エレベーター業界の世界市場シェアの分析

エレベーター業界のランキング、世界市場シェア、市場規模、再編について分析をしています。米オーティス、スイスのシンドラー、フィンランドのコネ、ドイツのティッセンクルップが世界4強です。中国のエレベーター新設も一巡し、今後は保守・メンテナンスでの収益が重要になるストックビジネスへとビジネスモデルが変化してきています。

またビル全体のシステムを構築する上でもエレベーターは重要なハードウェアですので、日立製作所や三菱電機はビルシステム事業として、他事業とのシナジーを追及しているのが特徴です。

2019年エレベーター世界1位は米国のオーティス(市場シェア17%)

米国に本拠を置くエレベーター世界最大手の一角です。オーチスのブランド力は圧倒的です。エッフェル塔、自由の女神、日本では霞が関ビルに設置され、歴史ある建物はオーチスのエレベーターといっても過言ではありません。元々は、米航空宇宙防衛大手メーカーであるUnited Technologies(ユナイテッド・テクノロジーズ、現レイセオン・テクノロジーズ、Raytheon Technologies)が1973年にオーチス・エレベーターを買収し、同社の事業部門でしたが、2020年に分社化しました。設置実績のあるエレベーター・エスカレーターは200万台超です。オーチスは2020年にレイセオンテクノロジーズ(旧ユナイテッドテクノロジーズ)から分社化する形で誕生しました。

世界2位はシンドラー(市場シェア15%)

1874年に、ロバート・シンドラーによって設立されたスイスに本拠を置くエレベーター専業メーカーです。エスカレーターも世界首位級です。上場会社ではありますが、シンドラーファミリー(Schindler and Bonnard families)が過半数の議決権を所有しています。

エレベーター市場シェア3位はコネ(14%)

アンティ・ヘルリン(Antti Herlin)氏率いるフィンランドの重機大手メーカーです。エレベーターやエスカレーターにも強みを持ちます。世界初の機械室なしエレベーターを開発したことでも有名です。クレーンやフォークリフト事業を分社化しています。東芝エレベーターへ出資をしています。

市場シェア4位はティッセンクルップの12%

ティッセンクルップ(ThyssenKrupp)は、1811年創業のクルップと1867年創業のティッセンが、1999年に経営統合をして誕生したドイツ最大級の重工業メーカーです。鉄鋼、エレベーター、自動車部品、造船(軍需向け)がメイン事業です。2010年代以降構造改革を行い、タタ製鉄との欧州製鉄事業の経営統合が破たん後、2019年にティッセンクルップは、主に自動車部品、エレベーター、プラントサービスを提供するtkインダストリアルズと鉄鋼販売、クランクシャフト等の産業材、潜水艦、鉄鋼を手掛けるtkマテリアルズに分社化する旨発表しましたが、実現せず、2019年に稼ぎ頭であるエレベーター事業をアドベント・インターナショナルに売却しました。

幻に終わった会社分割案
[tkインダストリアルズの概要]

幻となったtkインダストリアルズ

幻となったtkインダストリアルズ

[tkマテリアルズの概要]

幻となったtkマテリアルズ

幻となったtkマテリアルズ
出所:同社AR

鉄鋼事業(スティール・ヨーロッパ):かつては鉄鋼業界の名門として粗鋼生産量も上位にいましたが、近年は北米の鉄鋼事業はアルセロールミタル・新日鉄連合に売却したり、2017年にブラジルの高炉事業アトランティコ製鉄(CSA)を南米大手のテルニウムに売却するなど鉄鋼事業を縮小しております。欧州では、英コーラスの流れを汲むインドのタタ製鉄との経営統合を目指しましたが、規制当局より承認がおりず、断念しております。高炉事業の縮小を図っています。2020年に英鉄鋼大手リバティ・スチール・グループから買収の提案を受けています。世界の粗鋼生産量では上位との差は大きいですが、欧州における平鋼生産量では、下図の通り1位アルセロールミタル、2位ティッセンクルップ・タタ、3位イタリアのイルバ、4位オーストリアのフェストアルピーネ、5位はドイツのザルツギッター、6位はSSAB(スェーデンスチール)と上位に入っています。
2020年にイギリスのリバティ・スチール・グループがティッセンクルップの欧州事業の買収を提案しました。

TK鉄鋼生産量

TK鉄鋼生産量
出所:同社

Liberty Steel Group(リバティ・スチール・グループ)
英国に本拠を置く製鉄メーカーです。サンジーブ・グプタ氏率いるコングロマリットであるGFGアライアンス傘下の企業となります。

エレベーター事業(エレベーター・テクノロジー):オーチス、コネ、シンドラーと並ぶエレベーター会社の四天王の一角でしたが、2020年にアドベント、シンベン、独RAG財団のコンソーシアムへ172億ユーロで売却しました。

自動車部品事業(コンポーネンツ・テクノロジー):自動車部品業界でも存在感を発揮しています。子会社のビルシュタインが手掛けています。パワートレイン、シャシー、クランクシャフトの分野に強みがあります。ステアリングの分野では、ボッシュ、ZF/TRW、NSKと、サスペンションでは、ZF/TRW、Tenneco、Mubea、NHKスプリング、ベンテラーと、クランクシャフトでは、Bharat Forge、CIE Galfor等と競合しています。主要な商品構成は以下の通り。

自動車部品事業概略

自動車部品事業概略
出所:同社AR

造船(インダストリアル・ソリューション):クルップ社は歴史的に兵器の製造に携わっており、ティッセンクルップ社も潜水艦等の分野を手掛けています。

マテリアル・サービス:顧客のサプライチェーンの効率化サービスといった倉庫マネジメントサービスを提供しています。

クルップ一族の財団であるアルフリート・クルップ・フォン・ボーレン・ウント・ハルバッハ財団が約21%超の株式を保有し、アクティビストファンドのCevian Capitalも株式を保有しています。

