塩化ビニル(塩ビ)業界の世界シェアと市場規模について分析をしています。信越化学、台湾プラスチック、オキシビニール、イノビンといった塩ビ大手メーカーの概要や動向も掲載しています。
【市場シェア】
塩ビメーカー各社の2021年度の生産キャパシティを分子に、後述する市場規模を分母にして、2021年の塩化ビニル(塩ビ)業界の世界市場シェアを計算すると、1位は信越化学、2位はウェストレイク、3位は台湾プラスチックとなります。⇒参照したデータの詳細情報
塩化ビニルメーカーの世界市場シェアと業界ランキング(2021年)
順位 | 会社名 | 市場シェア |
---|---|---|
1位 | 信越化学 | 7.51% |
2位 | ウェストレイク | 5.87% |
3位 | 台湾プラスチック | 5.35% |
4位 | イノビン(イネオス) | 3.81% |
5位 | 中泰化学 | 3.33% |
6位 | オルビア | 3.04% |
7位 | オキシビニール | 2.85% |
8位 | 湖北宜化 | 2.28% |
9位 | 北元化工 | 2.11% |
10位 | AGC | 2.03% |
【市場規模】
当データベースでは、2021年の塩化ビニル(塩ビ)業界の市場規模を数量ベースで59百万トンとしております。
調査会社のアイエイチエスケミカルによれば、2021年と2020年の同業界の生産キャパシティは5914万トンと5875.4万トンです。
調査会社のモードーインテリジェンスによれば、2020年の同業界の世界市場規模(金額ベース)は451億ドルです。2019年から2026年で年平均4%の成長を見込みます。
調査会社のスタティスタによれば、2018年の同業界の世界市場規模は生産量で年間約4430万トンです。2025年には6000万トンまで市場が拡大すると見込まれます。
塩化ビニルの原料と最終製品
塩素とエチレンを化学反応させ塩化ビニルモノマー(VCM、Vinyl Chloride Monomer、化学式CCH2=CHCI)を製造します。その後、塩化ビニルモノマーを付加重合させると塩化ビニル樹脂(PVC、Polyvinyl Chloride)となります。塩化ビニルは、硬質製品である水道管や配管、軟質製品であるフィルム、シート、ホース、チューブなどの最終製品に使用されます。
さらに業界に詳しくなるためのお薦め書と関連サイト
塩化ビニルモノマー
Mr.金川千尋 世界最強の経営
化学業界の市場シェア・売上高ランキング・市場規模・再編の分析
ソーダ灰(炭酸ナトリウム)業界の世界市場シェアの分析
【会社の概要】
信越化学
信越化学は1926年に創業された日本を代表する化学メーカーです。旭化成、積水化学、積水ハウスと同じ源流である日本窒素肥料(現チッソ)の関連会社として誕生しました。同社のアニュアルレポートによれば、塩化ビニル樹脂、シリコンウエハ、先端品フォトマスクブランクス、フェロモン製剤では世界1位です。セルロース、シリコーンでも世界大手となっています。半導体ウエハはSUMCOと二強体制となっています。さらに詳しく
台湾プラスチック(Formosa Plastics、FPG、台湾プラスチックグループ)
1954年に設立された台湾最大の総合化学メーカーです。創業者は王永慶(Y. C. Wang)氏で、「台湾の松下幸之助」とも称される名経営者です。
Inovyn(イノビン)
2015年に欧州の化学大手Solvay(ソルベイ)とINEOS(イネオス)が経営統合して誕生した塩ビメーカーです。BASFとの合弁のSolVinも吸収しています。
ソルベイについて
Solvay(ソルベイ)は、1863年にエルネスト・ソルベイ氏によって設立されたベルギーに本拠を置く化学メーカーです。ソルベイ法を用いた炭酸ナトリウムやソーダ灰の製造で有名です。2011年にフランスの特殊化学メーカーであるローディアを買収し事業領域を拡大、現在は特殊ポリマー、炭素繊維、過酸化物、シリカ、特殊化学、アロマパフォーマンスといった分野を手掛けています。さらに詳しく
