水処理膜業界の世界市場シェアと市場規模について分析をしています。デュポン、東レ、日東電工、旭化成、スエズ、北京碧水源科技、三菱ケミカルといった主要な水処理膜メーカー概要も掲載しています。
【水処理膜とは】
水処理膜とは、水に含まれる不純物をμm~nm規模の細孔で分離・除去するための膜の総称で、水処理膜を使用したろ過を「膜ろ過」といいます。近年では家庭用浄水器でも水処理膜の技術が活用され、より身近に感じられるようになりました。
食品・飲料、乳製品、飲料・濃縮物、ワイン・ビールなどの消費者の不健康を予防するための取り組みが強化され、各分野で膜ろ過の利用が拡大しています。
孔径が小さくなるほど水を通すためのエネルギー量が増える点や、定期的に専門的な保守管理が必要な点などの課題もあり、さらなる低コスト化・実用化に向けて開発や研究が進められています。
さらに業界に詳しくなるための書籍と関連サイト
図解入門 よくわかる 最新 水処理技術の基本と仕組み
トコトンやさしい水処理の本
水処理薬品・機器業界の世界市場シェアの分析
水処理機器業界でM&Aや再編対象となる会社の分析
【水処理膜業界の世界市場シェア】
水処理膜各社の2022年度の売上高⇒参照したデータの詳細情報を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2019年の水処理膜業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はヴェオリア、2位はペンテア、3位はデュポンとなります。
*三菱ケミカルアクア・ソリューションズは2018年、北京碧水源科技は2019年の売上高
順位 | 会社名 | 市場シェア |
---|---|---|
1位 | ヴェオリア・エンバイロメント | 29.30% |
2位 | ペンテア | 9.10% |
3位 | デュポンウォーターテクノロジー | 9.05% |
4位 | 旭化成 | 4.61% |
5位 | 東レ | 4.12% |
6位 | 北京碧水源科技* | 2.48% |
7位 | 日東電工 | 1.53% |
8位 | 三菱ケミカルアクア・ソリューションズ* | 0.84% |
2022年は水ビジネスの巨人「ウォーター・バロン」と言われた2社のヴェオリア・エンバイロメントとスエズが合併したことにより、ヴェオリアがシェア率を独占する結果となりました。
【水処理膜業界の世界市場規模】
当サイトでは、各調査会社等の公表データを参考にし、水処理膜業界の2022年の世界市場規模を165億ドルとして市場シェアを計算しております。参照にしたデータは以下の通りです。
EMRによると、2022年の同市場規模は165億ドルです。2023年〜2028年には年平均7.00%の成長を見込んでおり、2028年にかけて248億ドルに達すると予想しています。⇒参照したデータの詳細情報
年 | 市場規模 | 成長率見込み |
---|---|---|
2022 | 165億ドル | – |
2028 | 248億ドル | 7.00% |
【水処理膜用語集】
MF膜
MF/UF膜
MBR用膜
RO膜
MFはMicrofiltration(精密ろ過)の略。
UFはUltrafiltration(限外ろ過)の略。
MBRはMembrane Bio Reactor(膜分離活性汚泥法)の略。
ROはReverse Osmosis(逆浸透)の略です。
【M&Aの動向】
2013年 東レは韓国のウンジンケミカル社の株式56.2%を取得
2019年 デュポンはEvoqua Water Technologies Corp.からメンブレン事業を買収
2019年 三菱ケミカルアクア・ソリューションズとウェルシィが合併
2020年 デュポン閉回路逆浸透(CCRO)会社であるDesalitech Ltd.を買収
2020年 デュポンはinge GmbH、Memcor、OxyMem Limitedの買収を完了
2021年 ペンテアはプリーツコ社の買収を完了
2022年 ペンテアはマニトウォック・アイスの買収を完了
2022年 ヴェオリアはスエズを買収
【会社の概要】
Veolia Environnement(ヴェオリア・エンバイロメント)
1853年に設立され、フランス・パリに本拠を置くヴェオリアグループは「エコロジカル・トランスフォーメーション(環境変革)」のベンチマーク企業となることを目指しています。2022年現在、全世界で約22万人の従業員が、水、廃棄物、エネルギー管理という三つの事業分野において有用かつ実用的で、革新的なソリューションを設計し提供しています。また、相互補完的な関係にあるこれら三つの事業活動を通じて、資源の利用方法を開発し、利用可能な資源を保全、再生しています。2021年にヴェオリアがスエズを買収しました。
Suez(スエズ)
