大衆薬・市販薬(OTC)業界は、セルフケア需要の高まりを背景に、世界的に安定成長を続けています。近年は Haleon(旧GSK Consumer Health)や Kenvue(旧J&J Consumer Health)のスピンオフが相次ぎ、業界構造は大きく変化しました。
本記事では、“狭義OTC(一般用医薬品のみ)”を対象として、大衆薬・市販薬業界の世界シェア・売上高ランキング・市場規模・M&A(合併買収)について分析しています。また、グラクソ・スミスクライン、ジョンソン&ジョンソン、バイエル、サノフィ、ペリゴなど、主要大衆薬メーカーの企業概要やブランド戦略についても解説します。
【医薬品の区分について】
大衆薬は、薬局やドラッグストア、ECなどで消費者が自ら選んで購入できる医薬品を指し、市販薬、OTC医薬品、一般用医薬品とも呼ばれています。医師の診断に基づき処方される処方箋医薬品とは異なり、セルフケアの一環として利用される点が特徴です。大衆薬は、副作用リスクに応じて第1〜第3類医薬品に分類されます。また、育毛剤や入浴剤、健康ドリンクの一部など、作用が比較的穏やかな製品は医薬部外品として扱われます
日本のOTC医薬品は、副作用リスクに応じて以下の3区分に分類されます。
第1類医薬品
効果が高く、副作用リスクも比較的高い。薬剤師による説明が必要。
第2類医薬品
一般的な市販薬(風邪薬・胃腸薬など)。リスクは中程度。
第3類医薬品
ビタミン剤など、比較的リスクが低いもの。

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【大衆薬・市販薬業界の世界市場シェア+ランキング】
大衆薬・市販薬業界の2025年度の売上高⇒参照したデータの詳細情報を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして、2025年の大衆薬・市販薬業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はハレオン(旧:GSK コンシューマー・ヘルスケア事業)、2位はケンビュー(旧:J&J コンシューマーヘルスケア事業)、3位はオペラ(旧:サノフィ)となります。
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| 順位 | Company name (English) |
企業名(日本語) | 市場シェア |
| 1位 | Haleon(旧:GSK コンシューマー・ヘルスケア事業) | ハレオン | 10.92% |
| 2位 | Kenvue(旧:J&J コンシューマー・ヘルスケア事業) | ケンビュー | 4.11% |
| 3位 | Opella | オペラ(サノフィ)* | 3.70% |
| 4位 | Reckitt Benckiser Group Plc | レキットベンキーザー | 3.28% |
| 5位 | Perrigo | ペリゴ | 3.14% |
| 6位 | Bayer | バイエル | 2.49% |
| 7位 | P&G | P&G* | 0.93% |
| 8位 | Cipla | シプラ | 0.10% |
1位は、Haleon(ハレオン)です。
英国発の OTC専業企業。GSK と Pfizer Consumer Health の統合後、2022年に分社化。背景には 処方薬とOTCの成長ドライバーの違い と、GSK がワクチン・がん領域へ集中する戦略がありました。鎮痛・口腔ケアで世界首位となっています。
2位は、Kenvue(ケンビュー)です。
米国の J&J Consumer Health分社化企業で、Tylenol や Zyrtec を擁する Self Care が主力です。分社化の背景は 医療用医薬品(Rx)とOTCの事業特性の乖離、および J&J 本体が医療機器・製薬に集中するためでした。
3位は、Opella(オペラ/サノフィ)です。
サノフィの OTC部門の独立会社で、Allegra、Buscopan など世界的ブランドを展開しています。分社化の背景は サノフィ本体のスペシャリティ医薬品への集中 と、OTC事業の機動的なブランド運営を可能にするためでした。
4位は、Reckitt Benckiser(レキット)です。
英国の大手日用品・医薬品メーカーで、Nurofen、Strepsils などの Self Care事業 が成長を牽引しています。近年は 医薬品部門の独立性を高める組織再編 を進めています。
5位は、Perrigo(ペリゴ)です。
米国の OTC専業メーカーで、ストアブランドOTCで世界最大手。2015年に医薬品(Rx)部門を売却し、OTCに完全特化するための事業再編 を実施。欧州事業の統合も進行中です。
6位は、Bayer Consumer Health(バイエル)です。
