医薬品製造受託業界の市場シェア、規模や再編について分析をしております。製薬会社からの製剤にかかるアウトソースの流れを受け、業界は拡大しております。サーモ・フィッシャー・サイエンティフィックによるパセオン買収のように業界大手が買収される動きが続いています。
市場シェア
医薬品製造受託会社の2021年度の売上高を分子に、後述する市場規模を分母にして、2021年の医薬品製造業界の世界市場シェアを簡易に算出すると、1位はサーモ・フィッシャー・サイエンティフィック、2位はキャタレント、3位はロンザとなります。⇒参照したデータの詳細情報
医薬品製造受託会社の世界シェアと業界ランキング(2021年)
順位 | 会社名 | 市場シェア |
---|---|---|
1位 | サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック | 8.5% |
2位 | キャタレント | 2.2% |
3位 | ロンザ | 1.9% |
4位 | ファレバ | 1.1% |
5位 | 富士フイルム | 0.71% |
6位 | レシファーム | 0.67% |
7位 | ベーリンガーインゲルハイム | 0.6% |
8位 | AGC | 0.5% |
9位 | バクスター | 0.36% |
10位 | ニプロ | 0.35% |
11位 | ファーマー | 0.13% |
12位 | シミック | 0.10% |
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市場規模
当サイトでは、各調査会社等の公表データを参考にし、医薬品製造受託業界の2021年の世界市場規模を1836億ドルとして市場シェアを計算しております。参照にしたデータは以下の通りです。
調査会社のモルドールインテリジェンスによると、2021年の同業界の市場規模は1836.2億ドルです。2027年に向けて年平均7.29%の成長し、同年には2896.4億ドルへと拡大する見込みです。新薬メーカーやジェネリックメーカーが製薬製造をアウトソースする流れによって、市場は拡大しております。⇒参照したデータの詳細情報
再編
ロンザ、サーモ・フィッシャー、AGCなどが積極的に買収を行っています。2021年には業界大手であったRecipharmをEQTが買収しました。売上高倍率は3~5倍程度と今後の成長を見込んだ高いバリュエーションが続いています。
2016年 ロンザによるCapsugel買収
2016年 ArdianによるUnither買収
2017年 サーモ・フィッシャー・サイエンティフィックによるパセオン買収
2017年 カーライルとGTCRによるAMRI買収
2017年 キャタレントによるCook Pharmica買収
2017年 AGCによるCMCバイオロジックス買収
2019年 サーモ・フィッシャー・サイエンティフィックによるBrammer Bio買収
2019年 キャタレントによるParagonバイオサービシーズ買収
2021年 EQTがRecipharmを買収
今後M&Aの対象となる可能性のある会社は「製造受託セクターでM&Aや再編対象となる会社の分析」をご参照下さい。
医薬品製造受託企業(CMO、CDMO、CROの違い)とは
製薬会社から、医薬品や原薬(医薬中間体)等の製造、製剤のアウトソースを受ける企業をさします。Contract Manufacturing Organizationの頭文字をとってCMOとも言われています。またCMOに医薬品のDevelopment(開発)のDを加えて、製剤設計の研究開発を行う機能として、CDMOと略される場合もあります。一方で、Contract Research Organization(CRO)は、創薬(動物を使った実験や臨床試験)を専門に取り扱う分野で、新薬を開発する際に製薬会社が外部に研究と開発を委託することです。なお、病院が治験を外部に委託する際にはSite Management Organization(SMO)を利用します。
日本CMO協会によれば、新薬先発メーカーは、抗がん剤・バイオ抗体医薬を中心とする新薬研究開発、医薬情報提供・マーケティングに特化し、固定費の大きい自社工場は縮小・集約されていきます。ジェネリックメーカーは、薬価改定、開発費増から自社工場への設備投資に慎重となります。製造販売メーカー全体が生産分業化される方向にあります。
