富士フイルムの市場シェア・業績推移・売上構成・株価の分析


富士フイルムは、1934年に大日本セルロイドの写真フイルム事業がスピンオフして誕生した会社です。
写真フイルムでは長らく世界最大級の会社でしたが、カメラのデジタル化やスマホ化の進展に伴い、独自技術を転用・発展させた「ヘルスケア」「エレクトロニクス」「ビジネスイノベーション」「イメージング」の4つの領域へ事業構造を大胆に転換しています。
デジタルカメラ事業では、需要が拡大するミラーレスシステム(「Xシリーズ」「GFXシリーズ」)の拡充や、世界的なヒットを続ける「チェキ(instax)」をはじめとするインスタントフォトシステムに注力しています。
かつての世界を席巻した写真フイルムという成功の罠にはまらず、バイオCDMOや半導体材料といった成長領域への巨額投資を通じて持続的な事業構造転換を果たしている姿は、大企業の成長戦略・ポートフォリオ変革の成功事例として数多くケーススタディ化されています。

業績推移(年次)
2021年度(2022年3月期)
売上高は2兆5,258億円(前年度比 15.20%増)となり、二桁の増収を記録しました。メディカルシステム事業、バイオCDMO事業、ライフサイエンス事業、電子材料事業等が好調で売上を大きく伸ばしました。営業利益率は 9.09%となりました。

2022年度(2023年3月期)
売上高は2兆8,590億円(前年度比 13.19%増)となりました。メディカルシステム、電子材料、ビジネスイノベーション、イメージングの各セグメントが揃って堅調に推移し、業績を押し上げました。営業利益率は9.55%となりました。

2023年度(2024年3月期)
売上高は2兆9,609億円(前年度比 3.56%増)となりました。チェキやミラーレスデジタルカメラが世界的に大ヒットしたイメージング事業や、医療IT・内視鏡が伸びたメディカルシステム事業が全体の成長を牽引しました。営業利益率は9.35%となりました。

2024年度(2025年3月期)
売上高は3兆1,958億円(前年度比 7.93%増)となり、ついに3兆円の大台を突破しました。半導体材料事業(Entegris社プロセスケミカル事業の買収完了効果含む)や、絶好調が続くイメージング事業が大幅な増収増益をもたらしました。営業利益率は10.33%と、初の10%台へ突入しました。

2025年度(2026年3月期)
売上高は3兆3,570億円(前年度比 5.04%増)を達成し、過去最高を連続更新しています。マテリアルズ(エレクトロニクス)の回復と、プロフェッショナル向けカメラ機材を含むイメージングの圧倒的な収益力が利益率を高水準に維持しています。営業利益率は引き続き、10%台をキープし、10.43%となりました。

富士フイルムの業績推移

富士フイルムの業績推移

業績推移(四半期)
2025年3月期 第1四半期(2024年4月〜6月)
売上高は7,490億円(前年同期比 13.36%増)、営業利益は622億円(前年同期比 19.10%増)、営業利益率は8.30%となりました。
メディカルシステムやバイオCDMOを含むヘルスケア事業に加え、半導体材料やディスプレイ材料等のエレクトロニクス事業が好調に推移。さらに、イメージング事業におけるミラーレスカメラや「チェキ(instax)」の世界的な販売拡大が大きく寄与し、全セグメントの増収により大幅な増益となりました。

2025年3月期 第2四半期(2024年7月〜9月)
売上高は8,233億円(前年同期比 3.59%減)、営業利益は963億円(前年同期比 15.48%増)、営業利益率は11.70%に上昇しました。
ビジネスイノベーション事業の一部見直しや為替影響等により売上高は微減となったものの、高付加価値製品の販売構成差(ミックス改善)や、イメージング事業(チェキおよびデジタルカメラ)の堅調な販売、コスト効率化の進展により収益性が大きく向上し、営業利益は二桁増を達成しました。

