穀物商社業界の世界市場シェアの分析

食糧・穀物業界における穀物メジャー・食品商社の世界市場シェアや市場規模について分析しています。カーギル、ADM、ブンゲ、ルイドレフュス、丸紅ガビロン、オラムといった穀物メジャーの概要や動向も掲載しています。

市場シェア

穀物商社各社の2021年度の売上高を分子に、後述する市場規模を分母に、2021年の穀物商社業界の世界市場シェアを計算すると、1位は米国のカーギル、2位は中国のコフコ、3位はインドネシアのウィルマ―インターナショナルとなります。⇒参照したデータの詳細情報

穀物商社の市場シェアと業界ランキング(2021年)

順位会社名市場シェア
1位カーギル2.76%
2位COFCO2.26%
3位ウィルマ―インターナショナル1.35%
4位全農1.10%
5位ルイドレフュス0.96%
6位ADM0.93%
7位ブンゲ0.90%
8位バイテラ0.84%
9位丸紅0.73%
10位オラムインターナショナル0.72%
穀物商社の市場シェアと業界ランキング(2021年)©ディールラボ

グレイントレーダーの世界シェア(2021年)
グレイントレーダーの世界シェア(2021年)

世界1位はカーギルとなります。伝統的な大豆、小麦、とうもろこしといった穀物の、集荷や取引の業務だけでなく、綿花、パームオイル、食肉、金融事業、運輸、食品の原材料の製造、といった分野でも、事業を拡大しています。

2位には、中国の国策食糧会社であるコフコ(COFCO)が入りました、傘下にオランダに本拠を置くニデラを保有し、穀物の取引に強みを持ちます。2017年にコフコ・インターナショナルへ再編されました。コフコ・インターナショナルは、年間1億トンの穀物の取引を行っています。

3位は、インドネシアのウィルマーインターナショナルです。パーム油の取引に強みを発揮します。

4位は日本の全農がランクインしています。全米トップクラスのとうもろこしと大豆の輸出業者です。国内の農家を母体に持つ巨大な協同組合で、米国のターミナル等を穀物メジャーのブンゲから買収しています。

5位は、ルイ・ドレイファスです。スイスに拠点をおく非公開会社で、大豆や小麦といった主要な穀物に加え、コーヒー、綿花、牛乳、オレンジジュース、肥料等の分野でも、集荷や取引業務を展開しています。

6位は、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)となっています。穀物では、伝統的にとうもろこしや油脂の分野に強みを持ちます。添加物といった川下分野を拡充するために、香料大手のワイルドフレーバーズを買収しています。

7位は、ブンゲです。バンジとも呼ばれます。穀物、油脂、砂糖などの取引を行っています。コーンスターチなどの食品成分分野、油脂の分野でも事業の拡大を目指しています。

8位はグレンコア・アグリカルチャーです。2017年1月に資源会社グレンコアの穀物部門が独立して誕生しました。2020年にバイテラへと社名を変更しています。

9位は、丸紅・ガビロンです。日本の丸紅の傘下にあります。北米や南米を中心とした穀物の取引に強みを持ちます。2022年1月に丸紅が業界10位のガビロンを業界8位のバイテラへ売却することを発表しました。バイテラ・ガビロン連合は業界3位へと規模を拡大する見込みです。

10位は三菱商事が出資しているオラム・インターナショナルです。アフリカとの取引に強みをもっています。

市場規模

当サイトでは、2021年の穀物商社業界の市場規模を4兆8639億ドルとしています。参照にした情報は以下の通りです。

調査会社のビジネスリサーチカンパニーによると、2021年の世界の金額ベースの穀物生産規模は4兆8639億ドルです。2022年にかけて年平均12%での成長を見込みます。
FAOによれば、2019年の穀物の生産量は30億トン、輸出量で4億7千万トンとなっております。⇒参照したデータの詳細情報
また、穀物のうち、大豆(2020年の240百万トンから2030年には326百万トン)と植物油(2020年の180百万トンから2030年の220百万トン)への市場全体の需要は今後高まっており、今後も市場の拡大が見込まれます。
ウクライナ紛争によって需要に対して供給量が維持できるかにも注目が集まります。

大豆と植物油の市場規模 出所:バンジ/ワールドオイル

穀物メジャーとは?

