農薬業界の市場シェア・売上高ランキング・規模・再編の分析

農薬業界の世界市場シェア・売上高ランキング・市場規模・M&A(合併買収)について分析をしています。2015年以降、バイエルによるモンサント買収、ダウとデュポンの経営統合とコルテバ・アグリサイエンスの誕生、ケムチャイナのシンジェンタ買収などによって業界順位が大きく変動しています。

世界シェア

農薬メーカー各社の2021年度の売上高(⇒参照したデータの詳細情報)を分子に、後述する農薬業界の市場規模を分母にして、2021年の農薬メーカーの世界市場シェアを計算すると、1位はシンジェンタ、2位はバイエル、3位はコルテバとなります。

農薬業界の世界市場シェア(2021年)

順位会社名市場シェア
1位シンジェンタ15.9%
2位バイエル14.5%
3位コルテバ8.6%
4位BASF7.8%
5位FMC6.0%
6位UPL4.6%
7位住友化学4.4%
8位ニュファーム2.7%
農薬業界の世界市場シェア(2021年)©ディールラボ

農薬業界の市場シェア(2021年)
農薬業界の市場シェア(2021年)

1位には中国化工集団(ケムチャイナ)傘下のスイスのシンジェンタが入っています。同じく中国化工集団の傘下であったアダマと経営統合し、初の世界1位となりました。
モンサントを買収したバイエルが2位です。当局からの要請に基づき一部の農薬事業をBASFに売却しています。バイエルは伝統的に農薬分野に、モンサントは種子事業に強く補完的な経営統合と言われています
3位は旧デュポン農薬事業が分社化して誕生したコルテバとなっております。4位はドイツのBASFです。バイエル、シンジェンタがトップ2強で、農薬4強の一角であるBASFとコルテバと間に差がつきつつあります。
5位は、コルテバより一部農薬事業を買収しているFMCで、4強に食い込めるポジションとなりつつあります。
6位はインドのUPLで、アリスタライフサイエンスの買収を行い、規模拡大を図っています。
7位は住友化学です。8位は豪州のニューファームです。ニューファームと住友化学の両社は資本提携関係にあり、今後の動向が注目されます。
2015年以降の再編によって、農薬メーカービッグ6(モンサント、バイエル、ダウ、デュポン、BASF、シンジェンタ)が支配していた2016年の農薬業界の世界シェアから様変わりです。また、今後の研究開発投資の負担を考えると、再編後に残ったビッグ4の中でも、すでに優勝劣敗の芽が、現れつつあります。

市場規模

当サイトでは、2021年の農薬業界の市場規模を839億ドルとしております。参照した情報は以下の通りです。

調査会社アイマークによると、2021年の同業界の市場規模は839億ドルです。2027年にかけて、年平均4.34%し、同年には1114億ドルへと拡大することが見込まれます。
調査会社のマーケッツアンドマーケッツによると2020年の市場規模は637億ドルです。2025年にかけて年平均3.1%での成長を見込みます。調査会社のグランドビューリサーチによると、
2019年の同業界の市場規模は584億ドルです。2027年にかけて年平均3.3%での成長を見込みます。
住友化学によると2019年の化学農薬は600億ドルで年平均2%の成長見込み、バイオラショナル(天然物由来などの微生物農薬、植物生長調整剤を使用したバイオ農薬)は64億ドルで、年平均10~15%の成長を見込みます。⇒参照したデータの詳細情報
近年ジェネリック農薬メーカーが売上高を伸ばしているのが特徴です。

市場規模成長率見込み
2021839億ドル4.34%
2020637億ドル3.1%
2019584億ドル3.3%
注)成長率は市場規模推定時点での見込み
農薬業界の市場規模の推移©ディールラボ

売上高ランキング

2021年度10-12月四半期売上高*をベースとした農薬メーカーのランキングでは、1位シンジェンタ、2位バイエル、3位コルテバとなっています。2020年の市場シェアと比較するとシンジェンタが1位に浮上しています。ケムチャイナ傘下に入ることで、広大な中国市場で成長を遂げています。⇒参照したデータの詳細情報

