建設機械・建機業界の市場シェアの分析

建設機械・建機メーカーの市場シェア(世界シェア)・市場規模・四半期ごとの売上高ランキングについて分析しています。キャタピラー、 コマツ、三一重工、テレックス、日立建機、ボルボ、徐工集団など世界大手建機・重機メーカーの概要や動向も掲載しています。

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【建設機械業界とは】

建設機械とは、建設現場において土砂の掘削、運搬などを担う機械であり、油圧ショベル、ブルドーザー、建設用クレーン、ダンプカーなどがあります。

建設機械業界(建機業界)は、景気に大きな影響を受けます。景気がいいと建設工事が増えるので建機の需要も増加しますが、景気の後退局面では建設工事が減り建機業界も影響を受けます。そのため、建機業界は景気の先行指標と呼ばれることもあります。

【建設機械・建機業界の世界市場シェア】

建設機械・建機メーカーの2022年度の売上高(⇒参照したデータの詳細情報)を分子に、同業界の世界市場規模を分母にして、建設機械業界の市場シェアを簡易に算定すると、2022年の世界1位はコマツ、2位はキャタピラー、3位は徐工集団となります。

建機メーカーの2022年度売上高世界市場シェア

順位 会社名 市場シェア
1位 KOMATSU LTD.(株式会社小松製作所) 14.91%
2位 CATERPILLAR INC.(キャタピラー) 13.17%
3位 XCMG(徐工集団) 7.83%
4位 Deere & Company.(John Deere、ディア) 7.71%
5位 Hitachi Construction Machinery Co., Ltd.(日立建機株式会社) 5.80%
6位 Volvo Group(ボルボ・グループ) 5.12%
7位 Zoomlion Heavy Industry Science & Technology Co., Ltd. (ズームライオン、中連重科) 3.94%
8位 Sany(三一重工業株式会社) 3.05%
9位 HD Hyundai Infracore Co., Ltd.(HD現代インフラコア株式会社) 2.44%
10位 Terex Corporation(テレックス) 2.30%
11位 KUBOTA CORPORATION(株式会社クボタ) 2.30%
12位 CNH Industrial(CNHインダストリアル) 1.86%
建機メーカーの2022年度売上高世界市場シェア
©2024 Deallab

建機メーカーの市場シェア(2022年)

*ディアは2023年会計年度(2022年11月~2023年10月)のデータを使用

**徐工集団は外部サイトのデータを使用

***中連重科は外部サイトの2023年データを使用

コマツがキャタピラー(CAT)のシェアを上回りました。両社ともに世界中の建設機械の位置情報、稼働時間、燃料消費、不具合情報などの電子データをリアルタイムに収集(キャタピラーはProduct Link、コマツはコムトラック)でき、建機のプラットフォームを立ち上げコネクティビティを強化していることが強みとなっています。

4位には、農機の世界最大メーカーでもあるディアがランクインしました。2017年に道路建設に強いヴィルトゲンを買収したことで、シェアを拡大しています。

その後は中国の徐工集団、スウェーデンのボルボが続きます。日系企業としては日立建機、クボタなどが上位に入っています。

日系の主要企業としては、コマツ・日立建機・クボタに加えて、タダノ、神戸製鋼グループのコベルコ建機、住友重機械工業などがあります。

建機市場シェア上位2社の主要財務指標

建機市場シェア上位2社の売上高成長率、配当性向、ROEを比較しました。数値は全て2022年度(直前期)の決算数値を基準にしています。

キャタピラーとコマツの指標比較(2022年度決算ベース)
リフィニティブのデータを加工修正して作成
*売上高成長率は過去5年の平均値を計算しています。
**配当性向は直前期の配当額と当期利益から計算しています。
***ROEは直前期の当期利益と期初と期末の自己資本額の平均値から計算しています。

売上高成長率はコマツがやや高く、順調に売上を伸ばしてシェアを拡大していることが伺えます。配当性向もコマツのほうが高く、株主への利益還元率が高いです。一方、自己資本利益率はキャタピラーが高く、効率的に利益を生み出していることがわかります。

キャタピラーとコマツは事業戦略や主要市場にも違いがあります。キャタピラーはアフターサービスに力を入れており、建機のメンテナンスや部品の売上も重要な収益源となっています。パワーに定評のある機械を多く作り出しており、世界での圧倒的なシェアを誇ります。

一方、コマツは建機の自動化や電動化を推進しており、ICT機能も積極的に取り入れています。競合を圧倒する特徴を持った優れた商品を作ることに重きを置いており、繊細で使いやすいと定評があります。日本国内でも断トツのシェアを持ちます。

キャタピラーもコマツも、事業戦略に違いはあれど優れた技術を有していることには変わりません。建設現場では時と場合に応じて2社の建機を使い分けていることが多く、今後も2トップとして建機業界をけん引していくことが予想されます。

