塩化ビニル(塩ビ)業界の世界シェアと市場規模について分析をしています。信越化学、台湾プラスチック、オキシビニール、イノビンといった塩ビ大手メーカーの概要や動向も掲載しています。
【塩化ビニル(塩ビ)とは】
塩化ビニルの原料と最終製品
塩素とエチレンを化学反応させ塩化ビニルモノマー(VCM、Vinyl Chloride Monomer、化学式CCH2=CHCI)を製造します。その後、塩化ビニルモノマーを付加重合させると塩化ビニル樹脂(PVC、Polyvinyl Chloride)となります。塩化ビニルは、硬質製品である水道管や配管、軟質製品であるフィルム、シート、ホース、チューブなどの最終製品に使用されます。

【市場シェア】
塩化ビニル(塩ビ)業界の2023年度の売上高⇒参照したデータの詳細情報を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2023年の塩化ビニル(塩ビ)業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位は信越化学、2位はウェストレイク、3位は台湾プラスチックとなります。
塩化ビニルメーカーの世界市場シェアと業界ランキング(2023年)
順位 | Company name (English) |
会社名 | 市場シェア |
---|---|---|---|
1位 | Shinetsu | 信越化学 | 7.29% |
2位 | Westlake Chemical | ウェストレイク | 5.81% |
3位 | Formosa Plastics | 台湾プラスチック | 5.22% |
4位 | Inovyn | イノビン(イネオス) | 3.46% |
5位 | OxyVinyls | オキシビニール | 2.76% |
6位 | Orbia | オルビア(旧メキシケム) | 2.17% |
7位 | AGC | AGC | 1.97% |
業界の市場シェア(2023年).png)
信越化学が米国での増産を狙い、欧州、日本の拠点を合わせて1位の生産量となっております。2位は米国に本拠を置く化学大手ウェストレイク。3位は台湾最大の総合化学メーカー、台湾プラスチックになります。欧州の化学大手Solvay(ソルベイ)とINEOS(イネオス)が経営統合したイノビン(イネオス)が4位、オキシデンタル石油の傘下、オキシビニールが5位となっております。6位はメキシコに本拠を置く化学メーカー、オルビア。7位にはガラス以外にも電子・化学品・セラミックスの分野で事業を展開している日本のAGCとなっております。
【市場規模】
当データベースでは、2023年の塩化ビニル(塩ビ)業界の市場生産規模を6090万トンとしております。参照した各種調査データは次の通りとなります。
調査会社グローバルデータによると、2023年の同業界の市場生産規模はを6090万トンです。2028年にかけて年平均3%で成長し、生産規模は7060万トンへと拡大することを見込んでいます。
年 | 市場規模 | 成長率見込み |
---|---|---|
2023年 | 6090万トン | – |
2028年 | 7060万トン | 年平均3% |
業界の市場規模の予想成長推移.png)
さらに業界に詳しくなるためのお薦め書と関連サイト
塩化ビニルモノマー
Mr.金川千尋 世界最強の経営
化学業界の市場シェア・売上高ランキング・市場規模・再編の分析
ソーダ灰(炭酸ナトリウム)業界の世界市場シェアの分析
【M&Aの動向】
2016年 Westlake Chemical、Axiall Corporation の買収を完了
2016年 INEOS、INOVYN合弁会社の買収を完了
2021年 AGC Biologics 社、米国における遺伝子治療薬工場の買収契約締結
2022年 Orbia の接続ソリューション事業 Dura-Line が Biarri Networks を買収
【会社の概要】
信越化学
信越化学は1926年に創業された日本を代表する化学メーカーです。旭化成、積水化学、積水ハウスと同じ源流である日本窒素肥料(現チッソ)の関連会社として誕生しました。同社のアニュアルレポートによれば、塩化ビニル樹脂、シリコンウエハ、先端品フォトマスクブランクス、フェロモン製剤では世界1位です。セルロース、シリコーンでも世界大手となっています。半導体ウエハはSUMCOと二強体制となっています。さらに詳しく
台湾プラスチック(Formosa Plastics、FPG、台湾プラスチックグループ)
