化学業界の世界市場シェアの分析

化学業界の世界市場シェアや市場規模について分析をしています。BASF 、ダウ、デュポン 、Sinopec(シノペック)、SABIC(サウジ基礎産業公社)、三菱ケミカル等の 世界の主要化学メーカーの動向も掲載しています。

化学業界の世界市場シェア(2019年)

最新業界別売上高世界ランキング第2巻」に記載の化学メーカー各社の売上高を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして2019年の化学業界の市場シェアを簡易に試算しますと、以下の順位となります。

  • 1位 シノペック 1.8%
  • 2位 BASF 1.6%
  • 3位 ダウ 1.1%
  • 4位 サビック 1.0%
  • 5位 ライオンデルバセル 0.9%
  • 6位 三菱ケミカル 0.8%
  • 7位 エクソン・モービル 0.8%
  • 8位 LG化学 0.6%
  • 9位 デュポン 0.5%
  • 10位 イネオス 0.4%


化学メーカーの世界1位は中国のシノペック(中国石油化工集団)です。2位で長年1位を維持してきたドイツのBASFを上回っています。ダウとデュポンの統合会社の売上高の単純合計は、シノペックやBASFの売上高を上回っておりましたが、ダウ、デュポン、コバレントへと再分割され、規模は小さくなりました。4位にはサウジアラビアのサビック、5位には石油メジャーの石油化学メーカーであるライオンデルバセルがつけております。6位は三菱ケミカルです。

2007年~2014年の市場シェアランキング推移

2007年~2014年の市場シェアランキング ©業界再編の動向

BASFとダウの2強に対して、徐々にシノペックやSABICの順位のランキングがあがってきてきているのがうかがえます。また、さらに1989年まで遡ると、化学メーカーの市場シェアの順位は1位BASF、2位インペリアルケミカル、3位ヘキスト、4位デュポン、5位バイエル、6位ダウケミカルの順となっています。インペリアルケミカルとヘキストの上位2社は再編の過程で消滅しています。

市場規模

化学業界を化学を製品で分類しますと、石油化学製品、合成樹脂、粘着素材、肥料、農薬、火薬、医薬中間体、合成繊維、化粧品、油脂、合成ゴム、電子材料、塗料・インキ、接着剤、酸化チタン等の広範囲にわたります。当サイトでは、下記情報も参考にし、世界市場シェア算定にあたり3.94兆ドルを2019年の化学業界の市場規模としています。調査会社のスタティスタによれば、2019年の同業界の市場規模は3.94兆ドルです。業界団体のヨーロピアンケミカルインダストリーカウンシルによると、2018年の同業界の市場規模は3.34兆ユーロです。⇒参照したデータの詳細情報

再編の歴史

BASF、ダウケミカル、シノペック、ライオンデルバセル、イネオス等大手化学会社が再編の担い手となっています。

1993年 英インペリアルケミカルによる医薬・バイオ事業の分社化によるゼネカの誕生
1997年 独バスフによるタルゴルへのポリプロピレン(PP)事業ポリプロピレン事業の売却
1997年 独バスフによるエレナックへのポリエチレン事業の売却
1998年 米デュポンによる独ヘキストからの塗料事業の買収
1999年 独ヘキストと仏ローヌ・プーランが経営統合し、アベンティスが誕生
1999年 米デュポンによる農薬大手パイオニアの買収
2000年 独バスフと英蘭ロイヤルダッチシェアのポリオレフィンポリマー事業が統合しバセル誕生
2001年 独バイエルによるクロップサイエンスのアベンティスからの買収
2001年 米ダウケミカルによるユニオンカーバイドの買収
2003年 独バスフによるハネウェルからのエンジニアリングプラスチック事業の買収
2005年 独バイエルによる高分子事業を手掛けるランクセスの分社化
2005年 ライオンデルとバセルが経営統合しライオンデルバセルが誕生
2007年 仏アクゾノベルによるインペリアルケミカルの買収
2008年 米ダウケミカルによる機能性化学大手の米ロームアンドハース(Rohm and Haas)の買収
2010年 米ダウケミカルによる合成ゴム事業のスタイロン社を投資ファンドへ売却
2010年 独バスフによる機能性化学メーカーのCognisの買収
2011年 独バスフによるスチレン事業をスタイロルーションとして分社化
2015年 独バイエルによるプラスチック事業を手掛けるCovestro(コベストロ)の分社化上場
2016年 LonzaによるCapsugelの買収
2016年 LanxessによるChemturaの買収
2016年 Westlake ChemicalによるAxiallの買収
2016年 BASFによるChemetallの買収
2016年 米ダウケミカルとデュポンの経営統合
2017年 米クラリアントによる米ハンツマンの買収
2017年 カナダのノバ・ケミカルズによるウィリアムスからのオレフィンプラントの買収
2017年 酸化チタン大手のトロノックスによるサウジアラビアのクリスタルからの酸化チタン事業の買収

