ABB（エービービー）は、スイスに本拠を置く重電・重工業大手です。ABBはAsea Brown Boveri（アセア・ブラウン・ボベリ）の略です。1988年にスウェーデンのアセアとスイスのブラウン・ボベリが経営統合して誕生しました。アセアとブラウン・ボベリは1890年代に創業された両国を代表する老舗重電メーカーです。発電・送変電機器と自動化機器やソフトウェア事業に強みを持ちます。原子力発電と火力発電における発電機器事業は、それぞれWestinghouse（ウェスティングハウス）とAlstom（アルストム）に売却し撤退しました。2018年にGEよりエレクトリフィケーション事業を行うGEインダストリアルソリューションを買収しました。2020年には電力システムやパワーグリッド事業を日立に売却し、事業ポートフォリオの入れ替えを行っています。
2018年度
売上高は27662百万ドルで、前年度比10%増となりました。営業利益は2226百万ドルになりました。営業利益率は8%になりました。
2019年度
売上高は27978百万ドルで、前年度比1%増となりました。営業利益は1938百万ドルになりました。営業利益率は7%になりました。
2020年度
売上高は26134百万ドルで、前年度比7%減となりました。これは、パンデミックの影響で事業活動が縮小され全ての事業エリアで売上が減少したためです。営業利益は1593百万ドルになりました。営業利益率は6%になりました。
2021年度
売上高は28945百万ドルで、前年度比11%増となり、パンデミック以前の売上に回復しました。営業利益は5718百万ドルになりました。営業利益率は20%で、前年度の6%から増加しました。これは、同社の一部事業をDodgeへ売却した利益が営業利益に計上されているためです。
2022年度
売上高は29446百万ドルで、前年度比2%増となりました。営業利益は3337百万ドルになりました。営業利益率は11%になりました。
ABBの業績推移
2022年第2四半期（04ー06月）
売上高は7251百万ドルになりました。営業利益は587百万ドル、営業利益率は8%になりました。
2022年第3四半期（07ー09月）
売上高は7406百万ドルになりました。営業利益は708百万ドル、営業利益率は10%になりました。
2022年第4四半期（10ー12月）
売上高は7824百万ドルになりました。営業利益は1185百万ドル、営業利益率は15%になりました。
2023年第1四半期（01ー03月）
売上高は7859百万ドルになりました。営業利益は1198百万ドル、営業利益率は15%になりました。
2023年第2四半期（04ー06月）
売上高は8163百万ドルになりました。営業利益は1298百万ドル、営業利益率は16%になりました。
ABBの四半期業績推移
希薄化後EPSは前年度比42%減の1.3ドルになりました。1株当たりの配当は前年度比1%増の0.91ドルになりました。配当性向は70%になりました。
ABBのEPS・配当額・配当性向の推移
2023年07月
2023年通期の売上は前年度比で最低でも10%の増加、EBITA率は16%を予定しています。
セグメントは、電力供給事業、モーション事業、自動化事業、ロボティクス事業に分類されます。セグメント別の売り上げ構成は以下の通りです。
ABBの売上構成（2022年度）
電力供給事業
質の高い電力供給に関係するソリューションを提供しています。低圧から高圧まで幅広く商品群を供給しており、電気自動車向け充電インフラ、太陽光向けパワーコンディショナ、モジュラー型変電所、スイッチギヤ、サーキットブレーカ、計測およびセンシング機器、制御製品、データ通信ネットワーク、保護機器等が含まれます。競合相手には、電圧機器・配線機器ではシュナイダー、シーメンス、イートン等、ブレーカーではルグラン、直流電源機器はバーティブやデルタがあげられます。北米市場強化を狙い、GEのエレクトリカルソリューション事業を担うGEインダストリアルソリューションを買収しました。
モーション事業
モータ、発電機、低／高圧ACドライブ、DCドライブ、産業用ロボットを展開しています。駆動制御を行う低中圧のサーボ・モーション、モーターの制御をするモータードライブでは大手です。なお、モータードライブとは、固定電圧を可変電圧に変換して、モーターの速度を調整する技術の総称です。直流送電 (HVDC)技術に強みを持ち、送電、配電のソリューションを提供していたパワーグリッド事業は、2020年に日立へ売却しました。
自動化事業
制御技術等を駆使してオートメーションの推進・最適化サービスを提供しています。エネルギー、プロセス、港湾業種向けのオートメーションや分散制御システム分野では世界シェア上位に位置しており、船舶や石油ガス施設向けのターボチャージャーにも強みを持ちます。また、産業の自動化と電力供給の効率化に関連する事業ポートフォリオを構築している点が特徴で、計測分野もカバーしています。
ロボティクス事業
産業用ロボットや分散型制御システム(DCS)、プログラマブルロジックコントローラ（PLC）、プロセス間通信 (Inter-Process Communication、IPC)を手掛けています。
現在はInvestor AB（インベストールAB）が筆頭株主となっています。インベストールはスウェーデン有数の富裕ファミリーであるヴァレンベリ家の投資会社です。また、インベストールは傘下に北欧有数の投資ファンドであるEQTパートナーズを所有しています。物言う株主のCevian Capitalも大株主となっています。
ABBの株主構成（直前期末時点）
2013年 米インバータ大手のパワーワンを買収
2015年 ドイツの産業用ロボットメーカー大手Gomtecを買収
2016年 高圧ケーブル事業をNKTケーブルズに売却
2018年 GEよりGEインダストリアルソリューションズを買収
2020年 電力システム事業を日立に売却
2020年 ターボチャージング、メカニカルパワートランスミッション、パワーコンバージョン事業の戦略レビューを発表
2021年 ベアリング、ギア、パワートランスミッションコンポーネントなどを手掛けるパワートランスミッション部門（Dodge）をRBC Bearings Incorporatedに29億ドルで売却
2023年 Siemensの低電圧モーター事業を買収
2023年 ABBが保有していた電力変換事業をAcBelへ売却