ティッセンクルップ株主構成

ティッセンクルップ株主構成

1999年 エレベーター大手の米Dover Elevator Companyの買収
2011年 ステンレス鋼のイノクサム(Inoxum)をフィンランドのオウトフンプ(Outokumpu)へ売却
2014年 アラバマ州の米鋼板工場をアルセロールミタルと新日鉄住金に15億5千万ドルで売却
2015年 ニッケル合金のVDMグループを投資会社のリンゼイ・ゴールドバーグ(Lindsay Goldberg Vogel)へ売却
2017年 ブラジルの高炉事業アトランティコ製鉄をテルニウムに15億ユーロで売却
2017年 欧州鉄鋼事業をタタ製鉄と統合
2018年 会社分割(インダストリアルズとマテリアルズ)を発表
2020年 エレベーター事業をアドベントインターナショナル等の企業連合へ売却

5位の日立製作所の世界シェアは8%

日立の子会社である1956年に設立された日立ビルシステムが昇降機の製造・販売・保守を担っています。同社は、空調やビルのセキュリティ管理も行っています。2018年に台湾のエレベーター大手である永大機電工業を買収しました。

市場シェア分析の解説

2019年11月付「エレベーター業界の世界売上高ランキング(2019年版)」をもとに、エレベーター世界大手の売上高世界シェアを計算すると、2019年の世界市場シェアでは、オーチスが17%で引き続き1位となっています。ユナイテッド・テクノロジー傘下の有力企業として、2位の同シェア15%のシンドラー社より頭ひとつ抜き出た形となっています。世界3位は、フィンランドのコネの14%です。4位は、会社再編中のティッセンクルップの12%です。世界5位は永大機電工業を買収して三菱電機を抜いた日立の8%、世界6位は三菱電機の7%、世界7位はフジテックの2%、世界8位は東芝エレベーターの2%です。

市場規模

当サイトでは、各調査会社等の公表データを参考にし、エレベーター業界の2019年の世界市場規模を750億ドルとして市場シェアを計算しております。参照にしたデータは以下の通りです。オーチス社の2019年11月付プレゼンテーションによれば、2018年のエレベーター業界の世界市場規模は、金額ベースで750億ドルと推計されています。世界の稼働エレベーターは16百万台、年間約1百台が新規需要程度です。またフジテックの2020年12月付プレゼンテーションによると、発表時点での世界の年間エレベーター新設台数は100万台と推計しています。台数ベースでは中国が60%の新規需要を担っています。⇒参照したデータの詳細情報

エレベーター業界の再編の歴史

エレベーター業界はグローバルでメンテナンス事業を行う必要があり、大手エレベーター会社が地域毎の有力エレベーター会社を買収する流れが続いています。

  • 1976年 オーチス・エレベーターが米ユナイテッド・テクノロジーズに買収される
  • 1997年 オーチス・エレベーターによる英Evans Liftsの買収
  • 1999年 ティッセンクルップによる米Dover Elevator Companyの買収
  • 2003年 オーチス・エレベーターによるAmtech Elevator Servicesの買収
  • 2006年 シンドラーによるSuzhou Schindler Elevatorの買収 
  • 2008年 シンドラーによるカタールのAl Doha Elevators & Escalatorsの買収 
  • 2009年 シンドラーによるサウジアラビアのSaudi Elevator の買収
  • 2010年 シンドラーとティッセンクルップによるフランスのConstructions Industrielles de la Mediterranee SA (CNIM)の共同買収 
  • 2011年 コネによる 米Long Elevator & Machineの買収 
  • 2013年 シンドラーによるカナダのSkyline Elevatorの買収
  • 2013年 コネによるアイルランドのEnnis Liftsの買収 
  • 2015年 コネによる米Barist Elevatorの買収
  • 2018年 日立による永大機電工業の買収
  • 2020年 ティッセンクルップがエレベーター事業を投資ファンドに売却

エレベーターの構造

エレベーターには、電動モーターを利用するロープ式のエレベーターと電動ポンプで油圧をコントロールする油圧式の2つの方式があります。現在の主流はロープ式エレベーターです。ロープ式にはおもりを利用するトラクション式とドラム利用するドラム式の2つの方式があります。

業界関連図書

その他の世界の主要なエレベーター会社の一覧

三菱電機

三菱電機の子会社である三菱電機ビルテクノサービスが担当しています。日本国内では最大手の一角です。

東芝

フィンランドのコネとの合弁会社でエレベーター事業を行います。台湾101、上海環球金融、スカイツリー、あべのハルカス等への納入実績があります。国内、中国、インドが主戦場です。

永大機電工業(Yungtay Engineering、ユンタイ・エンジニアリング)

1966年に設立された台湾に本拠をおくエレベーターメーカーです。設立当初より日立と提携関係にあります。エスカレーター、建設機械、および駐車装置の製造・販売を手掛けています。2018年に日立が公開買付を行い子会社化しました。

現代エレベーター

現代グループのエレベーター会社。シンドラーが大株主となっています。韓国国内の市場シェアではトップクラスです。

瀋陽遠大企業集団(Shenyang Yuanda Group、シェンヤン・ユアンダ・グループ)

康宝華董事長が率いる中国の民間企業です。カーテンウォールやエレベーター等が主力事業です。カーテンウォールの分野では、ペルマストリーザと業界の首位を争っています。エレベーターの分野では年間の製造能力は3万台、売上規模は150億円程度と推計されています(2019年時点)。新宿にある東京モード学園の「コクーンタワー」の外壁を手掛けたことでも有名です。

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