2025年における世界の高吸水性樹脂(SAP)業界の主要な生産企業の市場シェア、市場規模について分析をしています。
当業界は、紙おむつなどの衛生材料需要を基盤に堅調な市場を維持する一方、近年のサプライチェーン再編や事業撤退を経て、業界の勢力図は大きな転換点を迎えています。
長年にわたり日本触媒、BASF、エボニック(Evonik)、住友精化の4社が市場を牽引してきましたが、近年は欧州勢の事業再編(エボニックのSAP事業がICIG傘下のストックハウゼン(Stockhausen)へ移行するなど)や、2024年の三洋化成工業によるSAP事業からの撤退決定などにより、主要プレイヤーの顔ぶれが大きく塗り替わりました。
【高吸水性樹脂とは】
高吸水性樹脂は、英語でSAP(Superabsorbent polymerの略)とも言われています。紙おむつの中で、おしっこ等を吸収する素材です。高い水分保持性能(一度すった水分を外にもらさずに保持する)を有しており、紙おむつの吸水性能を左右します。化学的には高分子(分子量が多いポリマー)という特徴を持ちます。
プロピレンやエチレンから汎用モノマー(アクリル酸)を製造し、そこから高吸水性ポリマーといった高分子樹脂を製造する工程となります。

出所:日本触媒資料
【高吸水性樹脂業界の世界市場シェア】
高吸水性樹脂業界の2025年度の売上高⇒参照したデータの詳細情報を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2025年の高吸水性樹脂業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位は日本触媒、2位はBASF、3位はストックハウゼンとなります。
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*推計値
**2025年非公開のため、2023年にEvonikがICIGに売却したSAP事業売上を使用
| 順位 | Company name (English) |
企業名(日本語) | 市場シェア |
| 1位 | Nippon Shokubai | 日本触媒 | 28.14% |
| 2位 | BASF* | BASF* | 21.04% |
| 3位 | Stockhausen (ICIG傘下、旧:Evonik)** | ストックハウゼン** | 15.87% |
| 4位 | Sumitomo Seika Chemicals | 住友精化 | 11.10% |
*推計値
**2025年非公開のため、2023年にEvonikがICIGに売却したSAP事業売上を使用
2025年の1位は日本触媒です。
独自の触媒技術とアクリル酸からの一貫生産体制を強みに、長年世界トップシェアを維持するグローバルリーダーです。近年は環境配慮型のバイオ基盤SAPやISCC PLUS認証を取得したサステナブル製品の供給体制を強化し、持続可能な衛生材料市場を牽引しています。
2位は、 BASFです。
ドイツを拠点とする世界最大級の総合化学メーカーです。
「HySorb」ブランドを展開し、欧米をはじめ世界中に大規模な供給網を持ちます。カーボンフットプリントを抑えた「ZeroPCF」グレードの市場投入など、環境対応とコスト競争力を両立させた事業展開を進めています。
3位は、投資会社ICIG傘下のストックハウゼン(Stockhausen)です。
元々はエボニック(Evonik)の主要事業でしが、ポートフォリオの抜本的見直しに伴い売却手続きが完了し、「Stockhausen Superabsorber GmbH」として独立・移行しました。伝統ある高い高分子技術を継承し、新たな体制下でシェアを維持しています。
4位は、日本の住友精化です。
独自の重合技術を活かして高品質な高吸水性樹脂を展開しています。衛生材料(紙おむつ等)向けを中心に高い評価を得ており、グローバル市場で確固たる存在感を発揮する堅実なプレイヤーです。
なお、LG化学など該当事業の売上非公開の企業は今回のランキング対象外としています。
【高吸水性樹脂業界の世界市場規模】
当データベースでは、2025年の高吸水性樹脂業界の市場規模を66億ドルとしております。参照した各種調査データは次の通りとなります。
調査会社フォーチュンビジネスインサイツによると、2025年の同業界の市場規模は65.7億ドルです。
2026年から2034年にかけて年平均7%で成長し、規模は69.8億ドルから120.1億ドルへと拡大することを見込んでいます。
調査会社マーケッツアンドマーケッツによると、2025年の同業界の市場規模は102.6億ドルです。
2026年から2031年にかけて年平均5.6%で成長し、規模は108.1億ドルから2031年には141.7億ドルに拡大すると予測されています。
| 年 | 市場規模 | 成長率見込み |
| 2025 | 65.7億ドル | – |
| 2026 | 69.8億ドル | – |
| 2034年 | 120.1億ドル | 7% |

【M&Aの動向】
2018年 BASF、バイエルからの事業および資産の買収を完了
