マイクロソフトの市場シェア・業績推移・売上構成・株価の分析

マイクロソフトは、1975年にビル・ゲイツとポール・アレン氏によって設立されたソフトウェア会社です。オペレーションシステムのウィンドウズやドキュメントソフトのワード、計算ソフトをエクセルなどパソコンなどで必須のソフトを開発販売しています。ゲームの分野ではハードのゲーム機Xboxとネットワーク課金によって事業を成長させています。クラウドサーバーはAzureで展開しています。ソフトの販売から、クラウド型のサブスクリプションサービスへの移行も順調です。モバイル分野ではオペレーションシステムではグーグルのアンドロイドとアップルのiOSに差をつけられています。

業績推移(年次)

2019年度
売上高は前年度比14.03%増の125,843百万ドルになりました。営業利益は22.54%増の42,959百万ドルになりました。営業利益率は34.14%になりました。ウインドウズやサーフェスの順調な売上により、3つのセグメントの中ではモアパーソナルコンピューティングの売上比率が最も高くなりました。

2020年度
売上高は前年度比13.65%増の143,015百万ドルになりました。営業利益は23.28%増の52,959百万ドルになりました。営業利益率は37.03%になりました。Office 365を始めとするOffice製品が主軸で、この年以降クラウド事業が著しい成長を遂げていくこととなりました。

2021年度
売上高は前年度比17.53%増の168,088百万ドルになりました。営業利益は32.02%増の69,916百万ドルになりました。営業利益率は41.59%になりました。Azure、Office365、リンクトイン、Xboxなどのゲーム事業が成長をけん引しました。コロナウイルス感染症の流行による巣ごもり需要で、ゲーム事業の売上が堅調だったと考えられます。

2022年度
売上高は前年度比17.96%増の198,270百万ドルになりました。営業利益は19.26%増の83,383百万ドルになりました。営業利益率は42.06%になりました。Azure、Office365、リンクトイン、サーチエンジンとニュース広告などの成長が増収増益につながりました。

2023年度
売上高は前年度比6.88%増の211,915百万ドルになりました。営業利益は6.16%増の88,523百万ドルになりました。営業利益率は41.77%になりました。Azureの売上高がクラウド部門全体の50%以上を占めました。Azure Open AIの顧客数が11,000社を超え、AIが今後の成長の基軸となる見通しだと発表しました。

マイクロソフトの業績推移(年次)

マイクロソフトの業績推移(年次)

業績推移(四半期)

2022年4-6月
売上高は前年同期比12.38%増の51,865百万ドルになりました。営業利益は20,534百万ドル、営業利益率は39.59%になりました。クラウド事業の売上が25%増加で、増収を支えました。

2022年7-9月
売上高は前年同期比10.60%増の50,122百万ドルになりました。営業利益は21,518百万ドル、営業利益率は42.93%になりました。クラウドサーバー、Office、ウィンドウズ、ゲーム、サーフェスなどへの強い需要が継続しています。

2022年10-12月
売上高は前年同期比1.97%増の52,747百万ドルになりました。営業利益は20,399百万ドル、営業利益率は38.67%になりました。パソコン関連の低迷・クラウドサービスの減速に伴い、売上高の成長も鈍化しました。

2023年1-3月
売上高は前年同期比7.08%増の52,857百万ドルになりました。営業利益は22,352百万ドル、営業利益率は42.29%になりました。クラウドサービスと業務用ソフトOfficeの売上が堅調で、市場予想を上回る結果となりました。

2023年4-6月
売上高は前年同期比8.34%増の56,189百万ドルになりました。営業利益は24,254百万ドル、営業利益率は43.17%になりました。クラウド部門の四半期売上高が前年同期比21%増だったことが、増収に寄与しています。

マイクロソフトの四半期業績推移

マイクロソフトの四半期業績推移

EPS・配当額・配当性向の推移

希薄化後EPSは前年度比0.31%増の9.68ドルになりました。1株当たりの配当は前年度比9.68%増の2.72ドルになりました。配当性向は28.10%になりました。

マイクロソフトのEPS・1株配当・配当性向の推移(四半期)

マイクロソフトのEPS・1株配当・配当性向の推移(四半期)

