液晶パネル業界の世界市場シェアの分析

液晶パネルメーカーの市場シェアと市場規模の情報です。大型液晶パネル分野ではサムスン・LGの韓国勢、ホンハイ・AUOの台湾勢に京東方科技(BOE)の中国勢の設備投資合戦が過熱しています。日本勢は中小液晶パネル分野のジャパンディスプレイです。有機ELパネルで日本勢の巻き返しが期待されます。

市場シェア

「液晶パネルメーカーの世界売上高ランキングの分析(2020年版)」に記載されている各社の売上高を分子に、市場規模を分母にして、2019年の液晶パネル業界の世界市場シェアを簡易に算出すると、1位はサムスンディスプレイの19.2%、2位はLGディスプレイ(LG Display)の14.5%、3位はBOE(京東方)の10.1%となります。

1位 サムスンディスプレイ 19.2%
2位 LGディスプレイ(LG Display) 14.5%
3位 BOE(京東方) 10.1%
4位 シャープ 8.0%
5位 友達光電(エーユー・オプトロニクス) 6.6%
6位 群創光電(イノラックス コーポレーション、AUO) 6.2%
7位 ジャパンディスプレイ 5.3%
8位 TIANMA【天馬微電子) 3.1%
9位 CSOT(China Star Optoelectronics Technology) 3.1%
10位 Hann Star Display(ハンスターディスプレイ) 0.4%

世界1位はサムスンディスプレイです。大型液晶パネルに強みを持ち、自社のテレビとの垂直統合モデルに加え、パネル自体の外販も行っています。2位は韓国のLGディスプレイです。大型の液晶パネル、有機ELでも業界首位を競っており、全方位外交が強みです。3位は中国のBOEです。第10.5世代の工場も稼働し、中国政府からの支援も背景に、大型と中小型の液晶パネルで攻勢をかけます。4位は日本のシェープです。ホンハイによる買収後も大きくシェアを落とさずにおります。同じくホンハイ傘下の台湾イノラックス連合で、更なる上位を狙います。5位、6位は台湾勢のAUOとイノラックスです。7位は経営再建中のジャパンディスプレイとなります。8位は中国のティエンマです。中小液晶と有機ELに特化し、中国政府からの支援で、多額の設備投資を行い、シェアを上昇させています。

業界では、マザーガラスの大型化によって生産効率を高め、製造コストを下げようとする動きが活発です。10.5世代(2940×3370mm)マザーガラスからは65インチのパネルを8面生産することが可能です。
液晶パネルの大きさは畳約5畳分の第10世代から、さらに大きい第10.5世代もしくは第11世代へと大型化しています。
今後の成長が見込まれる有機ELパネルでは韓国のサムスン電子が強いです。有機ELの重要な部材に発光材料がありますが、同分野ではサムスンに加え、出光興産、米国UDCが競う形です。

順位2012年2013年2014年2015年2016年
1位LGディスプレイLGディスプレイLGディスプレイLGディスプレイBOE
2位サムスンディスプレイサムスンディスプレイサムスンディスプレイサムスンディスプレイLGディスプレイ
3位フォックスコンフォックスコンフォックスコンフォックスコンAUO
4位AUOAUOAUOAUOフォックスコン
5位シャープシャープシャープBOEサムスンディスプレイ
大型液晶パネルランキング推移 ©業界再編の動向

2012年は大型液晶パネル業界では消耗戦が続いきました。特に日本勢から主導権を奪った韓国勢・台湾勢は、中国政府からの支援を受けて積極的な設備投資を行う中国勢とのし烈な価格競争に巻き込まれつつあります。2013年は大型液晶パネルの出荷数事態が減少しました。LGやサムスンは外販よりも自社向けのパネルに注力をしました。2012年と順位に大きな変動はありませんでした。2014年、2015年と出荷台数自体は堅調な伸びを示しました。一方、半ば採算度外視した形での8.5世代への大型投資をBOEを筆頭に中国勢が継続しました。シャープが経営資源を中小型液晶パネルへ集中させた結果、2015年にはBOEがトップ5位入りしました。2016年はBOEがモニターやパソコン向けで販売台数を伸ばし、LGディスプレーを抜き、世界首位に躍り出ました。