穀物(小麦、大豆、トウモロコシが世界の三大穀物)を農家から買い付けて、穀物をエレベーターと呼ばれる倉庫施設に集荷し、消費者に向けて、輸送や保管を行う企業のことを穀物商社と呼びます。農家からの買付価格と、消費者への販売価格との差で収益を上げます。集荷や輸送を行う穀物の量は膨大であり、全世界規模での独自の集荷・輸送システムを構築する障壁が高いことや、買付価格と販売価格のリスクをヘッジするために多くの商品を取り扱う必要があることか、穀物商社は4大穀物メジャーと呼ばれるカーギル、ADM、ブンゲ(バンジ)、ルイドレフュスといた企業群への集約を進んできました。

穀物メジャーは、最近では、買付・集荷から輸送を行うだけでなく、取り扱う穀物を原料とする加工食品、たとえば、とうもろこしは、でんぷんやトルティーヤの原料となりますし、加工することでバイオエタノールという燃料にもなりますし、大豆は大豆油や搾りかすは動物用の飼料の原料となります。

通常、穀物の流通は、穀物農家からトラック等で集荷拠点まで運搬され、はしけ(艀)や貨車を通じて輸出港のサイロ(貯蔵施設)に貯蔵され、輸出港からばら積み船で日本に輸送されます。

よって、穀物の輸入価格は、主に穀物の先物価格を基に決済される穀物農家から購入する際の価格に加え、流通やサイロ等の貯蔵施設での保管費用と海上運賃も含まれる形となります。

穀物の輸入価格=シカゴ先物+現物プレミアム(流通+サイロ保管コスト)+ばら積み運賃で計算することができます。

買収や合併

  • 2012年 丸紅がガビロンを買収
  • 2013年 コフコがオランダの穀物商社ニデラの株式51%を1200億円超で買収
  • 2013年 コフコがシンガポールの商品取引会社ノーブル・グループの農産物部門であるノーブル・アグリの株式51%を買収
  • 2014年 カーギルによるトルコの油脂大手Turyagの買収
  • 2014年 ADMによる食品成分大手のSpeciality Commoditiesの買収
  • 2014年 ADMによる香料大手のワイルドフレーバーズの買収
  • 2015年 ADMによる香料大手のイースタンフーズの買収
  • 2015年 カーギルによるサーモン向け栄養補助剤大手のEWOSの買収
  • 2015年 カーギルによる飼料配合ソフト大手のフォーマット・インターナショナルの買収
  • 2016年 カーギルによるSGS Microingrediantsの買収
  • 2017年 ADMによる甘味剤メーカーのChamtorの買収
  • 2017年 カーギルによる北米動物飼料事業をSouthern State Coopより買収
  • 2017年 ブンゲによる油脂大手IOIの買収
  • 2017年 グレンコアが穀物商社部門をグレンコアアグリカルチャーとして分社化
  • 2017年 ニデラをコフコ・インターナショナルへ再編
  • 2017年 グレンコアによるグレンコア・アグリカルチャーの分社化
  • 2020年 全農によるブンゲの穀物ターミナルの買収
  • 2020年 グレンコアアグリカルチャーがバイテラへと社名変更
  • 2022年 丸紅がガビロンをバイテラ(元グレンコアの穀物商社部門)へ売却
  • 2022年 オラムが食品原材料部門をOFIグループとして分社化を発表

穀物の主要作物である大豆価格の推移

2022年
穀倉地帯であるウクライナにおける紛争の影響もあり、穀物価格は上昇しています。

2021年
ブラジルの天候不順や中国の新型コロナからの回復による需要の増加を受け、大豆価格も上昇をしています。




さらに業界に詳しくなるためのお薦め書籍と関連サイト

穀物メジャーの概要

Cargill(カーギル)

