空調機・エアコン業界の世界市場シェア・売上高ランキング・市場規模・M&A(合併買収)について分析しています。ダイキン、美的集団(マイディア)、格力(グリー)、トレインテクノロジー、キャリアなど主要企業の概要も記載しています。
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【空調機・エアコン業界とは】
空調機・エアコン業界は、暖房、換気、冷房といった空調システム(HVAC)を取り扱う業界のことです。HVAC関連の製造販売を行う機器事業と、ソリューション事業に分類されます。近年は、機器の販売だけでなく、施設全体のエネルギーマネジメントや効率的な保守運営の観点からHVACシステムを組み合わせるソリューション事業の比重も大きくなっています。
暖房、換気、冷房の機器は、ヒートポンプ、ボイラー、清浄機、換気扇、除湿器・加湿器、ユニットエアコン、VRFシステム、チラー、ポータブルエアコンなどへとさらに細分化されます。
空調機は、ダクト式とダクトレス式に分かれます。ダクト式空調は中南米で一般的。建物の天井等にダクトを通して機械室に設置した空調機から送風を行うものです。建物全体の空調を一元管理できメンテナンスも容易である一方、個別の部屋の温度や風量設定が難しいとされています。
ダクトレス式空調とは、日本やアジア、欧州等で主流の空調方式で、部屋ごとに室内機に置くため、部屋ごとの温度調整ができ省エネに効果的な一方、メンテナンス等は個別に行う必要があります。
【冷暖房空調機とエアコン業界の世界市場シェア】
空調機・エアコン業界の2024年度の売上高⇒参照したデータの詳細情報を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2024年の空調機・エアコン業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位は美的集団(マイディア)、2位はダイキン、3位は格力(グリー)となります。
空調機・エアコン業界の世界市場シェアと業界ランキング(2024年)
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空調機・エアコン業界の市場シェア(2024年) ©2025 Deallab
*2024データ未公開のため、2023年度の数値
順位 | Company name (English) |
企業名(日本語) | 市場シェア |
---|---|---|---|
1位 | Midea Group | 美的集団 | 16.69% |
2位 | Daikin | ダイキン | 12.26% |
3位 | Gree Electric Appliances | 珠海格力電器 | 8.32% |
4位 | Trane Technology | トレインテクノロジー | 7.96% |
5位 | Carrier | キャリア | 7.66% |
6位 | Mitsubishi Electric | 三菱電機 | 6.11% |
7位 | BOSCH | ボッシュ | 3.45% |
8位 | Johnson Controls | ジョンソンコントロールズ | 2.88% |
9位 | Haier Electronics | ハイアール | 2.78% |
10位 | Panasonic | パナソニック | 2.54% |
11位 | Hisense | ハイセンス | 2.26% |
12位 | Lennox | レノックス | 2.14% |
13位 | Vaillant* | ヴァイヨン* | 1.66% |
14位 | Danfoss | ダンフォス | 1.36% |
15位 | Hitachi | 日立 | 1.03% |
*2024データ未公開のため、2023年度の数値
世界のHVAC業界において、2018年以降業界順位が大きく変動しています。躍進が著しいのは、美的集団(マイディア)と格力(グリー)で、主に家庭用の空調機分野で中国市場を席巻しています。巨大な中国市場をバックにした中国勢が、グローバル展開を目指すダイキンと熾烈な首位争いを繰り広げており、これらが空調分野の新御三家として4位以下を引き離しております。
2024年の世界のHVAC業界において、1位と3位に中国勢である美的集団(マイディア)と格力(グリー)がランクインしました。
