シーメンスの市場シェア・業績推移・売上構成・株価の分析

シーメンス(Siemens AG)は、ドイツのミュンヘンに本拠を置く大手総合電機メーカーです。1847年に、ヴェルナー・フォン・ジーメンス (Werner von Siemens) によって設立されました。世界初の電車を製造したことでも有名です。事業範囲は電力、交通システム、家電、医療等と社会インフラ全般に及びます。事業のポートフォリオを組み替えながら、モノ作りのデジタル化や産業機器のIoT化を含むインダストリー4.0を提唱し、強力に推進しています。米国のライバルであったGEと同じように再編を通じて、その時々の社会ニーズに即した組織体を作り上げる柔軟性のある経営を行っています。鉄道車両はグループ内のモビリティ事業本部が担当しています。ICEで知られるドイツの高速鉄道も手掛けています。2017年には鉄道車両部門でアルストムと経営統合を発表しましたが、2019年に欧州委員会がアルストムとの経営統合を承認せず遂行されませんでした。鉄道信号にも強みを持ち、上位株主には、象徴としてのシーメンス家が引き続き残っています。

シーメンスの事業は、環境に合わせて大きく変化しています。2018年には(1)デジタルファクトリー、(2)ヘルスケア、(3)エナジーマネジメント、(4)モビリティ、(5)ビルディングテクノロジー、(6)風力発電機、(7)パワー&ガス、(8)プロセスインダストリー&ドライブのモビリティー、(9)金融と大きく9つに分かれていた事業部が、2020年には(1)ヘルスケア、(2)金融、(3)デジタルインダストリーズ、(4)スマートインフラストラクチャーの4部門へと再編されました。

業績推移(年次)

2019年度
売上高は56,797百万ユーロで、前年度比2%増となりました。営業利益は5,063百万ユーロになりました。営業利益率は9%になりました。

2020年度
売上高は55,254百万ユーロで、前年度比3%減となりました。営業利益は4,156百万ユーロになりました。営業利益率は8%になりました。

2021年度
売上高は62,265百万ユーロで、前年度比13%増となりました。営業利益は5,636百万ユーロになりました。営業利益率は9%になりました。全てのセグメントで増益となりました。特にヘルスケアセグメントでは、600百万ユーロの増益となりました。 

2022年度
売上高は71,977百万ユーロで、前年度比16%増となりました。営業利益は4,413百万ユーロになりました。営業利益率は6%になりました。モビリティセグメントとファイナンスセグメントで多少の減益となりましたが、その他のセグメントでは増収となりました。特に、デジタルインダストリーセグメントで500百万ユーロ、スマートインフラストラクチャーセグメントで500百万ユーロ、ヘルスケアセグメントで500百万ユーロ、ポートフォリオセグメントで1,600百万ユーロの増収となりました。

2023年度
売上高は77,769百万ユーロで、前年度比8%増となりました。営業利益は8,514百万ユーロになりました。営業利益率は11%になりました。ヘルスケアセグメントで900百万ユーロ、ポートフォリオセグメントで1,200百万ユーロの減益がありましたが、他のセグメントでは増益となりました。特にデジタルインダストリーセグメントでは1,000百万ユーロ、スマートインフラストラクチャーセグメントでは900百万ユーロの増益となりました。営業利益率の向上は、粗利率が2%上昇したことと、事業売却によるものです。

シーメンスの業績推移
シーメンスの業績推移

業績推移(四半期)

2023年第1四半期(10ー12月)
売上高は18,070百万ユーロになりました。営業利益は1,644百万ユーロ、営業利益率は9%になりました。

2023年第2四半期(1ー3月)
売上高は19,416百万ユーロになりました。営業利益は3,554百万ユーロ、営業利益率は18%になりました。

2023年第3四半期(4ー6月)
売上高は18,889百万ユーロになりました。営業利益は1,410百万ユーロ、営業利益率は7%になりました。

2023年第4四半期(7ー9月)
売上高は21,393百万ユーロになりました。営業利益は1,907百万ユーロ、営業利益率は9%になりました。

2024年第1四半期(10ー12月)
売上高は18,412百万ユーロになりました。営業利益は2,535百万ユーロ、営業利益率は14%になりました。

シーメンスの四半期業績推移

シーメンスの四半期業績推移

EPS・配当額・配当性向の推移

希薄化後EPSは前年度比114%増の9.9ユーロになりました。1株当たりの配当は前年度比11%増の4.7ユーロになりました。配当性向は47%になりました。

シーメンスのEPS・配当額・配当性向の推移
シーメンスのEPS・配当額・配当性向の推移

業績予想

2024年2月
2024年度第一四半期のレポートにて、2024年度通期の売上高は前年比で4%から8%の増加、EPSは10.4ユーロを予定していると掲載されています。

売上構成

セグメントは、デジタルインダストリー、スマートインフラストラクチャー、モビリティ、ヘルスケア、ファイナンス、ポートフォリオに分類されます。セグメント別の売り上げ構成は以下の通りです。

シーメンスの売上構成(2023年度)
シーメンスの売上構成(2023年度)

サブセグメント別の売上構成は以下の通りです。

シーメンスのサブセグメント別売上構成(2021年度)

