液晶パネルと有機ELディスプレイ業界の世界市場シェアの分析

液晶パネル(LCD)と有機ELディスプレイ(OLED)業界の市場シェアと市場規模について分析をしています。液晶パネル分野では、中国の京東方科技(BOE)など中国勢による巨額の設備投資によって、サムスン・LGの韓国勢やホンハイ・AUOの台湾勢が劣勢です。日本勢は中小液晶パネル分野のジャパンディスプレイが再建途上です。有機ELディスプレイでも、先行する韓国勢に中国勢が追い上げを図ります。日本勢の巻き返しが期待されます。

液晶パネルと有機ELディスプレイ業界の世界市場シェア

ディスプレイ会社の2020年度の売上高(⇒参照したデータの詳細情報)を分子に、後述する市場規模を分母にして、2020年の液晶パネルと有機ELディスプレイ業界の世界市場シェアを簡易に算出すると、1位はサムスンディスプレイの18.7%、2位はLGディスプレイの15.5%、3位はBOE(京東方)の14.2%となります。

液晶パネルと有機ELディスプレイ会社の世界シェアと業界ランキング(2020年)

  • 1位 サムスンディスプレイ 18.7%
  • 2位 LGディスプレイ 15.5%
  • 3位 BOE(京東方) 14.2%
  • 4位 友達光電(AUO) 7.0%
  • 5位 群創光電(イノラック) 7.0%
  • 6位 TIANMA(天馬微電子) 3.1%
  • 7位 CSOT 2.9%
  • 8位 ジャパンディスプレイ 2.3%
  • 9位 堺ディスプレイプロダクト 0.7%
  • 10位 ハンスターディスプレイ 0.5%
  • 11位 シャープ 0.3%
  • 12位 エバーディスプレイ 0.3%

液晶及び有機ELディスプレイ会社の世界シェア(2020年)
液晶及び有機ELディスプレイ会社の世界シェア(2020年)

世界1位はサムスンディスプレイです。大型液晶パネルに強みを持ち、自社のテレビとの垂直統合モデルに加え、パネル自体の外販も行っています。中国の液晶パネル事業をCSOTに売却し、経営資源を有機ELへ集中しております。2位は韓国のLGディスプレイです。大型の液晶パネル、有機ELでも業界首位を競っており、全方位外交が強みです。有機ELへ経営資源を集中する方向です。3位は中国のBOEです。2015年以降急成長しました。中国合肥の第10.5世代の工場も稼働し、中国政府からの支援も背景に、大型と中小型の液晶パネルで攻勢をかけます。4位、5位は台湾勢のAUOとイノラックスです。イノラックスは9位の郭氏傘下の堺ディスプレイプロダクト、11位のシャープでホンハイ連合を組み中国勢との戦いに備えます。6位と7位は中国のTIANMAとCSOTです。中小液晶と有機ELに特化し、中国政府からの支援で、多額の設備投資を行い、採算度外視でシェアを上昇させています。8位は経営再建中のジャパンディスプレイとなります。

順位2012年2013年2014年2015年2016年
1位LGディスプレイLGディスプレイLGディスプレイLGディスプレイBOE
2位サムスンディスプレイサムスンディスプレイサムスンディスプレイサムスンディスプレイLGディスプレイ
3位フォックスコンフォックスコンフォックスコンフォックスコンAUO
4位AUOAUOAUOAUOフォックスコン
5位シャープシャープシャープBOEサムスンディスプレイ
大型液晶パネルランキング推移 ©業界再編の動向

2012年は大型液晶パネル業界では消耗戦が続いきました。特に日本勢から主導権を奪った韓国勢・台湾勢は、中国政府からの支援を受けて積極的な設備投資を行う中国勢とのし烈な価格競争に巻き込まれつつあります。2013年は大型液晶パネルの出荷数事態が減少しました。LGやサムスンは外販よりも自社向けのパネルに注力をしました。2012年と順位に大きな変動はありませんでした。2014年、2015年と出荷台数自体は堅調な伸びを示しました。一方、半ば採算度外視した形での8.5世代への大型投資をBOEを筆頭に中国勢が継続しました。シャープが経営資源を中小型液晶パネルへ集中させた結果、2015年にはBOEがトップ5位入りしました。2016年はBOEがモニターやパソコン向けで販売台数を伸ばし、LGディスプレーを抜き、世界首位に躍り出ました。

順位2012年2013年2014年2015年
1位ジャパンディスプレイジャパンディスプレイLGディスプレイジャパンディスプレイ
2位シャープシャープジャパンディスプレイLGディスプレイ
3位LGディスプレイLGディスプレイシャープシャープ
4位フォックスコンフォックスコンフォックスコンフォックスコン
5位CPTCPTCPTBOE
中小液晶パネルランキング推移 ©業界再編の動向