ダイキン(Daikin)も圧倒的なシェアで2位を独走しています。その強さの背景には、北米市場での確固たるプレゼンスに加え、中国やインドといった成長著しい新興国市場への積極的な投資と展開戦略があります。
中でも注目すべきはインド市場での躍進です。ダイキンは現地生産体制の強化とともに、リーズナブルな価格帯の製品展開やサービス網の拡充を図り、インド国内の多くの都市部・地方を問わず幅広くシェアを拡大。結果として、2023年にはインドのエアコン市場においてシェア第1位(約21%)を獲得し、現地メーカーを凌駕する存在感を示しました。また、2024年には南インドに新たな製造拠点を開設するなど、さらなる拡大路線を明確にしています。
4位以下にはトレインテクノロジー(Trane Technologies)、キャリア(Carrier)といった米国の老舗メーカーが続きますが、いずれも7%台と、ダイキンとの差は大きく開いています。三菱電機(6位)やパナソニック(10位)といった日本企業も名を連ねていますが、現時点ではダイキンが一歩先を行っている印象です。
ジョンソンコントロールズは2015年に日立空調と合弁会社を設立しましたが、2024年にボッシュへ売却が決まりました。
欧州は緯度的に夏場の空調が必要ない傾向にあったため、欧州の企業は米国・アジア勢と比べてランキングの順位が下がりますが、地球温暖化の影響で夏場の猛暑に悩まされる事態が年々増え、エアコンに頼らない現地の生活スタイルに変化の兆しがみえます。そのため、欧州で空調関連企業のM&A(合併・買収)が活発になっています。デンマークのダンフォス(Danfoss)、ドイツのヴァイヨン(Vaillant)など、群雄割拠の時代が続いています。
また、欧州市場でヒートポンプ市場が停滞したにもかかわらず、当該事業をほぼ50%成長させることができた、ドイツのボッシュ(Bosch)も市場シェアを伸ばして順位をあげています。ジョンソンコントロールズのHVAC事業買収の合意に至ったため、今後もさらにシェアを伸ばすことが予想されます。
【冷暖房空調機とエアコン業界の世界市場規模】
当データベースでは、2024年のHVAC・エアコン業界の市場規模を2494億ドルとしております。
参照した各種調査データは次の通りとなります。調査会社グランドビューリサーチによると、2024年の同業界の市場規模は2494億ドルです。2025年から2026年にかけて年平均7.5%で成長し、規模は3827億ドルへと拡大することを見込んでいます。
年 | 市場規模 | 年平均成長率 |
---|---|---|
2024 | 2494億ドル | – |
2025 | 2667億ドル | 6.93% |
2030 | 3827億ドル | 7.5% |

エアコン・HVAC業界の市場規模の成長予想 ©2025 Deallab
【M&Aの動向】
1979年 ユナイテッド・テクノロジーズ社によるキャリア買収
2007年 投資ファンドによるスイスのFlakt Woods買収
2007年 Ingersoll-Rand(インガソールランド)による米Traneの買収
2007年 ダイキンによるマレーシアの大手空調メーカーOYLを買収
2009年 英Baxiと蘭De Dietrich Remehaが経営統合してBDR Thermaが誕生
2011年 美的集団によるCarrierの南米事業の買収
2011年 LGによるLS Mtronの買収
2011年 ダイキンによるトルコのAIRFELの買収
2012年 ダイキンによるGoodman Global買収
2014年 ジョンソンコントロールによる米Air Distribution Technologiesの買収
2014年 投資ファンドによる仏GEA Heat Exchngaersの買収
2015年 三菱電機による伊DeLclimaの買収
2015年 ジョンソンコントロールと日立との空調機合弁会社の設立
2016年 ダイキンによる米Flandersの買収
2016年 英投資大手Merloseによる空調機メーカーNortekの買収
2017年 ダイキンによるオーストリアの空調メンテナンス会社のAirmasterを買収
2017年 ボッシュによるイタリアの空調機メーカーMTAの買収(その後破談)
2018年 三菱電機とインガソールランドによるダクトレス空調機販売の合弁会社設立
2018年 ダイキンによる商業用冷凍器メーカーのAHTの買収
2019年 Chequers Capitalによるイタリアの空調機メーカーMTAの買収