OxyVinyls(オキシビニール)
米国に本拠を置く塩ビメーカーです。独立系石油大手のオキシデンタル石油の傘下にあります。
Westlake Chemical(ウェストレイク・ケミカル)
米国に本拠を置く化学大手です。2016年に塩ビ大手のAxiall(PPGインダストリーズのクロールアルカリ事業とGeorgia Gulfが合併して誕生した汎用化学大手)を買収して、塩ビ事業を強化しています。
Orbia(オルビア)
1953年にMexichem(メキシケム)として設立されたメキシコに本拠を置く化学メーカーです。PVC(塩ビ)に加え、ラスクエバス鉱山で蛍石を採掘しています。プラスチック製パイプおよび継手で大手です。
Xinjiang Zhongtai(新疆中泰化学、シンジャン・ジョンタイ・ケミカル)
2001年に設立された 新疆ウィグル自治区に本拠を置く化学メーカーです。PVC樹脂(PVC)、イオン膜苛性ソーダ、ビスコース繊維、ビスコース糸などを製造販売しています。
Hubei Yihua(湖北宣化化工、フーベイ・イーホワ・ケミカル・インダストリー)
1977年に設立された政府系の湖北益華集団傘下の化学メーカーです。尿素、化学製品、電気製品、クロールアルカリ製品、ポリ塩化ビニル(PVC)及びリン酸二アンモニウムなどの製造開発を行っています。
Shaanxi Beiyuan Chemical Industry(狭西北元化工集団有限公司)
2003年に設立された中国の陝西省に本拠を置く化学メーカーです。PVC樹脂、セメント、苛性ソーダ、液体塩素、塩酸、炭化カルシウムなどの製造販売を行っています。
Kem One
フランスに本拠を置く塩ビメーカーです。2012年に仏アルケマがKlesch Groupに売却し誕生しました。投資ファンドのアポログローバルマネジメントが買収し、2021年に経営陣によるMBOを発表しました。
アルケマについて
フランスを代表する機能性化学メーカーです。石油メジャーのTotalから2004年に分社化して誕生しました。接着剤、パフォーマンスマテリアル、コーティング事業が3分柱です。2021年にPMMA事業を合成ゴム大手メーカーであるTrinseoへ売却しました。さらに詳しく
ケムチャイナ
中国化工集団(ケムチャイナ、ChemChina、China National Chemical Corporation )はRen Jianxin(任建新)氏によって設立されたChina National Blue Star Corp(藍星) と China Haohua Chemical Industrial Corp(昊華)が2004年に経営統合して誕生した中国政府系の化学メーカーです。中国政府が100%株式を保有しています。農薬、ゴム、シリコーンや機能性化学等の分野で事業展開しています。2016年から寧高寧氏がシノケムとケムチャイナのCEOとなり、2021年に国営化学会社のシノケムと経営統合、中国中化(シノケム)ホールディングス傘下になりました。続きを読む
AGC
1907年に創業をした日本を代表するガラス・素材メーカーです。ガラス以外にも電子・化学品・セラミックスの分野で事業を展開しています。ガラス分野では仏サンゴバンと首位を競っています。液晶用ガラスにも強みを持ちます。ディスプレイ用特殊ガラス(Dragontrail®)が有名です。近年ライフサイエンス分野(バイオ医薬品原薬の製造開発受託等)への多角化を推進しています。さらに詳しく
参照したデータの詳細情報について
参照したデータは以下の通りです。リンク切れなどありましたら、お問い合わせのページからご連絡頂けますと大変有難く存じます。
参照した生産キャパシティ情報
- Orbia Annual Report(2021年)
- Orbia Annual Report(2020年)
参照した市場規模の情報