ティッセンクルップ(ThyssenKrupp)は、1811年創業のクルップと1867年創業のティッセンが、1999年に経営統合をして誕生したドイツ最大級の重工業メーカーです。鉄鋼、エレベーター、自動車部品、造船(軍需向け)がメイン事業です。2010年代以降構造改革を行い、タタ製鉄との欧州製鉄事業の経営統合が破たん後、2019年にティッセンクルップは、主に自動車部品、エレベーター、プラントサービスを提供するtkインダストリアルズと鉄鋼販売、クランクシャフト等の産業材、潜水艦、鉄鋼を手掛けるtkマテリアルズに分社化する旨発表しましたが、実現せず、2019年に稼ぎ頭であるエレベーター事業をアドベント・インターナショナルに売却しました。
幻に終わった会社分割案
[tkインダストリアルズの概要]

幻となったtkインダストリアルズ
[tkマテリアルズの概要]

幻となったtkマテリアルズ
出所:同社AR
鉄鋼事業(スティール・ヨーロッパ):かつては鉄鋼業界の名門として粗鋼生産量も上位にいましたが、近年は北米の鉄鋼事業はアルセロールミタル・新日鉄連合に売却したり、2017年にブラジルの高炉事業アトランティコ製鉄(CSA)を南米大手のテルニウムに売却するなど鉄鋼事業を縮小しております。欧州では、英コーラスの流れを汲むインドのタタ製鉄との経営統合を目指しましたが、規制当局より承認がおりず、断念しております。高炉事業の縮小を図っています。2020年に英鉄鋼大手リバティ・スチール・グループから買収の提案を受けています。世界の粗鋼生産量では上位との差は大きいですが、欧州における平鋼生産量では、下図の通り1位アルセロールミタル、2位ティッセンクルップ・タタ、3位イタリアのイルバ、4位オーストリアのフェストアルピーネ、5位はドイツのザルツギッター、6位はSSAB(スェーデンスチール)と上位に入っています。
2020年にイギリスのリバティ・スチール・グループがティッセンクルップの欧州事業の買収を提案しました。

TK鉄鋼生産量
出所:同社
Liberty Steel Group(リバティ・スチール・グループ)
英国に本拠を置く製鉄メーカーです。サンジーブ・グプタ氏率いるコングロマリットであるGFGアライアンス傘下の企業となります。
エレベーター事業(エレベーター・テクノロジー):オーチス、コネ、シンドラーと並ぶエレベーター会社の四天王の一角でしたが、2020年にアドベント、シンベン、独RAG財団のコンソーシアムへ172億ユーロで売却しました。
自動車部品事業(コンポーネンツ・テクノロジー):自動車部品業界でも存在感を発揮しています。子会社のビルシュタインが手掛けています。パワートレイン、シャシー、クランクシャフトの分野に強みがあります。ステアリングの分野では、ボッシュ、ZF/TRW、NSKと、サスペンションでは、ZF/TRW、Tenneco、Mubea、NHKスプリング、ベンテラーと、クランクシャフトでは、Bharat Forge、CIE Galfor等と競合しています。主要な商品構成は以下の通り。

自動車部品事業概略
出所:同社AR
造船(インダストリアル・ソリューション):クルップ社は歴史的に兵器の製造に携わっており、ティッセンクルップ社も潜水艦等の分野を手掛けています。
マテリアル・サービス:顧客のサプライチェーンの効率化サービスといった倉庫マネジメントサービスを提供しています。
クルップ一族の財団であるアルフリート・クルップ・フォン・ボーレン・ウント・ハルバッハ財団が約21%超の株式を保有し、アクティビストファンドのCevian Capitalも株式を保有しています。

ティッセンクルップ株主構成
2011年 ステンレス鋼のイノクサム(Inoxum)をフィンランドのオウトフンプ(Outokumpu)へ売却
2014年 アラバマ州の米鋼板工場をアルセロールミタルと新日鉄住金に15億5千万ドルで売却
2015年 ニッケル合金のVDMグループを投資会社のリンゼイ・ゴールドバーグ(Lindsay Goldberg Vogel)へ売却
2017年 ブラジルの高炉事業アトランティコ製鉄をテルニウムに15億ユーロで売却
2017年 欧州鉄鋼事業をタタ製鉄と統合
2018年 会社分割(インダストリアルズとマテリアルズ)を発表
2020年 エレベーター事業をアドベントインターナショナル等の企業連合へ売却