2025年3月期 第3四半期(2024年10月〜12月)
売上高は7,552億円(前年同期比 17.87%増)、営業利益は648億円(前年同期比 6.53%減)、営業利益率は8.56%となりました。
年末商戦に向けたコンシューマーイメージング(チェキ等)の需要をとらえて売上高は二桁増を記録しました。一方で、バイオCDMOにおける生産体制強化に向けた先行費用(減価償却費・稼働前費用など)の増加が影響し、利益面では前年同期を下回る形となりました。

2025年3月期 第4四半期(2025年1月〜3月)
売上高は1兆295億円(前年同期比 1.05%減)、営業利益は1,269億円(前年同期比 1.36%増)、営業利益率は当期最高の12.33%に達しました。
年度末に向けたメディカルシステム(内視鏡や医療IT等)の納品・検収集中に加え、エレクトロニクス分野の先端材料やイメージング製品の販売が通期の収益を力強く牽引し、四半期を通じて高水準の利益を確保して過去最高益の達成に貢献しました。

2026年3月期 第1四半期(2025年4月〜6月)
売上高は7,495億円(前年同期比 0.06%増)とほぼ横ばいながら、営業利益は753億円(前年同期比 21.06%増)と大幅増益を達成。営業利益率は10.05%へと改善しました。
一部市場におけるディスプレイ材料等の動向はあったものの、AI半導体向けをはじめとする先端半導体材料や、高付加価値なミラーレスカメラ・チェキの販売が好調を維持。収益性の高い製品群へのシフトが進んだことで、増益を大きく果たす四半期となりました。

四半期の営業利益率が上下する要因
富士フイルムの営業利益率が四半期ごとに変動するのは、「医療機器やオフィス機器の年度末(Q4)への検収集中」というBtoBビジネス特有のサイクルのほか、「半導体材料やカメラなど高利益率製品の売れ行きによる製品ミックスの変化」、そして「未来の成長に向けたバイオCDMOなどの先行投資・コスト計上のタイミング」が四半期ごとに異なるためです。

富士フイルムの四半期業績推移

富士フイルムの四半期業績推移

EPS・配当額・配当性向の推移
希薄化後EPSは前年度比5.99%増の229.65円になりました。1株当たりの配当は前年度比7.69%増の70円になりました。配当性向は30.48%になりました。

富士フイルムのEPS・1株配当・配当性向の推移

富士フイルムのEPS・1株配当の推移
※2024年4月1日付で1株につき3株の割合で株式分割を実施

業績予想
2026年度通期(2027年3月期)の業績は、堅調な上半期業績と規律あるコスト削減策の実施に支えられ、増益・収益性改善の見通しです。

2026年度通期の業績は、半導体材料を中心としたエレクトロニクス分野や、世界的な需要拡大が続くイメージング分野(デジタルカメラ等)の力強い成長に支えられ、売上高・各段階利益ともに過去最高益の更新を見込んでいます。

売上高: 3兆5,600億円(前期比 +6.0%)

営業利益率: 約10.3%(営業利益:3,650億円、前期比 +4.2%)

当社株主に帰属する通期純利益: 2,800億円(前期比 +1.2%)

株主還元・年間配当(見通し): 1株当たり70円(16期連続の増配を予定)

売上構成
セグメントは、ヘルスケア、ビジネスイノベーション、イメージング、エレクトロニクスに分類されます。セグメント別の売り上げ構成は以下の通りです。

富士フイルムのセグメント別売上構成(2025年度)

富士フイルムのセグメント別売上構成

ヘルスケア
医療ITや診断機器を扱う「メディカルシステム」、抗体医薬品や遺伝子治療薬等の開発・製造を担う「バイオCDMO」、iPS細胞や培地・化粧品を扱う「LS(ライフサイエンス)ソリューション」を展開しています。

