本レポートでは、水処理薬品・機器業界の世界シェアや市場規模について分析をしています。
近年、世界の水処理薬品・機器市場は、水資源の逼迫や環境規制の強化を背景に、構造変化が加速しています。工業用水の高度処理や下水の再利用、PFAS をはじめとする有害物質の除去など、企業や自治体が取り組む課題が多様化し、それに伴い水処理技術への需要が拡大しています。
特に 2024〜2025 年にかけて、膜(RO・UF)を中心とした再利用水処理の拡大、AI・IoT を活用したデジタル水質管理の普及、米国を中心とした PFAS 規制の強化が市場成長を後押ししています。また、グローバル企業による事業再編や統合が進み、水処理薬品・膜・計測・装置を組み合わせた総合ソリューション型のビジネスモデルが広がりつつあります。
こうした市場環境の変化を踏まえ、最新の決算情報に基づく水処理薬品・機器市場の規模および主要プレイヤーの位置づけを整理し、2025 年時点の業界構造を分析しています。
ザイレム、ソレニス、エコラボ、栗田工業、クボタといった世界の大手水処理薬品・機器メーカーの動向も掲載しています。
【水処理薬品・機器業界とは】
工場などで使用される工業用水、限りのある水資源を有効活用する再利用水、下水処理に関わる水ビジネスのことを、水処理ビジネスと呼びます。水処理の過程で使用される化学薬品や機器を製造・販売している企業を、水処理薬品・機器と呼びます。
水処理薬品のタイプは、凝集剤および凝集剤、腐食防止剤、スケール阻害剤、殺生物剤および消毒剤、およびキレート剤があります。水処理機器のタイプは、ボイラ水処理システム、冷却水処理システム、純水処理システム、淡水化(塩の除去)などがあります。
水処理薬品・機器業界は、石油・ガス、発電所、鉱業、紙パルプ、化学処理産業などで水の需要が高まるにつれて、成長し続けています。また、発展途上国の水不足並びに水の再利用への需要が今後も増えていくことも成長の要因となります。
【市場シェア】
水処理薬品・機器業界の2025年度の売上高⇒参照したデータの詳細情報を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2025年の水処理薬品・機器業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はザイレム、2位はソレニス、3位はエコラボとなります。
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*水処理事業比率は推計
| 順位 | Company name (English) |
企業名(日本語) | 市場シェア |
| 1位 | Xylem | ザイレム | 2.57% |
| 2位 | Solenis | ソレニス | 2.28% |
| 3位 | Ecolab(Nalco Water) | エコラボ | 2.25% |
| 4位 | Veolia(Water Technologies & Solutions) | ヴェオリア | 1.65% |
| 5位 | Veralto(Danaher) | ヴェラルト(旧:ダナハー) | 0.95% |
| 6位 | Kemira | ケミラ | 0.92% |
| 7位 | Pentair* | ペンテア* | 0.77% |
| 8位 | Kurita | 栗田工業 | 0.72% |
| 9位 | Kubota | クボタ | 0.67% |
*水処理事業比率は推計
1 位は、ザイレム(Xylem)です。
ザイレムは、ポンプ事業を中心とする ITT コーポレーションから 2011 年に分社化して誕生した水処理機器大手です。
2016 年にスマートメーター大手 Sensus、2018 年に管路診断技術の Pure Technologies を買収し、水インフラの監視・計測領域を強化してきました。
さらに 2023 年には水処理装置大手 Evoqua を買収し、膜処理・排水処理・サービス事業を統合。これにより、ザイレムは 膜・機器・計測を包括する世界最大級の総合水処理企業へと成長しています。
2 位は、ソレニス(Solenis)です。
ソレニスは、工業用水処理薬品・紙パルプ薬品の世界大手で、2019 年に Ashland Water Technologies と BASF の水処理化学事業が統合して誕生しました。
2021 年にはプラチナムエクイティが買収し、同ファンド傘下の Sigura Water と統合。
さらに 2023 年には衛生・洗浄薬品大手 Diversey を買収し、薬品事業の規模が世界最大級に拡大しました。
工場の省水化・効率化、紙パルプ産業、鉱業向け薬品など幅広い分野で需要が拡大しています。
3 位は、エコラボ(Ecolab / Nalco Water)です。
エコラボは 2011 年に Nalco Water を買収して以降、水処理薬品・機器の分野で世界的な存在感を高めています。
工場の省エネ・省水化、冷却水・ボイラ水の高度処理、衛生管理など幅広い領域でソリューションを提供しています。
安定した成長を維持しており、特に 工業用水の効率化・脱炭素化を支える薬品・監視技術が評価されています。
業界として、アジア・パシフィック地域の成長が特に著しく、中国、インド、ベトナム、インドネシアなどで都市化・産業発展・人口増加が進む中、工業用水・下水処理・再利用水の需要が急拡大しています。
また、各国政府が排水処理インフラへの投資を増やしており、アジアは世界で最も成長率の高い水処理市場となっています。
【市場規模】
当データベースでは、2025年の水処理薬品・機器業界の市場規模を447億ドルとしております。参照した各種調査データは次の通りとなります。
調査会社bccリサーチによると、2025年の同業界の市場規模は3,507億ドルです。2035年にかけて年平均11.0%で成長し、規模は5,912億ドルへと拡大することを見込んでいます。
| 年 | 市場規模 | 成長率見込み |