世界の主要な化学メーカーの動向

BASF(ビーエーエスエフ)

1865年に設立された世界最大級の独化学メーカーです。バイエル、ヘキスト(現サノフィ・アヴェンティス)と並ぶドイツ三大化学メーカーの一角となっています。BASFとはバーデン・アニリン・ウント・ソーダ(Badische Anilin- und Soda-Fabrik)の略です。BASFの読み方はバスフでなく、ビーエーエスエフです。アンモニアの量産を可能にしたハーバー・ボッシュ法を発明したことでも有名です。化学業界の売上高ランキングでは、世界1位の座が定番の総合化学の雄と言えます。現在は、石油化学品、高性能製品、機能性材料、農薬関連、石油・ガスの輸送で事業を展開しています。

Dow (ダウ)

米国に本拠を置く世界最大級の総合化学メーカー。ユニオンカーバイド(Union Carbide)やローム・アンド・ハースの買収を通じて事業を成長しました。2015年に米同業のデュポンと経営統合しましたが、2019年に素材事業を担う新生ダウ、特殊産業材のデュポン、農薬のコルテバアグリサイエンスへと分社化されました。

  • 2015年12月にダウケミカルとデュポンの経営統合が発表。統合会社の新社名はダウ・デュポンの予定。
  • 買収総額は約649億ドル。買収価格はダウケミカルの終値に6%のプレミアムをのせた水準。
  • 経営統合後の新株主がダウケミカルの株主とデュポンの株主で約50%づつの予定。
  • 買収により約30億ドルのコストシナジーを見込む。
  • 買収後に、農薬・種子事業、マテリアルサイエンス事業、機能性化学事業へと再編し分社化する予定。
  • マテリアルサイエンス事業では、自動車向け軽量素材や耐熱部品の分野を強化する予定。
  • 機能性化学事業では、家電向けの電子素材等の分野の強化を目指す。

Sinopec(China Petrochemical Corporation、シノペック)

中国国営の総合エネルギー会社です。ペトロチャイナの親会社である中国石油天然気集団公司 (CNPC)と中国海洋石油総公司(CNOOC)と並ぶ中国国有石油開発会社の一角です。

Royal Dutch Shell(ロイヤル・ダッチ・シェル)

英蘭石油メジャーです。石油分野においてはエクソン・モービル、BPと並ぶメジャーの一角です。石油化学を中心に化学分野でも大手です。

SABIC(サウジ基礎産業公社)

サウジアラビア政府(サウジアラムコ)傘下の大手化学メーカーです。産油地との距離感を生かし、石油化学や製鉄、肥料の基礎化学分野で事業を拡大しております。

Exxon Mobil(エクソン・モービル)

米に本拠を置く石油メジャーです。1999年にエッソとモービルが合併して誕生しました。石油化学分野でも大手です。

Formosa Plastics(FPG、台湾プラスチックグループ)

1954年に設立された台湾最大の化学メーカーです。

LyondellBasell Industries(ライオンデルバセル)

Royal Dutch ShellとBASFの合弁会社であるポリオレフィンポリマーのBasell社がAccess Industiries傘下のライオンデルに買収され設立された総合化学会社です。石油化学分野に特化し、規模拡大を追求する戦略をとっています。

E.I du Pont de Nemours(デュポン)

デュポン(E.I du Pont de Nemours)は、1802年にフランス人のエルテール・イレネー・デュポンによって設立された世界最大級の化学メーカーです。2015年米同業のダウケミカルと経営統合しましたが、特殊産業材事業が分社化され新生デュポンとなりました。ニュートリション&バイオサイエンス事業で食品成分事業を展開しています。2011年にデンマークに本拠を置く食品成分大手であるDanisco(ダニスコ)を買収しています。同事業は2019年に香料大手のIFFとの経営統合し、香料と食品成分を手掛ける総合食品成分会社となりました。
水処理膜事業についてはDuPont Water Technology(デュポンウォーターテクノロジー)で展開しています。RO膜に強みがあります。

