フジテック対アセット・バリュー・インベスターズのリアルタイムケーススタディ

英国のクローズドエンド型上場投資信託の運営管理を行い、またAVI Japan Opportunity Trust (AJOT、AVIジャパンオポチュニティーファンド)等の日本に特化したアクティビストファンドの運営管理をするアセット・バリュー・インベスターズ(AVI)が、2020年5月20日に、日本のエレベーター専業大手であるフジテック社に対して、公開株主提案を行いました。

フジテックは2020年4月末時点でAVIのNAV比率(投資先企業の純資産に対するAVI投資額の比率)で8.1%と最上位に位置しています。

出所:AVI社公表資料

対話の経緯

フジテック経営陣とAVIの対話を時系列でまとめています
  • 2018年
    経営陣との面談を複数回実施

    株主から経営陣へ書簡も3通送付されました

  • 2020年5月
    公開書簡

    フジテックの改善点を公開書簡の形で指摘しました

  • 5月29日
    株主提案に対する取締役会意見の公開

    株主提案として挙げられる自己株式の消却を総会決議事項とする定款変更に、機動的な資本政策がとれなくことから、反対しました

  • 6月9日
    議決権行使助言会社ISSへの反論

    ISSが株主提案を推奨したことに対して、経営陣として反対の意見を述べています

  • 2020年6月
    株主総会

    株主提案(自己株式の消却)は否決されました

2020年5月の公開書簡(AVI→フジテック経営陣)の骨子

”2018年頃に投資を実施して以降、現経営陣とは複数回に亘り面談を実施
書簡も3通送付し以下の点について協議。
過小評価されている株価の要因として

同業他社と比べて利益率が低い
非効率な資本配分
弱いコーポレートガバナンス

がある。

2020年5月時点までに回答が得られていないことから公開書簡を送付した。”

以下、AVIが指摘する各論点について状況をまとめていきたいと思います。

過小評価されている株価

AVIが指摘するベンチマークしている同業他社は、主にオーチス(Otis)、シンドラー(Schindler)、コネ(Kone)、ティッセンクルップ(Thyssenkrupp、エレベーター事業)のエレベーター業界の四天王と呼ばれる4社となります。

オーチスは、元々は、米国の軍産複合体であるレイセオンテクノロジーズ(旧ユナイテッドテクノロジーズ、UTC)傘下のエレベーター会社でした。UTCは2018年のロックウェルコリンズ(Rockwell Collins)の買収、2019年の米レイセオン(Raytheon)との経営統合を経て、航空機部品事業へ経営資源をシフトしており、エレベーター事業のOtisと空調エアコン事業(HVAC)のキャリア(Carieer)は2020年に分社化して独立しています。

シンドラーは、スイスに本拠をおくSchindler and Bonnard家が約7割の株式を保有する上場会社です。

コネは、フィンランドのエレベーター会社です。アンティ・ヘルリン(Antti Herlin)氏が約62%の株式を保有しています。(2020年5月現在)2005年にクレーン等の重機大手であるカーゴテック(Cargotec Corporation)社を分社化しています。

ティッセンクルップは、ドイツの鉄鋼大手のティッセンクルップが運営していたエレベーター会社ですが、2020年2月にアドベントやシンベンといった投資ファンド連合へ売却されました。

企業価値評価の主要な指標の一つである企業価値/営業利益マルチプル(EV/EBITマルチプル)では、エレベーターの世界大手4社の平均(2016年~2020年)は約15倍に対してフジテックは5倍程度と、評価に大きな乖離が生じています。ティッセンクルップのエレベーター事業の買収倍率も公表された買収金額(172億ユーロ)を前提に計算をすると、約19倍となっています。
エレベーター業界の世界の年間エレベーター設置台数は2014~2019年で概ね80万台程度で推移しています。その内約半分を中国の設置がしめております。また売上の約半分はメンテナンス及びリニューアルで占められています。
特に、ここ数年の設置台数の推移を見る限りでは、エレベーター市場は成長市場とはいえず、成熟市場の製品の収益力を高めていくためには、グローバルな体制でのメンテナンス・リニューアル案件の獲得へとなっています。企業価値には大手4社はグローバルでサービスを維持・提供できていることが反映されているものと考えられます。

同業他社と比べて利益率が低い

AVIが採択しているエレベーター会社は、北米、スイス、フィンランド、ドイツにおいては国を代表する会社もしくはグループに属しております。
同4社の営業利益率は、過去10年間概ね10%超であったものの、フジテックは5-6%程度で推移しており、経営を改善することでより高い営業利益率が達成できるという観点から、AVIは、規模の拡大、製造工程、地域戦略等につき、改善及び見直しを提案しています。

非効率な資本配分

フジテックの自己資本比率は60%程度であり、エレベーター大手4社の27%に比べて、自己資本が高くなっています。一つの要因として、政策保有株主が挙げられます。

出所:同社公表資料

日本版コーポレートガバナンス・コードでは、こうした持合株式の解消を要請しております。

弱いコーポレートガバナンス

監査・報酬・指名委員会を設置する委員会設置会社になっていない点、創業一族である内山氏が会長、社長、CEOを兼任している点、買収防衛策が継続されている点、社外役員の比率が低い点等についてコーポレートガバナンスが低いと指摘しています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました