ビール業界

ビール業界の世界ランキング、世界市場シェア、市場規模、再編について分析をしています。ABインベブ、SABミラー、ハイネケン、カールスバーグ、華潤、青島、キリン、アサヒ等世界大手ビール会社概要も掲載しています。

世界市場シェア

ビール業界の市場シェアを計算するにあたり、分母となる市場規模は6300億ドルを採用しています。分子となる売上高には「ビール会社の世界売上高ランキングの分析(2020年版)」の情報を用いて、2019年のビール業界の世界市場シェアを計算すると、1位はアンハイザー・ブッシュ・インベブの8.3%、2位はハイネケンの4.2%、3位はアサヒの2.3%となります。

2019年ビール市場シェア

  • 1位    アンハイザー・ブッシュ・インベブ    8.3%
  • 2位    ハイネケン    4.2%
  • 3位    アサヒ     2.3%
  • 4位    モルソン・クアーズ    1.7%
  • 5位    カールスバーグ    1.5%
  • 6位    キリン    1.2%
  • 7位    華潤創業    0.7%
  • 8位    青島ビール    0.6%
  • 9位    サッポロホールディングス    0.4%
  • 10位    ディアジオ    0.4%
  • 11位    燕京グループ    0.3%
  • 12位    ロイヤル・ユニブリュー    0.2%

当時業界2位であったSABミラーを買収したアンハイザー・ブッシュ・インベブの1位は2019年も不動です。2位のオランダのビール大手であるハイネケンにほぼダブルスコアとつけていますが、ビール業界全体で見れば市場シェアは約8%と、まだ成長の余地は十分あると考えられます。アンハイザー・ブッシュ・インベブは、歴史的にM&Aを通じて成長を遂げており、今後もビール同業や蒸留酒もしくはノンアルコール分野の有力企業の更なる買収もあり得るでしょう。

3位には、日本のアサヒグループホールディングス(アサヒビール)がつけています。アンハイザー・ブッシュ・インベブが、SABミラーの買収を行う際に規制当局から売却を要請を受けた、西欧、東欧および豪州のビール事業を買収しており、3位へと躍進しております。

4位には、北米に強い地盤を持つモルソン・クアーズとなっています。SABミラーとの合弁会社であったミラー・クアーズの持分を買収し、北米を中心に強固な事業基盤をゆうしております。

5位はデンマークのカールスバーグとなっており、かつてのビール御三家の一角ではありますが、アンハイザー・ブッシュ・インベブによる業界再編の余波を受け、規模ではアサヒとモルソン・クアーズの後塵を拝しております。

6位には日本を代表するビール会社であるキリン、7位には中国でSNOWブランドなどを展開する華潤創業、7位には日本でも馴染の深い青島ビールとなっています。

市場規模

調査会社のImarcグループによれば2018年のビール市場規模は5869億ドルです。調査会社のFortune Business Insightsによれば同市場規模は6834億ドルです。当サイトでは、2018年のビール市場規模を6300億ドルとしています。

業界再編の歴史

鮮度の重要性や地域毎に異なる味わいといったビール事業の特質上、従来はM&Aを通じた規模拡大を追求するには向かない業界と言われていました。そうした通説に反する形で、アンハイザー・ブッシュ・インベブがM&Aを通じて成長戦略を描き、触発されたビール大手もM&Aを繰り返しております。近年はクラフトビールやノンアルコール飲料の台頭が見られ、ビール大手が消費者の嗜好の変化への対応を求められています。