順位2012年2013年2014年2015年
1位ジャパンディスプレイジャパンディスプレイLGディスプレイジャパンディスプレイ
2位シャープシャープジャパンディスプレイLGディスプレイ
3位LGディスプレイLGディスプレイシャープシャープ
4位フォックスコンフォックスコンフォックスコンフォックスコン
5位CPTCPTCPTBOE
中小液晶パネルランキング推移 ©業界再編の動向

2012年はジャパン・ディスプレイとシャープが世界ランキング1位と2位の座をしっかり確保しました。高精細液晶が求められるスマホ向けの中小液晶は日本の技術力の高さが伺えます。一方従来型の携帯電話は台湾・中国勢が勢力を増しています。2013年はジャパン・ディスプレイとシャープが世界ランキング1位と2位の座をしっかり確保しました。大型液晶パネルに強い韓国勢や台湾勢も特に高付加価値のスマホ向け中小影響の強化を図ってきました。2014年はLGディスプレーが3位から一気に首位を奪取しました。スマホ向けの需要が伸び小型液晶分野での台湾・中国勢の設備投資が活発に行われました。日本のシャープは3位へと後退しました。2015年はジャパン・ディスプレイが首位に返り咲きました。シェープが4位のフォックスコン・ホンハイグループに買収され、LGディスプレイを抜く実質2位グループが誕生しました。また、台湾AUOを抜き第5位に中国政府からの強力なバックアップを得ているBOE(京東方)が登場しました。2016年はジャパン・ディスプレイが首位を維持しましたが、急速に進む有機ELシフトによって構造変革を迫られています。2位にはLGディスプレー、3位はシャープ、4位は10.5世代の工場も建設中のBOE(京東方)となっています。5位は同じく中国勢であるTIANMA(天馬微電子)が初のランクインです。日・中・韓・台がし烈な競争を繰り広げています。

市場規模

調査会社のモード―インテリジェンスによれば、2019年の液晶パネルの市場規模は1341億ドルです。今後年率平均4.2%で成長し、2024年に1719億ドルになると予測されます。

調査会社のインフォマテックによれば、2019年は284百万台のテレビ向け液晶パネルが出荷されています。出荷台数ベースではBOEが1位、韓国のLGディスプレイ、台湾のイノラックスと続きます。英オムディアによれば、大型液晶パネルの2019年の市場シェアは1位LGディスプレイ、2位BOE、3位AUO、4位イノラックス、5位サムスン、6位華星電子(CSOT)、7位シャープとなっています。
液晶はコモディティ化が急速に進展し、シェア上位のメーカーも赤字に陥っております。

液晶パネルの主要部材一覧

液晶パネルの主要部材は、カラーフィルター、バックライトユニット(導光板、反射フィルム、拡散フィルム、プリズムシート、冷陰極管等)、偏光板、ガラス基板、ドライバICで、各部材毎に専業メーカーが覇を競っています。

例えば、偏光板では日東電工が圧倒的に強く、カラーフィルムでは、大日本印刷、凸版印刷が印刷技術を活かして強いです。その他部材で強い会社は、配向膜(JSR,日産化学)、液晶(チッソ、DIC)、カラーレジスト(JSR)、位相差フィルム(富士フィルム、コニカミノルタ、日本ゼオン)などが挙げられます。

液晶パネル業界の有力企業一覧

Samsung (サムスン電子)