カーギルは、米国に本拠を置く1865年の食糧関連以外にも金融や製造業を営むコングロマリット企業です。穀物メジャー筆頭格でもあり、肥料、食肉、製塩、ココア等の分野でも圧倒的存在感を示します。売上高は食品業界最大級の10兆円を優に超える規模ではあるものの、カーギル家とマクミラン家が所有する非公開会社です。

  • 穀物取引事業:
    大豆や小麦等の集荷・輸送・販売を行う穀物取引分野では世界市場シェアは最大級の規模です。穀物メジャーと言われるADM、ブンゲ(バンジ)、ルイドレフュスとともにABCDの一角を担っています。
  • 製塩事業:
    工業用の塩を製造販売しています。道路向けの凍結防止塩も手掛けています。製塩業界の世界シェアではK+Sや中国国家塩産業とともに世界トップ3の一角です。
  • 飼料事業:
    EWOSブランドで養殖向け飼料、Purina、Nutrena、Provimiで動物向け飼料を手掛けています。飼料業界の世界シェアでは、タイのチャロンポカパンや中国の新希望集団と上位の座を競っています。
  • カカオ・ココア事業:
    カカオの集荷、加工、ココアパウダー、チョコレートバターの販売までを手掛けています。カカオ・ココア業界の世界シェアでは、スイスのバリーカレボーやシンガポールのオラムインターナショナルと並ぶ業界最大手の一角です。
  • パーム油・製油事業:
    パーム油を含む油種の加工・販売を行っています。パーム油・製油業界の世界シェアでは、パーム油大手のウィルマ―インターナショナル、ADM、ブンゲ(バンジ)等と世界首位の座を競っています。
  • その他、カーギルはパスタソース(Pomarolaブランドを展開)、食肉分野、木綿取引、スターチ等の食品成分の分野でも事業を展開しています。

Archer-Daniel Midland(ADM、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド)

アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)は、1902年に米国のミネソタ州で設立された穀物商社・穀物メジャーです。設立当初は、リネン(亜麻)の圧搾加工に注力するなど、カーギル等と異なり穀物の加工事業から、現在の穀物メジャーの守備範囲である、穀物の集荷・流通・貯蔵・販売事業へと展開していきました。特に、大豆やトウモロコシ、油糧種子加工、食品成分や香料事業に強みを持ちます。続きを読む

Bunge(ブンゲ、バンゲ)

米国に上場するカーギル、ADM、ルイドレファスと並ぶ1818年に創業の穀物商社の大手です。長らくBunge家が支配する同族会社でしたが、2001年にニューヨーク証券取引所に上場を果たしました。事業部門は大きく5つにわかれ、大豆やとうもろこし等の取引を行うアグリビジネス部門、食用油やその製品を取り扱う食用油事業、製粉事業、製糖事業、肥料事業に分かれています。従業員数は3万人程度です。2010年代後半には資源商社大手であるグレンコアや同業のADMとの経営統合を検討もしていたと噂されています。続きを読む

Louis Dreyfus(ルイドレフュス)

1851年創業のスイス・ジュネーブに本拠を置く複合企業体です。発音はルイドレファスとされる場合もあります。穀物メジャーの一角を担います。ドレフュス家が支配する非上場会社です。穀物、油脂、米、コーヒー、綿、製糖、果物の取扱いに注力をしています。

COFCO(コフコ、中糧集団)

コフコ(COFCO)は1949年に設立された中国政府傘下の国有の食糧・穀物商社です。各種穀物や食糧の集荷、備蓄、運搬、輸出入、加工等を手掛け、最近では、食品・飲料分野でも成長を志向しています。2009年の売上高は1782億元でしたが、中国の成長に伴い、2020年には4711億元へと急成長を遂げています。総資産は5606億元です。続きを読む

Wilmar International(ウィルマ―・インターナショナル)