1987年 ベルギーのアルトワとジュピレールが合併しインターブリューが誕生
1998年 キリンによる豪州ビール大手(2位)のライオンネイサンへの出資(46%取得)
2002年 サウス・アフリカン・ブルワリーズ(SAB)がフィリップ・モリスからミラーを買収(6900億円)。SABミラーの誕生
2004年 インターブリュー(ベルギー)とアンベブ(ブラジル)が経営統合しインベブ誕生
2004年 アンハイザーブッシュインベブによる中国ハルビンの買収
2007年 ハイネケンによるチェコのKrusovice Breweryの買収
2008年 ハイネケンによるルーマニアのBere Muresの買収
2008年 インベブによる「バドワイザー」で知られる米アンハイザー・ブッシュの買収(5兆5千億円)。ABインベブが誕生
2008年 ハイネケンとカールツバーグによるスコットランドのScottish & Newcastle(スコティッシュ・アンド・ニューキャッスル)の共同買収
2009年 キリンによりフィリピンの最大手サンミゲルビールへの出資(1300億円、48.3%取得)
2009年 アサヒビールによる中国2位の青島ビールへの20%出資
2009年4月 キリンによる豪州ライオンネイサンの完全子会社化(2200億円)
2009年5月 米投資ファンドKKRによるOriental Breweryの買収
2010年 ハイネケンによるメキシコのFEMSA Cervezaの買収
2011年 ビールで世界2位の英SABミラーが豪州の大手フォスターズの買収
2011年 アサヒビールによる中国杭州ビールの持分55%の華潤雪花ビールへの売却
2011年 キリンによるブラジルのビール大手スキンカリオール・グループの過半数の株式の買収(1988億円)
2012年 モルソンクアーズによるチェコ共和国のStarBev買収
2012年 カールスバーグによるロシアのBaltika Breweries社の買収
2012年 ハイネケンによるAsia Pasific Breweriesの完全買収
2013年 ABインベブがメキシコのグルポ・モデロを完全子会社化(2兆円)
2014年 ABインベブによるOriental BreweryのKKRからの買収
2015年 ABインベブによるSABミラーの買収(12兆5000億円)
2015年 米モルソン・クアーズによるSABミラーからのミラークアーズ持ち分の買収(1兆5千億円)
2015年 キリンによるミャンマーブルワリーの買収。
2016年 アサヒビールがSABミラー保有ブランドのペローニ、グロールシュ、ミーンタイム等のイタリア、オランダ、英国のブランドを約3000億円で買収
2016年 アサヒビールがSABミラー保有の東欧5カ国(チェコ、スロバキア、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア)のビール会社を約9000億円で買収
2017年 アサヒビールが青島ビール持分の復星(フォースン)グループへの売却
2017年 ハイネケンによるブラジル キリンの買収
2018年 ハイネケンによる華潤ビールの約20%の持分の買収
2020年 ハイネケンによるペルーのビール会社であるTres Crucesを買収

(注)買収価格は当時の為替換算レートにて計算

関連情報

中国のビール業界は、中国国家統計局によれば、2013年をピークに、近年は4000万キロリットルから5000万キロリットルで横ばいもしくは若干の減少をしています。中国市場における市場シェア1位は、snowブランドで有名な華潤ビールで約2~3割のシェア、2位は青島ビールで約2割弱、3位は世界最大のビール会社であるアンハイザー・ブッシュ・インベブの約2割、4位は北京に本拠を置く燕京ビールの1割弱、5位はカールスバーグとなっています。

ビールの種類

ビールの種類には所謂ラガー(下面発酵ビール)に加え、上面発酵ビール、自然発酵ビールがあります。日本で一般的なビールはピルスナーというチェコ生まれのラガー・ビールです。ビールは日持ちしないため、消費地に近い場所で生産する方が鮮度を保てます。

  • 自然発酵ビール:ランビック(ベルギー)
  • 上面発酵ビール:エール(英)、アルト(独)、トラピスト(ベルギー)、ビエール・ド・ガルド(仏)、スタウト(英)、ポーター(英)
  • 上面発酵小麦ビール:バイツェン(独)、ホワイト・ビール(ベルギー)
  • 下面発酵ビール:ピルスナー(チェコ)、メルツェン(独)、ウィーン(オーストリア)、ドルトムンダー(独)、ボック(独)、アメリカ・ビール(米)、ライト・ビール(米)