1954年に設立された台湾最大の総合化学メーカーです。創業者は王永慶(Y. C. Wang)氏で、「台湾の松下幸之助」とも称される名経営者です。
Inovyn(イノビン)
2015年に欧州の化学大手Solvay(ソルベイ)とINEOS(イネオス)が経営統合して誕生した塩ビメーカーです。BASFとの合弁のSolVinも吸収しています。
ソルベイについて
Solvay(ソルベイ)は、1863年にエルネスト・ソルベイ氏によって設立されたベルギーに本拠を置く化学メーカーです。ソルベイ法を用いた炭酸ナトリウムやソーダ灰の製造で有名です。2011年にフランスの特殊化学メーカーであるローディアを買収し事業領域を拡大、現在は特殊ポリマー、炭素繊維、過酸化物、シリカ、特殊化学、アロマパフォーマンスといった分野を手掛けています。さらに詳しく
OxyVinyls(オキシビニール)
米国に本拠を置く塩ビメーカーです。独立系石油大手のオキシデンタル石油の傘下にあります。
Westlake Chemical(ウェストレイク・ケミカル)
米国に本拠を置く化学大手です。2016年に塩ビ大手のAxiall(PPGインダストリーズのクロールアルカリ事業とGeorgia Gulfが合併して誕生した汎用化学大手)を買収して、塩ビ事業を強化しています。
Orbia(オルビア)
1953年にMexichem(メキシケム)として設立されたメキシコに本拠を置く化学メーカーです。PVC(塩ビ)に加え、ラスクエバス鉱山で蛍石を採掘しています。プラスチック製パイプおよび継手で大手です。
Xinjiang Zhongtai(新疆中泰化学、シンジャン・ジョンタイ・ケミカル)
2001年に設立された 新疆ウィグル自治区に本拠を置く化学メーカーです。PVC樹脂(PVC)、イオン膜苛性ソーダ、ビスコース繊維、ビスコース糸などを製造販売しています。
Hubei Yihua(湖北宣化化工、フーベイ・イーホワ・ケミカル・インダストリー)
1977年に設立された政府系の湖北益華集団傘下の化学メーカーです。尿素、化学製品、電気製品、クロールアルカリ製品、ポリ塩化ビニル(PVC)及びリン酸二アンモニウムなどの製造開発を行っています。
Shaanxi Beiyuan Chemical Industry(狭西北元化工集団有限公司)
2003年に設立された中国の陝西省に本拠を置く化学メーカーです。PVC樹脂、セメント、苛性ソーダ、液体塩素、塩酸、炭化カルシウムなどの製造販売を行っています。
Kem One
フランスに本拠を置く塩ビメーカーです。2012年に仏アルケマがKlesch Groupに売却し誕生しました。投資ファンドのアポログローバルマネジメントが買収し、2021年に経営陣によるMBOを発表しました。
アルケマについて
フランスを代表する機能性化学メーカーです。石油メジャーのTotalから2004年に分社化して誕生しました。接着剤、パフォーマンスマテリアル、コーティング事業が3分柱です。2021年にPMMA事業を合成ゴム大手メーカーであるTrinseoへ売却しました。さらに詳しく
ケムチャイナ
中国化工集団(ケムチャイナ、ChemChina、China National Chemical Corporation )はRen Jianxin(任建新)氏によって設立されたChina National Blue Star Corp(藍星) と China Haohua Chemical Industrial Corp(昊華)が2004年に経営統合して誕生した中国政府系の化学メーカーです。中国政府が100%株式を保有しています。農薬、ゴム、シリコーンや機能性化学等の分野で事業展開しています。2016年から寧高寧氏がシノケムとケムチャイナのCEOとなり、2021年に国営化学会社のシノケムと経営統合、中国中化(シノケム)ホールディングス傘下になりました。続きを読む
AGC
1907年に創業をした日本を代表するガラス・素材メーカーです。ガラス以外にも電子・化学品・セラミックスの分野で事業を展開しています。ガラス分野では仏サンゴバンと首位を競っています。液晶用ガラスにも強みを持ちます。ディスプレイ用特殊ガラス(Dragontrail®)が有名です。近年ライフサイエンス分野(バイオ医薬品原薬の製造開発受託等)への多角化を推進しています。さらに詳しく
参照したデータの詳細情報について
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