送配電機器業界の世界市場シェアの分析

送配電機器業界の世界市場シェアと市場規模の情報について分析をしています。日立ABB 、シーメンス 、GE、東芝など世界大手送配電メーカーの動向も掲載しています。

送配電機器業界の世界市場シェア(2019年)

最新業界別売上高世界ランキング第8巻」に記載の送配電機器メーカー各社の売上高を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして2019年の市場シェアを簡易に試算しますと、1位は日立ABB、2位はシーメンス、3位はGEとなります。

1位  日立ABB 9%
2位  シーメンス 6%
3位  GE 4%
4位  東芝 2%
5位  上海電気 1%

市場規模

当サイトでは、調査会社等の公表データを参考にし、送配電機器業界の2019年の世界市場規模を1000億ドルとして市場シェアを計算しております。参照にしたデータは以下の通りです。
調査会社のグローバルマーケットインサイツによると、2016年の同業界の市場規模は600億ドルとなります。2024年にかけて6%での成長を見込みます。また、同調査会社によると、2019年の同業界の規模は1088億ドルです。2026年にかけて、年平均8.3%での成長を見込みます。日立製作所によると、2020年のパワーグリッド業界の市場規模は1000億ドル以上です。

日立によるABBのパワーグリッド事業の買収、シーメンスによる発電・送電事業の分社化、GEとアルストムの送配電事業統合など、業界再編が続いています。

世界の主要な送配電機器メーカーの動向

日立

日立製作所は、久原鉱業所日立鉱山付属の修理工場として、1910年に創業された日本を代表する重電メーカーです。IT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフを主要領域とします。配電事業、自動車部品や鉄道事業は強化する一方で、日立化成、日立金属、日立キャピタル、日立建機等は外部へ売却をする選択と集中を進めています。

日立ABB
2020年から事業を開始した日立とABBのパワーグリッド機器の合弁会社です。日立がABBから当該事業の持分80%を買収することで誕生しました。直流送電 (HVDC)技術、変圧器や特別高圧製品等に強みを持ちます。

鉄道事業
日立の鉄道システム事業部が鉄道事業を手掛けています。従来は国内向けの車両生産がメインでしたが、近年海外売上の拡大を模索しています。2015年にAnsaldo Brenda(アンサルドブレーダ、現Hitachi Rail S.p.A.) とアンサルドSTS(現Hitachi Rail STS S.p.A.)の買収を発表し、欧州・米州・アジアで鉄道車両と信号のターンキーソリューションプロバイダーとして中国北車+南車陣営、欧米ビッグ3への追い上げを図っています。

日立建機
日本を代表する大手建機メーカーです。日立製作所の上場関連会社でもあります。2016年に豪州の鉱山機器向け消耗品に強みを持つブラッドケンを買収しました。

ABBについて

ABB(エービービー)は、スイスに本拠を置く重電・重工業大手です。ABBはAsea Brown Boveri(アセア・ブラウン・ボベリ)の略です。1988年にスウェーデンのアセアとスイスのブラウン・ボベリが経営統合して誕生しました。アセアとブラウン・ボベリは1890年代に創業された両国を代表する老舗重電メーカーです。発電・送変電機器と自動化機器やソフトウェア事業に強みを持ちます。原子力発電と火力発電における発電機器事業は、それぞれWestinghouse(ウェスティングハウス)とAlstom(アルストム)に売却し撤退しました。2018年にGEよりエレクトリフィケーション事業を行うGEインダストリアルソリューションを買収しました。2020年は電力システムやパワーグリッド事業を日立に売却し、事業ポートフォリオの入れ替えを行っています。

ABBの事業は大きくエレクトリフィケーション、ロボティクス、モーション、インダストリアル・オートメーションに分かれます。

ABB売上構成2019年

2019年のABB売上構成(単位:10億ユーロ)
出所:同社

エレクトリフィケーション事業では、質の高い電力供給に関係するソリューションを提供しています。低圧から高圧まで幅広く商品群を供給しており、電気自動車向け充電インフラ、太陽光向けパワーコンディショナ、モジュラー型変電所、スイッチギヤ、サーキットブレーカ、計測およびセンシング機器、制御製品、データ通信ネットワーク、保護機器等が含まれます。競合相手には、電圧機器・配線機器ではシュナイダー、シーメンス、イートン等、ブレーカーではルグラン、直流電源機器はバーティブやデルタがあげられます。北米市場強化を狙い、GEのエレクトリカルソリューション事業を担うGEインダストリアルソリューションを買収しました。