世界の主要ビール会社の一覧

ベルギーのアンハイザー・ブッシュ・インベブ(Anheuser-Busch InBev)

2008年ベルギーのインベブ(インターブリューとアンベブの合併会社)とアンハイザー・ブッシュが合併して誕生した世界最大のビール会社です。ちなみにインターブリューはベルギーのアルトワ(Artois)とPiedboeufとの合併会社、アンベブ (AmBev)はブラジルのラーマ (Brahma) とアンタルチカ (Antarctica) の合併会社でした。主要ビールブランドはバドワイザー、レーベンブロイ(Löwenbräu)、ステラ・アルトワ(Stella Artois)、ベックス(Becks)、コロナ(Corona)等があります。中国ではハルビンビールを、メキシコではコロナで有名なグルポ・モデロ(但し、米国でのコロナの販売権はワイン大手の米コンステレーション・ブランズ が保有)を買収しています。日本ではアサヒと提携しています。2015年には英SABミラーを買収しました。その後ミラークアーズをモルソンクアーズへ、欧州・東欧・豪州のビール事業をアサヒへ、華潤の持分をハイネケンに売却しました。常に次の一手が注目されています。

ABインベブはどうやって業界1位になったか?

ビール業界の再編

出所:業界再編の動向

英SABミラー(SABMiller)

旧南アフリカ醸造社 (South African Breweries、SAB)が前身です。2002年に米ミラー社を買収しSABミラーとなりました。2011年には豪フォスターズ(Foster’s)を買収しました。主要ブランドにはチェコのピルスナー・ウルケル(Pilsner Urquell)、伊ペローニ(Birra Peroni )、米ミラー(Miller)、蘭グロールシュ(Grolsch)等があります。2015年にABインベブがSABミラーの買収を発表しました。SABミラーの大株主はアルトリア(フィリップ・モリスを有する米たばこメーカー)です。ABインベブとの経営統合にあたり、伊ペローニ、蘭グロールシュを日本のアサヒビールへ売却、米合弁会社のミラークアーズの持ち分を合弁相手のモルソンクアーズへ売却、中国のSNOWビールの持ち分を合弁会社の華潤雪花へ売却しました。

ケーススタディ:SABによるミラー買収

  • 2002年SAB(サウス・アフリカン・ブリュワリー ズ)が米国の大手ビール会社のミラーを買収
  • ミラーは米たばこ大手のフィリップ・モリス(アルトリアグループ)傘下のビール会社であったが、たばこ事業へのフォーカスのためにミ ラー売却に踏み切った。
  • 一方新興国に強いSABは、安定的な成長を見込める北米事業をミラー買収によって強化で きる。また、ミラーの保有するブランドや販売網にも 補完性があった。
  • 売却総額は56億ドル
  • フィリップ・モリスは、買収後のSABミラーの24.99%の議決権を保有

蘭ハイネケンホールディングス(Heineken Holdings)

ハイネケンは1860年代創業のオランダに本拠を置く大手ビール会社です。主要ブランドはハイネケン(Heineken)、Desperados、strongbow等があります。日本ではキリンと提携しています。2008年には、カールスバーグと共同で英国に本拠を置くビール大手のスコティッシュ・アンド・ニューキャッスルを買収しました。2018年には華潤ビールの持分を買収しています。

ケーススタディ:スコティッシュ・アンド・ニューキャッスルの共同買収

©業界再編の動向

デンマークのカールスバーグ(Carlsberg Group)

1840年代創業の大手ビールメーカーです。Carlsbergはカールの山(創業者J.C.ヤコブセンの息子がカール)という意味を持ちます。主要ブランドはCarlsbergとロシアで圧倒的に強いBaltika(バルティカ、英スコティッシュ・アンド・ニューキャッスルより買収)などがあります。日本ではサントリーと提携、中国では烏蘇(ウス)ビールを買収しました。

