富士通の市場シェア・業績推移・売上構成・株価の分析

富士通は、古河電気工業とシーメンスの合弁会社として設立された現富士電機の電話部門が1935年に分社化されて設立されました。ICT関連のハードウェアからソフトウェアを手掛けていますが、近年はITソリューションサービスへ事業ポートフォリオをシフトしています。ハードウェアではPC&サーバ、メインフレーム・スーパーコンピューター「富岳」(2012年に稼働した「京」の後継機)、ATM、通信ネットワーク機器などを開発製造しています。グループ関連会社には、富士通フロンテック、新光電気工業、FDK、富士通ゼネラルなどが含まれます。

業績推移(年次)


2019年度
売上高は3,857,797百万円で、前年度比2%減となりました。営業利益は211,483百万円になりました。営業利益率は5%になりました。デバイス事業における再編 で半導体三重工場が連結対象外となったことなど再編による減収影響が約182,000百万円、ドル、ユーロ、ポンドが円高に推移したことによる減収影響が47,700百万円でした。

2020年度
売上高は3,589,702百万円で、前年度比7%減となりました。営業利益は266,324百万円になりました。営業利益率は7%になりました。ネットワークビジネスで 5G基地局を中心に増収となったほか、世界的な半導体需要の高まりを受けて電子部品の所要が高いレベルで推移しましたが、全体としては減収となりました。新型コロナウイルス感染症による減収影響が146,900百万円、前年のWindows7サポート 期限終了に伴うパソコン買い替え需要の反動を中心としたユビキタスビジネスの減収影響が122,000百万円、また、半導 体三重工場や携帯販売代理店事業の連結除外、欧州の低採算国や北米プロダクト事業からの撤退など再編による減収影響が93,600百万円でした。

2021年度
売上高は3,586,839百万円で、前年度とほぼ同額となりました。営業利益は219,201百万円になりました。営業利益率は6%になりました。コロナ禍の状況は継続し、半導体不足に伴うマイナス影響という厳しい事業環境ではありましたが、前年比10%超の増益となりました。 ソリューション・サービス関連の受注が国内外ともに増加しました。特に海外サービスは大幅に増加しました。売上総利益率は、31.2%と前年から1.1ポイント上昇しました。ソリューション・サービスの採算性改善が進んだことに加え、電子部品も強いデマンドを背景に採算性が向上しました。成長投資を積極的に実施しており、新たな価値創造に向けた投資及び変革に向けた投資額を倍増させました。

2022年度
売上高は3,713,716百万円で、前年度比4%増となりました。営業利益は355,614百万円になりました。営業利益率は10%になりました。テクノロジーソリューションでは、デジタル化やモダナイゼーションなどDX関連需要が拡大しました。部材供給遅延については、上半期までは影響が継続しておりましたが、第3四半期には底を打ち回復も進み、時間を追って売上収益・採算性共に改善しました。

2023年度
売上高は3,756,000百万円で、前年度比1%増となりました。営業利益は160,200百万円になりました。営業利益率は4%になりました。サービスソリューションを成長の柱とする事業ポートフォリオの変革に取り組みました。この結果、 サービスソリューションの売上は10%の伸長と順調に推移しています。営業利益の減少は、デバイスソリューションやネットワークプロダクトにおける需要の落ち込み、並びに先端 研究開発や社内DX投資増加の影響によるものです。サービスソリューションの利益は46%の大幅な伸長となりました。

富士通の業績推移

富士通の業績推移

業績推移(四半期)


2022年第4四半期(1ー3月)
売上高は1,076,981百万円になりました。営業利益は182,329百万円、営業利益率は17%になりました。

2023年第1四半期(4ー6月)
売上高は799,640百万円になりました。営業利益は1,665百万円の赤字となりました。成長の原動力であるサービスソリューションは国内ビジネスを中心に大きく伸長し、DXやモダナイゼーション関連商談が拡大しています。

2023年第2四半期(7ー9月)
売上高は912,257百万円になりました。営業利益は4,6445百万円、営業利益率は5%になりました。主力のサービスソリューションで増収となっている 一方で、デバイスソリューションの減収が前年度下期から継続しております。デバイスソリューションの売上は、前年同期比で31%の減収となりました。半導体パッケージの需要は、前年度下期から大きく減速し、当第2四半期も回復しておりません。この結果、物量減に伴う工場操業の低下も加わり、デバイスソリューションは減収減益となりました。

