火災報知器業界の世界市場シェアの分析

火災報知器やガス漏れ等の報知器の世界シェアや市場規模の情報について分析をしています。ハネウェル、ユナイテッド・テクノロジーズ、タイコ、ホーチキ等世界大手火災報知器メーカー・報知器メーカーの動向も掲載しています。

報知機器メーカーの世界市場シェア(2019年)

最新業界別売上高世界ランキング第8巻」に記載の火災報知器メーカー各社の売上高を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして2019年の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はジョンソンコントロールズ、2位はハネウェル、3位はキャリア となります。

1位 ジョンソンコントロールズ 6%
2位 ハネウェル 5%
3位 キャリア 3%
4位 ホーチキ 2%

市場規模

当サイトでは、調査会社等の公表データを参考にし、火災報知器メーカー業界の2019年の世界市場規模を400億ドルとして市場シェアを計算しております。参照にしたデータは以下の通りです。調査会社グランドビューリサーチによると、2019年の同業界の規模は392億ドルです。2027年にかけて年平均8.4%での成長を見込みます。調査会社のリサーチアンドマーケッツによると、2027年までに同業界の規模は753億ドルへの拡大する見込みです。キャリアによると、2019年の火災報知器の市場規模は110億ドルです。

世界の主要報知器メーカーの動向

ハネウェル

ハネウェル(Honeywell)は1886年に設立された米国に本拠を置く複合企業です。航空機エンジンや電子制御機器、自動化機器、特殊素材分野、自動車部品等幅広く展開しています。ビルディング・オートメーションやターボチャージャーの分野では世界大手の1社です。2017年にターボチャージャー事業と住宅向け空調機器、火災報知器事業を分社化しました。

ハネウェル社の事業構成は、大きく1999年に経営統合をしたアライドシグナル社を受け継ぐエアロスペース、オートメーション&コントロール・ソリューションズ、高機能素材(パフォーマンスマテリアルズ)、セーフティ&プロダクティビティソリューションの4部門に分かれます。エアロスペース部門の中の輸送機器部門(トランスポーテーション)で、直近約30億ドルの売上のあるターボチャージャー事業と、オートメーション&コントロール・ソリューションズ部門に属し約45億ドルの売上のある住宅向け部門を分社化しました。オートメーション事業部門は、今後商業やオフィースビル向けに特化することになります。
両事業売却後のハネウェル社の売上構成は以下の通りとなります。

分社化後の売上構成

分社化後の売上構成 出所:同社アニュアルレポート

エアロスペース部門:
航空機エンジンの分野ではGEやロールスロイスと並び世界大手の一角となっています。民間航空機、軍用航空機、軍用輸送機、ヘリコプター、ミサイル、戦車向けのナビゲーションやディスプレイ等の各種製品を幅広く展開しています。

オートメーション&コントロール・ソリューションズ:
ビルディング・オートメーション業界の世界シェアではシーメンスやジョンソンコントロールズを抑えて世界最大級の規模を誇ります。スイッチやセンサー、テスト、測定機器等も製造しています。倉庫内オートメーション業界(マテハン業界)では、Intelligrated(インテリグレイテッド)を買収して参入しました。

高機能素材部門:
ユーリッド (JURID)とベンデックス(Bendix)ブランドのブレーキパッド、温度調整装置のサーモスタット、温度センサー、湿度センサー、温度プローブ、スピードセンサー、半導体磁気抵抗(MR)センサ 、電流センサー、監視カメラ、カーエアコン用等の冷媒、溶媒、エアゾール用噴射剤、発泡剤、バリアフィルム、サーマル・インターフェース材料、スペクトラ繊維等を手掛けています。センサー分野では、2015年にElster(エルスター)を買収しスマートメーターを強化しております。

ターボチャージャー事業
分社化対象となった、ターボチャージャー事業は、1999年に買収したAlliedSignal(アライドシグナル)のGarrett (ギャレット)ブランドを世界展開しており、ターボチャージャー事業の世界シェアは世界1位となっています。主に自動車や船舶向けのエンジンで使われていますが、今後の輸送機の動力の脱石化への変化(ガソリン・ディーゼルからより、クリーンな電気や水素などの燃料へ)といった需要減を見込んでの、分社化の決定と思われます。