| 2025 | 3,507億ドル | – |
| 2035 | 5,912億ドル | 年平均11.0% |

【M&Aの動向】
2011年 エコラボによるナルコ(Nalco)買収
2013年 AEAインベスターズによるエヴォクア買収
2016年 ザイレムによるスマートメーター大手のセンサスの買収
2017年 エコラボによるドイツのホルケム(Holchem)の買収
2017年 エコラボによるキャスケードウォーターサービス(Cascade Water Services)の買収
2018年 ザイレムによるカナダのピュアテクノロジーズ(Pure Technologies)の買収
2018年 Kurita、Fracta(AI × 水道管診断)買収
2019年 エコラボによるBioquellの買収
2019年 エヴォクアによるATG UVテクノロジーの買収
2021年 プラチナエクイティがソレニスを買収
2022年 ヴェオリアによるスエズの買収
2023年 ソレニス(プラチナエクイティ)が水処理関連の薬品を製造するDiverseyを買収
2023年 Xylem、Evoquaの買収を完了
2024年 ケミラ、ノリットの英国再活性化事業の買収を完了
2024年 エコラボがバークレー・ウォーター・マネジメントを買収
2024年 Pentair が G&F Manufacturing, LLC を買収
2024年 ソレニス、BASFの鉱山用途向け凝集剤事業を買収
【会社の概要】
エコラボ(Ecolab / Nalco Water)
1923 年創業の米国企業で、もともとは Economics Laboratory として設立され、後に Ecolabへ社名変更しました。
2011 年に投資ファンドが保有していたNalco Holding(工業用水処理薬品の世界大手を買収したことで、水処理薬品分野で世界最大級の企業となりました。
工場の冷却水・ボイラ水処理、殺菌・衛生管理、廃水処理など幅広いソリューションを提供し、食品・化学・ヘルスケアなど多様な産業を支えています。
2019 年には英国の消毒液大手Bioquellを買収し、衛生・感染対策分野を強化しました。
2024 年にはBerkeley Water Managementを買収し、工業用水の効率化・デジタル管理領域をさらに拡大しています。
ザイレム(Xylem)
米国に本拠を置く水処理機器大手で、2011 年に ITT コーポレーションから分社化して誕生しました。
2016 年にはスマートメーター大手 Sensusを買収し、計測・監視領域を強化、2018 年にはカナダの Pure Technologiesを買収し、管路診断・漏水検知技術を獲得しました。
2023 年には水処理装置大手Evoquaを買収し、膜処理・排水処理・サービス事業を統合しました。
これにより、ザイレムは水処理機器・膜・計測を包括する世界最大級の総合水処理企業へと成長しました。
ヴェオリア(Veolia Water Technologies & Solutions)
1853 年にフランスで設立された世界最大手の民間水道会社で、旧ジェネラル・デ・ゾーを源流とします。
2020 年に Engie が保有する SUEZ 株式を取得し、2021 年に SUEZ を完全買収しました。
SUEZは2017 年にGE Water(GE の水処理装置・膜事業)を買収しており、この事業は現在 Veolia Water Technologies & Solutions(WTS) として統合されています。
WTS は RO・UF 膜、排水処理装置、水処理薬品、計測ソリューションを提供し、世界最大級の総合水処理技術企業としての地位を確立しています。
ヴェラルト(Veralto / 旧 Danaher 水質事業)
Veralto は 2023年にDanaherからスピンオフして誕生した、水質計測・デジタル水管理の専業企業です。
Hach(分析計測)、Trojan(UV 消毒)、ChemTreat(水処理薬品)、Aquatic Informatics(水質データ管理)など、水質監視・消毒・薬品を組み合わせたポートフォリオを持ちます。
AI・IoT を活用したデジタル水質管理(Digital Water)の需要拡大を背景に、成長を維持しています。
ケミラ(Kemira)
フィンランドに本拠を置く水処理薬品大手で、凝集剤・殺生物剤・スケール阻害剤などに強みを持ちます。
2014 年には AkzoNobel の製紙薬品事業を買収し、紙パルプ向け薬品を強化しました。
2024 年にはNoritの英国再活性化事業(活性炭)を買収し、PFAS 除去や排水処理向けの薬品ラインアップを拡大しています。
ペンテア(Pentair)
1966 年設立の米国企業で、家庭用・産業用の水処理機器を中心に事業を展開しています。
フィルター、軟水器、膜、ポンプ、商業用水処理システムなど幅広い製品を持ちます。
2024 年にはG&F Manufacturingを買収し、産業用水処理装置のラインアップを強化しました。PFAS 規制の強化により、活性炭・フィルター・膜製品の需要が増加しています。
栗田工業(Kurita)
日本を代表する水処理メーカーで、売上の 100% が水処理事業です。
水処理薬品、装置、超純水供給、化学洗浄、水質分析など幅広いサービスを提供しています。2018 年には AI を活用した水道管診断技術を持つ Fracta を買収し、デジタル水処理領域を強化しました。
アジアの工場向け需要が堅調で、薬品・装置ともに安定成長しています。
クボタ(Kubota)
1890 年創業の日本企業で、農機メーカーとして知られていますが、水処理分野では膜(MBR)・下水処理装置・ポンプ・配水管などを展開しています。
Water & Environment 事業は 3744 億円規模で、アジアの都市化・インフラ整備を背景に膜処理装置の需要が増加しています。
農機・エンジン・建機など多角化していますが、水処理装置は同社の重要な成長領域のひとつです。さらに詳しく
