医療機器・ヘルスケア機器業界の世界市場シェアの分析

医療機器・ヘルスケア機器業界(CT、MRI、超音波診断装置、外科用機器、医療器具等)の世界市場シェアと市場規模の情報について分析をしております。世界の主要な医療機器メーカーの一覧についても掲載しております。Johnson & Johnson(ジョンソン&ジョンソン)やGE、シーメンス、フィリップスといった巨人に日立、キヤノン、オリンパスが挑む構図です。

世界市場シェア

最新業界別売上高世界ランキング第6巻」に記載の医療機器・ヘルスケア機器メーカー各社の売上高を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして2019年の医療機器・ヘルスケア機器業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はジョンソン&ジョンソン、2位はメドトロニック、3位はGEとなります。

1位  ジョンソン&ジョンソン 9.4%
2位  メドトロニック 6.4%
3位  GE 4.4%
4位  べクトン・ディッキンソン 3.8%
5位  シーメンスヘルシニアーズ 3.5%
6位  カーディナル・ヘルス 3.4%
7位  アボット・ラボラトリーズ 2.7%
8位  バクスター 2.5%
9位  フィリップス 2.3%
10位  オリンパス 1.3%
11位  キャノン 0.9%
12位  フレゼニウス 0.9%
13位  テルモ 0.7%
14位  日立 0.4%

世界首位はJohnson & Johnson(ジョンソン&ジョンソン)です。2位にはコヴィディエンを買収したMedtronic(メドトロニック)が入っております。3位は大型診断機に強みを持つGEヘルスケア、4位にはインスリン用の注射器に強いべクトン・ディッキンソンが入り、CRバードの買収により更なる上位入りを目指します。6位には、シーメンスから分社化したシーメンスヘルシニアーズとなっています。

市場規模

当サイトでは、調査会社等の公表データを参考にし、医療機器・ヘルスケア機器業界の2019年の世界市場規模を4500億ドルとして市場シェアを計算しております。参考したデータは以下の通りです。
調査会社のザビジネスリサーチカンパニーによりますと、2020年の同業界の市場規模は4569億ドルです。2015年以降、年平均4.4%の成長率となります。調査会社のフォーチュンビジネスインサイツによりますと、2018年の市場規模は4255億ドルとなります。グローバルマーケットインサイツでは、2018年の世界の電子医療機器の市場規模を733億ドルとしております。同分野は2025年にかけて13%の成長を見込みます。また同社はCTスキャナーの2019年の市場規模を55億ドルとしております。グランビューリサーチによりますと、2019年のMRIの世界市場規模は52億ドルです。

医療機器とは?

医療機器は、主に診断機器、治療機器と周辺機器へと大きく分けられます。診断機はCTやMRI等診断で用いる機器です。治療器はメス、針や注射器等実際の治療で用いる医療器具です。周辺機器はその他の機器を指します。日本のメーカーは主に診断機器に強く、欧米の競合と争っています。医療機器全体では外科の手術関連機器につよいJohnson & Johnson(ジョンソン&ジョンソン)が世界シェア1位となっています。

大型医療機器でのポジション
CTの世界シェアはGEヘルスケア、シーメンスヘルシニアーズ、キヤノン傘下の東芝メディカルシステム、フィリップス、日立メディコの順になっています。MRIのシェアはシーメンス、GEヘルスケア、フィリップスの順、超音波診断装置はGEヘルスケア、フィリップス、日立メディコがトップ3となっており、これらの上位陣によって寡占される市場です。

世界の主要な医療機器メーカーの動向

Johnson & Johnson(ジョンソン&ジョンソン)

Johnson & Johnson(ジョンソン&ジョンソン)は1887年にジョンソン三兄弟によって創設された米国に本拠を置く世界最大級の日用品・医療機器メーカーです。医療・衛生用品のバンドエイドや綿棒、スキンケア用のベビーローション、オーラルケアのリステリン、一般医薬品、外科関連の手術器具では圧倒的な強みを有しています。

