1886年にロバート・ボッシュ氏によってシュトゥットガルトに設立された精密機械と電気技術作業場を起源とするドイツを代表する総合電機メーカーです。産業用機器や車載用機器が主力事業ですが、電動工具事業も伝統的に強みを持ちます。他に住宅向けの家電やエネルギー関連機器等を手掛けています。ボッシュ一族が支配する非上場会社です。独VW社と関係が深いとされます。
2024年6月19日にドイツで開幕した「Bosch Tech Day 2024」では、2030年までにソフトウェアで数十億ユーロ規模の売上高を目指すと発表しました。自動車業界の新しいトレンドとなっているソフトウェア定義自動車(SDV)の成長市場に加わることが期待されています。
業績推移(年次)
※本稿の営業利益は同社独自のEBIT(利払前税引前利益)を指します。
2021年度
売上高は前年度比10.15%増の787.5億ユーロになりました。営業利益は69.89%増の28.15億ユーロになりました。営業利益率は3.57%になりました。
原材料の価格高騰などの負担がありましたが、予想を上回る増収増益を達成しました。マイクロエレクトロニクスとeモビリティへの投資、自動運転分野でフォルクスワーゲンと業務提携するなど、主要分野を中心に戦略的に投資・パートナーシップを推進しました。
2022年度
売上高は前年度比12.0%増の882.0億ユーロになりました。営業利益は23.41%増の34.74億ユーロになりました。営業利益率は3.94%になりました。
半導体不足・景気低迷のあおりを受けながらも、全セグメントで売上高を伸ばすことができ、増収を達成しました。今後は中国蘇州のエンジニアリング・製造センターへの投資、半導体事業への投資などを予定していると発表しました。
2023年度
売上高は前年度比3.85%増の916.0億ユーロになりました。営業利益は29.62%増の45.03億ユーロになりました。営業利益率は5.23%になりました。
Boschの売上が増加した理由の一つは、為替レート調整後の成長率が8.0%に達したことです。特にモビリティ、産業機器テクノロジー、エナジー&建築技術部門が大きく成長しました。産業技術部門の成長は、新しく買収した企業の初めての統合によるものです。一方、消費財部門の売上は、消費財市場の弱さが原因で減少しました。
2024年度
売上高は前年度比1.37%減の903.5億ユーロになりました。営業利益は37.91%減の27.96億ユーロになりました。営業利益率は3.09%になりました。
自動車市場の低迷やコスト増の影響を受け減収減益となりました。構造改革費用も利益を圧迫し、営業利益率が低下しました。
2025年度
売上高は前年度比0.69%増の909.7億ユーロになりました。営業利益は50.11%減の13.95億ユーロになりました。営業利益率は1.53%になりました。
自動車市場の弱さに加え、事業構造改革に伴う約27億ユーロの特別費用が発生し、営業利益は大幅に減少、営業利益率は1.5%台に低下しました。

ボッシュの業績推移
業績予想
中東紛争によるサプライチェーンの課題に直面しつつも、2026年の財務目標達成に向け順調に推移している。主に自動車部門での大幅な構造改革(約2万2,000人の人員削減)により、前年比2〜5%の売上増と4〜6%の営業利益率を見込んでいる。
売上構成
ボッシュは、強みであるハードウェアの製造力に「AI」や「ソフトウェア」を掛け合わせ、モビリティ、工場、住宅のすべてをつなぐIoTテクノロジー企業としての地位を確立しています。
セグメント別の売り上げ構成は以下の通りです。

ボッシュのセグメント別売上構成
モビリティ(旧:モビリティソリューションズ)
2024年初頭より、事業セクター名が従来の「モビリティソリューションズ」から「モビリティ(Mobility)」へと正式に変更され、意思決定を迅速化する独立した事業体制へと再編されました。
従来のガソリン・ディーゼルエンジン、シャシー、ブレーキ、ステアリング等の制御システム、車載ディスプレイ、センサー類に加え、現在はSDV(ソフトウェア定義自動車)向けの統合車載コンピューターや車載ソフトウェアの展開に注力しています。