Samsung(サムスン電子)は、韓国を代表する総合家電メーカーです。スマホ、半導体、テレビ、白物家電など、最終商品まで手掛けていることが強みです。2016年に車載向けの音響に強いHarman Internationalを買収しています。スマートフォンの分野でも世界トップクラスです。NANDフラッシュメモリー、SSD、DRAMでも世界1位を長らく維持しています。通信基地局では、エリクソン、ノキア等の欧州勢、ファーウェイ等の中国勢を追い上げる立場にいます。液晶テレビでは長らく世界最大手の地位を維持しています。CMOSイメージセンサー分野では先行するソニーを追い上げています。プリンター事業はHPへ売却し撤退しました。

ファンドリ(半導体製造受託)分野にも積極的に投資を行い、台湾のTSMCを追い上げています。但し、サムソンへの製品の製造委託をすることは、最終製品も手掛けるサムスンへ技術が流出する懸念もあり、規模ではTSMCに劣っています。

液晶はサムスンディスプレーが担当しています。2012年にSamsung Mobile Display(サムスン・モバイル・ディスプレー)を吸収し、中小型から大型の液晶を製造・販売しています。テレビ向けが中心ですが、有機ELパネルの分野では、スマートフォン向け商品に強みを持ちます。江蘇省のCSOTとの液晶合弁事業の持分を売却し、大型液晶ディスプレーからの撤退を検討しております。

Samsung SDI(サムスンSDI)は、サムスンのグループ企業です。ノートPC、スマホの分野でのリチウムイオン電池に強みを持ちます。車載用のリチウムイオン電池は主にBMWに供給しています。車載用のリチウムイオン電池も強化をしており、主にBMWに供給しています。サムスン向けにフラットパネルや半導体向け部材も供給しております。
サムスンSDIの直近の売上高と営業利益率(括弧内)は以下の通りです。

2018年 9兆1582億ウォン(7.8%)
2019年 10兆974億ウォン(4.6%)

LGディスプレイ(LG Display)

LGグループは1952年にク・インフェ氏によって設立された韓国を代表する財閥グループです。1958年にLuckyとGoldStarが経営統合をして設立されました。電機事業、化学事業、通信事業が3本柱です。子会社は、家電メーカーのLGエレクトロニクス、電子部品の製造を手掛けるLGイノテック、液晶ディスプレイを手掛けるLGディスプレイ、総合化学メーカーのLG化学など多岐にわたります。

電機事業(LGエレクトロニクス):冷蔵庫等の白物家電業界では上位に位置しています。電子レンジや食洗機、スマートフォンや家庭用エアコン等を含む家電業界でも、フィリップスやハイアールと並び、世界上位に位置しています。テレビ製造や液晶パネル分野(LGディスプレイ)でも、サムスンと並び世界上位に位置しています。車載向け機器も手掛け、2018年にはオーストリアの自動車照明大手であるZKWを買収しました。

LGディスプレイ:韓国LGエレクトロニクス傘下の液晶メーカーです。サムスンディスプレイと双璧です。テレビ向け液晶に強みがあります。中小型液晶分野では日本の液晶メーカーとも競合しています。2008年まで蘭フィリップスと提携していました。テレビ向けの大型有機ELに強みを持ちます。

化学事業(LG化学):シリコンウエハ業界、偏光板業界やリチウムイオン電池業界では、日系企業と並び、世界トップクラスのシェアを維持しています。リチウムイオン電池にも注力をしており、スマートフォン向けや現代/起亜、ルノー向けの車載用に開発が進められています。

株主構成:創業ファミリーであるクー一族が、持株会社であるLGの株式を約50%保有しています。LGを通じて、LG化学、LGエレクトロニクス等のグループ会社の持分を保有し、緩やかなLGグループを構成ししています。

韓国企業モノづくりの衝撃~ヒュンダイ、サムスン、LG、SKテレコムの現場から~ (光文社新書)
有機ELに賭けろ! ―世界的権威が明かす日本企業がサムスンに勝つ方法
世界のスマートフォン&タブレット市場動向調査報告書2013 