営業利益(2026年3月期): 636億円(前年同期比 △20.3%)
セグメント利益内の構成比: 約16.4%

エレクトロニクス
最先端の半導体製造用材料(フォトレジストやCMPスラリー等)を提供する「半導体材料」、液晶・OLEDパネル向け材料やタッチパネル用センサーなどを扱う「AF材料」を展開しています。

業利益(2026年3月期): 1,009億円(前年同期比 +34.4%)
セグメント利益内の構成比: 約26.0%

ビジネスイノベーション
複合機・プリンターの販売や保守サービスを行う「オフィスソリューション」、企業の課題解決を支援する「ビジネスソリューション」、およびオフセット印刷やデジタル印刷システムを扱う「グラフィックコミュニケーション」を展開しています。

営業利益(2026年3月期): 637億円(前年同期比 △14.6%)
セグメント利益内の構成比: 約16.4%

イメージング
「チェキ(instax)」やカラーフイルム、写真プリント等の「コンシューマーイメージング」に加え、ミラーレスデジタルカメラや放送用・産業用レンズを扱う「プロフェッショナルイメージング」を展開しています。

営業利益(2026年3月期): 1,600億円(前年同期比 +14.9%)
セグメント利益内の構成比: 約41.2%

M&A情報


2015年 iPS細胞製造大手米セルラーを買収
2017年 和光純薬を武田薬品工業から買収
2018年 ENEOSから細胞培地事業を買収
2019年 ドイツ内視鏡処置具メーカー medwork(メドワーク)を買収
2019年 バイオ医薬品大手バイオジェン社のCDMO子会社を買収
2019年 豪州のオフィスITサービス企業CSG社を買収
2019年 富士ゼロックスを100%子会社化
2019年 日立製作所の画像診断関連事業を買収
2020年 米国の半導体材料メーカーEntegris, Inc.(本社:米国マサチューセッツ州 以下、Entegris社)の半導体用プロセスケミカル事業を買収することを発表
2021年 ヘルスケア領域のさらなる事業拡大に向けて、株式会社日立製作所の画像診断関連事業を買収することを発表
2022年 米国バイオベンチャーAtara Biotherapeutics(アタラ バイオセラピューティクス), Inc.(米国カリフォルニア州、以下Atara社)の細胞治療薬製造拠点を買収することを発表
2022年 米国子会社で培地のリーディングカンパニーであるFUJIFILM Irvine Scientific(フジフイルム アーバイン サイエンティフィック), Inc.を通じて、細胞の増殖・分化・機能発現を促進するサイトカインの開発・製造・販売を行う米国バイオテック企業Shenandoah Biotechnology(シェナンドーア バイオテクノロジー), Inc.(本社:ペンシルバニア州、以下シェナンドーア社)を買収することを発表
2022年 米国バイオベンチャーAtara Biotherapeutics(アタラ バイオセラピューティクス), Inc.(米国カリフォルニア州、以下Atara社)の細胞治療薬製造拠点の買収手続きを完了
2022年 欧州におけるインクジェットビジネスをさらに拡大するため、インクジェットシステムのカスタマイズ提供を強みとする、欧州の有力システムインテグレーターUNIGRAPHICA AG(本社:リヒテンシュタイン公国、以下 ユニグラフィカ社)を買収することを発表
2022年 デジタル病理診断用ソフトウェアなどの開発・販売を行っている、Inspirata(インスピラータ), Inc.(本社:米国フロリダ州タンパ、以下Inspirata社)のデジタル病理部門を買収することを発表
2023年 基幹システムの販売・導入支援事業のさらなる成長加速に向けて、ITサービス企業MicroChannel Services Pty. Limited(本社:オーストラリア シドニー、以下MicroChannel社)とそのグループ会社の株式を取得することを発表
2023年 米国の半導体材料メーカーEntegris, Inc.(本社:米国マサチューセッツ州 以下、Entegris社)の半導体用プロセスケミカル事業の買収手続きを完了
2025年 株式会社パシフィックビジネスコンサルティング(PBC社)を買収

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