Suez(スエズ)は、1880年に設立された世界トップクラスの水道事業運営・産業用水処理会社(ウォーターバロン)です。電力・ガス大手であるエンジ―(Engie)が主要株主でしたが、2021年にヴェオリアが買収をしました。スエズの源流は1800年代中盤にスエズ運河を建設したスエズ運河株式会社にまで遡ることができます。インドスエズ銀行の売却やフランスガス公社(GDF)と合併によるGDFスエズの誕生、その後エンジ―ヘの社名変更を行っております。2017年にはGEから水処理機器大手であるGEウォーターを32億ユーロで買収し、運営会社から水処理機器製造販売へと事業領域を拡大しております。MBR、UF/MF膜の分野に強みを持ちます。2020年にはドイツの化学メーカーであるランクセスよりRO膜を買収しました。2021年にヴェオリア傘下となりました。
Pentair Plc(ペンテア)
ペンテアは2012年に創業し英国に本社を置く、水、その他液体、熱管理、設備保護など各種ニーズに合わせたサービスやソリューションを提供する会社です。
DuPont Water Technology(デュポンウォーターテクノロジー)
デュポン・ドゥ・ヌムール(E.I du Pont de Nemours)は、1802年にフランス人のエルテール・イレネー・デュポンによって設立された世界最大級の化学メーカーです。2015年米同業のダウケミカルと経営統合しましたが、特殊産業材事業が分社化され新生デュポンとなりました。2011年にデンマークに本拠を置く食品成分大手であるDanisco(ダニスコ)を買収し、ニュートリション&バイオサイエンス事業で食品成分事業を強化していましたが、同事業は2019年に香料大手のIFFとの経営統合し、香料と食品成分を手掛ける総合食品成分会社となりました。水処理膜事業についてはDuPont Water Technology(デュポンウォーターテクノロジー)で展開しています。RO膜に強みがあります。さらに詳しく
Asahi Kasei Corporation.(旭化成株式会社)
日本を代表する化学メーカーです。化学や住宅など多角化経営に特徴があります。水処理膜ではUF/MF膜に強みを持ち、マイクローザブランドで展開しています。膜事業ではセパレータにも強みを持ちます。
Toray Industries, Inc.(東レ株式会社)
1926年に三井物産が設立した東洋レーヨンを祖とする総合化学メーカーです。祖業は繊維で、東レは東洋レーヨンの略です。現在は日本を代表する素材系メーカーとなっています。
水処理分野ではRO膜の分野に強みを持ちます。ダウ、キャボットと並び大手です。炭素繊維では航空機向けに強みを持ちます。
熱硬化性炭素繊維、CFRPにも強く1971年に発売を開始した「トレカ」の商標で販売をしています。航空機分野ではボーイングへの納入実績では他社を圧倒しています。熱可塑性の炭素繊維複合材に強みを持つオランダのテンカーテ・アドバンスト・コンポジット社を2018年に買収し、熱硬化性と熱可塑性の素材に対応できる技術力を高めています。
セパレータはセティーラブランドで展開しています。車載電池向けでは、ボリューム拡大よりも、利幅が大きいとされるハイエンド向けに特化する方針です。ドイツのダイムラーと提携しています。
エアバッグの生地やおむつ等に使用する不織布でも大手です。さらに詳しく
Beijing Originalwater Technology(北京碧水源科技)
中国の水処理機器メーカーです。元々は三菱ケミカルの水処理膜の合弁会社であった経緯もあり、MBR膜に強みを持ちます。
NITTO DENKO CORPORATION (日東電工株式会社)
日本を代表する包装材料・半導体関連メーカーです。1987年に買収をしたHydranautics社が水処理膜事業の中核です。水処理膜ではRO膜に強みを持ちます。
Mitsubishi Chemical Corporation(三菱ケミカル株式会社)
三菱ケミカルホールディングスは、日本の最大手の化学メーカーです。三菱レイヨンや大陽日酸を買収し、機能性化学分野の強化を図っています。アクリル樹脂の分野では、ダウケミカルやエボニックといった、大手化学メーカーを抑え、世界最大級の規模となっています。また、炭素繊維分野では、傘下の三菱レイヨンがパイロフィルの商標で炭素繊維を世界展開し、自動車会社とも開発を加速させています。電池材料では、正極材からは撤退し、電解液と負極材を強化しています。水処理膜事業では、MBR膜に強く、ステラポアーブランドで展開をしています。さらに詳しく
Cabot Corporation(キャボット)
米国に本拠を置く化学メーカーです。ニューヨーク証券取引所に上場しています。オランダのNorit(ノリット)を買収して、UF膜/MF膜分野を強化しています。
LG
LGグループは1952年にク・インフェ氏によって設立された韓国を代表する財閥グループです。1958年にLuckyとGoldStarが経営統合をして設立されました。電機事業、化学事業、通信事業が3本柱です。子会社は、家電メーカーのLGエレクトロニクス、電子部品の製造を手掛けるLGイノテック、液晶ディスプレイを手掛けるLGディスプレイ、総合化学メーカーのLG化学など多岐にわたります。さらに詳しく
参照したデータの詳細情報について
コンテンツの残りを閲覧するにはログインが必要です。既に会員の方はログインすると閲覧できます。まだ会員登録がお済みでない方は、こちらから会員登録ができます。