眼内レンズ業界の世界シェアと市場規模について分析をしています。
眼内レンズ市場は、白内障手術件数の増加や老眼治療ニーズの高まり、そして多焦点・EDOF などのプレミアム眼内レンズの普及を背景に成長しています。近年は、術前計測技術の高度化や低侵襲手術(MICS)の普及、AI を活用した術前計画の導入が進み、手術機器・診断装置・眼内レンズを統合した デジタル手術エコシステム が競争の中心となっています。
本稿では、世界の眼内レンズ市場シェアと市場規模を分析するとともに、主要メーカーである アルコン、ジョンソン&ジョンソン、ボシュロム、HOYA、カール・ツァイス、スターサージカル、クーパービジョンの最新動向について整理しています。
【眼内レンズ業界とは】
眼内レンズ(IOL:Intraocular Lens)は、白内障手術や屈折矯正を目的として、水晶体の代わりに眼内へ移植する人工水晶体です。半永久的な使用を前提とした医療インプラントであり、白内障治療が主用途ですが、近年は老眼や屈折矯正を目的とした プレミアム IOL の需要が世界的に拡大しています。
眼内レンズは主に以下の種類に分類されます。
- 単焦点 IOL — 遠方または近方のどちらかに焦点を合わせる標準的なタイプです
- 多焦点 IOL — 複数距離に焦点を持ち、眼鏡依存度を下げることができます
- EDOF IOL — 中間距離の視力を強化し、ハローやグレアを抑えやすい設計です
- トーリック IOL — 乱視矯正機能を備えたレンズです
- プレミアム IOL — 多焦点・EDOF・トーリックなどの高付加価値レンズの総称です
素材は主にアクリル(疎水性・親水性)が使用され、光学設計の進化により、コントラスト感度や夜間視力の改善が進んでいます。
また、デジタル統合・手術エコシステム化: 術前計測、術中ガイダンス、手術機器、IOLを一体で提供する「手術エコシステム」が各社の競争軸となっています。
【眼内レンズ業界の世界市場シェア+ランキング】
眼内レンズ業界の2025年度の売上高⇒参照したデータの詳細情報を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2025年の眼内レンズ業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はアルコン、2位はジョンソン&ジョンソン、3位はボシュロムとなります。
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| 順位 | Company name (English) |
企業名(日本語) | 市場シェア |
| 1位 | Alcon | アルコン | 33.04% |
| 2位 | Johnson and Johnson Vision Care. | ジョンソン&ジョンソン | 29.66% |
| 3位 | Bausch & Lomb | ボシュロム | 16.57% |
| 4位 | HOYA CORPORATION | HOYA | 16.29% |
| 5位 | STAAR Surgical Company | スターサージカル | 4.44% |
1位は、眼内レンズ業界で最大手となるアルコンです。白内障手術用の眼内レンズに加え、手術機器や診断機器を組み合わせた統合的な手術プラットフォーム戦略により、トップシェアを維持しています。
2位は、米国に本拠を置く世界最大級の日用品・医療機器メーカー、ジョンソン&ジョンソンです。Tecnisシリーズを中心としたプレミアム眼内レンズの拡販により、高いシェアを確保しています。
3位は、米国に本社を置く大手コンタクトレンズ・医療機器メーカー、ボシュロムです。眼内レンズ、眼科手術用機器、眼科用医薬品を事業の柱としており、総合眼科メーカーとしてのポジションを強めています。
4位は、日本を代表する光学メーカーであるHOYAです。プレミアムIOLを含む眼内レンズ事業が欧州・アジアを中心に拡大しており、高収益なポートフォリオが特徴となっています。
5位には、米国に本拠を置く眼内コンタクトレンズ(ICL)メーカー、スターサージカルが入っています。屈折矯正領域での存在感が高く、特に若年層向けの視力矯正ニーズの高まりを背景に、着実にシェアを伸ばしています。
【眼内レンズ業界の世界市場規模】
当データベースでは、2025年の眼内レンズ業界の市場規模を抽出した企業の合計値で算出し、53.9億ドルとしております。参照した各種調査データは次の通りとなります。
調査会社フォーチュンビジネスインサイツによると、2025年の同業界の市場規模は51.4億ドルです。2034年にかけて年平均7.13%で成長し、規模は95.2億ドルへと拡大することを見込んでいます。
| 年 | 市場規模 | 年平均成長率見込み |
| 2025 | 51.4億ドル | – |
| 2026 | 54.9億ドル | – |
| 2034 | 95.2億ドル | 7.13% |

【M&Aの動向】
2016年 ジョンソン・エンド・ジョンソン、アボット・メディカル・オプティクス社の買収契約を発表
2019年 アルコン、PowerVision 買収(調節性 IOL)
2021年 アルコン、Ivantis を買収(Hydrus Microstent)
2022年 アルコン、Aerie Pharmaceuticals, Inc.の買収を完了し、眼科用医薬品事業を強化
2022年 ボシュロム、 AcuFocus の資産を買収(IC-8 IOL)
2023年 HOYA株式会社がWASSENBURG Medical B.V.の残りの株式を取得
2023年 ボシュロム、XIIDRA®の買収を完了
2023年 カール ツァイス メディテック AG がオランダ眼科研究センター (D.O.R.C.) を買収する合意を発表
2024年 レイナー社は、スイスに本拠を置くSophi phaco 乳化装置の発明、開発、製造元である This AG を買収