農薬会社の売上高ランキング(四半期ベース)
農薬会社の売上高ランキング(四半期ベース)
*2021年7-9月売上高、その他の農薬会社は2021年10-12月売上高

M&A・再編

かつては農薬ビッグ6といわれるモンサント、バイエル、ダウ、デュポン、BASF、シンジェンタが大手でしたが、農薬事業は研究開発への設備投資とグローバルでの販売網の構築という点で規模の経済性がはたらき易い業種であり再編を通じて、現在は上位4位社への集約が進んでいます。

  • 1993年 ICI(imperial Chemical Industries)による医薬品、農薬、機能性化学部門をゼネカ社への分社化。
  • 1993年 アメリカンホームプロダクト(2009年ファイザーが買収)がアメリカン・サイアナミッドを買収。
  • 1996年 チバガイザー社とサンド社が合併してノバルティスが誕生
  • 1997年 マクテシムとアガンが合併してマクテシム・アガンが誕生
  • 2000年 ノバルティスの農業部門とアストラゼネカの農業部門を統合しシンジェンタを設立
  • 2000年 住友化学によるアボットのアメリカ生物農薬部門の買収
  • 2001年 バイエルがアベンティス・クロップ・サイエンスを買収
  • 2001年 ダウケミカルによるローム・アンド・ハースの買収
  • 2001年 トーメンとニチメンの農業化学品事業が統合し、アリスタライフサイエンスが誕生
  • 2002年 住友化学による武田薬品の農薬部門の買収
  • 2006年 オリンパスキャピタルによるアリスタライフサイエンスの買収
  • 2007年 投資ファンドのペルミラによるアリスタライフサイエンスの買収
  • 2011年 中国化工によるマクテシム・アガンの買収
  • 2014年 プラットフォーム・スペシャルティ・プロダクツ・コーポレーションによるアリスタライフサイエンスの買収
  • 2015年 デュポンとダウケミカルが経営統合
  • 2015年 中国化工によるシンジェンタの買収
  • 2016年 住友化学によるインドの農薬メーカーエクセル・クロップ・ケアを買収
  • 2016年 バイエルによるモンサント買収
  • 2017年 デュポンによる除草剤等の農薬事業のFMCへの売却
  • 2018年 バイエルによるBASFへの一部除草剤事業の売却
  • 2018年 バイエルによるBASFへの野菜種子事業(Nunhems)の売却
  • 2018年 UPLによるアリスタライフサイエンスの買収
  • 2019年 住友化学による豪ニューファーム社からのブラジル、アルゼンチン、チリ、コロンビアの事業の買収
  • 2020年 中国化工集団(ケムチャイナ)傘下のシンジェンタとアダマが経営統合

農薬業界のM&Aの目安として、買収時点の企業価値に対する売上高のマルチプルを見てみると、1~5倍を「ばらつき」が大きくなっています。バイエルとモンサントの案件の倍率が4.7倍と最大です。買収の規模では、ケムチャイナとシンジェンタ、バイエルとモンサント、そしてコルテバのスピンオフが大きくなっています。

農薬業界の企業価値売上高マルチプル

農薬業界の企業価値売上高マルチプル、丸の大きさは企業価値を示す

農薬の種類

農薬は、大きく除草剤(herbicides)、殺虫剤(insecticides)、殺菌剤(fungicides)、消毒薬(disinfectants)に分かれます。これらの農薬の中では除草剤の割合が市場規模としては最も大きくなっています。除草剤は、シンジェンタ、バイエル、BASF、コルテバが寡占する市場となっています。

除草剤の種類

除草剤には大きく分けて選択制除草剤(Selective Herbicides)と非選択制除草剤(Non-Selective Herbicides)があります。前者は、雑草だけに効果のある除草剤で、農作物には影響を与えません。後者は散布した場所の全ての植物に効果のある除草剤です。散布する場所によって選択制除草剤と非選択制除草剤を使い分けます。
除草剤の成分によって、グリホサホート、グルホシネート、パラコート、スルホニルウレア、トリフルラリン、シハロホップブチル系除草剤があります。また、植物の中には、除草剤に対する抵抗性(除草剤が効かない)を備えた植物もあります。