売上構成

セグメントは、プロダクティビティ&ビジネスプロセス、インテリジェントクラウド、モアパーソナルコンピューティングに分類されます。セグメント別の売り上げ構成は以下の通りです。

マイクロソフトの売上構成(2022年度)

マイクロソフトのセグメント別売上構成のグラフ(2023年度)

プロダクティビティ&ビジネスプロセス

法人・消費者向けにソフトウェアやアプリケーションを開発・販売しています。Office365、LinkedIn、Dynamicsなどが挙げられます。Office365やDynamicsのサブスクリプションにより、堅調な成長を続けています。

インテリジェントクラウド

クラウドサービスの開発・設計ならびに運営を行っています。クラウドサービスの3強に当たるWindows Azureなどが挙げられます。Azureは競合のAmazon Web Service(AWS)を猛追しシェアを伸ばしていますが、2023年に入ってから成長が鈍化しています。今後、マイクロソフトでは、クラウドサービス事業からAIを成長の基軸に転換していく予定です。

モアパーソナルコンピューティング

コンピューターやデバイス、ゲームの開発・製造を行っています。Windows、SurfaceなどのPC機器、XboXならびにゲームソフト、サーチエンジンのBingなどが挙げられます。2021年のゼニマックスの買収に加えて、2022年には過去最大規模の大型案件であるアクティビジョン・ブリザードの買収を発表するなど、ゲーム部門での事業拡大を狙っていることが分かります。

M&A情報

マイクロソフトの歴史を紐解くと、M&Aによって事業を拡大してきたことがわかります。創業以来200以上の買収を行ってきましたが、その中でも買収金額が10億ドル以上の大型買収案件は次の通りです。

2000年 グラフィックソフト開発のビジオ・コーポレーション(Visio Corporation)を約15億ドルで買収
2002年 ノルウェーのソフトウェアプログラムのナビジョン(Navision)を14.5億ドルで買収
2007年 インターネット広告大手のアクアンティブ(aQuantive)を59億ドルで買収
2008年 ノルウェーの検索エンジン大手ファストサーチ&トランスファ(Fast Search Transfer ASA)を13億ドルで買収
2011年 コミュニケーションツール大手のスカイプ(Skype)を86億ドルで買収
2012年 企業向けソーシャルネットワークのプロバイダのヤマー(Yammer)を11億ドルで買収
2014年 スウェーデンのマインクラフト開発会社のモヤン(Mojang)を25億ドルで買収
2014年 スウェーデンの通信インフラ大手ノキア(Nokia)の携帯事業を72億ドルで買収
2016年 ビジネス向けSNS最大手のリンクトイン(LinkedIn)を262億ドルで買収
2018年 ソースコード共有のギットハブ(GitHub)を75億ドルで買収
2020年 5Gネットワークのアファームドネットワークを13.5億ドルで買収
2021年 広告プラットフォーム大手のザンダー(Xander)を約10億ドル(推定)で買収
2021年 ビデオゲーム開発のゼニマックス・メディア(ZeniMax Media、旧ベセスダ・ソフトワークス)を81億ドルで買収
2022年 音声認識技術最大手のニュアンス・コミュニケーションズ(Nuance Communications)を188億ドルで買収

特に、2014年にナデラ氏がCEOに就任して以降、大型買収が増えて「量より質重視」の戦略でM&Aを進めていることが分かります。

なお、マイクロソフトは2022年にゲーム開発大手アクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)の買収を発表しました。買収予定額は687億ドルと、マイクロソフトの買収でも最大の規模です。2023年7月には買収完了予定でしたが、米英各国の規制当局の反発により承認が遅れたため、買収完了に至りませんでした。両社は買収期限を2023年10月に延期し、Microsoftは10月13日(米国時間)、米ゲーム会社大手アクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)の買収完了を発表しました。

Call of Duty、World of Warcraft、Overwatch、Candy Crush、Farm HeroesなどのタイトルがチームXboxに加わることになります。

アクティビジョン・ブリザード並びに買収額上位5案件の買収額に対する売上高倍率は、8〜25倍のレンジで推移しています。

マイクロソフトの買収マルチプル(企業価値売上高倍率)

マイクロソフトの売上マルチプルの推移

なお、売上マルチプルの平均値は13.8倍、中間値は11.9倍となっています。

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