サーバーには物理サーバーと企業等で導入が急速に進む仮想サーバーがあります。本稿では、専用のハードウェアで構築されOSやアプリケーションにサーバのリソースを100%割り当てることができる物理サーバーに着目しサーバーメーカーの世界シェアを分析しています。物理サーバー大手であるデル、IBM、HPエンタープライズ、レノボ、インスパー、日立製作所、富士通などの概要も掲載しています。
【サーバー業界の市場シェア】
サーバーメーカーの2022年度の売上高⇒参照したデータの詳細情報を分子に、後述する市場規模を分母にして、2022年のサーバー業界の市場シェアを簡易に計算すると、1位はデル、2位はIBM、3位はHPエンタープライズとなります。
サーバーメーカーの世界シェアと業界ランキング(2022年)
順位 | 会社名 | 市場シェア |
---|---|---|
1位 | Dell Technologies(デルテクノロジーズ) | 22.85% |
2位 | International Business Machines Corporation(IBM、アイ・ビー・エム) | 17.13% |
3位 | Hewlett Packard Enterprise(HPエンタープライズ) | 12.81% |
4位 | Lenovo Corporation(レノボ) | 10.93% |
5位 | Inspur Electronic Information Industry(インスパー 浪潮集団) | 10.81% |
6位 | Hitachi, Ltd.(株式会社日立製作所) | 7.99% |
7位 | Super Micro Computer(スーパー マイクロ コンピューター) | 7.98% |
8位 | Fujitsu Limited(富士通株式会社) | 5.77% |
9位 | Oracle Corporation(オラクル) | 3.67% |
*HPエンタープライズは2023年会計年度(2022年11月~2023年10月)のデータを使用
**インスパーは外部サイトによるデータを使用
データ通信量の増大という市場規模拡大の追い風を受け、各社ともにシェアの拡大と高付加価値化を目指しています。
1位はデルテクノロジーズです。2013年の非公開後、サーバー事業強化の一環でデータストレージ、クラウドコンピューティングとプラットフォーム仮想化のソフトウエアベンダーに強みを持つEMC /VMwarを買収し、ハードウェア+ソフトウェアによる差別化を強化することで、首位を維持しています。2位と3位はIBMとHPエンタープライズで、米国の企業が上位を占める結果となりました。
また、サーバー自体の性能はコモディティ化が進む中、コスト競争力を持つ中国勢が、米GAFAに対抗する中BATからの旺盛な需要を取り込む形でシェアを拡大させつつあります。
4位のレノボ、5位のインスパーはともに中国企業で、シェアが均衡しています。
日系企業は、6位に日立製作所、8位に富士通がランクインしています。
【サーバー業界の世界市場規模】
当データベースでは2022年のサーバー業界の市場規模⇒参照したデータの詳細情報を892.6億ドルとして市場シェアを計算しております。参照にした各種調査データは次の通りです。
調査会社のグランドビューリサーチによると、2022年の同業界の市場規模は892.6億ドルです。2023年から2030年にかけて年平均9.3%の成長を見込み、同年には1752.9億ドルに達すると予測しています。
調査会社のモルドールインテリジェンスは、2024年の同市場規模は879.6億ドルになると見込んでいます。2029年にかけて年平均8.03%の成長を見込み、同年には1294.2億ドルに達すると予測しています。
調査会社のスタティスタによると、2022年の同市場規模は848.7億ドルです。2028年には1198.8億ドルに達すると予測しています。
⇒参照したデータの詳細情報さらに業界に詳しくなるためのお薦め書籍と関連サイト
図解まるわかり サーバーのしくみ
今すぐ使えるかんたん サーバーのしくみ 超入門
パソコン業界の世界市場シェアの分析
クラウドサービス業界の世界シェアと市場規模
【M&Aの動向】
M&Aが積極的に行われており、IBMによるRedHat買収やデルによるEMC買収など大型案件も見られます。
2010年 オラクルがサーバー企業のSunを74億ドルで買収
2016年 デルがITサービス大手のEMCを670億ドルで買収
2019年 IBMがソフトウェアサービスのRedHatを340億ドルで買収
2023年 IBMが最適化ソフトウェア大手のApptioを46億ドルで買収
2023年 富士通がハードウェア事業を新会社富士通エフサスへ承継
買収マルチプル(売上高倍率)を見てみると、1倍~12倍とばらつきがあります。中間値は6.0倍、平均値は6.2倍です。
【会社の概要】
Dell Technologies(デルテクノロジーズ)
マイケル・デル氏によって設立された米国に本拠をおくITソリューションプロバイダーです。BTO方式に基づく個人向けPCの直販モデルで世界を席巻しました。2013年に投資ファンドのシルバーレイクとMBOを実施しました。2015年にデータストレージや仮想化技術に強みを持つEMC等を買収し、サーバー等のハードウェアとソフトウェアの総合ITベンダーとして2018年に再上場を果たしました。さらに詳しく