世界の主要な農薬メーカーの動向

Syngenta(シンジェンタ)

シンジェンタはスイスに本拠を置く世界的なアグリ関連メーカーです。2000年にノバルティスとゼネカのアグリ事業が統合して誕生しました。農薬や種苗に強みを持ちます。2016年に中国の国有化学メーカーの中国化工集団(ケムチャイナ)が買収しました。さらに詳しく

Adama Agriculture Solutions(アダマ)

旧Makhteshim Agan(マクテシム・アガン、イスラエル)です。世界最大のジェネリック農薬企業です。中国化工集団(ケムチャイナ)傘下です。

ケムチャイナ

中国化工集団(ケムチャイナ、ChemChina、China National Chemical Corporation )はRen Jianxin(任建新)氏によって設立されたChina National Blue Star Corp(藍星) と China Haohua Chemical Industrial Corp(昊華)が2004年に経営統合して誕生した中国政府系の化学メーカーです。中国政府が100%株式を保有しています。農薬、ゴム、シリコーンや機能性化学等の分野で事業展開しています。2016年から寧高寧氏がシノケムとケムチャイナのCEOとなり、2021年に国営化学会社のシノケムと経営統合、中国中化(シノケム)ホールディングス傘下になりました。続きを読む

ノバルティス

Novartis(ノバルティス)は、スイスに本拠を置く世界最大級の製薬メーカーです。後発医薬品メーカー大手のSandoz(サンド)を傘下に保有しています。2014年に英グラクソ・スミスクラインの抗がん剤事業を160億ドルで、2017年にフランスの放射性医薬品会社アドバンスト・アクセレーター・アプリケーションズを39億ドルで、2018年に米国のがん治療薬メーカーであるエンドサイトを21億ドルで買収すると発表する一方で、コンタクトレンズ会社のアルコンは分社化、大衆薬事業は合弁相手のグラクソ・スミスクラインに売却し、先端医薬品分野を強化しています。さらに詳しく

Bayer(バイエル)

Bayer AG(バイエル)は、1863年にフリードリヒ・バイエル氏によって設立されたドイツに本拠を置く世界的な医薬品・化学品メーカーです。アスピリンの発明で有名です。第二次世界大戦中には、BASF、ヘキストとともにIG・ファルベンを形成しました。戦後にバイエルとして独立し、数々の買収や事業の売却を行っています。農薬・種子事業、ファーマスーティカル事業、コンシューマーヘルス事業が3本柱です。2015年にはマテリアルサイエンス部門をコベストロ(Covestro)として分社化・独立させています。農薬・種子事業においては、2016年にモンサントを買収し、農薬ビッグ4を一歩引き離す存在となりました。種子分野でも上位に入っています。なお、香料大手であるシムライズは、2002年に同社の子会社の出会ったHaamann & Reimer社とDragoco社が経営統合をし、誕生した経緯があります。
続きを読む

Monsanto Company(モンサント)
1901年設立の種子・農薬専業大手でした。除草剤ラウンドアップは除草剤の定番商品です。2016年にバイエルがモンサントを買収しました。

BASF(ビーエーエスエフ)

BASFは、1865年に設立された世界最大級の独化学メーカーです。バイエル、ヘキスト(現サノフィ・アヴェンティス)と並ぶドイツ三大化学メーカーの一角となっています。BASFとはバーデン・アニリン・ウント・ソーダ(Badische Anilin- und Soda-Fabrik)の略です。BASFの読み方はバスフでなく、ビーエーエスエフです。アンモニアの量産を可能にしたハーバー・ボッシュ法を発明したことでも有名です。化学業界の売上高ランキングでは、世界1位の座が定番の総合化学の雄と言えます。現在は、石油化学品、高性能製品、機能性材料、農薬事業を展開しています。さらに詳しく

