住友化学の市場シェア・業績推移・売上構成・株価の分析

住友化学は、1913年に別子銅山の煙害解消のために銅鉱石中の硫黄を取り出して肥料を製造する住友肥料製造所として設立されました。現在は、エッセンシャルケミカルズ、エネルギー・機能材料、情報電子化学、健康・農業関連事業、医薬品の5事業分野にわたる日本の総合化学メーカーです。サウジ・アラムコと組んで世界最大級の石油コンビナート(ラービグプロジェクト)を運営しています。機能性化学の分野では、偏光板で日東電工と並び、世界大手の1角となっています。また、メチオニンにも強みがあります。農薬の分野では、バイエル、BASF、コルテバ、シンジェンタのビッグ4に次ぐ準大手のポジションです。アクリル樹脂原料(MMA)は三菱ケミカルと双璧です。持分法子会社の住友精化で高吸水性樹脂事業を行っています。
セグメント毎の事業内容は⑤売上構成をご参照ください。

①業績推移(年次)

2022年度
売上高は2,895,283百万円で、前年度比5%増となりました。営業利益は30,984百万円の赤字になりました。売上収益は、主にエッセンシャルケミカルズやエネルギー・機能材料において市況が上昇しました。また、健康・農業関連事業において南米での農薬の販売が増加し、各セグメントにおいては円安による在外子会社の邦貨換算差の影響がありました。一方で、エッセンシャルケミカルズやエネルギー・機能材料における需要減少、情報電 子における巣ごもり需要の一巡や医薬品におけるラツーダ(非定型抗精神病薬)の米国での独占販売期間終了の影響により出荷が減少しました。営業利益は、農薬の販売が好調であった健康・農業関連事業を除くすべてのセグメントで損益が悪化しまし た。中でもエッセンシャルケミカルズにおいては住友化学と住友化学とサウジアラビアの国営石油会社、サウジアラムコが37.5パーセントずつを出資する合弁事業であるペトロ・ラービグ社の業績の悪化に加え、原料価格上昇に伴う交易条件の悪化の影響がありました。また、医薬品においてはラツーダの販売減少や前期の提携一時金の収益計上に 加え、邦貨換算差等による販売費及び一般管理費の増加や国内での薬価改定の影響がありました。

2021年度
売上高は2,765,321百万円で、前年度比21%増となりました。営業利益は215,003百万円になりました。営業利益率は8%になりました。売上収益は、主に石油化学において市況が上昇しました。前連結会計年度は、持分法適用会社であるペトロ・ラ ービグ社の定期修繕による石油化学での出荷減少の影響に加え、新型コロナウイルス感染症拡大により石油化学お よびエネルギー・機能材料において自動車用途を中心に出荷が低調でしたが、需要の回復が見られました。さらに、 情報電子化学や健康・農業関連事業においても出荷が堅調に推移しました。また、医薬品において、大塚製薬株式 会社との共同開発・販売提携契約による一時金の計上や、新規品目の販売開始がありました。営業利益は、石油化学において市況が上昇したことに加え、前連結会計年度の持分法適用会社であるペト ロ・ラービグ社の定期修繕による影響や新型コロナウイルス感染症拡大の影響からの回復により出荷が増加しまし た。また、情報電子化学において、前連結会計年度から続いた巣ごもり需要、在宅勤務需要等を背景に出荷が堅調 に推移しました。さらに、健康・農業関連事業においても、農薬の出荷増加やメチオニン(飼料添加物)の交易条 件の改善が見られました。一方、医薬品においては、共同開発・販売提携契約による一時金を計上したものの、新規品目にかかる販売費及び一般管理費が増加しました。

2020年度
売上高は2,286,978百万円で、前年度比3%増となりました。営業利益は137,115百万円になりました。営業利益率は6%になりました。売上収益は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響に伴う経済活動の落ち込みにより、石油化学およびエネルギ ー・機能材料において自動車関連用途を中心に出荷が減少したことに加え、石油化学における原料価格の下落に伴 う市況下落の影響等がありましたが、健康・農業関連事業、情報電子化学および医薬品において出荷が増加しました。営業利益は、石油化学およびエネルギー・機能材料において自動車関連用途を中心に出荷が減少したことに 加え、持分法適用会社であるペトロ・ラービグ社の定期修繕や医薬品における販売費及び一般管理費や研究開発費 の増加の影響がありました。一方、医薬品、情報電子化学および健康・農業関連事業の出荷が増加した結果、前年度に比べて約15,000百万円の増益となりました。