【建設機械・建機業界の世界市場高四半期ベース売上高ランキング】

2023年7-9月の四半期売上高をベースとした建機メーカーランキングでは、1位キャタピラー、2位コマツ、3位ディアです。市場シェアと同じ順位ですが、コマツの売上がキャタピラーの売上に近づいていることがわかります。⇒参照したデータの詳細情報

建機業界の売上高ランキング(四半期ベース)
*ディアは20231年8-10月の建機事業売上高
**徐行集団、中連重科は外部サイトのデータを使用
***三一重工はデータを公表していないため、ランキングから除外

【建設機械・建機業界の世界市場規模】

建設機械業界の2022年の世界市場規模を1918.3億ドルとして市場シェアを計算しております。参考にしたデータは以下の通りです。

調査会社グランドビューリサーチによると、2022年度の同業界の市場規模は1918.3億ドルとなります。2023年から2030年にかけて年平均8.4%で成長し、同年には3632.3億ドルに達すると予測しています。

調査会社バンテージマーケットリサーチによると、2022年度の同業界の市場規模は1859.8億ドルとなります。2023年から2030年にかけて年平均3.9%で成長し、同年には2525.9億ドルに達すると予測しています。

調査会社アイマークによると、2023年度の同業界の市場規模は1912億ドルとなります。2024年から2032年にかけて年平均4.5%で成長し、同年には2864億ドルに達すると予測しています。

調査会社フォーチュンビジネスインサイツによると、2022年の同業界の市場規模は1423.9億ドルとなります。2023年から2030年にかけて年平均6.6%で成長し、同年には2376.6億ドルに達すると予測しています。

参照したデータの詳細情報

【M&Aの動向】

  • 2022年 日立が日立建機の株26.1%を伊藤忠らに売却
  • 2021年 現代重機工業が斗山インフラコアを買収(2023年にHD現代インフラコアに改名)
  • 2019年 テレックスが独クレーン事業「デマーグ」を日系企業タダノに2.15億ドルで売却
  • 2017年 コマツが米鉱山機械メーカーJoy Globalを28.2億ドルで買収
  • 2017年 日立建機が豪鉱業用品大手ブラッドケンを6.89億豪ドルで買収
  • 2017年 ディアが独道路建機大手のWirtgenを46億ユーロで買収
  • 2017年 テレックスがマテリアルハンドリング事業ならびにポートソリューション事業を5.95億ドルでKonecranesに売却
  • 2013年 CNHグローバルがファイアットと経営統合し、CNHインダストリアルが誕生
  • 2012年 三一重工がドイツの建機メーカーPutzmeisterを3.6億ユーロで買収
  • 2011年 キャタピラーが鉱山機械のBucyrusを88億ドルで買収

建設機械業界のM&Aマルチプル(企業価値売上高倍率)を算出すると以下のようになり、1〜2.5倍程度のレンジでM&Aが行われています。売上マルチプルの平均値は1.4、中間値は1.2となります。

建設機械業界の売上マルチプルの推移

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【会社の概要】

KOMATSU LTD.(株式会社小松製作所)

1921年に銅山経営の竹内鉱業の機械製造部門から独立して誕生した日本を代表する建機メーカーです。「ダントツ」経営で、Caterpillar(キャタピラー)とグローバルで真っ向勝負をしています。建機の稼働時間等を遠隔モニターできるシステム(KOMTRAX)等で世界市場を開拓しました。2016年鉱山機器大手の米国ジョイグローバルを買収しました。コマツの強い鉱山の露天掘りとジョイの強い坑内掘りの相乗効果を狙っています。さらに詳しく

CATERPILLAR INC.(キャタピラー)

Caterpillar(キャタピラー)は1925年に設立された米国に本社を置く世界最大の建機・重機メーカーです。CATの愛称と建機における黄色の配色が特徴です。資源開発や建設工事向けの建機、鉱山機械、船舶エンジンなどを手掛けます。部品交換などのサポート体制が充実している点に強みがあります。リアルタイムのデータ収集はProduct Linkで展開しています。さらに詳しく

Deere & Company.(John Deere、ディア)

Deere and Company(ディア・アンド・カンパニー)は、1837年に創業された米国を代表する世界最大級の農機具メーカーです。グリーンのボディにイエローのホイールのトラクターとジョンディア (John Deere) の愛称で親しまれている老舗です。
現在では超高級車で知られているランボルギーニ社も、祖業はトラクターであり、現在でも販売をしています。トラクターの他に、コンバイン、プランター、ベーダ―、フォークリフト、スキッダー、バックホーローダー、ブルドーザー、トランスミッション等も手掛けています。1000ヘクタール以上の農場向けの500馬力トラクターでは他社の追随を許しません。さらに詳しく

元々は韓国の財閥企業、斗山のグループ会社で「斗山インフラコア」という名前の企業でした。2020年、親会社の斗山が経営不振に陥った時売却の対象となりました。

2021年現代グループに売却され、2023年に現在の名前に社名を変更しています。建機のほか、工作機械や産業車両などを製造しています。

XCMG(徐工集団)