オーラルケア:
マウスウォッシュの世界シェアではファイザーより買収したリステリンで独走しています。2012年にDr.FreshにReachブランドの歯ブラシを売却しています。
医療・衛生用品:
コンタクトレンズ業界の世界シェアでは、アキュビューブランドを世界展開し上位に位置します。2016年にアボット・メディカル・オプティクスを買収して、眼科治療分野に参入をしました。バンドエイドや綿棒でも有力な企業です。医療用医薬品・製薬業界の世界シェアでもトップ10入りしています。
医療機器:
血糖測定器業界の世界シェアでは世界首位級です。医療機器・ヘルスケア機器業界全体の世界シェアも世界首位級です。
スキンケア:
ジョンソンベビーやジョンソンボディケアとして展開し、ベビーローション等の有力な商品を揃えます。2018年に日本のドクターシーラボを買収しスキンケア事業を強化しております。
2006年 ファイザーの一般医薬品部門を買収
2015年 カーディナル・ヘルスに心臓・血管系機器部門コーディスを売却
2016年 アボットの眼科治療子会社を買収
2017年 スイスのアクテリオンを買収
2018年 ドクターシーラボを買収

参考書

  • ビッグ・ピボット―なぜ巨大グローバル企業が〈大転換〉するのか
    成功経営の法則―ジョンソン・エンド・ジョンソンのグローバル・スタンダード
    約束された成長―66年連続増収J&J(ジョンソン・エンド・ジョンソン)常勝の経営戦略

GE

GE(ジェネラル・エレクトロニック)は、1878年にトーマス・エジソンによって設立されたエジソン電気照明会社を源流に持つ世界を代表する総合電機メーカーの老舗です。世界シェア1位か2位以外の事業からは撤退するというナンバーワン・ナンバーツー戦略を実施し、積極的な事業ポートフォリオの入れ替えを行うことでも有名です。インダストリアル・インターネットを成長戦略にしたジェフ・イメルト氏が退任した後、2017年に生え抜きのジョン・フラナリー氏が社長に就任したものの、2018年には外部のダナハーからラリー・カルプ氏が招聘され、新CEOとなるなど、経営陣の交代が続きます。

デジタル・インダストリアル・カンパニーを標ぼうして、IoTの今後の動向を見据えた製造業の変革に積極的に取り組んでいます。2017年には下記7つあった事業本部が、2020年には、電力制御、送電やスマートグリッド等の機器の製造や火力・水力・原子力発電所向けのタービン等の機器を取り扱うパワー事業、CTスキャン等の医療用機器の製造を行うヘルスケア事業、航空機エンジン等の製造を行うアビエーション事業、風力や太陽光発電等の機器の製造を行うリニューアブル・エナジー事業、そしてキャピタル事業の5本部体制となっております。

GE事業ポートフォリオ2017年

GE事業ポートフォリオ2017年
出所:同社

ジェットエンジン、エナジーマネジメント、再生エネルギー部門がグループ全体の営業利益の3分の2、売上高の60%近く生み出す稼ぎ頭です。石油やガス関連向けに採掘・生産・パイプライン輸送、化学プラント向けの機器を提供するオイル&ガス事業は、2017年に、イメルト氏の「水より石油」というリーダーシップの下、水処理膜事業や水処理向けのプラントを含む工業用水処理事業のGE Waterをスエズエンバイロメントに売却し、石油サービス大手であるベーカー・ヒューズを買収しています。その後2019年には保有しているベーカー・ヒューズ株式を市場で売却しました。鉄道車両の製造を行うトランスポーテ―ション事業は米国の同業であるワブテックへ売却しました。祖業の照明機器を取り扱うライティング事業も2020年にサバント・システムズへ売却しました。