2023年 エボニック、持続可能な化粧品有効成分ポートフォリオ強化のためノバケムを買収
2024年 日本触媒は、ライラックファーマ株式会社の全株式を取得
2024年 エボニック、超吸収性ポリマー事業部門を投資会社ICIGへ売却(社名「Stockhausen Superabsorber GmbH(シュトックハウゼン・スーパーアブソーバー)」)
【会社の概要】
NIPPON SHOKUBAI CO., LTD.(株式会社日本触媒)
日本を代表する高吸水性樹脂(SAP)メーカーであり、SAPの原料となるアクリル酸でも世界上位クラスを誇ります。汎用モノマーからの垂直統合のビジネスモデルに強みを持っています。2019年に三洋化成との経営統合(Synfomix)を発表しましたが、2020年に解消となりました。その後も独自の触媒技術と高分子技術で差別化を図り、業界トップシェアを維持しています。また、持続可能なサプライチェーン構築の一環としてISCC PLUS認証を取得するなど、環境配慮型SAPのグローバル供給体制を強化しています。
BASF(ビーエーエスエフ)
1865年に設立された世界最大級のドイツの総合化学メーカーです。化学業界の売上高ランキングで世界トップクラスの座を維持し、石油化学品、高性能製品、機能性材料、農薬事業を展開しています。SAP事業においては「HySorb」ブランドを展開し、アンタープ拠点等での優れた生産基盤を持ちます。近年では、製品カーボンフットプリント(PCF)がゼロの「HySorb B 6610 ZeroPCF」を市場投入するなど、環境対応型のサステナブルポートフォリオの拡大を積極的に進めています。さらに詳しく
Stockhausen Superabsorber GmbH(ストックハウゼン・スーパーアソーバー/ICIG傘下)
ドイツのスペシャリティケミカルメーカーであったエボニック(Evonik)のSAP事業が、独プライベートエクイティ・投資会社である国際投資グループ(ICIG:International Chemical Investors Group)への売却を経て、2024年9月1日付で独立した新会社です。
旧エボニックおよび歴史あるストックハウゼンの系譜を継ぐ高分子技術や、ドイツおよび米国における複数の生産拠点・約1,000名の従業員体制を引き継ぎ、新たなプラットフォームとしてグローバル市場で展開しています。
Evonik Industries(エボニック・インダストリーズ)
ドイツを代表するスペシャリティケミカルメーカーであるエボニック(Evonik)は、かつて石炭会社大手RAGとデグサ(Degussa)等の統合により誕生し、アニマルニュートリションや機能性化学品などに強みを持っていました。
同社は長年高吸水性樹脂(SAP)事業を世界規模で展開してきましたが、ポートフォリオの抜本的な見直し(パフォーマンス・マテリアルズ事業の売却方針)の一環として、SAP事業を国際投資グループ(ICIG:International Chemical Investors Group)へ売却することを決定しました。(2024年8月末に売却手続きが完了)
Sumitomo Seika Chemicals Company, Limited.(住友精化株式会社)
住友化学の持分法適用会社であり、吸水性樹脂を中心としたファインケミカルの大手メーカーです。独自の重合技術を活かして高品質なSAPを展開し、グローバル市場で確固たる存在感を発揮しています。直近ではシンガポールに新工場を本格稼働させるなど生産能力を増強しており、アジア市場を中心とした旺盛な衛生材料需要への供給体制を一層強化しています。
住友化学とは
住友化学は、1913年に別子銅山の煙害解消のために銅鉱石中の硫黄を取り出して肥料を製造する住友肥料製造所として設立されました。石油化学、機能材料、情報電子化学、農薬、医薬品が主軸です。サウジ・アラムコと組んで世界最大級の石油コンビナート(ラービグプロジェクト)を運営しています。機能性化学の分野では、偏光板で日東電工と並び、世界大手の1角となっています。また、メチオニンにも強みがあります。農薬の分野では、バイエル、BASF、コルテバ、シンジェンタのビッグ4に次ぐ準大手のポジションです。アクリル樹脂原料(MMA)は三菱ケミカルと双璧です。持分法子会社の住友精化で高吸水性樹脂事業を行っています。さらに詳しく
Sanyo Chemical Industries, Ltd.(三洋化成工業株式会社/SDPグローバル株式会社)
東レ・豊田通商系の界面活性剤・高吸水性樹脂が主力の化学メーカー三洋化成の子会社(SDPグローバル)を通じて高吸水性樹脂の製造販売を行ってきました。
日本触媒との経営統合計画の解消(2020年)を経て、その後収益性悪化や市場環境の変化等を背景に、2024年3月に高吸水性樹脂(SAP)事業からの撤退を決議し、事業の順次終了を進めました。
近年は中国や韓国メーカーも事業を拡大しております。LG化学、Xitao Polymer、Yixing Danson Technology、Zhejiang Satellite Petrochemicalなどが追い上げを図っています。