シンガポールに本拠を置くプランテーション運営企業です。上流のヤシ農場の運営から、パーム油精製、トレーディング、最終商品の提供を行う世界的な製油会社です。パーム油生産においては川上から川下まで一貫体制をとっています。製粉事業は中国を中心に手掛けています。製粉事業は、インドネシア、インド、中国で事業を展開しています。インドではAdani、中国ではYihai Flour Companyという名称でCOFCOと共同で事業を行っています。搾油事業に関しては年間41百万トンを有しています。製糖事業は、豪州の旧Colonial Sugar Refining Company(CSR)からSucrogenを買収し製糖事業を強化しています。シンガポール証券取引所に上場していますが、米国の穀物メジャーであるArcher-Daniel Midlandが約25%の株式を保有しております。

Wilmar社のCrushing能力一覧

Wilmar製粉能力
出所:同社ホームページ

Olam International(オラムインターナショナル)

シンガポールの本拠を置く穀物商社です。米、コーヒー、ココア、香辛料、動物飼料、食用油やナッツ類の取扱いに強みを持ちます。2014年にADMからカカオ・ココア事業を買収しています。2015年三菱商事がオラムインターナショナルへの20%の出資を発表しました。2021年に米国の香辛料メーカーであるオールドトンプソンを9.5億ドルで買収しました。カカオ、ナッツ、香辛料、乳製品などを手掛ける食品原材料部門「オラム・フード・イングリディエンツ」を2022年にOFIグループとして分社化しました。

三菱商事について

三菱商事は、九十九商会に源流を持ち、1918年に三菱合資営業部が分社化され設立された総合商社です。広範囲な商材の輸出輸入を手掛けるトレーディングが祖業ですが、商社冬の時代を経て、プロジェクトや事業投資も行う複合企業体へと進化を遂げました。セクターなどで分類しにくい異形の経営スタイルのため、海外でもsogo shoshaという業態として理解が深まりつつあります。天然ガス、総合素材、石油・化学、金属資源、産業インフラ、自動車・モビリティ、食品産業、コンシューマー産業、電力ソリューション、複合都市開発で事業を展開しています。関連会社には、ローソン、三菱食品、三菱自動車、千代田化工などがあります。さらに詳しく

Viterra(バイテラ)

グレンコアの農業部門(グレンコアアグリ)が、CPPインベストメンツとブリティッシュコロンビアインベストメントマネジメントコーポレーション (BCI)からの出資を受け、分社化し2020年にバイテラへと社名を変更しました。
Glencore(グレンコア)

グレンコア(Glencore)はスイスに本拠を置く資源商社です。1974年にスイスのトレーダーであるマーク・リッチによって設立されました。2012年にカナダの穀物流通大手バイテラを、2013年には資源メジャーであるエクストラータを買収しています。亜鉛、原料炭、一般炭、銅、コバルト、ニッケルなどの採掘やエネルギー及び穀物トレーディングが事業の柱となっています。トレーディング機能と上流権益の開発機能をあわせもつ資源メジャーとも言えます。2017年1月に穀物トレーディング部門をグレンコア・アグリカルチャーとして分社化し、バイテラへと社名変更しました。さらに詳しく

ガビロン(丸紅)

2012年に米Gavilon(ガビロン、旧コナグラブランズの穀物商社部門)を買収して、穀物メジャーへ名乗りを上げました。買収後、米国と中国の貿易戦争もあり、減損処理が続いています。2022年1月にバイテラへの売却を発表しました。

コナグラブランズとは

Conagra Brands(コナグラブランズ)は、1919年に設立された米国に本拠を置く冷凍食品メーカーです。トマトソースのHunt's、ココアのSwiss Miss、パスタのBertolli、チキンナゲットのBanquetといったブランドで展開しています。冷凍フライドポテトにも強みがあります。さらに詳しく

全農

全農は日本の農協組織です。北米におけるトウモロコシ、大豆等の取り扱いでは大手企業です。

主要業界団体

  • アメリカ大使館農産物貿易事務所(ATO)
  • 小麦・小麦粉の企業団体 製粉協会
  • US Grains Council

用語解説集

  • coarse grain(コースグレーン):トウモロコシ、オオムギ、ライムギ等の穀物の総称
  • ABCD:ADM、Bunge、カーギル、ルイドレフュスの略称
  • サイロ:農産物、飼料などを保管する容器のこと

参照したデータの詳細情報について


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