ハードディスクドライブ(HDD)業界の世界市場シェア・売上高ランキング・市場規模・M&A(合併買収)について分析しています。1990年代には40社以上あったと言われるハードディスクドライブメーカーも大手3社(ウエスタンデジタル、シーゲートテクノロジー、東芝)に集約しています。その世界大手ハードディスクドライブメーカー3社の概要や動向も掲載しています。
【ハードディスクドライブ業界とは】
ハードディスクドライブ(HDD)を製造・開発する業界のことで、パソコンやサーバーに搭載される記憶装置のことを指します。ソリッドステートドライブ(SSD)と並んで、大量のデータを保存する装置として広く利用されています。
ハードディスクドライブは、エンタープライズ・ニアライン・3.5インチ・2.5インチなどの製品に分かれています。中でもニアラインは出荷台数や記憶容量が大きく、今後も堅調な推移を見せると予測されています。
【ハードディスクドライブの構造】
下図の通りハードディスクドライブは4つの部材から構成されています。プラッタは磁気ドライブもしくはハードディスクともいわれ情報を記録する場所です。スピンドルは、軸付きモーターでプラッタを高速で回転させ、アームは情報の読み書きを行い、アクチュエーターはモーターの回転速度を調整します。ハードディスクドライブメーカーが、これらの部材を製造しているわけでなく、例えばプラッタは、昭和電工等が大手です。
さらに業界に詳しくなるための書籍と関連サイト
改訂 ハード・ディスク装置の構造と応用
NAND型フラッシュメモリー業界の世界市場シェアの分析
ソリッドステートドライブ(SSD)業界の世界市場シェアの分析
【市場シェア】
ハードディスクドライブメーカー各社の2022年会計年度の売上高⇒参照したデータの詳細情報を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2022年のハードディスクドライブ業界の市場シェアを簡易に試算しますと、世界1位はシーゲートテクノロジー、2位はウェスタンデジタル、3位は東芝となります。
順位 | 会社名 | 市場シェア |
---|---|---|
1位 | シーゲートテクノロジー | 26.98% |
2位 | ウェスタンデジタル | 22.85% |
3位 | 東芝 | 9.76% |
*シーゲートテクノロジーとウェスタンデジタルの売上高は2023年会計年度(2022年7月~2023年6月)のデータを使用
HDDが台頭し始めた1990年代には40社以上あったHDDメーカーも、度重なる再編を経て2012年には3社のみとなりました。中でもシーゲートテクノロジーが30%近くのシェアを維持し続けており、HDD業界のリーディングカンパニーの座を守っています。ウエスタンデジタル・東芝が続いています。
【市場規模】
当データベースでは、ハードディスクドライブ業界の2022年の世界市場規模を273億7100万ドルとしております。参照した各種調査データは以下の通りです。
調査会社のKnowledge Sourcing Intelligenceによると、2022年のハードディスクドライブ業界の市場規模は273億7100万ドルです。2029年にかけて年平均0.74%で成長し、同年には288億1100万ドルに達すると予想されています。
年 | 市場規模 | 成長率見込み |
---|---|---|
2022年 | 273億7100万ドル | – |
2029年 | 288億1100万ドル | 0.74% |
SSDの需要が拡大するにつれて、HDDの市場規模は縮小し続けています。2019年からの出荷台数は減少していますが、単価は上がっているのが特徴です。SSDの記憶容量が増加するにつれて、HDDの需要は減少し続けるという味方が一般的です。一方、高速でデータ処理できるSSDに対して、大容量を記憶できるのがHDDの魅力と言われており、今後は出荷台数が増加するという意見もあります。
【売上高ランキング】
2021年10-12月四半期売上高をベースとしたHDDメーカーのランキングでは、1位シーゲートテクノロ2023年4-6月四半期売上高をベースとしたHDDメーカーのランキングでは、1位シーゲートテクノロジー、2位ウェスタンデジタル、3位東芝となっており、通期のシェアと同じです。⇒参照したデータの詳細情報
【M&Aの概要】
PCが普及し始めた1990年代にはHDDの開発を手がける企業が多くありましたが、再編を繰り返した結果、現在では3社のみが残っています。HDD業界自体が縮小していることを考えると、今後再編により企業が減ることはあれど、競合が増えることはないと予測されています。
2016年 ウエスタンデジタルがサンディスクを155.9億ドルで買収
2012年 ウエスタンデジタルが日立のHDD事業を手掛ける日立GSTを47億ドルで買収
2011年 シーゲートがサムスン電子のHDD事業を11億ドルで買収
2010年 東芝が富士通のHDD事業を約300億円で買収
2006年 シーゲートテクノロジーがMaxtorを19億ドルで買収
2005年 東芝がパナソニックヘルスケアの前身であるパナソニック四国エレクトロニクスから北米HDD開発センターを買収
【会社の概要】
Seagate Technology(シーゲート)
米国に本拠を置く独立系のHDDメーカーです。独立系のHDDメーカーとしては最古参で、サーバー、デスクトップ、ノートパソコン、ゲーム機などに使用されています。2011年、サムスンのHDD部門を買収しました。
Western Digital(ウェスタン・デジタル)
ウェスタンデジタルは、1970年に設立された米国に本拠を置く世界最大級のハードディスクメーカーです。日立グローバルストレージテクノロジーズを買収し事業を拡大しています。2015年に中国の紫光集団(チンファ・ユニグループ、Tsinghua Unigroup)が同社への15%出資を目指すも断念しました。2015年にコンパクトフラッシュ、SDカード等のフラッシュメモリーを製造するSanDisk(サンディスク)を買収しました。寡占化が進むハードディスク業界大手によるフラッシュメモリー大手の買収です。ウェスタンデジタルはサンディスクのSSD技術を取り込み、減少が予想されるPC向けハードディスクに代わるデータセンター向け記憶媒体事業の強化を目指しています。さらに詳しく
東芝
東芝は、日本を代表する重電メーカーです。重電5社(日立、三菱電機、富士電機、明電舎)の一角です。芝浦製作所と東京電気が経営統合して、東京芝浦電気(現東芝)が1939年に誕生しました。経団連会長を輩出する等、日本を代表するメーカーの1社でもあります。2016年のウェスティンハウスの減損問題発覚以降は、事業の再編を行い、ビジネスモデルを大きく転換しています。インフラサービス、インフラシステム、デバイスプロダクトが事業の柱となっています。ハードディスクドライブ事業は、傘下の東芝デバイス&ストレージが行っています。東芝デバイス&ストレージは2010年富士通からHDD事業を買収しています。さらに詳しく
富士通
富士通は、古河電気工業とシーメンスの合弁会社として設立された現富士電機の電話部門が1935年に分社化されて設立されました。ICT関連のハードウェアからソフトウェアを手掛けていますが、近年はITソリューションサービスへ事業ポートフォリオをシフトしています。ハードウェアではPC&サーバ、メインフレーム・スーパーコンピューター「富岳」(2012年に稼働した「京」の後継機)、ATM、通信ネットワーク機器などを開発製造しています。グループ関連会社には、富士通フロンテック、新光電気工業、FDK、富士通ゼネラルなどが含まれます。さらに詳しく
参照したデータの詳細情報について
コンテンツの残りを閲覧するにはログインが必要です。既に会員の方はログインすると閲覧できます。まだ会員登録がお済みでない方は、こちらから会員登録ができます。