航空機エンジン業界の市場シェアの分析
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航空機エンジン業界の市場シェアの分析

航空エンジン業界の世界シェア・売上高ランキング・市場規模について分析をしています。航空エンジン御三家のGE、ロールスロイス、プラット・アンド・ホイットニー、それに続くハネウェル、サフランといった世界大手航空エンジンメーカーの概要や動向も掲載しています。

【市場シェア】

航空機エンジンメーカーの2021年度の売上高(⇒参照したデータの詳細情報)を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2021年の航空機エンジン業界の世界市場シェアを簡易に試算しますと、1位はプラット・アンド・ホイットニー(レイセオン)、2位はGE、3位はサフランとなります。

2021年航空機エンジンの世界シェア

順位 会社名 市場シェア
1位 プラット・アンド・ホイットニー 29.8%
2位 GE 23.5%
3位 サフラン 12.2%
4位 ハネウェル・インターナショナル 9.7%
5位 ロールスロイス 7.4%
2021年航空機エンジンの世界シェア ©ディールラボ

航空機エンジンの市場シェア(2021年)
航空機エンジンの市場シェア(2021年)

ターボジェットエンジン系の航空機エンジンの分野では、世界1位はレイセオン傘下の、プラット・アンド・ホイットニーとなっています。ワイドボディ機のエンジンに強みをもっています。GEは世界2位です。GEもワイドボディー機のエンジンに強みを持っています。ナローボディ機のエンジンは、GEとフランスのサフラン傘下のスネクマとの合弁会社である、CFMインターナショナルが担っています。世界3位はフランスのサフラン、世界4位は英国のロールス・ロイスとなっています。2014年に電力業界向けのガスタービンおよびコンプレッサー事業をドイツのシーメンスに売却をして、航空機エンジンへ事業を集中しています。第5位は米国のハネウェルとなります。

レシプロエンジンの分野では、テキストロン子会社のライカミング・エンジンズと中国AVICインターナショナル傘下の米コンチネンタルモーターズが市場を2分しています。ナローボディー機のエンジンは、ドイツのMTUエアロ・エンジンズ ドイツ と、日本連合の合弁会社であるIAEインターナショナルがあります。

【市場規模】

当サイトでは、調査会社等の公表データを参考にし、航空機エンジン業界の2021年の世界市場規模を608億ドルとして市場シェアを計算しております。参考にした公表統計データは以下の通りです。

調査会社のマーケッツアンドマーケッツによると、2021年の同業界の市場規模は608億ドルです。2026年には929億米ドルへと、2021年から2026年にかけて年平均成長率8.9%で成長すると予測されています。移動制限の解除が短期的な、燃費の良い航空機エンジンの需要増が中長期的な成長のドライバーとなります。
調査会社リサーチアンドマーケッツによると、同業界の世界市場規模は、2020年に780億ドルと推定されます。2021年には822億円に達し、年平均成長率5.64%で2026年には1085億ドルに達すると予測されます。
調査会社のフォーチュンビジネスインサイツによれば、同業界の2019年の市場規模は799億ドルです。2027年までに年平均11.3%で成長での成長を見込みます。調査会社のT4によれば、2019年の同業界の規模は730億ドルです。2025年までに年平均1%での成長を見込みます。⇒参照したデータの詳細情報

市場規模 成長率見込み
2021年 608億ドル 8.9%
2020年 780億ドル 5.64%
2019年 730~822億ドル 1~11.3%
航空機エンジンの推定市場規模の推移 ©ディールラボ

航空機エンジンは、航空機1機につき2もしくは4基の航空エンジンは搭載されます。航空機は今後も需要が増えると予想されており、航空機エンジンの市場の拡大も見込まれます。また、航空機エンジンは、定期的な交換を含めた継続的なアフターサービスが必要となりますので、補修部品やサービスは、リカーリングインカムとして航空機エンジン会社の収益源となります。反面、高い耐久性や安全性が求められるため、開発や生産には長期にわたり、資金的な負担も大きく、寡占的な市場構造が続くものと考えられます。

【売上高ランキング】

2022年度第1四半期(2022年1-3月)売上高をベースとした航空機エンジンメーカーのランキングでは、1位プラット・アンド・ホイットニー(レイセオン)、2位GE、3位サフランとなっています。レイセオンテクノロジーズは、ユナイテッドテクノロジーズからの数々の再編を経て、航空機エンジンでも成長を志向しています。⇒参照したデータの詳細情報

航空機エンジン会社の売上高ランキング(四半期ベース)
航空機エンジン会社の売上高ランキング(四半期ベース)

航空機エンジンの構造と種類

航空機エンジンは、通常「ガスジェットエンジン」と言われ、下図の通り吸気・圧縮・燃焼・排気によってタービンを回転させることで推進出力を得る動力です。プロペラ機と旅客機ではエンジンの構造も若干異なりますが、推進出力を回転から得ることは同じです。

航空機エンジン
出所:川崎重工業のデータから作成


さらに業界に詳しくなるためのお薦めの書籍と関連サイト

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【会社の概要】

General Electric(GE)