2020年 インガソール・ランドによるトレインテクノロジーズの分社化
2020年 ダイキンによる空調販売店のアブコ、ロビンソン、スティーブンスの買収
2021年 Madison IndustriesがMelroseの保有している空調機メーカーのNortekを買収
2021年 キャリアが東芝キャリアを子会社化
2021年 ダイキンによる空調卸のサーマルサプライや業務用空調販売のエアレップスの買収
2021年 キャリアが米空調販売大手のワッコと共に空調販売大手のテンプラチャーエクイップメント(TEC)を買収
2022年 パナソニックがスウェーデンの空調大手システムエアから業務用空調事業を買収2022年 トレインテクノロジーズによるドイツ空調大手AL-KOの買収
2022年 ダイキンによる米通信機器大手ベンスターの買収
2022年 Carrier、Toshiba の世界的な住宅用・小型商用 HVAC 事業の買収
2023年 ダイキンによる米アライアンスエアープロダクツとCM3ビルディングソリューションの買収
2023年 エマソンが空調を扱う事業を投資会社へ売却
2024年 ジョンソンコントロールズ、住宅および小規模商業施設向けのHVAC事業をボッシュに売却予定と発表
2024年 日立がジョンソンコントロールズとの空調事業合弁会社をボッシュへ譲渡し、事実上空調事業から撤退予定と発表 2024年 サムスンとレノックス、ダクトレスおよび可変冷媒流量 HVAC システムの合弁会社「Samsung Lennox HVAC North America」設立
【会社の概要】
美的集団
美的集団は、1968年に何亮健(He Xiangjian)氏によって設立された中国に本拠を置く家電メーカーです。1993年に深セン証券取引所に上場しています。家庭用エアコンや洗濯機等に強みを持ち、2016年には東芝の家電部門とドイツの産業ロボット大手のKUKAを買収して事業規模を拡大しています。創業者の何享健が持株会社を通じて大株主となっています。さらに詳しく
珠海格力電器
Gree Electric Appliances(グリー・エレクトリック・アプライアンシズ、珠海格力電器)は、1991年創業の中国の家庭用エアコンメーカーです。家庭用エアコン空調機の販売台数では世界最大級です。家電事業も展開しています。2016年に中興の祖である董明珠・董事長がEV自動車への参入をめぐり解任されました。現在はHillhouse Capital系投資会社が筆頭株主となっています。さらに詳しく
ダイキン
ダイキンは、1924年に設立された日本を代表する空調機メーカーです。産業用の冷暖房空調機では世界トップ級です。ダクト方式に強い米グッドマンやマレーシアのエアコン大手OYL社を買収する等して世界的に事業を展開しています。国内ではパナソニックと家庭用エアコンの分野で競争しています。フッ素化合物などの化学品事業も行っています。さらに詳しく
Trane Technologies(トレインテクノロジーズ)
トレインテクノロジーズは、米国に本拠を置く産業用冷暖房空調機メーカーです。輸送温度コントロール設備、ゴルフカート、エアコンプレッサー等を手掛ける米Ingersoll-Rand(インガソール・ランド)の子会社でしたが、2020年トレインテクノロジーズとして分社化し独立を果たしています。インガソールランド以前は、衛生陶器等も手掛けたAmerican Standard(アメリカンスタンダード)社のグループ会社であったこともあります。さらに詳しく
Carrier Corporation(キヤリア)
キャリアグローバルは、米国に本拠を置く冷暖房空調機の大手メーカーです。元々は航空機エンジン、エレベーター等の大手であるUnited Technologies(ユナイテッド・テクノロジーズ)の子会社でした。2020年にユナイテッド・テクノロジーズは、空調機事業(キャリアグローバル)、エレベーター事業(Otis)と航空機部品事業へと分社化しました。冷暖房空調に加え、輸送用冷蔵機器や火災報知器にも強みを持ちます。さらに詳しく
三菱電機
1921年に設立された日本を代表する総合電機メーカーです。重電システム、産業メカトロニクス、情報通信システム、電子デバイス、家庭電器のセグメントで事業を展開しています。エレベーターは重電システムのビルシステム事業で展開しています。産業用ロボットは産業メカトロニクスで、霧ヶ峰ブランドで有名な空調やエアコンは家庭電器セグメントに含まれます。空調分野は特にM&Aに積極的で、業務用空調分野では2015年にDe’Longhi(デロンギ)のイタリアの子会社のDeLclima(デルクリマ)社を買収して、欧州市場にて業績拡大を目指しています。北米では2018年にインガソールランドによるダクトレス空調機販売の合弁会社を設立しました。さらに詳しく
