船舶エンジン業界

船舶エンジン業界の世界シェアと市場規模について分析をしています。業界大手であるマン、バルチラ、ロールス・ロイスなどの動向についても掲載しています。

世界市場シェア

最新業界別売上高世界ランキング第2巻」に記載の船舶エンジン各社の売上高を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして2019年の市場シェアを簡易に試算しますと、以下の順位となります。

  • 1位    バルチラ    19%
  • 2位    マン・エナジーソリューション    16%
  • 3位    ロールス・ロイス    15%
  • 4位    カミンズ    11%
  • 5位    現代重工業    6%
  • 6位    ジャパンエンジンコーポレーション    1%

世界1位は、船舶エンジンの老舗であったスズラーを買収した、フィンランドのバルチラとなります。同社は、船舶エンジン(中速、4サイクルストローク)に集中する戦略をとっています。船舶用の中速エンジンは、エンジンスペースに制約のある客船、フェリー等に使用される場合が多くなっています。相対的に機関の構造が複雑で、エンジンの大きさが大きくなる反面、安定した燃焼が行われます。中速エンジン以外でも、ディーゼルを用いる発電所用の小規模原動機や船用補機の分野でも大手メーカーです。低速エンジンは、中国船舶工業集団公司(CSSC)にウインターツール・ガス・アンド・ディーゼルを売却し撤退しました。

世界2位は、デンマークの船舶エンジン大手B&Wを買収したマン・エナジーソリューションです。船舶エンジンの中でも低速、2サイクルストロークに強みを持ちます。。低速エンジン事業は、主に大型のタンカー、コンテナ船等に使われる原動力です。マンは低速エンジンの分野では、ライセンス供給者として、圧倒的な地位を築いています。3位はイギリスのロールス・ロイスです。船舶用エンジンではMTUブランドの高速エンジンとBergenブランドの中速エンジンがメインとなっています。6位には三菱重工の流れを汲むジャパンエンジンコーポレーションとなっていて、三菱UE機関という独自技術を用いて、環境負荷の低い製品で上位2陣営の牙城に挑みます。米国の建機世界大手、キャタピラー社となっています。ドイツのマシーネンバオ・キールを買収して事業を展開していますが、情報が非開示のためランキングには入っていません。

市場規模

調査会社のグローバルマーケッツインサイトによれば、2019年の船舶エンジンの市場規模は82億ドルとなります。2020年から2026年は年平均4%での成長を見込みます。船舶エンジンの市場は、造船業の影響を受けるため、今後の貿易量、油化、ガス排出規制等によって、市場規模は変化するものと思われます。なお、船舶エンジンにおいては低速エンジンが概ね7-8割程度の比率となっていると言われています。船舶用エンジンは船価の約10%を占め、建造するにあたり重要な要素です。

船舶エンジンの2サイクルと4サイクルの違い

船舶エンジンの燃料には、残渣油が利用されているため、燃料供給の価格と量においては安定しています。2サイクルストローク(低速エンジン)の特徴は、機関構造のコンパクトにあります、一方で、冷却や空気循環には改善の余地があります。4サイクルストローク(中速エンジン)は、機関が大型化する一方で、吸気や排気の安定性があります。

主要船舶エンジンメーカーの動向

MAN (マン)

1758 年に創業したルール地方の鉄工所にルーツがある、ドイツに本拠を置くエンジン・機械メーカーです。トラック・バス等の商用車、船舶・産業用エンジン等を手掛ける。MAN Energy Solution (マンエナジーソリューション、旧Diesel & Turbo(マンディーゼル&ターボ))は、MANグループの動力エンジニアリング部門です。1981 年には、船舶エンジンの老舗であるデンマークBurmeister & Wain(B&W)のディーゼルエンジン部門を買収し、船舶エンジンの分野では2ストロークと4ストロークエンジンの主要ライセンサーとして圧倒的な地位を占めます。メンテナンス等のサービスもグローバルで展開しています。

主要M&A:

2015年 スウェーデンのCryogenic ABから船用ガス燃料供給事業の買収

Wartsila(バルチラ)

1834 年、カレリア地方に製材所として設立されたルーツを持つ、フィンランドに本拠を置く船舶用ディーゼルのライセンス供給大手です。中高速用のディーゼルエンジンでは世界最大級です。スイスのSulzer(スルザー)の船舶エンジン事業を買収しました。2ストローク低速用船舶エンジンからは、中国船舶工業集団公司(CSSC)にウインターツール・ガス・アンド・ディーゼルを売却し、撤退しました。バルチラの株主では、フィンランドの消費財系コングロマリット(祖業はハサミ(鋏)メーカー。ウェッジウッドやロイヤルコペンハーゲン等の陶器会社も保有)であるフィスカース(Fiskars)が筆頭株主となっています。船舶エンジン以外、発電(エネルギーソリューション)も展開し、船舶事業では、船舶設計、ラダー、プロペラ、航海・通信システムを提供しています。

ジャパンエンジンコーポレーション

三菱重工業の船舶エンジン事業を神戸発動機と経営統合することで合意し、2017年にジャパンエンジンコーポレーションが誕生しました。1955年に国産技術の粋を結集した三菱UE機関ブランドを引き継いでいます。

Caterpillar(キャタピラー)

米国を代表する建機メーカーです。船舶エンジンは1997年に買収したドイツのMAK(マシーネンバオ・キール、元々ドイツで潜水艦のUボートを製造していた会社)ブランドで展開しています。

Rolls-Royce(ロールス・ロイス)

  1. Rolls-Royce(ロールス・ロイス)は英国に本拠を置く航空機・船舶エンジンメーカーです。自動車のロールス・ロイスとは同根です。一時は英政府により国有化されましたが、ドイツのBMWとの航空機エンジン事業を子会社する等、積極的な買収により成長しました。民間航空、防衛、パワーシステムが3本柱(下図参照)です。産業用ディーゼルエンジンでは、発電所、建機、鉄道、船舶向けのエンジンを製造・販売し、キャタピラー、カミンズ、GE等と競っています。船舶用エンジンではMTUブランドの高速エンジンとBergenブランドの中速エンジンがメインとなっていますが、2020年にBergenへのストラテジックレビューを開始しました。
ロールスロイスの売上構成

ロールスロイスの売上構成
出所:同社AR

民間船舶部門が低調であり、2018年以降リストラを加速しています。燃料噴射装置を手掛けるロランジュ(L’Orange)を米航空機部品メーカーのウッドワードへの売却しました。

Hyundai Heavy Industries(現代重工業)

韓国を代表する造船メーカーです。造船分野でもトップクラスですが、船舶エンジンも中高速を中心に製造しております。4ストロークエンジンは独自開発をしたHiMSENブランドで展開をしています。

Cummins(カミンズ)

米国に本拠をおくバスや商用車向けのエンジンメーカーです。ターボチャージャー、トランスミッション、フィルタレーションなどの商用車向けの部品も提供しています。船舶向けのエンジンも手掛けています。

業界関連図書

  • ディーゼルエンジンの徹底研究 [単行本]
  • 舶用エンジンの保守と整備 [単行本]

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