2023年第3四半期(10ー12月)
売上高は930,825百万円になりました。営業利益は3,309百万円、営業利益率はほぼ0%になりました。前年同期と比べて、サービスソリューションで増収となった一方、主にデバイスソリューション、ハードウ ェアソリューションで減収となりました。サービスソリューションの売上は前年同期比で10%の増収となりました。調整後営業利益は前年同期比で61,800百万円の増益です。国内外でDXやSXに向けた取組みが加速しており、コンサルティング、モダナイゼーション、クラウドマイグレーションの需要が拡大しています。

2023年第4四半期(1ー3月)
売上高は1,113,278百万円になりました。営業利益は112,111百万円、営業利益率は10%になりました。

富士通の四半期業績推移

富士通の四半期業績推移

EPS・1株配当・配当性向の推移


希薄化後EPSは前年度比22%増の135.34円になりました。1株当たりの配当は前年度比8%増の260円になりました。配当性向は192%になりました。

富士通のEPS・1株配当・配当性向の推移

富士通のEPS・1株配当・配当性向の推移

業績予想

2024年6月
2023年度の有価証券報告書にて、2024年度の業績予定は掲載されていませんが、2025年度の売上高は4,200,000百万円、調整後営業利益は500,000百万円を目標としていると掲載されています。

売上構成

セグメントは、ソリューションサービス、システムプロダクト、ネットワークプロダクト、ユビキタスソリューション、デバイスソリューションに分類されます。セグメント別の売り上げ構成は以下の通りです。

富士通の売上構成(2023年度)

富士通の売上構成(2023年度)

ソリューションサービス
システムインテグレーション(システム構築、業務アプリケーション等)、コンサルティング、アウトソーシングサービス(データセンター、ICT 運用管理、アプリケーション運用・管理、ビジネスプロセスアウトソーシング等)、クラウドサービス(IaaS、PaaS、SaaS 等)、ネットワークサービス(ビジネスネットワーク等)、システムサポートサービス(情報システムおよびネットワークの保守 ・ 監視サービス等)、セキュリティソリューション、各種ソフトウェア(ミドルウェア)などを提供しています。

システムプロダクト
各種サーバ(メインフレーム、UNIX サーバ、基幹 IA サーバ、PC サーバ等)、ストレージシステム、フロントテクノロジー(ATM、POS システム等)、各種ソフトウェア(OS)、車載制御ユニットおよび車載情報システムなどを提供しています。

ネットワークプロダクト
ネットワーク管理システム、光伝送システム、携帯電話基地局などを提供しています。

ユビキタスソリューション
パソコン事業を行っています。

デバイスソリューション
電子部品(半導体パッケージ、電池等)などを手掛けています。

M&A情報

ノンコア事業の売却と海外事業のM&Aを積極的に行っています。


2005年 富士通日立プラズマディスプレイの株式を日立製作所に譲渡
2005年 液晶デバイス事業をシャープに譲渡
2007年 ジャパンケーブルネットホールディングスの株式をKDDIに譲渡
2009年 HDDドライブ事業を東芝に譲渡
2014年 Globe Rangerを買収
2015年 富士通セミコンダクターとパナソニックのシステムLSI事業を統合(ソシオネクスト)
2015年 イギリスのApplied Card Technologiesを買収
2015年 フランスのUShare Softを買収
2016年 TrueNet Communicationsを買収
2017年 ニフティのISPを中心とするコンシューマー向け事業をノジマに譲渡
2017年 富士通テン(モバイルウェア事業)の株式をデンソーに譲渡
2018年 富士通コネクテッドテクノロジーズ(携帯端末事業)をポラリス・キャピタルに譲渡
2018年 富士通クライアントコンピューティング(PC事業)をレノボに譲渡
2020年 生体認証ソリューションを展開するFulcrum Biometricsを買収
2021年 経営コンサルティングファームのVersor社を買収
2022年 Microsoft Cloudや近代的なオフィス環境構築、およびセキュリティプロバイダーとして業界をリードしてきたoobe社を買収
2022年 サイバーセキュリティ企業InPhySecを買収
2023年 SAPコンサルティング会社Innovation Consulting Servicesを買収
2023年 DXコンサルティング会社MF & Associatesを買収

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