2019年度
売上高は2,225,804百万円で、前年度比4%減となりました。営業利益は137,517百万円になりました。営業利益率は6%になりました。売上収益は、出荷が増加しましたが、市況下落の影響や為替レートが円高で推移したことにより減収となりました。営業利益は、石油化学の石油化学品やメタアクリルなどの交易条件の悪化、健康・農業関連事業のメチオニン(飼料添加物)市況の下落や農薬の北米における天候不順の影響がありました。また、医薬品においてはラツーダ(非定型抗精神病薬)の販売が伸長したものの、ロイバント社との戦略的提携に伴い、新たに取得したスミトバントバイオファーマリミテッドおよび傘下の子会社で発生した費用が認識されたことから、販売費及び一般管理費ならびに研究開発費が増加しました。さらに、新型コロナウイルス感染症の発生により、中国を中心に経済環境が大きく悪化し、石油化学の製品市況や情報電子化学の出荷に影響を与えました。以上の結果、前年度と比較して減益となりました。

2018年度
売上高は2,318,572百万円で、前年度比6%増となりました。営業利益は182,972百万円になりました。営業利益率は8%になりました。売上収益は、事業拡大に伴う数量増の影響が最も大きく、また原料価格上昇に伴う売価上昇による影響もあり前年度比で増収となりました。営業利益は、石油化学のペトロケミカル コーポレーション オブ シンガポール(プライベート)リミテ ッドやラービグ リファイニング アンド ペトロケミカル カンパニーの持分法投資損益の悪化、千葉工場やシ ンガポールでの定期修繕による影響に加えて、健康・農業関連事業の北米での天候不順による出荷減少やメチオニンの交易条件の悪化、医薬品の国内における薬価改定や前連結会計年度の一時的な事業譲渡益の計上による影響などにより、前年度比で減益となりました。

住友化学の業績推移

住友化学の業績推移

②業績推移(四半期)

住友化学の四半期業績推移

住友化学の四半期業績推移

③EPS・配当額・配当性向の推移

希薄化後EPSは前年度比96%減の4.27円になりました。1株当たりの配当は前年度比25%減の18円になりました。配当性向は422%になりました。

住友化学のEPS・1株配当・配当性向の推移

住友化学のEPS・1株配当・配当性向の推移

④業績予想

2023年11月
2023年第二四半期の決算短信において、2023年度通期の売上収益は2,700,000百万円、営業利益は125,000百万円の赤字を予定していると掲載されています。

⑤売上構成


住友化学の2021年度売上構成

住友化学の2021年度売上構成

エッセンシャルケミカルズ:
合成樹脂、合成繊維原料、各種工業薬品、メタアクリル、合成樹脂加工製品等の製造・販売を行っております。事業のグローバル競争力強化のために、ポリマーを作る基となる分子であるモノマー製品の触媒・プロセスの改良、合成樹脂の製造プロセスの改良、既存素材の高性能化や新規高付加価値製品の開発に取り組む一方で、環境負荷低減に資する資源循環技術の確立に注力しております。

エネルギー機能材料:
アルミナ製品、アルミニウム、化成品、添加剤、合成ゴム、エンジニアリングプラスチックス、電池部材等の製造・販売を行っております。エネルギー・機能材料分野では、環境・エネルギー関連事業を拡大させるため、リチウムイオン二次電池用部材、スーパーエンジニアリングプラスチックス、無機材料、機能性樹脂材料等の幅広い製品領域で、既存製品の競争力強化や新規製品創出に向けた研究開発に取り組んでおります。

情報電子化学:
光学製品、半導体プロセス材料、化合物半導体材料、タッチセンサーパネル等の製造・販売を行っております。日本国内に留まらずグローバルな技術・研究開発能力を結集し、IT関連の先端技術進化を支える新規材料・部材・デバイスに関する新製品の開発に、引き続き積極的に取り組んでおります。