- 創薬
↓製薬会社薬効がありそうな新しい物質の発見、特許申請
- 非臨床実験
↓CRO動物実験、毒物試験、治験モニタリング、生物化学分析など
- 治験薬製造
↓CDMO臨床試験向けの治験薬の製造
- 臨床試験
↓CRO、SMO臨床試験(治験対象とする被験者数によってフェーズI~IIIもしくはIV)
- 製剤
↓CDMO医薬品の製造
- 販売CSO
Contract Sales Organization、CSOは主に新薬の販売支援を行う
化粧品・医薬部外品OEMの最新動向
医薬品合成から製造まで
臨床検査会社の世界市場シェアの分析
医薬品・製薬業界の市場シェア・売上高ランキング・規模・再編の分析
ジェネリック・後発医薬品業界の世界市場シェアの分析
世界の主要医薬品受託会社
Lonza(ロンザ)
スイスに本拠をおく医薬中間体の製造受託会社です。バイオ医薬品、低分子化合物、バイオコンジュゲート、細胞治療および遺伝子治療等の有効成分の調査・開発・臨床をカバーし、原薬と製剤を行います。
Catalent(キャタレント)
米国の薬局チェーンや手術着、診察用手袋等の医療用器具製造大手の カーディナルヘルスから2007年に分社化して独立した会社です。経口剤、注射剤、吸引剤の受託製造を行っています。
Thermo Fisher Scientific(サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック)
試薬・検査大手です。1974年にカナダで創業されたCMO会社であるパセオン(Patheon)を2017年に買収しました。パセオンは2009年に投資ファンドのJLLパートナーズが買収し、オランダの食品成分メーカーであるロイヤルDSMの医薬品製造受託事業と統合して誕生した会社です。
ニプロ
ディスポザール医療機器の製造販売の運営を行っています。人工透析にも強みを持ちます。子会社のニプロファーマと全星薬品工業を通じて受託事業を展開し、開発、製剤製造、検査包装、物流までを一貫して製薬メーカーに提供しています。日本国内では、武州製薬、帝國製薬、製薬受託専業であるシミックHDと競っています。
Famar(ファーマー)
1949年にギリシャで設立されたCMO会社です。欧州を中心に受託工場を展開しています。
Fareva(ファレバ)
フランスに本拠を置くBernard Fraisse(バーナード・フラッセ)氏率いる製造受託会社です。製薬以外にも、化粧品等の製造受託も行っています。医薬品製造の分野ではフランス最大手と言われています。
AGC(旭硝子)
1907年に創業をした日本を代表するガラス・素材メーカーです。ガラス以外にも電子・化学品・セラミックスの分野で事業を展開しています。ガラス分野では仏サンゴバンと首位を競っています。液晶用ガラスにも強みを持ちます。ディスプレイ用特殊ガラス(Dragontrail®)が有名です。近年ライフサイエンス分野(バイオ医薬品原薬の製造開発受託等)への多角化を推進しています。さらに詳しく
Recipharm(レシファーム)
1995年に事業を開始したスウェーデンに本拠を置く医薬品開発・製造受託会社です。無菌製品、錠剤、カプセル、半固形物、液体、粉末といった非無菌製品、吸入用製品の開発・製造も行っています。EQTが2021年に買収しました。
富士フィルム
富士フイルムは、1934年に大日本セルロイドの写真フイルム事業がスピンオフして誕生した会社です。写真フイルムでは長らく世界最大級の会社でしたが、カメラのデジタル化やスマホ化が加速度的に進展した結果、フイルム技術を転用することが可能な医薬品・医療機器・ドキュメンテーションといった分野へ事業転換を進めています。デジタルカメラはコンパクトカメラやインスタントカメラに注力しています。
かつての世界を席巻した写真フイルムという成功の罠にはまらず、事業構造の転換を果たしつつあることは、大企業の成長戦略の成功事例として数多くケーススタディ化されています。さらに詳しく
シミック
シミックは、1985年に設立された新薬開発の治験サービス提供会社です。医薬品受託製造にも強みを持ちます。
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