XCMGは1989年に設立された中国政府系の大手建機メーカーです。巻上機、掘削機、コンクリート機械、鉱山機械、ソイルショベルおよび輸送機械、道路機械、特殊車両、航空作業機械、杭打ち機、トレンチレス機械、トンネル機械、環境保護機械、消防機械、エネルギー掘削および鉱山機械などの製造販売を行っています。

Volvo Group(ボルボ・グループ)

Volvo(ボルボ)グループは、スウェーデンに本拠を置くトラック・建機メーカーです。1928年にトラックメーカーとして設立されて以降、現在もトラックの売上がグループ全体の約60%超を占めるなど、最大の事業部門となっています。さらに詳しく

Hitachi Construction Machinery Co., Ltd.(日立建機株式会社)

1970年に設立された日本を代表する大手建機メーカーです。日立製作所の上場関連会社でもあります。油圧やミニショベル、ホイールローダー、破砕機、建機向けのアタッチメント、道路機械、マイニング機械やダンプの製造・販売を手掛けています。2016年に豪州の鉱山機器向け消耗品に強みを持つブラッドケンや米国の鉱山機械部品を手掛けるH-Eパーツを買収しました。2022年に伊藤忠と日本産業パートナーズが日立製作所より日立建機持分の26%を買収しました。さらに詳しく

日立製作所について

日立製作所は、久原鉱業所日立鉱山付属の修理工場として、1910年に創業された日本を代表する重電メーカーです。IT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフを主要領域とします。配電事業、自動車部品、エレベーター事業や鉄道事業は強化する一方で、日立化成、日立金属、日立キャピタル、日立建機等は外部へ売却をし、選択と集中を進めています。さらに詳しく

Zoomlion Heavy Industry Science & Technology Co., Ltd. (ズームライオン、中連重科)

Zoomllionは、1992年に設立された湖南省系の建機大手です。コンクリートポンプ、ミキサー車といったコンクリート用機械とクレーンに強みを持ちます。2008年にイタリアのコンクリート機器メーカーであるCIFA(シーバ)を買収し、世界展開を加速しています。

Sany(三一重工業株式会社)

中国長沙に本拠を置く大手の建機会社です。中国国内ではコマツやキャタピラーと競っています。特にコンクリートポンプに強く、同社のコンクリートポンプ車が福島の原子炉建屋内の使用済み燃料貯蔵プールや原子炉に放水する際に使用されました。起重機、切削機、路面舗装設備、油圧プレス機なども手掛けています。ドイツのコンクリートポンプ大手のプツマイスター(Putzmeister Holding GmbH)を買収しました。

Terex Corporation(テレックス)

Terex Corporation(テレックス)は、旧GM(ジェネラル・モーターズ)の建機・特殊車両部門です。高所作業車、建設用クレーン、バルク材運搬機、道路舗装機の製造販売に強みがあります。2016年にフィンランドのKonecranes(コネクレーンズ)にマテリアルハンドリング事業を売却しました。2019年にドイツのデマーグをタダノに売却しました。さらに詳しく

クボタは、日本の最大手農機メーカーです。源流は、1890年に久保田権四郎氏によって設立された鋳物メーカーである大出鋳造所まで辿れます。コレラ対策のために、水道管の国産化を実現し飛躍しました。ノルウェーの農機メーカーのKverneland(クバンランド)、北米の種まき・草刈り機大手のグレートプレーンズマニュファクチュアリング社、インドのエスコーツ社を買収し、世界展開を強化しています。日本出自の農機メーカーということで、稲作用の農機に強みを持っています。農機以外にも、エンジン、建設機械、祖業の各種パイプ(ダクタイル鉄管、合成管、ポンプ、バルブ等)、スパイラル鋼管などを製造販売しています。さらに詳しく

Konecranes(コネクレーンズ)

Konecranes(コネクレーンズ)は、フィンランドに本拠を置く港湾用搬送機・クレーンメーカーです。エレベーター大手のコネから1994年に分社化独立しました。天井クレーン、コンテナハンドリング装置、港湾用クレーンなどに強みを持ちます。同じく2005年に分社化された荷役機器大手のCargotec(カーゴテック)とは同根です。2016年に米国の建機大手であるテレックスよりマテリアルハンドリング事業を買収しました。2021年にカーゴテックとの合併を発表しました。さらに詳しく

CNH Industrial(CNHインダストリアル)

CNHインダストリアルは、2013年のCNHグローバルとフィアット・インダストリアルとの経営統合の結果誕生しました。フィアット創業家であるアニェッリ家が大株主となっています。
建機、農機、商用車(トラック)事業を全世界180ヶ国で展開しています。現在はニューヨーク証券取引所とミラノ証券取引所に株式を上場しています。2022年1月に商用車・トラック事業を担うIveco(イベコ)が分社化上場をしました。さらに詳しく

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