2012年はジャパン・ディスプレイとシャープが世界ランキング1位と2位の座をしっかり確保しました。高精細液晶が求められるスマホ向けの中小液晶は日本の技術力の高さが伺えます。一方従来型の携帯電話は台湾・中国勢が勢力を増しています。2013年はジャパン・ディスプレイとシャープが世界ランキング1位と2位の座をしっかり確保しました。大型液晶パネルに強い韓国勢や台湾勢も特に高付加価値のスマホ向け中小影響の強化を図ってきました。2014年はLGディスプレーが3位から一気に首位を奪取しました。スマホ向けの需要が伸び小型液晶分野での台湾・中国勢の設備投資が活発に行われました。日本のシャープは3位へと後退しました。2015年はジャパン・ディスプレイが首位に返り咲きました。シェープが4位のフォックスコン・ホンハイグループに買収され、LGディスプレイを抜く実質2位グループが誕生しました。また、台湾AUOを抜き第5位に中国政府からの強力なバックアップを得ているBOE(京東方)が登場しました。2016年はジャパン・ディスプレイが首位を維持しましたが、急速に進む有機ELシフトによって構造変革を迫られています。2位にはLGディスプレー、3位はシャープ、4位は10.5世代の工場も建設中のBOE(京東方)となっています。5位は同じく中国勢であるTIANMA(天馬微電子)が初のランクインです。日・中・韓・台がし烈な競争を繰り広げています。

市場規模

当サイトでは、各調査会社等の公表データを参考にし、液晶パネル及び有機ELディスプレイ業界の2020年の世界市場規模を1391億ドルとして市場シェアを計算しております。参照にしたデータは以下の通りです。調査会社のモードーインテリジェンスによれば、2020年の同業界の市場規模は1391億ドルです。今後年率平均4.2%で成長し、2026年に1782億ドルになると予測されます。⇒参照したデータの詳細情報
調査会社のインフォマテックによれば、2019年は284百万台のテレビ向け液晶パネルが出荷されています。出荷台数ベースではBOEが1位、韓国のLGディスプレイ、台湾のイノラックスと続きます。英オムディアによれば、大型液晶パネルの2019年の市場シェアは1位LGディスプレイ、2位BOE、3位AUO、4位イノラックス、5位サムスン、6位華星電子(CSOT)、7位シャープとなっています。
液晶はコモディティ化が急速に進展し、シェア上位のメーカーも赤字に陥っております。

液晶パネルと有機ELディスプレイの世代別主要工場

液晶及び有機ELディスプレイ業界では、マザーガラスの大型化によって生産効率を高め、製造コストを下げようとする動きが活発です。10.5世代(2940×3370mm)マザーガラスからは65インチのパネルを8面生産することが可能です。液晶パネルの大きさは畳約5畳分の第10世代から、さらに大きい第10.5世代もしくは第11世代(3350×3950mm)へと大型化しています。2021年には中国のBOEやCSOTが第10.5世代の量産体制に移行しています。
今後の成長が見込まれる有機ELパネルでは韓国のサムスンディスプレイやLGディスプレイが強いです。

液晶パネルの世代別の生産拠点一覧

液晶パネルの世代別生産拠点の一覧
液晶パネルの世代別生産拠点の一覧

有機ELディスプレイの世代別の生産拠点一覧

有機ELディスプレイの世代別生産拠点の一覧
有機ELディスプレイの世代別生産拠点の一覧

液晶パネルと有機ELの主要部材一覧

液晶パネルの主要部材は、カラーフィルター、バックライトユニット(導光板、反射フィルム、拡散フィルム、プリズムシート、冷陰極管等)、偏光板、ガラス基板、ドライバICで、各部材毎に専業メーカーが覇を競っています。
例えば、偏光板では日東電工が圧倒的に強く、カラーフィルムでは、大日本印刷、凸版印刷が印刷技術を活かして強いです。その他部材で強い会社は、配向膜(JSR,日産化学)、液晶(チッソ、DIC)、カラーレジスト(JSR)、位相差フィルム(富士フィルム、コニカミノルタ、日本ゼオン)などが挙げられます。
有機ELの重要な部材に発光材料がありますが、同分野ではサムスンに加え、出光興産、米国UDCが競う形です。

さらに業界に詳しくなるためのお薦め関連書籍と業界団体

書籍
10分で速習 液晶パネル業界
東アジア液晶パネル産業の発展
「液晶パネル」 技術開発実態分析調査報告書
液晶: 基礎から最新の科学とディスプレイテクノロジーまで

主要業界団体の一覧
一般社団法人 日本半導体製造装置協会
Photonics Industry & Technology Development Association
一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)

大手メーカーの概要と動向

Samsung (サムスン電子)

Samsung(サムスン電子)は、韓国を代表する総合電機メーカーです。スマホ、半導体、テレビ、白物家電など、最終商品まで手掛けていることが強みです。垂直統合型の半導体チップメーカーとして、DRAM、NAND型フラッシュメモリ、SSDの自社製造を手掛けています。また半導体受託生産も行っております。最終製品のスマホやテレビにも強みを持ちます。OLEDや液晶パネルの製造はサムスンディスプレイ、リチウムイオン電池はサムスンSDI、電子部品はサムスン電気、造船はサムスン重工、バイオ製薬の製造はサムスンバイオロジックスで手掛けています。2016年には車載音響機器大手のハーマンを買収しました。さらに詳しく