GE(ジェネラル・エレクトロニック)は、1878年にトーマス・エジソンによって設立されたエジソン電気照明会社を源流に持つ世界を代表する総合電機メーカーの老舗です。世界シェア1位か2位以外の事業からは撤退するというナンバーワン・ナンバーツー戦略を実施し、積極的な事業ポートフォリオの入れ替えを行うことでも有名です。インダストリアル・インターネットを成長戦略にしたジェフ・イメルト氏が退任した後、2017年に生え抜きのジョン・フラナリー氏が社長に就任したものの、2018年には外部のダナハーからラリー・カルプ氏が招聘され、新CEOとなるなど、経営陣の交代が続きます。2021年にGEをヘルスケア部門、電力・エネルギー部門、航空部門の3社へと分社化することを発表しました。さらに詳しく

Raytheon Technologies(レイセオン・テクノロジーズ)

レイセオンテクノロジーズ(Raytheon Technologies)は、2019年に防衛大手のレイセオンとユナイテッド・テクノロジーズグループが経営統合して誕生しました。旧ユナイテッド・テクノロジーズグループは、2020年にエレベーター事業のオーチス(Otis)及び空調事業のキャリア(Carrier)の分社化を実施し、現在は、航空機エンジンのプラット・アンド・ホイットニー、民間工機向けシステムを提供するコリンズエアロスペース、宇宙防衛機器製造を行うレイセオンが主力事業となっています。さらに詳しく

Safran S.A (サフラン)

Safran S.A (サフラン)はフランスに本拠を置く防衛・通信大手企業です。傘下のSnecma(スネクマ)にて民間及び軍用の航空機エンジンの製造を行っています。ナローボディー機ではGEと手を組んでいます。2018年に機内エンターテイメント、シート、機内食機器に強いゾディアックを買収しました。

Honeywell International(ハネウェル・インターナショナル)

ハネウェル(Honeywell)は1886年に設立された米国に本拠を置く複合企業です。航空機エンジンや電子制御機器、自動化機器、特殊素材分野、自動車部品等幅広く展開しています。ビルディング・オートメーションやターボチャージャーの分野では世界大手の1社です。2017年にターボチャージャー事業と住宅向け空調機器、火災報知器事業を分社化しました。さらに詳しく

Rolls-Royce(ロールスロイス)

Rolls-Royce(ロールス・ロイス)は英国に本拠を置く航空機・船舶エンジンメーカーです。自動車のロールス・ロイスとは同根です。一時は英政府により国有化されましたが、ドイツのBMWとの航空機エンジン事業を子会社する等、積極的な買収により成長しました。民間航空、防衛、パワーシステムが3本柱です。産業用ディーゼルエンジンでは、発電所、建機、鉄道、船舶向けのエンジンを製造・販売し、キャタピラー、カミンズ、GE等と競っています。民間船舶部門が低調であり、2018年以降リストラを加速しています。燃料噴射装置を手掛けるロランジュ(L’Orange)を米航空機部品メーカーのウッドワードへ売却しました。船舶用エンジンではMTUブランドの高速エンジンとBergenブランドの中速エンジンがメインとなっていますが、2021年にBergenをロシアの鉄道車両大手であるJSC Transmashholdingへ売却しました。さらに詳しく

CFM International(CFMインターナショナル)

フランス・パリに本社を置き、CFM56シリーズのジェットエンジンの製造とサポートを行っています。アメリカのGEとフランスのサフランの合弁事業(持分比率は双方50%)です。

日本航空機エンジンメーカー

航空機エンジンは、IHI、三菱重工業、川崎重工業が手掛けています。戦後の航空禁止令の影響が大きく、大手航空機エンジンメーカーの下請け的な位置づけでしたが、IHIはXF9-1で、三菱重工はMRJで巻き返しを図ります。

川崎重工業について

1896年に松方正義の支援によって川崎正蔵氏によって設立された川崎築地造船所を源流とする日本を代表する宇宙防衛・重電大手メーカーです。戦前の神戸川崎財閥には、川崎造船(川崎重工)の他に、川崎汽船、川崎製鉄(JFE)が属していました。技術者の育成には定評があります。現在は、防衛、航空エンジン、鉄道車両、プラント、油圧機器、溶接やシリコンウエハの搬送等の産業用ロボット、造船、中大型バイク、オフロード四輪車、パーソナルウォータークラフト(ジェットスキーの商標で展開しています)、汎用エンジンを開発製造しています。さらに詳しく

三菱重工について

1884年に創業された日本を代表する重工業グループです。三菱グループの中核企業の1社と言われています。戦前は軍産複合体として成長し、戦時中は戦艦武蔵やゼロ戦を手掛け、当時から技術力では世界最高水準を維持しています。戦後は民間向けの重工分野を強化し、発電所システム、航空機エンジン、航空機、船舶、ターボチャージャ、フォークリフト、機械システム、エンジニアリング、防衛関連機器の製造販売を行っています。さらに詳しく

参照したデータの詳細情報について


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