LG

LGグループは1952年にク・インフェ氏によって設立された韓国を代表する財閥グループです。1958年にLuckyとGoldStarが経営統合をして設立されました。電機事業、化学事業、通信事業が3本柱です。子会社は、家電メーカーのLGエレクトロニクス、電子部品の製造を手掛けるLGイノテック、液晶ディスプレイを手掛けるLGディスプレイ、総合化学メーカーのLG化学など多岐にわたります。

電機事業(LGエレクトロニクス):冷蔵庫等の白物家電業界では上位に位置しています。電子レンジや食洗機、スマートフォンや家庭用エアコン等を含む家電業界でも、フィリップスやハイアールと並び、世界上位に位置しています。テレビ製造や液晶パネル分野(LGディスプレイ)でも、サムスンと並び世界上位に位置しています。車載向け機器も手掛け、2018年にはオーストリアの自動車照明大手であるZKWを買収しました。

LGディスプレイ:韓国LGエレクトロニクス傘下の液晶メーカーです。サムスンディスプレイと双璧です。テレビ向け液晶に強みがあります。中小型液晶分野では日本の液晶メーカーとも競合しています。2008年まで蘭フィリップスと提携していました。テレビ向けの大型有機ELに強みを持ちます。

化学事業(LG化学):シリコンウエハ業界、偏光板業界やリチウムイオン電池業界では、日系企業と並び、世界トップクラスのシェアを維持しています。リチウムイオン電池にも注力をしており、スマートフォン向けや現代/起亜、ルノー向けの車載用に開発が進められています。水処理膜の分野ではRO膜に強みを持ちます。2014年に米国の水処理膜メーカーであるNanoH2Oを買収しました。

株主構成:創業ファミリーであるクー一族が、持株会社であるLGの株式を約50%保有しています。LGを通じて、LG化学、LGエレクトロニクス等のグループ会社の持分を保有し、緩やかなLGグループを構成ししています。

イネオス(INEOS)

スイスに本拠を置く化学メーカーです。元々はBPの石油化学事業が分離して誕生しました。石油化学事業に特化し、規模拡大戦略をとっています。

日本の総合化学メーカー

エチレンなどの石油化学や汎用化学の分野において、中国の化学メーカーやオイルメジャー系化学メーカーのようにスケールメリットを追うか、それとも、ダウとデュポンの経営統合・分社化や欧州系化学メーカーのように機能性化学分野へ集中していくか、それとも第三の道を開くか、日本の化学メーカーの戦略に注目が集まります。

三菱ケミカルホールディングス

三菱ケミカルホールディングスは、日本の最大手の化学メーカーです。三菱レイヨンや大陽日酸を買収し、機能性化学分野の強化を図っています。アクリル樹脂の分野では、ダウケミカルやエボニックといった、大手化学メーカーを抑え、世界最大級の規模となっています。また、炭素繊維分野では、傘下の三菱レイヨンがパイロフィルの商標で炭素繊維を世界展開し、自動車会社とも開発を加速させています。電池材料では、正極材からは撤退し、電解液と負極材を強化しています。水処理膜事業では、MBR膜に強く、ステラポアーブランドで展開をしています。

住友化学

三菱ケミカルホールディングと並ぶ化学メーカーの双璧です。サウジ・アラムコと組んで世界最大級の石油コンビナート(ラービグプロジェクト)を運営しています。機能性化学の分野では、偏光板で日東電工と並び、世界大手の1角となっています。また、メチオニンにも強みがあります。農薬の分野では、バイエル、バスフ、ダウデュポン、シンジェンタのビッグ4に次ぐ準大手のポジションです。

旭化成

化学、建材、繊維等を手掛ける日本を代表する化学メーカーの1社です。リチウムイオン電池のセパレータ分野や水処理膜の分野では強みを発揮しています。不織布では、デュポンと合弁事業を展開しています。

東レ

三井グループの中核化学メーカーです。祖業は繊維で、東レは東洋レーヨンの略です。ダウ、キャボットと並び大手となっている水処理膜、エアバッグの生地やトレカで有名な炭素繊維の分野で強みを発揮しています。おむつ等に使用する不織布の分野では、フロイデンベルグと共同で日本バイリーンを子会社化しています。

主要な業界団体

Cefic | European Chemical Industry Council
American Chemistry Council(米国化学協議会)
JCIA 日本化学工業協会
石油化学工業協会

参照したデータの詳細情報について


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