インダストリアル・オートメーション事業では制御技術等を駆使してオートメーションの推進・最適化サービスを提供しています。エネルギー、プロセス、港湾業種向けのオートメーションや分散制御システム分野では世界シェア上位に位置しており、船舶や石油ガス施設向けのターボチャージャーにも強みを持ちます。また、産業の自動化と電力供給の効率化に関連する事業ポートフォリオを構築している点が特徴で、計測分野もカバーしています。

ロボティクス事業では、産業用ロボットや分散型制御システム(DCS)、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、プロセス間通信 (Inter-Process Communication、IPC)を手掛けています。

モーション事業では、モータ、発電機、低/高圧ACドライブ,DCドライブ、産業用ロボットを展開しています。駆動制御を行う低中圧のサーボ・モーション、モーターの制御をするモータードライブでは大手です。なお、モータードライブとは、固定電圧を可変電圧に変換して、モーターの速度を調整する技術の総称です。直流送電 (HVDC)技術に強みを持ち、送電、配電のソリューションを提供していたパワーグリッド事業は、2020年に日立へ売却しました。

現在はInvestor AB(インベストールAB)が筆頭株主となっています。インベストールはスウェーデン有数の富裕ファミリーであるヴァレンベリ家の投資会社です。また、インベストールは傘下に北欧有数の投資ファンドであるEQTパートナーズを所有しています。

2013年 米インバータ大手のパワーワンを買収
2015年 ドイツの産業用ロボットメーカー大手Gomtecを買収
2016年  高圧ケーブル事業をNKTケーブルズに売却
2018年  GEよりGEインダストリアルソリューションズを買収
2020年 電力システム事業を日立に売却
グローバル経営史―国境を越える産業ダイナミズム―
スマート・ファクトリー ― 戦略的「工場マネジメント」の処方箋
電気エネルギー工学 新装版 発電から送配電まで

シーメンスエナジー
ドイツに本拠をおくシーメンスから分社化した発電、送電、再生エネルギー事業を推進する会社です。

シーメンスについて

シーメンス(Siemens AG)は、ドイツのミュンヘンに本拠を置く大手総合電機メーカーです。1847年に、ヴェルナー・フォン・ジーメンス (Werner von Siemens) によって設立されました。世界初の電車を製造したことでも有名です。事業範囲は電力、交通システム、家電、医療等と社会インフラ全般に及びます。事業のポートフォリオを組み替えながら、モノ作りのデジタル化や産業機器のIoT化を含むインダストリー4.0を提唱し、強力に推進しています。米国のライバルであったGEと同じように再編を通じて、その時々の社会ニーズに即した組織体を作り上げる柔軟性のある経営を行っています。鉄道車両はグループ内のモビリティ事業本部が担当しています。ICEで知られるドイツの高速鉄道も手掛けています。2017年には鉄道車両部門でアルストムと経営統合を発表しましたが、2019年に欧州委員会がアルストムとの経営統合を承認せず遂行されませんでした。鉄道信号にも強みを持ち、上位株主には、象徴としてのシーメンス家が引き続き残っています。

GE

GE(ジェネラル・エレクトロニック)は、1878年にトーマス・エジソンによって設立されたエジソン電気照明会社を源流に持つ世界を代表する総合電機メーカーの老舗です。世界シェア1位か2位以外の事業からは撤退するというナンバーワン・ナンバーツー戦略を実施し、積極的な事業ポートフォリオの入れ替えを行うことでも有名です。インダストリアル・インターネットを成長戦略にしたジェフ・イメルト氏が退任した後、2017年に生え抜きのジョン・フラナリー氏が社長に就任したものの、2018年には外部のダナハーからラリー・カルプ氏が招聘され、新CEOとなるなど、経営陣の交代が続きます。

デジタル・インダストリアル・カンパニーを標ぼうして、IoTの今後の動向を見据えた製造業の変革に積極的に取り組んでいます。2017年には下記7つあった事業本部が、2020年には、電力制御、送電やスマートグリッド等の機器の製造や火力・水力・原子力発電所向けのタービン等の機器を取り扱うパワー事業、CTスキャン等の医療用機器の製造を行うヘルスケア事業、航空機エンジン等の製造を行うアビエーション事業、風力や太陽光発電等の機器の製造を行うリニューアブル・エナジー事業、そしてキャピタル事業の5本部体制となっております。