International Business Machines Corporation(IBM、アイ・ビー・エム)
IBMは、1911年に設立された世界を代表する米国に本拠を置くIT会社です。ハードウェア主流のメインフレーム事業からソフトウェア・ITソリューション会社へと変貌を遂げています。シンクパット(ThinkPad)ブランドのパソコン、ハードディスク、プリンター事業等は売却しました。現在は、クラウドサービス、ITサービス、コンサルティング、ソフトウェア、ハードウェア、コグニティブ・コンピューティング(AI事業)に注力をしています。さらに詳しく
Hewlett Packard Enterprise(HPエンタープライズ、ヒューレットパッカードエンタープライズ、HPE)
HPエンタープライズ(ヒューレットパッカードエンタープライズ)は、米国を代表するIT企業です。2015年にサーバー、ネットワーク機器、クラウドコンピューティングに注力するHPエンタープライズ(Hewlett-Packard Enterprise)と個人向けパソコンやプリンターにフォーカスするHPへと会社分割されました。サーバー、スーパーコンピューターやストレージなど法人向けの機器に強みを持っています。ルーターやスイッチのネットワーク機器事業では、2015年にH3Cテクノロジーズの過半数の株式を中国の清華紫光集団に売却し、米中連合での成長戦略を遂行しています。2017年にサービスやソフトウェア事業をDXC Technologyとして分社化しています。さらに詳しく
Lenovo Corporation(レノボ)
レノボ(Lenovo)は、1984年に柳伝志(リュウ・チュアンジ)氏が設立した中国を代表するパソコンメーカーです。旧IBMのPC事業(thinkpad)を買収し、一躍有名になりました。日本でもNECや富士通のパソコン事業を買収しています。さらに詳しく
Inspur(インスパー、浪潮集団)
中国に本拠をおくサーバー大手です。アリババ集団やテンセントのデータセンター向けにサーバーを納入して成長しています。近年はマイクロソフトやインテルと共同でサーバーを開発し、コスト競争力に定評があります。
Hitachi, Ltd.(株式会社日立製作所)
日立製作所は、久原鉱業所日立鉱山付属の修理工場として、1910年に創業された日本を代表する重電メーカーです。IT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフを主要領域とします。配電事業、自動車部品、エレベーター事業や鉄道事業は強化する一方で、日立化成、日立金属、日立物流、日立キャピタル、日立建機等を外部へ売却し、選択と集中を進めています。さらに詳しく
Super Micro(スーパーマイクロコンピュータ株式会社)
米国に本拠をおく台湾系のサーバー会社です。マザーボード、サーバケース等にも強みを有します。
Huawei Technologies Co., Ltd.(ファーウェイ、華為技術有限公司)
1987年に任 正非(Ren Zhengfei、レン・ツェンフェイ)によって設立された中国シンセンに本拠を置く世界最大級の通信機器メーカーです。通信基地向け機器、スマホ、タブレット、ルータ等の分野で存在感を示します。通信基地局では、ノキアやアノキアと並ぶ大手です。スマートフォン(スマホ)業界やタブレット業界でも、アップルやサムスンと並ぶ大手です。通信用の海底ケーブル業界では、アルカテルルーセント、タイコ、NEC、富士通と並ぶ大手の一角を占めています。従業員持株制度を通じて株式を保有する従業員が取締役を選任するガバナンス体制を取っている非上場会社です。さらに詳しく
Fujitsu Limited(富士通株式会社)
富士通は、古河電気工業とシーメンスの合弁会社として設立された現富士電機の電話部門が1935年に分社化されて設立されました。ICT関連のハードウェアからソフトウェアを手掛けていますが、近年はITソリューションサービスへ事業ポートフォリオをシフトしています。ハードウェアではPC&サーバ、メインフレーム・スーパーコンピューター「富岳」(2012年に稼働した「京」の後継機)、ATM、通信ネットワーク機器などを開発製造しています。グループ関連会社には、富士通フロンテック、新光電気工業、FDK、富士通ゼネラルなどが含まれます。さらに詳しく
Oracle Corporation(オラクル)
Oracle(オラクル)は、1977年にラリー・エリソン氏によって設立された米国に本拠を置くデータベース管理ソフトウェア世界大手です。2010年にサンマイクロシステムズを買収しハードウェアにも強みを持ちます。オペレーティングシステム(Solaris、Oracle Linux)、Javaアプリケーション開発用のフレームワーク、オラクルクラウド、サーバー等のハードウェアなどを展開しています。さらに詳しく
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