種苗・種・種子・シード業界の世界市場シェアの分析

種苗・種・種子・シード(seed)会社の世界市場シェアと市場規模と再編について分析をしております。Syngenta(シンジェンタ) 、モンサント、Limagrain(リマグラン) など世界の主要な種苗会社の動向も掲載しております。バイエルによるモンサント買収等、種子の業界は大再編時代を迎えております。

市場シェア

「種子(シード)業界の世界売上高ランキングの分析(2020年版)」に記載されている各社の売上高を分子に、市場規模を分母にして、2019年の種苗・種子・シード業界の世界市場シェアを簡易に算出すると、1位はBayer(バイエル)の14.5%、2位はCorteva Agriscience(コルテバ・アグリサイエンス)の12.7%、3位はSyngenta(シンジェンタ)の5.2%となります。

1位 Bayer(バイエル) 14.5%
2位 Corteva Agriscience(コルテバ・アグリサイエンス) 12.7%
3位 Syngenta(シンジェンタ) 5.2%
4位 BASF 3.8%
5位 Vilmorin(ヴィルモラン) 2.9%
6位 KWS 2.0%
7位 DLF 1.3%
8位 サカタのタネ 1.0%
9位 タキイ種苗 0.8%

世界1位はドイツのバイエルとなりました。米国のモンサントを買収して、種子分野での世界1位の座を射止めました。買収後はラウンドアップ等の訴訟でも和解を進めております。2位はダウケミカルの種子会社であったダウアグロサイエンスとデュポンの種子会社であったパイオニアが統合して誕生したコルテバ・アグリサイエンスです。ダウデュポンより独立をして種子分野を世界展開を進めています。
3位は中国の大手化学メーカーであるケムチャイナが買収したシンジェンタです。トップ2社が再編を進めることで規模が大きくなっており、ケムチャイナの次の一手に注目が集まります。4位は、バイエルによるモンサント買収により、当局から売却要請をうけた種子事業を買収したBASFです。農薬分野では大手でしたが、種子分野への参入によって、業界に新しい流れが生まれています。
5位はフランスのヴィルモランです。農業組合を親会社に持ち、安定した経営基盤を持っております。6位はドイツのKWSです。7位はデンマークのDLF、8位は日本のサカタのタネとなっています。なお、米国のランドオレイクスも種子分野の大手ですが、売上高の詳細が非開示のため、今回はランキングから除外しています。

再編

研究開発の先行投資を行うために、種子大手による規模拡大や種子技術の獲得を目指した再編が続いてきました。

  • 1996年 モンサントによるAgracetusの買収
  • 1998年 モンサントによるカーギルの種苗部門の買収
  • 1999年 デュポンによるパイオニアの買収
  • 2001年 ランドオレイクスによるPurina Millsの買収
  • 2004年 シンジェンタによるAdvantaの買収
  • 2004年 シンジェンタによるGolden Harvest Seedsの買収
  • 2005年 モンサントによるSeminisの買収
  • 2012年 シンジェンタによるDevegenの買収
  • 2013年 シンジェンタによるMRI Seedの買収
  • 2015年 中国化工によるシンジェンタの買収
  • 2016年 バイエルによるモンサントの買収

市場規模

下記調査会社の情報も参考にして、当サイトでは、2019年の種苗・種子業界の市場規模を概ね平均値である600億ドルとしております。調査会社のアイマークによれば、2019年の同業界の市場規模は714億ドルです。調査会社のマーケッツアンドマーケッツによれば、2019年の同業界の市場規模は554億ドルです。2025年に向けて年率7.6%の成長を見込みます。日本の世界規模は概ねトップ10内外の14億ドル程度です。国別でみると、米国、中国、フランス、ブラジル、カナダ、オランダが大手国となっています。

参照:日本の種子供給構造
日本における種苗の供給体制は、稲、麦、大豆、ばれいしょ等の主要農作物の種苗は、研究独法や都道府県の試験場が開発した優良な品種の原種を元にして国内の種苗生産地で段階的に増殖したものが供給されている。野菜・花きの種苗は、国内の種苗会社が開発した優良な品種を用いて、国内及び海外の種苗生産地で採種されたものが供給されている。果樹の種苗は、研究独法や都道府県の試験場等が開発した優良な品種の母樹の枝(穂木)を他の品種に接いで国内で増殖し、苗木に仕立てたものが供給されている。