GE事業ポートフォリオ2017年

GE事業ポートフォリオ2017年
出所:同社

ジェットエンジン、エナジーマネジメント、再生エネルギー部門がグループ全体の営業利益の3分の2、売上高の60%近く生み出す稼ぎ頭です。石油やガス関連向けに採掘・生産・パイプライン輸送、化学プラント向けの機器を提供するオイル&ガス事業は、2017年に、イメルト氏の「水より石油」というリーダーシップの下、水処理膜事業や水処理向けのプラントを含む工業用水処理事業のGE Waterをスエズエンバイロメントに売却し、石油サービス大手であるベーカー・ヒューズを買収しています。その後2019年には保有しているベーカー・ヒューズ株式を市場で売却しました。鉄道車両の製造を行うトランスポーテ―ション事業は米国の同業であるワブテックへ売却しました。祖業の照明機器を取り扱うライティング事業も2020年にサバント・システムズへ売却しました。

パワー事業では、ガスタービン、蒸気タービン、ボイラ(熱交換機)、分散電源向け発電機器(イエンバッハ、ワーキシャー、但し2018年に投資ファンドへの売却を発表)、原子力発電所のGE日立ニュークリア、フランスのアルストムより買収した送配電設備、特高変電設備等を製造しています。売上高は186億ドルと巨大な組織です。タービン、送配電、原子力発電の分野では大手です。
リニューアブル・エナジー事業では、風力発電所のタービン(Haliade 150-6MW等の超大型のものも対応可能)や設備、風車の羽根(ブレード)、水力発電所のポンプや設備を製造。水力発電設備の総発電能力のうち、4分の1以上がGEの発電機器によるものとされます。フランスのアルストムを買収し更なる事業の拡大を図っています。
ヘルスケア事業は、従業員約5万超、世界の約140ヶ国で展開、部門の売上は約200億ドルとGEの売上の約20%を占めるGEの主力事業の一角です。画像診断装置(MRI, CT, MIや超音波診断装置、骨密度測定装置、各種X線撮影装置、心臓カテーテルモニタリングシステム)、麻酔器、生体情報モニタおよびユニークパラメータ、分娩監視装置、新生児黄疸光線治療器、保育器、バイオテクノロジー関連機器・分析ソフト・試薬、バイオ医薬品製造向けシステム等を提供。医療機器分野では世界最大手の一角です。
アビエーション事業は、商用・軍用の航空機エンジンの世界3大メーカーの一角となっています。軍事用も手掛けています。ワイドボディー機向けのエンジンに強みを持ちます。ナローボディ機では、フランスのスネクマとCFM Internationalを展開しています。航空機リースの分野では、GECAS(ジーキャス)が世界最大手クラスです。

2006年 保険事業をスイス再保険へ売却
2007年 プラスチック部門をサウジアラビアのSABICに売却
2007年 GEセキュリティを米国のUTC(ユナイテッド・テクノロジーズ)に売却
2009年 メディア事業のNBCユニバーサルをコムキャストへ売却
2015年 仏重電大手のアルストムと発電事業及び鉄道車両事業における経営統合
2016年 家電事業を中国のハイアールへ売却
2016年 GEキャピタル傘下の消費者金融部門をシンクロニー・フィナンシャルとして分社化IPO
2017年 GE Waterをスエズエンバイロメントに売却
2017年 フランスで展開する消費者金融のGE Moneyを投資ファンドのサーベラスへ売却
2017年 デンマークのブレードと呼ばれる羽根の部分を製造する風力発電機器メーカー、LMウインド・パワーを買収
2018年 業務用照明部門(カレント)をアメリカン・インダストリアル・パートナーズに売却
2018年 分散型電源対応用のガスエンジンを生産するブランド「イエンバッハ」と「ワーキシャー」をアベンティスに売却
2018年 機関車事業を米鉄道機器メーカーのワブテックと経営統合
2018年 フィールドサービス管理ソフトウェアを提供するServiceMax(サービスマックス)をSilver Lakeに売却
2018年 ヘルスケア部門の分社化を発表
2019年 ベーカー・ヒューズの持分の売却
2019年 GEトランスポーテーションをワブテックへ売却
2020年 照明事業をサバント・システムズへ売却
GE 巨人の復活 シリコンバレー式「デジタル製造業」への挑戦
GE変化の経営
ジェフ・イメルト GEの変わりつづける経営
ウィニング 勝利の経営
GEが目指すインダストリアル・インターネット
オイル・ガス事業では、ガス・蒸気タービン、圧縮機、ポンプ、エキスパンダー等の回転機器、大型回転機械の振動計測サービス、発電所の制御装置、工業用計測機器、放射線モニタリング機器、非破壊検査機器、流体制御のバルブ製品等を製造していました。ベーカーヒューズを買収し、石油サービス分野では、世界大手級となったのでした。
GEトランスポーテーションでは、ディーゼル機関車等鉄道用車両や船舶用エンジンなどを製造・販売していました。2017年の売上高は約39億ドル。従業員数は約9000人。2018年に米機関車・貨客車製造大手ワブテックに株式の49.9%を29億ドルで売却されました。
照明事業はGEの祖業です。2018年に業務用照明部門を投資ファンドに売却をしました。消費者向けの照明は2020年にサバント・システムズに売却しました。