2024年 クーパーカンパニーズがobp Surgicalを買収し、クーパーサージカルの主要医療機器ポートフォリオを拡大
【会社の概要】
Alcon(アルコン)
アルコンは、1945年に米国の眼科薬局として創業した企業で、その後ネスレ傘下を経て、2010年にスイスの大手製薬企業ノバルティスに買収されました。2019年にノバルティスから分社化・上場し、現在は独立した眼科専門企業として、サージカル事業とビジョンケア事業の2本柱で事業を展開しています。サージカル事業では、白内障、網膜、緑内障、屈折矯正手術向けの手術装置や、プレミアム眼内レンズ「Clareon」シリーズなどを中心に、手術エコシステムとして一体的なソリューションを提供しています。ビジョンケア事業では、デイリーズなどのコンタクトレンズブランドやケア用品を展開しており、眼科領域に特化した総合メーカーとして世界最大級の規模を維持しています。さらに詳しく
<分社化ハイライト>
2018年に、ノバルティスは、アルコンをスイス証券取引所とニューヨーク証券取引所に分社化上場をすると発表しました。

アルコン分社化
出所:ノバルティス
ノバルティスは、シンジェンタやチバスペシャリティケミカル(現BASF)も過去分社化しており、ポートフォリオの入れ替えによる成長戦略を得意としています。分社化後のアルコンの売上高は約70億ドルで従業員は2万人以上の規模となりました
サージカル事業
白内障、網膜、緑内障、屈折矯正手術用の眼科手術機器、先進技術眼内レンズ(ATIOL)、洗浄液、点眼薬等を取扱っています。眼科手術機器分野の競合には、ジョンソン&ジョンソン、カールツアイス、ボシュロム等があるものの、売上規模では世界1位です。眼科手術機器の市場規模は概ね80億ドルと言われており、市場シェアでは40-50%程度を占めます。
ビジョンケア事業
視力の矯正用のコンタクトレンズ(1日使い捨てタイプ、2週間/1カ月交換タイプおよびカラーコンタクトレンズ)、消毒剤等の製品を取り扱っています。
Johnson & Johnson Vision(ジョンソン&ジョンソン)
Johnson & Johnson は、1887年に創業された米国本社の世界最大級のヘルスケア企業です。その中で Johnson & Johnson Vision は、コンタクトレンズと眼科手術機器・眼内レンズを担う事業部門です。コンタクトレンズでは ACUVUE ブランドを展開し、眼内レンズでは Tecnis シリーズ(Tecnis Eyhance など)を中心に、白内障および屈折矯正領域でプレミアムIOLのラインアップを強化しています。近年は、手術装置や術前計測・デジタルプランニングを組み合わせた「Connected Cataract Ecosystem」を打ち出し、単なる製品提供から、手術ワークフロー全体を支えるプラットフォーム型の戦略へとシフトしていることが特徴です。さらに詳しく
Bausch & Lomb(ボシュロム)
ボシュロムは、米国に本拠を置く老舗の眼科関連メーカーで、コンタクトレンズ、眼内レンズ、眼科手術用機器、眼科用医薬品を中核事業としています。親会社である Bausch Health からスピンオフする形で株式上場を行い、眼科領域に特化した事業ポートフォリオを明確化してきました。近年は、白内障手術向けの眼内レンズ「enVista」シリーズや手術装置「Stellaris Elite」に加え、ドライアイ治療薬 Xiidra の取得など、手術機器と医薬品の両面から眼科領域を強化しています。総合眼科メーカーとして、手術・コンタクト・薬剤を組み合わせたトータルソリューションを提供している点が特徴です。さらに詳しく
HOYA(ホヤ)
HOYAは、1941年創業の日本を代表する光学メーカーで、眼鏡レンズ、光学ガラス、HDD用ガラスディスク、半導体・ディスプレイ向けフォトマスクなど、幅広い分野で高い技術力を有しています。医療・ライフケア領域では、眼内レンズ事業を含むライフケア事業が成長ドライバーとなっており、白内障手術向けのプレミアムIOL「Vivinex」シリーズを欧州・アジアを中心に展開しています。近年は、内視鏡洗浄・消毒システムを手掛ける WASSENBURG Medical B.V. の株式取得などを通じて、医療機器分野でのポートフォリオ拡大も進めており、光学技術と医療機器を組み合わせた事業展開が特徴となっています。さらに詳しく
STAAR Surgical(スターサージカル)
STAAR Surgical は、1982年に米国で設立された眼内レンズ専門メーカーで、特に有水晶体眼内レンズ(ICL:Implantable Collamer Lens)に強みを持っています。角膜を削らない屈折矯正手術の選択肢として、EVO ICL を中心とした製品群が世界各国で採用されており、若年層を含む近視矯正ニーズの高まりを背景に、近年売上を大きく伸ばしています。レーシックなどの角膜屈折矯正手術とは異なるアプローチを提供することで、屈折矯正市場の中で独自のポジションを確立していることが特徴です。さらに詳しく
カール・ツァイス(Carl Zeiss / Carl Zeiss Meditec)
カール・ツァイスはドイツに本拠を置く世界的な光学メーカーで、眼鏡レンズ、カメラレンズ、顕微鏡、半導体製造装置など幅広い光学分野で高い技術力を持っています。医療部門である Carl Zeiss Meditec は眼科診断機器と手術支援システムに強みを持ち、特に IOLMaster(術前計測)や CALLISTO(術中ガイダンス) など、白内障手術のデジタルワークフローを支える製品群が世界的に高いシェアを占めています。眼内レンズ(CT Lucia)も展開しており、2023 年には眼科手術機器メーカー D.O.R.C. の買収合意 を発表するなど、網膜・硝子体手術領域への拡大も進めています。光学技術と医療機器を融合した総合的な眼科ソリューションを提供している点が特徴です。さらに詳しく