パワー事業では、ガスタービン、蒸気タービン、ボイラ(熱交換機)、分散電源向け発電機器(イエンバッハ、ワーキシャー、但し2018年に投資ファンドへの売却を発表)、原子力発電所のGE日立ニュークリア、フランスのアルストムより買収した送配電設備、特高変電設備等を製造しています。売上高は186億ドルと巨大な組織です。タービン、送配電、原子力発電の分野では大手です。
リニューアブル・エナジー事業では、風力発電所のタービン(Haliade 150-6MW等の超大型のものも対応可能)や設備、風車の羽根(ブレード)、水力発電所のポンプや設備を製造。水力発電設備の総発電能力のうち、4分の1以上がGEの発電機器によるものとされます。フランスのアルストムを買収し更なる事業の拡大を図っています。
ヘルスケア事業は、従業員約5万超、世界の約140ヶ国で展開、部門の売上は約200億ドルとGEの売上の約20%を占めるGEの主力事業の一角です。画像診断装置(MRI, CT, MIや超音波診断装置、骨密度測定装置、各種X線撮影装置、心臓カテーテルモニタリングシステム)、麻酔器、生体情報モニタおよびユニークパラメータ、分娩監視装置、新生児黄疸光線治療器、保育器、バイオテクノロジー関連機器・分析ソフト・試薬、バイオ医薬品製造向けシステム等を提供。医療機器分野では世界最大手の一角です。
アビエーション事業は、商用・軍用の航空機エンジンの世界3大メーカーの一角となっています。軍事用も手掛けています。ワイドボディー機向けのエンジンに強みを持ちます。ナローボディ機では、フランスのスネクマとCFM Internationalを展開しています。航空機リースの分野では、GECAS(ジーキャス)が世界最大手クラスです。

2006年 保険事業をスイス再保険へ売却
2007年 プラスチック部門をサウジアラビアのSABICに売却
2007年 GEセキュリティを米国のUTC(ユナイテッド・テクノロジーズ)に売却
2009年 メディア事業のNBCユニバーサルをコムキャストへ売却
2015年 仏重電大手のアルストムと発電事業及び鉄道車両事業における経営統合
2016年 家電事業を中国のハイアールへ売却
2016年 GEキャピタル傘下の消費者金融部門をシンクロニー・フィナンシャルとして分社化IPO
2017年 GE Waterをスエズエンバイロメントに売却
2017年 フランスで展開する消費者金融のGE Moneyを投資ファンドのサーベラスへ売却
2017年 デンマークのブレードと呼ばれる羽根の部分を製造する風力発電機器メーカー、LMウインド・パワーを買収
2018年 業務用照明部門(カレント)をアメリカン・インダストリアル・パートナーズに売却
2018年 分散型電源対応用のガスエンジンを生産するブランド「イエンバッハ」と「ワーキシャー」をアベンティスに売却
2018年 機関車事業を米鉄道機器メーカーのワブテックと経営統合
2018年 フィールドサービス管理ソフトウェアを提供するServiceMax(サービスマックス)をSilver Lakeに売却
2018年 ヘルスケア部門の分社化を発表
2019年 ベーカー・ヒューズの持分の売却
2019年 GEトランスポーテーションをワブテックへ売却
2020年 照明事業をサバント・システムズへ売却
GE 巨人の復活 シリコンバレー式「デジタル製造業」への挑戦
GE変化の経営
ジェフ・イメルト GEの変わりつづける経営
ウィニング 勝利の経営
GEが目指すインダストリアル・インターネット
オイル・ガス事業では、ガス・蒸気タービン、圧縮機、ポンプ、エキスパンダー等の回転機器、大型回転機械の振動計測サービス、発電所の制御装置、工業用計測機器、放射線モニタリング機器、非破壊検査機器、流体制御のバルブ製品等を製造していました。ベーカーヒューズを買収し、石油サービス分野では、世界大手級となったのでした。
GEトランスポーテーションでは、ディーゼル機関車等鉄道用車両や船舶用エンジンなどを製造・販売していました。2017年の売上高は約39億ドル。従業員数は約9000人。2018年に米機関車・貨客車製造大手ワブテックに株式の49.9%を29億ドルで売却されました。
照明事業はGEの祖業です。2018年に業務用照明部門を投資ファンドに売却をしました。消費者向けの照明は2020年にサバント・システムズに売却しました。

Medtronic(メドトロニック)
米国に本拠を置く医療機器世界大手です。心臓ペースメーカーの領域において強みを持ちます。2015年にアイルランドのヘルスケア製品大手コヴィディエンを買収しました。

Siemens(シーメンス)