コルテバ・アグリサイエンス

コルテバは、世界大手化学メーカーであるダウケミカル(Dow Chemical)とデュポン(E.I du Pont de Nemours)の2015年の経営統合に伴い、両社の農薬子会社が経営統合して、2019年に誕生しました。ダウケミカルの農薬事業は、米Rohm and Haas(ローム・アンド・ハース)の流れを汲むDow AgroSciences(ダウ・アグロサイエンス)でした。トウモロコシ、大豆、ひまわり、小麦などの種子と除草剤と殺虫剤といった農薬事業を手掛けます。さらに詳しく

ダウについて

ダウは、1897年にHerbert Henry Dow氏によって設立された米国に本拠を置く世界最大級の総合化学メーカーです。祖業は漂白剤と臭化カリウムです。その後、ユニオンカーバイド(Union Carbide)やローム・アンド・ハースの買収を通じて成長しました。2015年に米同業のデュポンと経営統合しましたが、2019年に素材事業を担う新生ダウ、特殊産業材のデュポン、農薬のコルテバアグリサイエンスへと分社化されました。シリコーンはダウシリコーンが展開しています。コーティング剤、プラスチック、アクリル樹脂原料・メチルメタクリレートにも強みを持ちます。さらに詳しく

デュポンについて

デュポン・ドゥ・ヌムール(E.I du Pont de Nemours)は、1802年にフランス人のエルテール・イレネー・デュポンによって設立された世界最大級の化学メーカーです。2015年米同業のダウケミカルと経営統合しましたが、特殊産業材事業が分社化され新生デュポンとなりました。2011年にデンマークに本拠を置く食品成分大手であるDanisco(ダニスコ)を買収し、ニュートリション&バイオサイエンス事業で食品成分事業を強化していましたが、同事業は2019年に香料大手のIFFとの経営統合し、香料と食品成分を手掛ける総合食品成分会社となりました。水処理膜事業についてはDuPont Water Technology(デュポンウォーターテクノロジー)で展開しています。RO膜に強みがあります。さらに詳しく

Nufarm(ニューファーム)

豪州メルボルンに本拠を構える大手農薬メーカーです。住友化学と資本提携しています。2015年にジフェニルエーテル(oxyfluorfen)系除草剤、2016年に尿素(tebuthiuron)系農薬をダウ・アグロサイエンスより買収しています。2019年に南米事業を住友化学に売却しました。

FMC(エフエムシー)

FMCは、1883年に設立された米国に本拠を置く農薬メーカーです。ジェネリック農薬に強みを持ちます。2014年にオランダ殺虫剤大手のcheminova(ケミノバ)を買収しました。2017年にデュポンより除草剤、殺虫剤の事業を買収し、デュポンに栄養食品や薬品添加剤事業の売却(資産交換)を実施しています。リチウム事業はライベントとして分社化しています。

UPL(United Phosphorus Limited、ユーピーエル)

インド最大のジェネリック農薬メーカーです。アリスタライフサイエンスを買収しました。

アリスタライフサイエンス
機能性化学や農薬事業を手掛けるプラットフォーム・スペシャルティ・プロダクツ・コーポレーション傘下の農薬メーカーです。元はトーメンと ニチメンの農薬事業です。プラットフォーム・スペシャリティ・プロダクツはハンダ材料メーカーや基板表面処理剤メーカーも傘下に保有しています。2018年にインドのUPLが買収しました。

住友化学

住友化学は、1913年に別子銅山の煙害解消のために銅鉱石中の硫黄を取り出して肥料を製造する住友肥料製造所として設立されました。石油化学、機能材料、情報電子化学、農薬、医薬品が主軸です。サウジ・アラムコと組んで世界最大級の石油コンビナート(ラービグプロジェクト)を運営しています。機能性化学の分野では、偏光板で日東電工と並び、世界大手の1角となっています。また、メチオニンにも強みがあります。農薬の分野では、バイエル、BASF、コルテバ、シンジェンタのビッグ4に次ぐ準大手のポジションです。アクリル樹脂原料(MMA)は三菱ケミカルと双璧です。持分法子会社の住友精化で高吸水性樹脂事業を行っています。さらに詳しく

参照したデータの詳細情報について


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