Alstom(アルストム)

アルストム(Alstom)は、フランスの大手重電メーカーです。発電設備、送電設備、鉄道車両の製造を行っています。Alstomグループ内において鉄道車両はAlstom Transportが担当しています。フランスの高速鉄道の代名詞であるTGVを手掛けた高い技術力を有します。GEがアルストムの送発電事業を買収し、アルストムがGEの鉄道車両事業を買収しました。鉄道信号にも強みを持ちます。2017年に鉄道事業をドイツのシーメンスと経営統合する発表をしましたが、2019年に規制当局の承認が得られず断念しています。また、2020年にボンバルディアの鉄道車両・信号部門の買収を発表しました。送電設備では、フランスのエネルギー大手アレバよりシュナイダー社とともに送配電事業を買収しましたが、2014年にGEと電力事業において戦略的提携を行いました。

東芝

東芝は、日本を代表する重電メーカーです。重電5社(日立、三菱電機、富士電機、明電舎)の一角です。芝浦製作所と東京電気が経営統合して、東京芝浦電気(現東芝)が1939年に誕生しました。経団連会長を輩出する等日本を代表するメーカーの1社でもあります。2016年のウェスティンハウスの減損問題発覚以降は、事業の再編を行い、ビジネスモデルを大きく転換しています。

インフラサービス、インフラシステム、デバイスプロダクトが2020年時点での事業の柱となっています。インフラサービスは、産業用モータ、空調設備、照明、鉄道車両電気品、エレベーター、原子力・火力タービン、送配電、上下水道監視といった、ライフサイクの長い機器を取り扱っています。タービンでは、水力発電タービンや蒸気タービンの分野の世界シェアランキングの上位に位置し、強みを持っています。エレベーター分野ではフィンランドのKONE Corporation (コネ)社と合弁を展開していています。
冷暖房空調機とエアコン業界では東芝は旧ユナイテッドテクノロジーズから分社化独立したキャリアとの合弁事業を展開しています。
デバイスプロダクトでは、パワー半導体であるディスクリート、システムLSI、集積回路のHDD、二次電池、精密医療機器が含まれます。半導体・パワー半導体業界や車載カメラ向け画像処理チップ業界でも上位に位置づけています。HDDは富士通のハードディスク事業を統合し、世界3強の一角です。
インフラシステムには、情報セキュリティ、IoTソリューションズなどが含まれます。東芝テックにてPOS端末を手掛けており、国内のPOS端末業界では大手とされています。

2002年 露光装置(ステッパ)・描画業界大手の東芝機械株式会社の半導体装置事業部がニューフレアテクノロジーとして独立。
2004年 超硬工具・タングステン業界大手の東東芝タンガロイを売却
2006年 沸騰水型原子炉 (BWR)大手のウェスティングハウスを買収
2007年 シリコンウエハ業界大手の東芝セラミックスを売却
2007年 東芝EMIを売却
2010年 携帯電話事業を富士通へ売却
2011年 東芝が電気・ガス・水道メーター業界大手のランディスギアを買収
2016年 東芝ライフスタイルを家電・エレクトロニクス・電機業界大手のMidea Group(美的集团)へ売却
2016年 医療機器・ヘルスケア機器業界大手の東芝メディカルシステムをキャノンへ売却
2017年 ウェスティングハウスが経営破綻
2018年 パソコン(ダイナブック)事業をシャープへ売却
2018年 東芝メモリを分社化・売却
2018年 テレビ事業をハイセンスへ売却
東芝消滅 [単行本]
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Shanghai Electric(シャンハイエレクトリック、上海電気)
中国に本拠を置く重電メーカーです。発電や送電機器等の製造に強みを持ちます。

主要な業界団体
JEMA 一般社団法人 日本電機工業会

業界関連書籍
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