また、EV(電気自動車)向けのeAxleやパワーエレクトロニクス、水素燃料電池システムなど、電動化シフトに向けた全方位のコンポーネントを網羅しています。自動車部品業界における世界トップクラスのシェアは依然として維持されています。
消費財
家電事業を展開する100%子会社の BSH Hausgeräte GmbH(BSHホームアプライアンス) と、ボッシュ電動工具(Power Tools)の2つで構成されています。
家電分野(BSH)では大型家電(食洗機、洗濯機、冷蔵庫、オーブン)から小型家電(掃除機、調理器具)までをグローバル展開しています。特に欧州を中心に食洗機やビルトイン機器で圧倒的な強みを誇ります。
電動工具分野では、プロ用およびDIY用の本体に加え、買収したFreud(フロイト)の超硬刃などのアクセサリー類、測定器も充実しており、マキタやミルウォーキー、スタンレー・ブラック・アンド・デッカーらと並び世界市場をリードしています。
エナジー&ビルディングテクノロジー
ボッシュ・グループ内で最も戦略的拡大が進んでいるセクターです。特にジョンソンコントロールズ(JCI)から日立ブランドを含む住宅用・商業用空調(HVAC)事業をボッシュ史上最大規模(約80億ドル)で買収したことにより、ビル空調・エネルギー分野での存在感が急速に高まりました。
ホームコンフォート(旧熱システム): ヒートポンプ、ガスボイラー、太陽熱システム、給湯器、スマートサーモスタットなどを「Bosch」「Buderus」等のブランドで展開。
ビルディングテクノロジー: ビデオ監視システム、侵入検知・火災検知システム、アクセス制御、音響システム(音声認識・非常放送)に加えて、Paladin Technologiesの買収により北米等での統合システムインテグレーション(SI)サービスを強化しています。
産業機器テクノロジー
ドライブ&コントロールテクノロジーの大手子会社 Bosch Rexroth(ボッシュ・レックスロス) を中心とした事業です。
油圧機器、電気駆動・制御機器、ギアテクノロジー、直線運動・組立技術、および製造現場のDXを支えるソフトウェアやIoTインターフェース機器を手掛けています。
ボッシュは持株比率と議決権が異なる株主構造となっており、所有と経営が分離されています。ボッシュ家が設立した公益財団であるRobert Bosch Stiftung GmbH(ロバート・ボッシュ財団)が持株比率で94%を保有していますが、議決権は保有していません。議決権は、ロバート・ボッシュ工業信託合資会社とボッシュ家が株式を保有しています。
1992年 電気丸鋸大手のイタリアのSkil(スキル)を買収
1993年 ロータリーツール大手のDremel買収
2007年 イタリアの電動工具アクセサリ大手のFreud 社を買収
2008年 ソフトウェア会社のInnovationsを買収
2010年 製薬大手のエーザイより検査機メーカーのエーザイマシナリーを買収
2012年 車両診断機大手のSPX Service Solutionsを買収
2014年 ステアリングシステム(電動式と油圧式)大手のZF Lenksystemeを買収
2015年 米SEEOを買収
2015年 シーメンスより家電の合弁会社のBSH株式取得
2016年 ITK Engineeringを買収
2016年 シェブロンへのSkilの売却
2018年 米国のライドシェアリングサービスのスタートアップ企業SPLTを買収
2022年 ボッシュ傘下のボッシュ・レックスクロスがイスラエルのモーションコントローラメーカーのELMOモーションコントロールを買収
2022年 英国の自動運転のスタートアップ企業のFiveを買収
2022年 豪州のモータースポーツ用電子機器のモーテックを買収
2023年 ボッシュ傘下のボッシュ・レックスクロスが米油圧機器メーカーのHydraForceを買収
2023年 米国の半導体チップメーカーであるTSIを買収
2023年 北米でビルディングサービスを手がけるPaladin Technologiesを買収
2025年 ジョンソンコントロールズ(JCI)および日立製作所からの空調事業(HVAC)を買収