ドイツの大手製薬企業のOTC部門で、Aspirin、Claritin などを展開。分社化はしていないが、OTC部門の独立経営体制 を強化し、将来的なスピンオフ観測もあります。近年はデジタルヘルス連携を推進しています。
7位 P&G(プロクター&ギャンブル)です。
世界最大の消費財メーカー。Vicks、Pepto-Bismol など一部OTCを保有しています。分社化はしていませんが、Health Care事業の再編 により OTC の収益性改善を進めている。OTC比率は小さいが北米で強いです。
8位は、Cipla(シプラ)です。
インドの大手製薬企業で、OTCは新興事業ですが、咳止め・ビタミン剤などで存在感を拡大しています。分社化はしていないが、Consumer Health部門を独立運営 し、急成長するインド市場に対応しています。
【大衆薬・市販薬業界の世界市場規模】
当データベースでは、2025年の大衆薬・市販薬業界の市場規模を1,353億ドルとしております。参照した各種調査データは次の通りとなります。
調査会社プレスデンスリサーチによると、2025年の同業界の市場規模は1,353億ドルです。2035年にかけて年平均6.62%で成長し、規模は2,569億ドルへと拡大することを見込んでいます。
| 年 | 市場規模 | 年平均成長率 |
| 2025 | 1,353億ドル | – |
| 2035 | 2,569億ドル | 6.62% |

【M&Aの動向】
2014年 レキット・ベンキーザーがジョンソン&ジョンソンからK-Yブランドを買収
2014年 ペリゴがベルギーのオメガ・ファーマを買収
2014年 ノバルティスとGSKが大衆薬事業を統合
2015年 サノフィの動物薬事業とベーリンガーインゲルハイムの大衆薬事業の事業スワップ
2017年 レキット・ベンキーザはミード・ジョンソン・ニュートリション・カンパニーを買収
2018年 大正製薬HD、仏大衆薬UPSAを買収
2018年 シプラ社、南アフリカの医薬品開発会社ミレン社を買収
2018年 GSKが大衆薬事業の持分をノバルティスから買収
2018年 P&Gがメルクの大衆薬事業を買収
2018年 ファイザーが大衆薬事業をGSKと統合
2019年 バイエルはカレンタのMIRA社への売却を完了
2019年 アユタス・バイオサイエンスはイノヴァス・ファーマシューティカルズ買収に合意
2019年 ジョンソン&ジョンソンはヴァーブ・サージカルの残存株式を取得することで合意
2020年 バイエルは米国のアスクレピオス・バイオファーマシューティカル社(アスクバイオ社)を買収
2020年 武田薬品工業が武田コンシューマーヘルスケアをブラックストーンへ売却
2020年 ジョンソン&ジョンソンはモメンタ・ファーマシューティカルズの買収を完了
2020年 P&G が Billie Inc. の買収計画を発表
2021年 バイエルはビビディオン・セラピューティクスを買収
2021年 ジョンソン&ジョンソンがコンシューマーヘルスケア部門のスピンオフを発表
2022年 ペリゴ、HRAファーマの買収を完了
2022年 シプラヘルスがメディンベル・エルバルケア社からエンデュラ・マスを買収
2022年 グラクソ・スミスクライン(GSK)はアフィニバックス社の買収を完了
2022年 グラクソ・スミスクライン(GSK)はシエラオンコロジーを19億ドルで買収
2022年 ジョンソン&ジョンソンはアビオメッドを買収を完了
2023年 サノフィは米国ブランドQunol®を買収
2023年 サノフィがプロベンション・バイオ社の買収を完了
2023年 グラクソ・スミスクライン(GSK)はカナダのベラス・ヘルスを買収に合意 2024年 サノフィ、Inhibrx, Inc の買収を完了
2025年 GSK が IDRx, Inc. を買収する契約を締結
2025年 バイエル、バイオ燃料の進歩のためにスマートアース・カメリナ社からカメリナの資産を買収
2026年 GSKが35Pharma Inc.の買収契約を締結
【会社の概要】
Haleon(ハレオン)
Haleon は英国ロンドンに本社を置く世界最大の OTC専業企業 です。GSK と Pfizer の一般用医薬品事業を統合した後、2022年にロンドン証券取引所へ上場し独立しました。Sensodyne、Voltaren、Panadol など国際的ブランドを展開し、口腔ケア・鎮痛・消化器領域で強みを持ちます。
Kenvue(ケンビュー)
Kenvue は米国ニュージャージー州に本社を置く J&J Consumer Health のスピンオフ企業 です。2023年にニューヨーク証券取引所へ上場し、Tylenol、Motrin、Zyrtec などの Self Care ブランドを展開しています。Johnson & Johnson 本体は医療機器・製薬に集中し、Consumer Health 部門を独立させました。
Opella(オペラ/サノフィ)