Bosch Themotechnology(ボッシュ・サーモテクノロジー)
ボッシュはドイツの産業財・自動車部品製造大手です。家電等も手掛けています。空調関連はサーモテクノロジーが手掛けています。さらに詳しく
Haier(ハイアール)
Haier Smart Home (ハイアールスマートホーム)は、1984年に張瑞敏(チャン・ルエミン)氏によって設立された、中国の青島に本拠を置く白物家電世界大手会社です。 グループ傘下で上場会社のHaier Smart Homeが冷蔵庫、洗濯機、テレビ、エアコン、パソコン等を世界的に展開しています。2011年に日本のメーカーである三洋電機の白物家電事業を買収し、アクア株式会社を傘下としました。また、2016年には米国のメーカーGEの家電部門を買収し、事業拡大を図っています。ハイアール、カサルテ、リーダー、GEアプライアンス、フィッシャー&ペイケル、AQUA、キャンディといったブランドで展開しています。さらに詳しく
Johnson Controls (ジョンソン・コントロールズ)
ohnson Controls(ジョンソンコントロールズ)は、1885年に設立された米国に本社を置く業務用空調制御システム、セキュリティシステム、火災検知システム、ビル管理サービスを提供する会社です。電気式サーモスタットを発明した歴史を持ちます。2016年に火災警報分野に強いTyco(タイコ・インターナショナル)と経営統合をしました。世界150ヵ国で展開し、エネルギー効率ソリューションや各種オートメーション事業を展開しています。自動車用のバッテリー等の分野に強みがありましたが2018年に売却しました。さらに詳しく
Haier(ハイアール)
Haier Smart Home (ハイアールスマートホーム)は、1984年に張瑞敏(チャン・ルエミン)氏によって設立された、中国の青島に本拠を置く白物家電世界大手会社です。 グループ傘下で上場会社のHaier Smart Homeが冷蔵庫、洗濯機、テレビ、エアコン、パソコン等を世界的に展開しています。2011年に日本のメーカーである三洋電機の白物家電事業を買収し、アクア株式会社を傘下としました。また、2016年には米国のメーカーGEの家電部門を買収し、事業拡大を図っています。ハイアール、カサルテ、リーダー、GEアプライアンス、フィッシャー&ペイケル、AQUA、キャンディといったブランドで展開しています。さらに詳しく
パナソニック
パナソニックは、1917年に松下幸之助氏によって設立された日本を代表する電機メーカーです。松下電工や三洋電機と統合し、総合電機メーカーとして世界的なプレゼンスを有します。アプライアンス(家電、空調、AV機器、累計2000億個を売り上げた約90年の歴史を持つ電池等)、オートモーティブ(蓄電池、音響機器等)、インダストリアル(電池やモーター等)、ライフソリューション(照明や水まわり等)、コネクティッドソリューションズ(フライトエンターテイメント、航空機向け電子機器、監視カメラ等)といった事業部制に特徴がありましたが、2022年にパナソニックホールディングスを設立し、事業部はホールディング傘下の独立した子会社となりました。さらに詳しく
Lennox International(レノックス)
1895年に設立された米国に本拠を置く冷暖房空調機メーカーです。住宅及び産業向けの空調事業と商業用冷蔵庫事業に強みを持ちます。冷蔵庫事業では、生鮮品を保存するためのユニットクーラー、流体冷却器、空冷式コンデンサー、エアハンドラー、冷蔵ラックシステムといった製品をスーパーマーケット、コンビニエンスストア、レストラン、倉庫、配送センターに納入しています。さらに詳しく
Vaillant(ヴァイヨン)
ヴァイヨンはドイツの冷熱機器製造会社です。ボイラー、ヒートポンプ、ラジエーター、空調製品を手掛けています。同族会社です。さらに詳しく
Danfoss(ダンフォス)
デンマークに本拠をおく複合企業です。建機・運搬機器向けの油圧ポンプ、電動モーター、コンプレッサー、空調・冷熱向けの各種部品、AC/DCドライバーなどを製造しています。Clausen家による同族会社です。さらに詳しく