LGディスプレイ(LG Display)

LGグループは1952年にク・インフェ氏によって設立された韓国を代表する財閥グループです。1958年にLuckyとGoldStarが経営統合をして設立されました。電機事業、化学事業、通信事業が3本柱です。子会社は、家電メーカーのLGエレクトロニクス、電子部品の製造を手掛けるLGイノテック、液晶ディスプレイを手掛けるLGディスプレイ、総合化学メーカーのLG化学など多岐にわたります。さらに詳しく

ジャパンディスプレイ

日本の誇る中小液晶パネルメーカーです。中小液晶に特化しています。2012年にソニー、東芝と日立の液晶会社が統合して誕生しました。産業革新機構(INCJ)の出資を仰ぎ東証に上場を果たしています。スマホ向け画面の液晶から有機ELへのシフトに備え、2016年にソニーとパナソニックの有機EL事業を統合して誕生したJOLED(ジェイオーレッド)の子会社化を発表しましたが、その後本体の再建のため株式をINCJに売却しています。

JOLEDについて
2015年に設立された印刷方式の有機ELディスプレイに強みを持つ会社です。LGディスプレイの白色蒸着方式、サムスンのRGB蒸着方式と異なる技術基盤を持ちます。政府系ファンドであるINCJが主導しています。2020年に液晶パネル大手の中国CSOTと資本提携をしました。

シャープ

日本を代表する家電メーカーです。液晶に強みを持ちます。2015年に経営再建を巡ってINCJと台湾フォックスコン・ホンハイが競いましたが、フォックスコン・ホンハイによる買収で合意しました。ホンハイは、液晶パネルのイノラックス、スマホ製造のフォックスコン(FIH)、Iotを行うフォックスコンインダストリアルネットワーク、亜太通信、スマホケースの鴻準を傘下におくコングロマリットです。

堺ディスプレイプロダクト

2009年にシャープとソニーの液晶パネル製造の合弁会社として設立されました。現在はホンハイの創業者である郭台銘氏の投資会社SIO Internationalが過半の株式を保有しています。

群創光電(Innolux、イノラックス コーポレーション)

EMS大手の台湾フォックスコン・テクノロジー・グループ(鴻海科技集團, Foxconn Technology Group)傘下の液晶メーカーです。旧奇美電子。

友達光電(AU Optronics、エーユー・オプトロニクス)

台湾の大手液晶メーカーです。パソコン大手のエイサー(Acer)グループのBenQ(ベンキュー)傘下にあります。テレビ向けの高精細品や中国シャオミ向けスマホパネルに強みを持ちます。

Hann Star Display(ハンスターディスプレイ)

1998年に設立された台湾の液晶ディスプレイメーカーです。中小型に強みを持ちます。

BOE(京東方科技集団)

中国重慶の大手液晶パネルメーカーです。サムスン電子との取引が多いです。モニターやノートパソコン、タブレット向けの液晶パネルに強みを持ちます。第10.5世代の大型パネル工場(合肥)や武漢で工場を設営しました。有機ELにも注力しており、重慶に約8千億円の有機ELパネル工場の新設をしています。

南京中電熊猫信息産業集団有限公司(CECパンダ)
中国の南京に本拠を置く南京市政府系電子機器メーカーです。傘下のCECパンダは2013年にシャープと提携しました。高精細液晶パネル向けを強化しています。BOEに液晶パネル工場を売却し、液晶分野を縮小しています。

TIANMA【天馬微電子)

中国の液晶メーカーです。中小型液晶に強みを持ちます。液晶パネル工場新設等に向け5000億円級の投資を行っています。有機ELにも注力しています。

CSOT(China Star Optoelectronics Technology)

2009年に設立された中国家電大手TCL集団の子会社です。11世代の大型パネル工場新設に向け3000億円を投資しています。江蘇省のサムスン電子との液晶合弁事業の持ち分を買収し、液晶分野を強化しております。

EverDisplay(エバーディスプレイ、和輝光電)

中国に本拠を置く有機ELメーカーです。有機ELに注力しています。

Kunshan Visionox Display(ビジオノックス、昆山 維 信 諾 顕 示技 術 有限公司)

中国の昆山市に本拠を置く有機EL開発会社です。昆山国顕光電とともに有機EL分野の事業拡大を図っています。

CPT(チュングワ・ピクチャー・チューブス、Chunghwa Picture Tubes、中華映管)
1971年創業の台湾の大手液晶メーカーです。台湾証券取引所に上場していましたが、2018年に民事再生手続きを申請しています。2019年9月に破産申請をしました。

参照したデータの詳細情報について


このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。
会員の方はログイン下さい。
会員登録はこちらです。