サノフィは、1973年に設立されたフランスに本拠を置く大手製薬メーカーです。サノフィの発祥は、仏石油大手のTOTALの医薬品部門とヘキスト・ローヌ・プーラン・ローラー系の製薬事業です。ワクチン系の医薬品に強いとされます。2018年に抗体医薬を手掛けるベルギーのアブリンクスを買収しています。
Reckitt Benckiser Group Plc(レキット・ベンキーザ)
イギリス・ロンドン郊外のバークシャー州・スラウに本社を置き、トイレタリー分野を中心とした日用品・医薬品・食品を製造販売している会社です。レキットベンキーザー・グループとして、ロンドン証券取引所に上場しています。続きを読む
【取扱ブランド一覧】
出所:Reckitt Benckiser Group Plc
PERRIGO COMPANY PLC(ペリゴ)
Perrigo はアイルランドに本社を置く OTC専業メーカー です。北米と欧州でストアブランドOTCを中心に事業を展開し、世界最大級のプライベートブランド医薬品メーカーとなっています。2015年に医療用医薬品(Rx)部門を売却し、OTC事業へ完全特化しました。
Bayer Consumer Health(バイエル)
Johnson & Johnson(ジョンソン&ジョンソン)は1887年にジョンソン三兄弟によって創設された米国に本拠を置く世界最大級の日用品・医療機器メーカーです。医療・衛生用品のバンドエイドや綿棒、スキンケア用のベビーローション、オーラルケアのリステリン、一般医薬品、外科関連の手術器具では圧倒的な強みを有しています。続きを読む
Glaxo・SmithKline(グラクソ・スミスクライン)
1999年にスミスクライン・ビーチャムとグラクソ・ウエルカムが経営統合して誕生した英国に本拠を置く大手製薬メーカーです。中枢系の医薬品に強みを持ちます。医薬品、ワクチンとコンシューマヘルスケアが事業の柱となっています。コンシューマヘルスケアの歯磨き粉では、アクアフレッシュ(Aquafresh)センソダイン(Sensodyne、日本名シュミテクト)や抗炎症剤「ボルタレン」などが主力製品です。2018年に米ファイザーと一般用医薬品(大衆薬)事業の統合を発表、GSKコンシューマヘルスケアが誕生しました。飲料事業(ルコゼード、ライビーナ)をサントリー食品に、抗がん剤事業をノバルティスに160億ドルで売却しました。さらに詳しく
ノバルティスについて
Novartis(ノバルティス)は、スイスに本拠を置く世界最大級の製薬メーカーです。後発医薬品メーカー大手のSandoz(サンド)を傘下に保有しています。2014年に英グラクソ・スミスクラインの抗がん剤事業を160億ドルで、2017年にフランスの放射性医薬品会社アドバンスト・アクセレーター・アプリケーションズを39億ドルで、2018年に米国のがん治療薬メーカーであるエンドサイトを21億ドルで買収すると発表する一方で、コンタクトレンズ会社のアルコンは分社化、大衆薬事業は合弁相手のグラクソ・スミスクラインに売却し、先端医薬品分野を強化しています。さらに詳しく
Johnson & Johnson(ジョンソン&ジョンソン)
Johnson & Johnson(ジョンソン&ジョンソン)は1887年にジョンソン三兄弟によって創設された米国に本拠を置く世界最大級の日用品・医療機器メーカーです。医療・衛生用品のバンドエイドや綿棒、スキンケア用のベビーローション、オーラルケアのリステリン、一般医薬品、外科関連の手術器具では圧倒的な強みを有しています。続きを読む
THE PROCTER & GAMBLE COMPANY (P&G、プロクター&ギャンブル)
P&G(プロクター&ギャンブル)は、アメリカ合衆国オハイオ州に本拠を置く世界最大の一般消費財メーカーです。1837年にウィリアム・プロクター氏とジェームズ・ギャンブル氏によって設立されました。米国で26種類以上の医薬品を製造、販売および流通させている大手の会社です。さらに詳しく
【取扱ブランド一覧】
引用:Procter & Gamble Personal Health Care
TAISHO PHARMACEUTICAL HOLDINGS CO., LTD. (大正製薬ホールディングス株式会社)
大正製薬ホールディングスは、東京都豊島区に本社を置く日本を代表する大衆薬メーカーです。1912年創業以来、リポビタンD、パブロン、リアップなどの一般用医薬品を中心に事業を展開しています。国内OTC市場で高いシェアを持ち、2018年には仏UPSAを買収するなど海外展開も強化しています。
Cipla Limited(シプラ)
Cipla はインド・ムンバイに本社を置く大手製薬企業です。ジェネリック医薬品で知られますが、近年は咳止め・ビタミン剤などの Consumer Health(OTC)事業を強化しています。インド国内のセルフケア需要の高まりを背景に、OTC領域で存在感を高めています。
