HPエンタープライズの市場シェア・業績推移・売上構成・株価の分析

HPエンタープライズ(ヒューレットパッカードエンタープライズ)は、米国を代表するIT企業です。2015年にサーバー、ネットワーク機器、クラウドコンピューティングに注力するHPエンタープライズ(Hewlett-Packard Enterprise)と個人向けパソコンやプリンターにフォーカスするHPへと会社分割されました。サーバー、スーパーコンピューターやストレージなど法人向けの機器に強みを持っています。ルーターやスイッチのネットワーク機器事業では、2015年にH3Cテクノロジーズの過半数の株式を中国の清華紫光集団に売却し、米中連合での成長戦略を遂行しています。2017年にサービスやソフトウェア事業をDXC Technologyとして分社化しています。

業績推移(年次)

2021年度は前年同期比増収増益となりました。売上高は同7%の増収となりました。特にネットワーク機器事業が好調でした。営業利益率も改善しています。

HPEの業績推移
HPEの業績推移

EPS成長率

2021年度は希薄化後EPSが大幅に改善しました。

希薄化後EPSの推移
希薄化後EPSの推移

売上構成

サーバー、スーパーコンピューターを用いたサービス、ストレージとネットワーク機器が主力事業となります。

HPEの売上構成(2021年度)
HPEの売上構成(2021年度)

サーバー
HPE Proliantラックサーバーおよびタワーサーバー、HPE Synergy、HPE BladeSystemsといったサーバーの開発や販売を行っています。

人工知能
エクサスケールスーパーコンピューターを含むスーパーコンピューティングシステムとして販売されることが多いHPE ApolloやCrayの製品の開発や販売を行っています。

ストレージ
HPE Primera、HPE Nimble Storage、HPE Alletra、HPE 3PAR Storageによるプライマリストレージ、HPE Recovery Manager Central、HPE StoreOnce、HPE Cloud Volumes Backupといったストレージ製品およびサービスを提供しています。

ネットワーク機器
Wi-Fiアクセスポイント、スイッチ、ルーター、センサーなどの製品を提供しています。

金融サービス
製品購入者へのベンダーファイナンスを提供しています。

競合会社

下記の会社がサーバーやストレージ事業で競合しています。
Dell Technologies、Cisco Systems、NetApp、IBM、ファーウェイ・テクノロジーズ、アマゾン、オラクル、富士通株式会社、日立、エクストリームネットワークス、ピュアストレージ、ジュニパーネットワークス、インシュア VMware、Nutanix

直近のM&A(合併買収)

クラウド分野を中心にアプリケーションやハードウェア開発会社の買収を積極的に行っています。

2015年 HPEとHPが分社化
2016年 高性能サーバーに強みを持つSilicon Graphicsを買収
2017年 サービスやソフトウェア事業をDXC Technologyとして分社化
2017年 SimpliVityを買収
2017年 Nimble Storageを買収
2019年 スーパーコンピューターのCrayを買収
2020年 Silver Peak Systemsを買収
2021年 ITインフラのモニターや分析を行うCloudPhysicsを買収
2021年 オープンソース型の機械学習を行うDetermined AIを買収
2021年 クラウドデータマネジメントに強みを持つZertoを買収
2021年 SQL分析を行うAmpoolを買収

マルチプル分析

発表年 買い手 売り手 対象会社 買収価格 通貨単位 売上高倍率(倍)
2016 HPE - Silicon Graphics 2.4 億ドル 0.5
2017 HPE - SimpliVity 6.5 億ドル 3.3
2017 HPE Accel Nimble Storage 9.3 億ドル 2.3
2019 HPE - Cray 14.4 億ドル 2.7
2020 HPE Greylock Silver Peak Systems 9.2 億ドル 7.0
HPエンタープライズの最近のM&Aとマルチプル
©ディールラボ

H3Cテクノロジーズ(H3C)の再編の推移(参照)

2003年 スリーコムとファーウェイがH3C設立
2006年 スリーコムによる完全子会社化
2010年 HPによるスリーコム買収
2015年 HPがH3Cの株式51%を紫光集団へ売却
2015年 HPがHPエンタープライズとHPへ会社分割。H3CはHPエンタープライズが承継

紫光集団について

紫光集団(ユニチンファグループ)は、習国家主席が卒業した中国の理系名門大・清華大学(チンホワ・ユニバ―シティ、Tsinghua University傘下の国有企業です。 紫光集団の呼び方はユニチンファ(Tsinghua Unigroup)です。「しこうしゅうだん」ではありません。1993年に設立されました。米国のインテルや国家IC産業投資ファンド (China National IC Fund)も出資しています。会長は、ユニチンファの株主でもあるCITIC系の北京健坤投資集団(Beijing Jiankun Investment Group、BJIG)を率いるZhao Weiguo(趙偉国)氏です。同氏は、胡錦濤(フー・ジンタオ)前国家主席の息子の胡海峰氏と親しいと言われています。2013年にファブレスのスプレッドトラム(展訊通信)を買収し半導体分野に参入しました。

主要株主は清華大学100%出資のファンド(清華股イ分)が51%、BJIGが49%の株主構成となっています。BJIGはCITIC系の趙氏が組成したファンドです。なお、インテルはユニチンファの子会社に20%を出資し、当該子会社には国家IC産業投資ファンド (China National IC Fund)も資金を提供しています。フラッシュメモリーについては、長江メモリーテクノロジーズ(長江存儲科技、Yangtze River Memory Technologies、YMTG)が武漢と成都に工場を建設し、128層の3次元フラッシュメモリーに乗り出しています。また元エルピーダメモリーの坂本氏を招聘し、DRAM分野への参入をするため、重慶にDRAM工場を建設しています。半導体の設計を行うファブレスメーカーである紫光展鋭(UNISOC)や集積回路基板大手の紫光国芯微電子(Unigroup Guoxin Microelectronics、ユニグループ・グオシン・マイクロエレクトロニクス)、クラウドやITサービスを手掛ける紫光雲技術(ユニクラウド)、紫光股份(ユニスプレンダー)、紫光華山智安科技(ユニインサイト)などがグループ会社です。
過去にマイクロン、ウェスタンデジタル、聯発科技(メディアテック)の買収を目指すも、当局からの承認が得られず、実現には至っておりません。

2020年6月末時点の紫光集団の有利子負債は1500億元超であり、米中貿易摩擦の影響もあり、2020年上半期は33億元の最終赤字となりました。さらに2017年に発行した私募債13億元(期限2020年11月15日)の支払いの延長を要請ました。中国の半導体国産化の肝となる紫光のファイナンスに注目が集まりつつあります。2020年12月には4度目の債務不履行となりました。2021年7月に破産申請をしました。
2021年7月20日に紫光集団のスポンサー公募が開始しました。

市場シェア

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