住宅向け火災報知器や温度調整事業
ハネウェルの火災報知器事業は、こちらも世界シェア1位となっています。火災報知器の分野では2016年に投資ファンドのPEPから、アイルランドに本拠を置くXtralisを買収しています。サーモスタット事業は、ハネウェルの祖業の事業であり、ハネウェルのサーキュレイター(扇風機)とともに、一般の消費者には馴染みのあるブランドとなっています。また、あわせて、上記の商品のディストリビューション事業(ADI)も分社化をします。

分社化の背景
事業が赤字になったから、分社化をするという追い込まれた形の分社化ではなく、同社のプレスリリースにunlocking significant valuesとあるように、両事業の潜在的な価値を最大化するという観点での組織再編のようです。確かに、同社のポートフォリオは、航空機エンジンから扇風機やサーモスタットまで、多岐にわたり、今回分社化する事業も、世界シェア1位の事業が含まれていて、潜在的な価値が埋もれている(コングロマリット・ディスカウント)の状態なのかもしれません。
一方で、ハネウェルの最大の強みである、航空機部品の分野では、最大のライバルであるレイセオンテクノロジーズ(旧ユナイテッドテクノロジーズ)が離着陸システムや航空機通信システムに強みを持つロックウェルコリンズを買収して、航空機部品メーカーとしての規模を拡大し、エアバスやボーイングとの価格競争力を高めようとしています。一方で、エアバスやボーイングも、新規に発注される航空機のダウンサイジングの影響を受け、航空機エンジンのアフターサービスに参入して、今までは航空機備品メーカーの金城湯地であった航空機の保守、修理、メンテナンスの分野でハネウェルやレイセオンテクノロジーズとの競合を始めています。ハネウェルとしては、分社化を経て同分野へのさらなる経営資源の集中を図ることになると思われます。
最後に、アクティビストファンドの代表格であるダン・ローブ氏率いるサードポイントがハネウェルの大株主となっていることも見逃せません。分社化・再編の背景には、株主からの圧力もあったものと推察されます。

キャリア

米国に本拠を置く空調メーカーです。元々はユナイテッド・テクノロジーズの1事業部門でしたが、分社化独立しました。空調、商業用冷蔵・冷凍機器、火災報知器等が主軸となっています。

ジョンソンコントロール

Johnson Controls(ジョンソン・コントロールズ)は、米国に本社を置く自動車部品、ビル管理や電力システム関連企業です。自動車用のバッテリー等の分野に強みがあり、電気式サーモスタットを発明した歴史を持ちます。2016年に火災警報分野に強いTyco(タイコ・インターナショナル)と経営統合をしました。世界150ヵ国で展開し、エネルギー効率ソリューションや各種オートメーション事業を展開しています。

ジョンソン・コントロールズの事業は大きく分けて、ビルオートメション事業、 空調冷熱機器事業、自動車用バッテリー事業及びタイコとの経営統合後は警報機・報知器事業となります。ビルオートメーション分野ではハネウェルやシーメンスと並び世界大手の一角を占めています。

2016年米ビルディングシステム大手のジョンソンコントロールズと防犯、防火、火災検知サービス大手のタイコインターナショナルが経営統合を発表。
タイコの株式評価に基づく買収総額の144億ドルは、同社株価の前日終値に約11%のプレミアムを加えた水準。ジョンソンコントロールズ株主が56%、タイコ株主が44%の統合新会社の株式を所有する予定。
新会社の社名はジョンソンコントロールズ。本社は現在のタイコ本社のあるアイルランドとなる。
経営統合により、売上高320億ドル規模の総合ビルマネジメント・オートメーション会社が誕生。
新会社は、バッテリー分野に加え、ビル全体の空調冷熱管理、ビル中央管理、自動制御、監視システム、防災セキュリティ等を提供可能となる。
なお、ジョンソンコントロールズは、統合完了までに、自動車向けのシートやインテリアを手掛けるAdientを売却する見込み。
売上シナジーとして、両社製品のクロスセルの強化、グローバル展開等により650百万ドル、コストシナジーとして500百万ドル、本社をアイルランドに移すことに伴う節税比奈地―として150百万ドルを予定する。

