DRAM業界の市場シェアと市場規模について分析をしています。業界の有力なプレーヤーであるサムソン、SKハイニックス、マイクロン、南亜科技の動向についても記載しております。
市場シェア
調査会社のトレンドフォースによれば、2020年第2四半期の売上高ベースのDRAM市場シェアは以下の通りとなります。
- 1位 サムスン 43%
- 2位 SKハイニックス 30%
- 3位 マイクロン 21%
- 4位 南亜 3%
サムソン、SKハイニックス、マイクロンでほぼ市場の9割を占める寡占市場と言えます。DRAMメーカーの世界シェア・ランキングによればDRAMメーカーの世界シェア1位も、韓国のサムスン電子となっています。2位には韓国のSKハイニックス、3位には米マイクロンテクノロジー、4位は台湾の南亜科技となっています。
DRAMモジュール工程
DRAMを含む、メモリチップの製造工程は、チップ製造を行う前工程と、組み立てやテストを行う後工程、即ちモジュール工程に、分かれています。Samsung Electronics(サムスン電子) やSKハイニックス等のメーカーは前工程に注力し、モジュール工程は、後工程専業メーカーが行っています。キングストン・テクノロジーはモジュール工程の大手の1社です。1990年代に日本のソフトバンクが出資を行ったこともある、専業メーカーとして、2位以下を大きく引き離し、世界最大手です。台湾のエーデータ・テクノロジーも大手です。サイモン・チェン氏によって1991年に設立されて以来、急成長を遂げました。中国のラマクセルです。1997年の設立です。チップメーカーでもあるマイクロンも大手です。
市場規模
調査会社のヴェリファイドマーケットリサーチによれば、2019年のDRAM業界の世界市場規模は458億ドルです。2020〜2027年の成長率は0.86%を見込みます。DRAM分野では、IoTの進展によって、テレビ等の家電や自動車といった、従来のパソコン周辺分野以外からの需要が高まっています。
業界再編
- 1998年:マイクロンテクノロジーが米テキサス・インストラメンツのDRAM事業を買収
- 1999年:日立とNECのDRAM事業が統合してエルピーダメモリが誕生
- 2002年:マイクロンテクノロジーが東芝のDRAM事業を買収
- 2003年:エルピーダメモリが三菱電機のDRAM事業を買収
- 2013年:マイクロンテクノロジーが経営破たんしたエルピーダ・メモリを買収
- 2015年:ウェスタンデジタルがサンディスクを買収
世界の主要なDRAMメーカー
サムスン電子
Samsung(サムスン電子)は、韓国を代表する総合家電メーカーです。スマホ、半導体、テレビ、白物家電など、最終商品まで手掛けていることが強みです。垂直統合型の半導体チップメーカーとして、DRAM、NANDフラッシュメモリ、SSDの自社製造を手掛けています。最終製品のスマホやテレビにも強みを持ちます。OLEDや液晶パネルの製造はサムスンディスプレイ、リチウムイオン電池はサムスンSDI、電子部品はサムスン電気、造船はサムスン重工、バイオ製薬の製造はサムスンバイオロジックスで手掛けています。2016年には車載音響機器大手のハーマンを買収しました。
Micron (マイクロン)
1978年に創業された米国を代表するメモリーメーカーです。DRAMでは日本のエルピーダメモリーを買収し世界最大手級となりました。NAND型フラッシュメモリーでも上位陣を追撃しています。中国の紫光集団(チンファ・ユニグループ(Tsinghua Unigroup))が買収提案を検討したこともありました。
SK Hynix(SKハイニックス)
韓国の大手半導体メーカーです。2001年に韓国政府による公的管理を経て現在は通信大手のSKテレコム傘下となりました。NAND型フラッシュメモリやDRAMでサムスンと競合しています。2020年に90億ドルでインテルからNANDメモリとSSD事業を買収することに合意しました。またSKハイニックはキオクシアが上場をすると同社の15%を取得することができます。キオクシア、SK連合は、独走するサムスンに比肩する大きさとなります。2020年12月に同社はNANDの積層化において176層商品を発表しました。128層よりも効率的にデータ保存ができます。
SKグループとは
SKグループは、1953年に設立された韓国第3位の財閥グループです。崔泰源会長の強いリーダーシップの下でM&Aを通じて事業を拡大しています。半導体(SKハイニックス)、石油・電池(SKイノベーション)、通信(SKテレコム)、医薬品(SKバイオファーム)、医薬品受託(SKバイオサイエンス)、半導体素材(SKシルトロン)等の分野に強みがあります。2021年には、米国の燃料電池メーカーのプラグパワーに出資をし、水素プラントへの進出をしています。

SKグループ一覧
©ディールラボ
南亜科技(Nanya Technology Corporation)
台湾に本拠を置くコングロマリット企業の台塑集團(旧・台湾プラスチック、Formosa Plastics Group、FPG)の一角を担うDRAM・メモリーメーカーです。マイクロンとの合弁の華亜科技(イノテラ・メモリーズ)の株式はマイクロンに売却しています。
その他主要なDRAMメーカー
台湾華邦電子(Winbond Electronics Corporation、ウィボンドエレクトロニクス)
台湾に本拠を置く半導体メーカーです。集積回路に強みを持ちます。DRAM分野でも上位を狙っています。
Kingston(キングストン・テクノロジー)
米国に本拠を置く独立系メモリーモジュールメーカーです。DRAMモジュール以外にも、SSD、USBドライブ、フラッシュカード等を手掛けています。
ADATA(エーデータ・テクノロジー)
台湾のDRAMモジュールメーカーです。
ラマクセル(Ramaxel)
中国のシンセンに本拠を置くDRAMモジュールメーカーです。2001年の創業です。
中国のDRAMメーカーには、福建省晋華集成電路(JHICC)やドイツのキマンダの技術を採用している長鑫存儲技術(CXMT)がありますが、量産化に苦戦しています。