華潤創業(China Resource Brewery)

主要ブランドは雪花啤酒(シュエホァビール、Snow beer)です。SABミラーが華潤雪花に49%出資している出資持分はChina Resourceが買戻し、その後40%をハイネケンへ売却した経緯があります。

青島ビール・グループ(Tsingtao Beer)

主力ブランドは青島ビール(Tsingtao Beer)です。2017年にアサヒビールの持分を、中国の複合企業である復星(フォースングループ)が買収しました。

燕京グループ(Yanjing Beer)

北京市に拠点を置く中国ビール大手です。主力ブランドは燕京啤酒(Yanjing Beer)です。

米/加モルソン・クアーズ(Molson Coors Brewing)

加モルソンと米クアーズが2005年に合併して誕生しました。主要ブランドはクアーズ(Coors)、モルソン・カナディアン(Molson Canadian)等があります。ビール以外ではジーマ(ZIMA)も保有しています。SABミラーとの合弁であったミラー・クアーズはモルソン・クアーズが買収しました。

キリン

国内ではアサヒビールと熾烈な首位争いをしています。近年はビールよりも健康食品等の分野へ多角化しています。アンハイザー・ブッシュ・インベブが主力のバドワイザーの日本での生産を自前で行い、キリンへの委託は打ち切る方針を2018年に発表しました。

サッポロビール

日本のビール大手の一角です。恵比寿の不動産事業の両輪で事業を展開しています。

アサヒビール

日本の大手ビール会社です。SABミラーから、伊ペローニ(Birra Peroni )、蘭グロールシュ(Grolsch)、東欧5カ国のビール会社、豪州のCUBをたて続けに買収しました。

2009年 中国の青島ビールへの出資
2009年 豪州のシュエップス・オーストラリアの買収
2011年 ニュージーランドの酒類大手インディペンデントリカーの買収
2011年 マレーシアの飲料大手ペルマニスの買収
2014年 マレーシアの乳業大手エチカデイリーズの買収
2016年 グロルシュやペローニ等のオランダ、イタリア、英国のビール事業をSABミラーより買収
2016年 東欧5カ国(チェコ、スロバキア、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア)のビール会社をSABミラーより買収
2017年 青島ビールの持分を売却
2019年 豪州のCUBを買収

ドイツの主要ビール会社

ビール発祥かつビール大国ながら、グローバル規模で展開するビール会社がなく、製法にこだわったビール会社が根強い人気を誇っています。ABIといえども、なかなか踏み込めない地域です。

ラーデベルガー(Radeberger)

1800年後半に創業されたドイツビールの名門です。旧ザクセン王室御用達のビール。現在は食品や海運業等を複合展開するOetker Group(エトカーグループ)が所有しています。

ビットブルガー(Bitburger)

ドイツを代表するビール会社です。同族経営を維持しています。ピルスナービールの発祥とも言われています。

クロンバッハ(Krombacher)

ドイツを代表するビール会社です。ヴァイツエン(白ビール)、デュンケル(ダーク)等のビールも展開しています。

ヴァルシュタイナー(Warsteiner)

1753年に創業されたピルスナービールの老舗です。

エッティンガー(Oettinger)

ドイツの老舗ビールメーカーです。

主要な業界団体

  • Brewers Association
  • 公益財団法人 日本醸造協会
  • 日本地ビール協会 クラフトビア アソシエーション

ビール業界の参考書

  • 米国ビール業界の覇者―「アメリカのNo.1ビール」をめぐる攻防 [単行本]
  • 15分でビール・蒸留酒・清涼飲料業界の全体像を理解しよう! [Kindle版]
  • 日本のビール産業―発展と産業組織論 [単行本]
  • 「ビール戦争」成熟市場突破のマーケティング―消費はどのように活性化されたか [単行本]

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