農林水産省

世界の主要な種子・種苗会社の一覧

Bayer(バイエル)

Bayer AG(バイエル)は、1863年にフリードリヒ・バイエル氏によって設立されたドイツに本拠を置く世界的な医薬品・化学品メーカーです。アスピリンの発明で有名です。第二次世界大戦中には、BASF、ヘキストとともにIG・ファルベンを形成した。戦後にバイエルとして独立し、数々の買収や事業の売却を行っています。

農薬・種子事業、ファーマスーティカル事業、コンシューマーヘルス事業が3本柱です。2015年にはマテリアルサイエンス部門をコベストロ(Covestro)として分社化・独立させています。

農薬・種子事業においては、2016年にモンサントを買収し、農薬ビッグ4を一歩引き離す存在となりました。種子分野でも上位に入っています。なお、香料大手であるシムライズは、2002年に同社の子会社の出会ったHaamann & Reimer社とDragoco社が経営統合をし、誕生した経緯があります。

2016年 ドイツ化学大手のバイエルが米の種子・農薬大手のモンサント買収を発表。
買収総額は約660億ドル。モンサントの終値に対して約20.6%のプレミアム。
農薬業界は、バイエル・モンサント連合、ダウ・デュポン連合、シンジェンタ・ケムチャイナ連合とビッグ6からビッグ3連合へと集約。
農薬の外部環境としては、食料の安全性、環境保全、バイオ・遺伝子への巨額研究投資を継続できるかが、生き残りの条件となっている。
一方、今後の人口増から農薬・種子への需要は今後も拡大し、成長分野である。
バイエル・モンサント連合は、経営統合により総額25億ユーロの研究投資枠を確保可能
また、農薬に強みをもつバイエルと、バイオ・種子技術に強みを持つモンサントは事業補完性が高い。欧州と米国における地域補完性も高い。

 

ファーマスーティカル事業では、循環器・腎臓、腫瘍、眼科、婦人科、血液、画像診断といった領域に注力しています。

コンシューマーヘルス事では、医療用医薬品やメルクから大衆薬分野を買収して強化しています。プレナタルサプリメント、美容サプリメントを強化しています。解熱鎮痛薬バイエルアスピリンは同社の代名詞とも言える商品です。

1925年 IGファルベン社が設立
1951年 IGファルベン社が解散し、バイエルとして再スタート
2000年 米ライオンデル・ケミカル社のポリオール事業を買収
2001年 クロップサイエンスのアベンティスからの買収
2002年 香料子会社のHaamann & Reimer社とDragocoが経営統合をしてシムライズが誕生
2005年 高分子事業を手掛けるランクセスの分社化
2005年 ロシュ社の一般用医薬品事業の買収
2006年  シエーリング社買収
2007年 診断事業をシーメンスに売却
2013年 テバより動物薬事業を買収
2014年 アルジェタ社の買収
2014年 メルクより一般医薬品事業を買収
2015年 プラスチック事業を手掛けるCovestro(コベストロ)の分社化上場
2016年 モンサントの買収
2018年 グルホシネートアンモニウム事業および除草剤耐性に関連するLibertyLinkをBASFに売却
2018年 Nunhemsブランドの野菜種子をBASFに売却
2019年 動物薬などのアニマルヘルス事業を、同業の米エランコ・アニマルヘルスに76億ドル(約8千億円)で売却

Corteva Agriscience(コルテバ・アグリサイエンス)

E.I du Pont de Nemours(デュポン)とダウケミカルの合併によって分社化設立された農薬と種子専門会社です。デュポンは子会社のパイオニアを通じて種苗・バイオ事業を展開していましたが。経営統合によりさらに事業を強化しています。

Syngenta(シンジェンタ)

スイスに本拠を置く世界的なアグリ関連メーカーです。2000年にノバルティスとゼネカのアグリ事業が統合して誕生しました。農薬や種苗に強みを持ちます。2016年に中国の国有科学メーカーの中国化工集団(ケムチャイナ)が買収しました。ケムチャイナは2015年にイタリアの名門タイヤメーカーのピレリを買収するなど、海外展開に積極的です。