健康・農業関連事業:
農薬、肥料、農業資材、家庭用・防疫用殺虫剤、熱帯感染症対策資材、飼料添加物、医薬品原薬・中間体等の製造・販売を行っております。健康・農業関連事業分野では、世界の食糧増産、健康・衛生や環境の改善といった課題解決を通じてサステナブルな社会の実現に貢献するため、環境負荷低減効果を重視した技術による新製品やアプリケーション、競争力のある製造プロセスの開発を加速化し、コア事業のさらなる強化と周辺事業の拡大に取り組んでおります。

医薬品:
硫酸、過酸化水素水、アンモニア水など

健康・農業:
農薬(殺虫剤、除草剤、殺菌剤)、肥料、農業資材、家庭用・防疫用殺虫剤、熱帯感染症対策資材、飼料添加物(メチオニン)、医薬化学品などの製造販売

農薬事業は、2016年にインドの農薬メーカー第5位のエクセル・クロップ・ケアを買収するなど世界展開に積極的です。エクセル社は特許切れの除草剤や殺虫剤に強みを持ちます。
メチオニンは稼ぎ頭の商品で、愛媛工場で生産を行っています。2016年には、年産15万トンに加え約10万トンの増産計画を発表したものの、各社が増産をした結果市況が悪化し、2019年に1割程度の生産能力の削減を行いしました。

バイオラショナル:
天然物由来などの微生物農薬、植物生長調整剤、根圏微生物資材などの製造販売

医薬品:
医療用医薬品、放射性診断薬等の製造・販売を行っております。医薬品分野では、精神神経領域、がん領域および再生・細胞医薬分野を重点領域として、住友ファーマおよび日本メジフィジックス株式会社における自社研究に加え、技術導入、スタートアップ企業やアカデミアとの共同研究等、様々な方法で最先端の技術を取り入れた研究開発活動を推進し、優れた医薬品の継続的な創製を目指しております。さらに、感染症領域にも取り組み、グローバルヘルスへの貢献を目指すとともに、医薬品以外のヘルスケア領域における、社会課題の解決への新たなソリューションを提供することを目的として、フロンティア事業の立ち上げを進めております。
その他:
電力・蒸気の供給、化学産業設備の設計・工事監督、運送・倉庫業務、物性分析・環境分析業務等を行っております。

直近のM&A(合併買収)

数は多くありませんが、農薬や医薬の領域でM&Aを行っています。


2023年
連結子会社である住友化学インド社を通じて、昆虫フェロモン資材企業Barrix Agro Sciences社(以下「Barrix社」)を買収することを決定

2023年
天然物由来の農業資材であるバイオスティミュラントを手掛ける米国のFBサイエンス社の買収を決定

2023年
完全子会社であるスミトバント・バイオファーマ・リミテッドが、婦人科疾患および男性疾患に対する革新的な治療法の提供に注力するバイオ医薬品企業であるマイオバント社(スイス)の完全子会社化の手続きを完了

2020年
住友化学は、オーストラリアの大手農薬会社ニューファーム社のグループ会社が所有のブラジル子会社1社、およびアルゼンチン、チリ、コロンビアの子会社3社の全株式を、それぞれ住友化学子会社である住友化学ブラジル社と住友化学チリ社を通じて取得することについて、全ての手続きが終了し買収を完了

2019年
住友化学グループのエクセルクロップケア社と住友化学インド社が合併し「住友化学インド社」が営業を開始

2019年
子会社の住化ポリマーコンパウンドヨーロッパを通じて、トルコの樹脂コンパウンドメーカーであるEmas Plastik A.S.およびその関連会社を買収し、グループ会社化

2017年
殺虫成分ピレトリンの大手サプライヤーである、ボタニカル・リソーシズ・オーストラリア社およびその関係会社の株式82.9%をオーナー等から取得し、連結子会社化

2017年
国内の植物生長調整剤のパイオニアとして、長年にわたり事業を展開してきた協和発酵バイオ株式会社の植物生長調整剤事業を譲り受けることについて、同社と合意

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