空調冷熱機器事業(HVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning))は、傘下にYork International(ヨーク・インターナショナル)を擁して、キャリア、ダイキンやトレイン・テクノロジーズと世界シェア首位の座を争っています。
自動車用バッテリーでは、コストパフォーマンスがよく中~大容量の蓄電設備として力を発揮する鉛蓄電池の分野に強みを持ちます。年におよそ1億34万個のバッテリーを製造し、世界に流通する鉛バッテリーの1/3はジョンソン製と言われています。鉛蓄電池業界の世界シェアでは、同社は米エキサイドやGSユアサ等とともに世界最大級の1社となっていましたが、2018年にブルックフィールド・ビジネスパートナーズおよびケベック州貯蓄投資公庫(CDPQ)へ約1兆5千億円で売却し、現在はClarios(クラオリス)となっております。

自動車用バッテリーや鉛蓄電池を含むパワーソリューションズ事業の売却後のジョンソン・コントロールズの事業構成は以下の通りとなります。

ジョンソンコントロールズの事業セグメント

ジョンソンコントロールズの事業セグメント
出所:JC

今回の売却によって、ジョンソンコントロールズはビル関連技術専門のソリューションプロバイダーとなり、コネクテッドビルの統合と進化をけん引するとともに、HVAC業界における戦略的商機を獲得するためにより強固な態勢を整えることになります。
売却したパワーソリューションズ事業は、売上高で約80億ドル、EBITDAで17億ドルと、ほぼ会社の半分の売上高のある事業を売却したことになります。売却金額のうち約80億ドルは自社株買い、約40億ドルは負債の返済に充てました。
ジョンソンコントロールズの展開するブランド

ジョンソンコントロールズのブランド

ジョンソンコントロールズのブランド
出所:JC

空調部門では、York(ヨーク)に加え、2014年に買収したエア・ディストリビューション・テクノロジーズ社の換気・送風関連製品ブランドであるRuskin(ラスキン)、Titus(タイタス)を展開しています。ビルマネジメント部門では、ビルオートメーションシステムのブランドであるMetasys(メタシス)、スマートロックのSoftware House(ソフトウェア・ハウス)等のブランドで展開をしています。防火システム部門では、旧タイコのブランドであるGrinnell(グリネル)、スプリンクラー、レストラン消化設備、泡消化設備、車載用設備に強みを持つAnsul(アンスル)を展開しています。
2020年11月時点では、売上構成でみるとビルディングマネジメントを含む商業施設向けの空調事業が売上高の40%、住宅向けの空調事業が12%、監視カメラやアクセスコントロール等を含むセキュリティビルマネジメント及び防災システムが41%となります。

2002年 Varta AG(ファルタ)のバッテリー事業を買収
2005年 米冷暖房機器大手のヨーク・インターナショナルを買収
2010年 自動車シート大手の独カイバー、レカロを買収
2013年 HomeLink事業をGentex Corporationに売却
2014年 換気・送風関連のエア・ディストリビューション・テクノロジーズ社を買収
2015年 日立との空調関連の合弁会社を設立
2015年 自動車シートやインテリア部門をAdientとして分社化
2016年 タイコ・インターナショナルとの経営統合を発表
2018年 Power Solutions(パワーソリューション)事業をブルックフィールズに約1兆5千億円で売却

ホーチキ

日本の火災報知器メーカーです。

他に火災報知器を手掛ける会社としては、ドイツのシーメンス、ボッシュ、イギリスのHalma、米国のエマソンエレクトリック、イートン、Gentex Corporation等が挙げられます。

シーメンス

シーメンス(Siemens AG)は、ドイツのミュンヘンに本拠を置く大手総合電機メーカーです。1847年に、ヴェルナー・フォン・ジーメンス (Werner von Siemens) によって設立されました。世界初の電車を製造したことでも有名です。事業範囲は電力、交通システム、家電、医療等と社会インフラ全般に及びます。事業のポートフォリオを組み替えながら、モノ作りのデジタル化や産業機器のIoT化を含むインダストリー4.0を提唱し、強力に推進しています。米国のライバルであったGEと同じように再編を通じて、その時々の社会ニーズに即した組織体を作り上げる柔軟性のある経営を行っています。鉄道車両はグループ内のモビリティ事業本部が担当しています。ICEで知られるドイツの高速鉄道も手掛けています。2017年には鉄道車両部門でアルストムと経営統合を発表しましたが、2019年に欧州委員会がアルストムとの経営統合を承認せず遂行されませんでした。鉄道信号にも強みを持ち、上位株主には、象徴としてのシーメンス家が引き続き残っています。

