とベンデックス(Bendix)ブランドのブレーキパッド、温度調整装置のサーモスタット、自動制御、計測機器、温度センサー、湿度センサー、温度プローブ、スピードセンサー、半導体磁気抵抗(MR)センサー 、電流センサー、監視カメラ、カーエアコン用等の冷媒、溶媒、エアゾール用噴射剤、発泡剤、フッ素樹脂、バリアフィルム、サーマル・インターフェース材料、スペクトラ繊維等を手掛けています。

セイフティ

倉庫内オートメーション業界(マテハン業界)では、Intelligrated(インテリグレイテッド)を買収して参入しました。屋外活動用の安全関連製品としてPPE、アパレル、ギア、フットウェア、ガス検知技術等も提供しています。

M&A(合併・買収)

1999年 アライドシグナルがハネウェルを買収
2015年 ガスメーターのElsterを買収
2016年 自動倉庫のIntelligratedを買収
2017年 ターボチャージャー事業と住宅向け空調機器、火災報知器事業を分社化

分社化された事業

分社化対象となった、ターボチャージャー事業は、1999年に買収したAlliedSignal(アライドシグナル)のGarrett (ギャレット)ブランドを世界展開しており、ターボチャージャー事業の世界シェアはトップクラスとなっています。主に自動車や船舶向けのエンジンで使われていますが、輸送機動力の脱石化への変化(ガソリン・ディーゼルからより、クリーンな電気や水素などの燃料へ)といった需要減を見込んでの、分社化の決定と思われます。

サーモスタット・空調事業は、ハネウェルの祖業の事業であり、ハネウェルのサーキュレイター(扇風機)とともに、一般の消費者には馴染みのあるブランドとなっています。上記の商品のディストリビューション事業(ADI)もResideo社として分社化をしました。

分社化の背景

事業が赤字になったから、分社化をするという追い込まれた形の分社化ではなく、同社のプレスリリースにunlocking significant valuesとあるように、両事業の潜在的な価値を最大化するという観点での組織再編のようです。確かに、同社のポートフォリオは、航空機エンジンから扇風機やサーモスタットまで、多岐にわたり、今回分社化する事業も、世界シェア1位の事業が含まれていて、潜在的な価値が埋もれている(コングロマリット・ディスカウント)の状態なのかもしれません。
一方で、ハネウェルの最大の強みである、航空機部品の分野では、最大のライバルであるレイセオンテクノロジーズ(旧ユナイテッドテクノロジーズ)が離着陸システムや航空機通信システムに強みを持つロックウェルコリンズを買収して、航空機部品メーカーとしての規模を拡大し、エアバスやボーイングとの価格競争力を高めようとしています。一方で、エアバスやボーイングも、新規に発注される航空機のダウンサイジングの影響を受け、航空機エンジンのアフターサービスに参入して、今までは航空機備品メーカーの金城湯池であった航空機の保守、修理、メンテナンスの分野でハネウェルやレイセオンテクノロジーズとの競合を始めています。ハネウェルとしては、分社化を経て同分野へのさらなる経営資源の集中を図ることになると思われます。
最後に、アクティビストファンドの代表格であるダン・ローブ氏率いるサードポイントがハネウェルの大株主となっていることも見逃せません。分社化・再編の背景には、株主からの圧力もあったものと推察されます。

市場シェア

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