ジャパンディスプレイ

日本の誇る中小液晶パネルメーカーです。中小液晶に特化しています。2012年にソニー、東芝と日立の液晶会社が統合して誕生しました。産業革新機構(INCJ)の出資を仰ぎ東証に上場を果たしています。スマホ向け画面の液晶から有機ELへのシフトに備え、2016年にソニーとパナソニックの有機EL事業を統合して誕生したJOLED(ジェイオーレッド)を子会社化しましたが、その後本体の再建のため株式を売却しています。

シャープ

日本を代表する家電メーカーです。液晶に強みを持ちます。2015年に経営再建を巡ってINCJと台湾フォックスコン・ホンハイが競いましたが、フォックスコン・ホンハイによる買収で合意しました。ホンハイは、液晶パネルのイノラックス、スマホ製造のフォックスコン(FIH)、Iotを行うフォックスコンインダストリアルネットワーク、亜太通信、スマホケースの鴻準を傘下におくコングロマリットです。

群創光電(Innolux、イノラックス コーポレーション)

EMS大手の台湾フォックスコン・テクノロジー・グループ(鴻海科技集團, Foxconn Technology Group)傘下の液晶メーカーです。旧奇美電子。

友達光電(AU Optronics、エーユー・オプトロニクス)

台湾の大手液晶メーカーです。パソコン大手のエイサー(Acer)グループのBenQ(ベンキュー)傘下にあります。テレビ向けの高精細品や中国シャオミ向けスマホパネルに強みを持ちます。

CPT(チュングワ・ピクチャー・チューブス、Chunghwa Picture Tubes、中華映管)
1971年創業の台湾の大手液晶メーカーです。台湾証券取引所に上場していましたが、2018年に民事再生手続きを申請しています。2019年9月に破産申請をしました。

Hann Star Display(ハンスターディスプレイ)
台湾の液晶メーカー。中小型に強みを持ちます。

BOE(京東方科技集団)

中国重慶の大手液晶パネルメーカーです。サムスン電子との取引が多いです。モニターやノートパソコン、タブレット向けの液晶パネルに強みを持ちます。第10.5世代の大型パネル工場(合肥)や武漢で工場を設営しました。有機ELにも注力しており、重慶に約8千億円の有機ELパネル工場の新設しています。

TIANMA【天馬微電子)

中国の液晶メーカーです。中小型液晶に強みを持ちます。液晶パネル工場新設等に向け5000億円級の投資を行っています。有機ELにも注力しています。

南京中電熊猫信息産業集団有限公司(CECパンダ)

中国の南京に本拠を置く南京市政府系電子機器メーカーです。傘下のCECパンダは2013年にシャープと提携しました。高精細液晶パネル向けを強化しています。BOEに液晶パネル工場を売却し、液晶分野を縮小しています。

CSOT(China Star Optoelectronics Technology)

中国家電大手TCL集団の子会社です。11世代の大型パネル工場新設に向け3000億円を投資しています。江蘇省のサムソンとの液晶合弁事業の持分を買収し、液晶分野を強化しております。

和輝光電(エバーディスプレイ)
中国に本拠を置く液晶メーカーです。有機ELに注力しています。

昆山 維 信 諾 顕 示技 術 有限公司(Kunshan Visionox Display)
中国の昆山市に本拠を置く有機EL開発会社です。昆山国顕光電とともに有機EL分野の事業拡大を図っています。

主要業界団体の一覧

  • 一般社団法人 日本半導体製造装置協会
  • Photonics Industry & Technology Development Association
  • 一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)

業界関連書籍

  • 10分で速習 液晶パネル業界 [Kindle版]
  • 斜陽の王国 サムスン―週刊東洋経済eビジネス新書No.135 [Kindle版]
  • 東アジア液晶パネル産業の発展: アジア後発企業の急速キャッチアップと日本企業の対応 [単行本]
  • 特許情報分析(パテントマップ)から見た「液晶パネル」 技術開発実態分析調査報告書 (特許情報調査分析シリーズ/業界企業別) [大型本]
  • よくわかる 液晶ディスプレイのできるまで―製造工程の流れを追って解説 [単行本]

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