ボッシュ

1886年にロバート・ボッシュ氏によってシュトゥットガルトに設立された精密機械と電気技術作業場を起源とするドイツを代表する総合電機メーカーです。産業用機器や車載用機器が主力事業ですが、電動工具事業も伝統的に強みを持ちます。他に住宅向けの家電やエネルギー関連機器等を手掛けています。ボッシュ一族が支配する非上場会社です。独VW社と関係が深いとされます。

ボッシュの事業構成は大きく自動車事業、消費財事業、産業機器事業、ソフトウェア事業に分けることができます。

自動車事業
エンジン(ガソリン・ディーゼル)、シャシー、ブレーキ、パワーステアリング等のトランスミッション、車載ディスプレイ、センサー・電子機器、メーター等計測器、カーナビ・カーオーディオ機器等を幅広く展開しています。ドイツ自動車メーカーと親密です。自動車部品業界では世界シェアも上位に位置します。
消費財事業
家電事業では、もともとはシーメンスとの合弁会社であった子会社のBSHを通じて大型家電から小型家電までを手掛けています。家電業界でも世界シェア上位に位置し、個別では食洗機、掃除機に強みを持ちます。
電動工具業界ではスタンレー・ブラック・アンド・デッカーと並ぶ強豪の一角です。
産業機器事業
空気圧機器業界では世界シェア上位に位置します。
株主構成
ボッシュは持株比率と議決権が異なる株主構造となっており、所有と経営が分離されています。ボッシュ家が設立した公益財団であるRobert Bosch Stiftung GmbH(ロバート・ボッシュ財団)が持株比率では92%を保有していますが、議決権は保有していません。議決権は、ロバート・ボッシュ工業信託合資会社とボッシュ家が株式を保有しています。
ボッシュの事業再編・買収
1992年 電気丸鋸大手のイタリアのSkil(スキル)を買収
1993年 ロータリーツール大手のDremel買収
2007年 イタリアの電動工具アクセサリ大手のFreud 社を買収
2008年 ソフトウェア会社のInnovationsを買収
2010年 製薬大手のエーザイより検査機メーカーのエーザイマシナリーを買収
2012年 車両診断機大手のSPX Service Solutionsを買収
2014年 ステアリングシステム(電動式と油圧式)大手のZF Lenksystemeを買収
2015年 米SEEOを買収
2015年 シーメンスより家電の合弁会社のBSH株式取得
2016年 ITK Engineeringを買収
2016年 シェブロンへのSkilの売却

エマソンエレクトリック

Emerson Electric(エマソンエレクトリック)は米国を代表するコングロマリット企業です。電源設備や精密空調等の分野で事業を展開しています。プラント向けのプロセスオートメーションにも強みを持ちます。オートメーション分野の強化に向け、選択と集中を図っています。

2016年 モーター・ドライブ、発電事業であるLeroy-SomerとControl Techniquesを日本電産へ売却
2016年 データセンター向けの電源やスイッチ等を手掛けるNetwork Power事業を投資ファンドのプラチナムエクイティへ売却
2016年 制御弁に強いPentair Valves & Controlsを買収
2016年 コールドチェーンマネジメントに強いPakSense&Locus Traxxを買収
2018年 プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)に強いIntelligent PlatformsをGEから買収
2020年 IoTプロバイダーのProgea Groupを買収

 

イートン

Eaton(イートン)は、米国に本拠を置く油圧機器、自動車部品、無停電電源、避雷針、エンジン制御機器、火災報知器等を手がけるメーカーです。自動車部品分野ではトランスミッション等を手掛けています。低電圧機器事業にも強みを持ちます。

業界関連書籍
図解 消防設備の基礎
図解よくわかる 火災と消火・防火のメカニズム