見出しケムチャイナによるシンジェンタの買収ハイライト
  • 2016年2月 中国の国有化学会社の中国化工集団(ケムチャイナ)がスイスの種子大手のシンジェンタに買収提案。シンジェンタ取締役会は買収に同意。
  • ケムチャイナからの提案に先立ち2015年には同業の米モンサントからも買収提案があったが、その際はシンジェンタは拒否。
  • シンジェンタはケムチャイナと組むことで中国市場での事業拡大を志向。
  • 一方ケムチャイナはシンジェンタの種子・農薬技術の獲得が可能となる。
    買収価格は430億ドル(約5兆1600億円)
  • シンジェンタの直近株価に対して20%のプレミアム
  • シンジェンタの直近の業績は堅調

ケムチャイナ

中国化工集団(ケムチャイナ、ChemChina、China National Chemical Corporation )はRen Jianxin(任建新)氏によって設立されたChina National Blue Star Corp(藍星) と China Haohua Chemical Industrial Corp(昊華)が2004年に経営統合して誕生した中国政府系の化学メーカーです。中国政府が100%株式を保有しています。農薬、ゴム、シリコーンや機能性化学等の分野で事業展開しています。
農薬分野では2011年にイスラエルに本拠を置くジェネリック農薬大手のAdama(アダマ)を、2016年にはスイスに本拠を置く農薬メーカー大手のシンジェンタを買収して、世界最大級となっています。
タイヤ事業では2015年にイタリアに本拠を置くタイヤ大手のピレリを買収して、上位に位置します。
シリコーン業界でも、2006年にフランスのローディアからシリコーン事業を買収、2011年にはノルウェーのコングロマリット大手のOrkla Group(オルクラグループ)からElkemを買収し世界大手となっています。
2006年には動物用栄養製品メーカーの Adisseo を4億ユーロで買収しています。2016年には射出成形機大手の独KraussMaffei(クラウス=マッファイ)を買収しています。

2004年 China National Blue Star Corp(藍星) と China Haohua Chemical Industrial Corp(昊華)が経営統合
2005年 豪州の石化会社Qenosを買収
2006年 動物用栄養製品メーカーの Adisseo を買収
2006年 フランスのローディアからシリコーン事業を買収
2011年 イスラエルの農薬大手Adama(アダマ)を買収
2011年 ノルウェーのコングロマリット大手のOrkla Group(オルクラグループ)からElkemを買収
2015年 イタリアのタイヤ大手ピレリを買収
2016年 射出成形機大手の独KraussMaffei(クラウス=マッファイ)を買収
2016年 スイスの農薬・種子大手のシンジェンタを買収
中国・社会主義市場経済と国有企業の研究: 鉱工業部門についての考察
中国大型国有企業の経営システム改革―中国石油天然ガス集団公司を中心として
中国国有企業の改革と再編 

Limagrain(リマグラン)

フランスに本拠を置く農協グループです。種苗分野は買収したヴィルモラン(Vilmorin)社と通じて展開しています。米州は、KWSと50/50の共同出資会社AgReliant Geneticsでとうもろこし種子分野を展開しています。

Land O’Lakes(ランドオレイクス)

米国に本拠を置く農協グループです。肥料や種苗分野の大手です。種苗はWinField(ウィンフィールド)ブランドにて展開しています。

KWS

ドイツに本拠を置く種苗会社です。フランクフルト証券取引所に上場しています。米州はリマグラン/ビルモランと共同でとうもろこし種子を展開しています。

サカタのタネ

日本の大手種苗メーカーです。ブロッコリー、トルコギキョウ、パンジーにおける種子で高い世界シェアを誇ります。

タキイ種苗

日本の大手種苗メーカーです。江戸時代に創業しました。観賞用ヒマワリとハボタンで高い世界シェアを誇ります。

DLF

デンマークに本拠を置く種苗会社です。DLF-TRIFOLIUM(DLFトリフォリウム)より社名変更しています。デンマークの農家のよって保有される非公開会社です。

野菜種子

少し古いですが、農林水産先端技術振興センターによれば、2009年の野菜種子の分野では、バイエル・モンサント(但しBASFが買収予定)、シンジェンタ、ビルモラン、オランダのナンザ、サカタのタネ、タキイ種苗、オランダのライク・ズワーン、オランダのトマトやパプリカに強いEnza Zaden(エンザ・ザデン)が大手となっています。種子の中でも野菜種子の市場規模は、おおむね4000億円程度と推計されます。

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