シーメンス(Siemens AG)は、ドイツのミュンヘンに本拠を置く大手総合電機メーカーです。1847年に、ヴェルナー・フォン・ジーメンス (Werner von Siemens) によって設立されました。世界初の電車を製造したことでも有名です。事業範囲は電力、交通システム、家電、医療等と社会インフラ全般に及びます。事業のポートフォリオを組み替えながら、モノ作りのデジタル化や産業機器のIoT化を含むインダストリー4.0を提唱し、強力に推進しています。米国のライバルであったGEと同じように再編を通じて、その時々の社会ニーズに即した組織体を作り上げる柔軟性のある経営を行っています。鉄道車両はグループ内のモビリティ事業本部が担当しています。ICEで知られるドイツの高速鉄道も手掛けています。2017年には鉄道車両部門でアルストムと経営統合を発表しましたが、2019年に欧州委員会がアルストムとの経営統合を承認せず遂行されませんでした。鉄道信号にも強みを持ち、上位株主には、象徴としてのシーメンス家が引き続き残っています。

Baxter(バクスター)
米国に本拠を置く医療用品大手です。医療機器の分野では腎臓透析装置等に強みを持ちます。血友病治療薬等の製薬分野にも強みがあります。

Fresenius(フレゼニウス)
ドイツに本拠を置く大手医療機器メーカーです。人工透析装置や人工腎臓等まで透析関連事業において強みを持ちます。

Philips(フィリップス)

Philips(フィリップス)は、オランダに本拠を置く、家電・ヘルスケアメーカーであり、1891年にヘラルド・フィリップスによって設立されました。照明事業が祖業で、かつては半導体事業等も手掛けていましたが、近年、事業の再構築を行い、現在では医療機器、パーソナルヘルスケアの分野に注力しています。祖業でもある照明・ランプ事業は、フィリップスライティング(現シグニファイ)として分社化をしました。医療機器の分野では画像診断領域に強みを持ちます。家電はキッチン向けやシェーバー等のパーソナルケア向けの商品ラインアップを強化しています。掃除機、コーヒーメーカー、アイロン等の小型家電も手掛けています。パーソナルケアではシェーバーや電子歯ブラシが強いです。電子歯ブラシはソニッケア(Sonicare)ブランドで高機能帯をブラウンのオーラルBと二分しています。

Cardinal Health(カーディナル・ヘルス)
米大手医療用品関連企業です。手術用手袋、不職布等の感染防御製品に強みを持ちます。

べクトン・ディッキンソン
米国に本拠を置く医療用機器大手です。インスリン用の注射器や白血球の解析機器に強みがあります。2017年に血管疾患や泌尿器向けの機器を提供するCRバードを買収しました。

アボット・ラボラトリーズ
米国に本拠を置く医療機器メーカーです。心血管治療関連に強みがあります。2016年に米医療機器メーカーでペースメーカーやカテーテル器具に強いセント・ジュード・メディカルを買収しました。

日本の主要な医療機器メーカー
テルモ、キャノンメディカルシステム(旧東芝メディカルシステム、2016年に東芝からキャノンが買収しております)、日立メディコ、オリンパス等が主要な企業です。

キヤノンについて

キヤノンは1937年に創業された日本を代表する光学・OA機器メーカーです。カメラ、複写機、プリンター等の分野で業界首位級です。近年はM&Aを駆使して新規領域への展開を図っています。OA機器、イメージング、産業機器等の分野で業界首位級の競争力のある商品群を展開しています。
OA機器のコピー機及び複写機では、ゼロックスやHPと並ぶ業界大手となっています。イメージングであるデジタルカメラ分野では、一眼レフとミラーレスカメラを強化しています。一眼レフやビデオカメラ等の分野にも強みを発揮しています。インクジェットプリンターでは、HPやエプソンと業界首位の座を競います。監視カメラではスウェーデンのアクシスコミュニケーションを買収し、業界トップクラスとなりました。半導体露光装置では、オランダのASML社に差をつけられつつあるものの、ニコンと並び露光装置大手のメーカーです。医療機器業界では、東芝メディカルを買収し、CTやMRIの分野で上位に入ります。

2010年 オランダの商業印刷大手オセの買収
2010年 ポーランドの眼科検査装置大手のオプトポル買収
2014年 デンマークのマイルストーンシステムズ買収
2015年 スウェーデンのアクシスコミュニケーションズを買収
2016年 東芝メディカルの買収

主要な業界団体
一般社団法人 日本医療機器産業連合会

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