シーメンスのサブセグメント別売上構成(2021年度)

デジタルインダストリー
製品の受入から搬出までの完全自動化を支援するファクトリーオートメーション、設計等のデジタル化を担うインダストリアルソフトウェア、モーター作動の制御を行うモーションコントロールや工場の安定稼働を実現するプロセスオートメーションを担っています。製品ライフサイクル(PLC)管理システム、各種制御機器、モーター、インバーター、ドライブ、センサー(圧力、温度、レベル、流量、距離、形状の測定用)、電子設計自動化(EDA)ソフトウェア、無線周波数識別システム等の製品を提供しています。産業用モノのインターネット(IIoT)オペレーティングシステムである「MindSphere」との連携も行っています。

スマートインフラストラクチャー
ビルディング・マネジメント・システムおよびソフトウェア、暖房・換気・空調(HVAC)コントロール、防火・セキュリティ製品、低電圧機器、配電設備、スマートグリッド、エネルギー自動化ソリューション、サーキットブレーカー、コンタクター、スイッチング、高圧送電システム等を手掛けています。

モビリティ
祖業でもある鉄道車両等の分野を手掛けます。地下鉄、トラム、ライトレール、通勤電車などの都市・地域交通用の列車や、高速鉄道などの都市間・長距離サービス用の列車や客車、自動列車制御システム、インターロック、運行管理、テレマティクスシステム、デジタルステーションソリューション、鉄道通信システム、車上信号、踏切製品、操車場・車両基地ソリューションなどを提供しています。

ヘルスケア
画像診断装置、体外診断薬・機器事業、遺伝子検査等の分野を手掛けています。医療機器・ヘルスケア機器業界の世界シェアでは上位に位置します。

ファイナンス
シーメンスの顧客および他の企業に負債および株式投資の形で資金調達ソリューションを提供します。

ポートフォリオ
石油とガス、化学、鉱業、セメント、物流、エネルギー、海洋、水道、繊維などのさまざまな業界向けに、製品、ソフトウェア、ソリューション、システム、サービスを幅広く提供する事業で構成されています。

シーメンスエナジー:火力発電等の発電所プラント向けにガスタービン、蒸気タービン、Dresser-RandやADGT&Compを含むコンプレッサー、高電圧直流(HVDC)機器等を提供しているパワー&ガス事業と、洋上や陸上の風力発電所に風力タービンを含めた総合的なサービスを提供している風力発電&再生可能エネルギーがシーメンスエナジーとして再編されています。ガスや蒸気タービンでは、GEや三菱重工と並ぶ大手です。また、洋上風力発電の分野では1991年にデンマークに世界初の洋上風力発電所を設置する等先駆者としての位置づけとなっています。風力発電機業界の世界シェアではスペインのガメサと経営統合をして上位を維持しています。さらに詳しく
コンプレッサーでは、2014年にRolls-Royce(ロールスロイス)のコンプレッサー事業、2015年には米Dresser Land(ドレッサー・ランド)を買収して、北米のエネルギー向けの市場での事業拡大を図っています。

なお、照明事業はオスラムとして分社化し、白物家電はドイツのボッシュグループに売却、補聴器事業も投資ファンドに売却(現シバントス)しています。

M&A情報


2021年 子会社の Siemens Mobility が、鉄道や交通機関に鉄道サービスを提供する大手交通会社である RailTerm の買収を発表
2021年 子会社の Siemens Mobility が、クラウドベースの在庫管理・予約・発券ソフトウェアを世界中の公共交通機関に提供する Sqills の買収を発表
2021年 中小規模の建物向けに IoT 管理システムを提供するハードウェアおよびソフトウェア会社である Wattsense の買収を完了
2022年 製造企業および工業企業向けに、成果指向の予知保全ソリューションを提供する Senseye の買収を発表
2022年 子会社の Siemens Mobility が保有し、インテリジェント道路インフラおよび交通ソリューションを提供する Yunex Traffic を Atlantia S.p.A.に売却
2022年 資産管理ソリューションの SaaS (Software-as-a-Service) プロバイダーの大手である Brightly Software の買収を発表
2023年 コンサル企業の Vendigital の買収を発表
2023年 子会社である Siemens Mobility が、数学的最適化手法とオペレーションリサーチに基づいた交通管理システム (TMS) 用の独自のアルゴリズムを提供するテクノロジー企業である Optrail S.r.l. の買収を発表
2023年 子会社である Siemens Mobility が、スロバキア、チェコ共和国、ハンガリー、ポーランドに国家列車防護システム MIREL を提供する HMH s.r.o. の買収を発表
2023年 集積回路 (IC) 設計チームに回路信頼性ソリューションを提供する EDA ソフトウェア会社 Insight EDA の買収を発表
2023年 スマートメーターソリューション、水質、資産管理、水道網の漏水やその他の異常を検出するための水道事業アプリケーションをAIを利用して顧客をサポートする BuntPlanet の買収を発表
2023年 電動バス、電動トラックにDC急速充電ソリューション技術をサービスを提供する Heliox の買収を発表

株主構成

シーメンス家が筆頭株主です。

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