農機・農業機器メーカーの世界市場シェアの分析

農機業界の世界シェア・売上高ランキング・市場規模・業界再編について分析しています。ディア、CNH、アグロ、クボタ、クラース、マヒンドラといった主要農機メーカーの概要や動向も掲載しています。

【農機とは】

農業機器の種類には色々ありますが、トラクター、田植え機、管理機、防除機とコンバインの5種類が主要農機です。トラクターは作業機をつければ用途が広がり、万能農機とも言われています。

稲等の植え付けに役に立つのは田植え機です。ミニ耕運機とも言われ、土を耕したり、溝を作ったりする時に使用するのが管理機です。除草作業、草刈等に活用されるのが防除機です。稲等の刈り取り・脱穀を行うのがコンバインです。

日本や韓国、タイなどのアジア諸国では米が主要農作物で田植え機の需要が高いですが、アメリカやカナダなど欧米諸国では小麦やトウモロコシが主要農作物なので、トラクターが主要な農業機械となっています。

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【農機・農業機器メーカーの世界市場シェア+ランキング】

2023年度の農機メーカー各社の売上高⇒参照したデータの詳細情報を分子に、同業界の世界市場規模を分母にして、農機業界の2023年の市場シェアを簡易に算定すると、1位はディア、2位はCNHインダストリアル、3位はクボタ、4位はアグコとなっています。2020年にはコロナ禍で各社とも売上が伸び悩みましたが、その後売上を順調に伸ばしトップ4は不動となっています。

順位 会社名 市場シェア(2023年)
1位 Deere and Company(ディア・アンド・カンパニー) 22.43%
2位 CNH Industrial N.V.(CNHインダストリアルN.V.) 11.07%
3位 Kubota Corporation(株式会社クボタ) 9.25%
4位 AGCO Corporation(アグコ コーポレーション) 8.79%
5位 CLAAS Group(クラース・グループ) 3.97%
6位  YANMAR HOLDINGS CO., LTD.(ヤンマーホールディングス株式会社) 3.37%
7位 Mahindra & Mahindra Limited(マヒンドラ&マヒンドラ、M&M) 1.50%
8位 SDF 1.40%
9位 FIRST TRACTOR COMPANY LIMITED(ファーストトラクター、第一拖拉机股份有限公司) 1.13%
10位 ISEKI & CO., LTD.(井関農機株式会社) 0.79%
11位 Tractors and Farm Equipment Limited(トラクターズ・アンド・ファーム・エクイップメント、TAFE) 0.76%
農業機械メーカーの売上高世界市場シェア(2023年)@2024 Deallab

農機業界の市場シェア(2023年)@2024 Deallab

1位は米国のディアです。2位のCNHインダストリアルは建機やトラックも手掛けるイタリアの名門財閥です。3位のクボタは、稲作には圧倒的な強さを見せるものの、畑作向け農機で如何に欧米勢と競い合うかがポイントです。

農機は、地域ごとの特性にあった機種(日本だったら稲作、ヨーロッパだったら畑作)を開発する必要があり、またメンテナンス等への対応力が問われるビジネスモデルです。グローバルな拠点を効率よく構築している点が四天王の強さと言えるでしょう。

5位は欧州で圧倒的なブランド力を誇るクラースが入りました。6位には日本のヤンマーが入りました。7位はインド最大手のマヒンドラが、9位には中国のファーストトラクター、11位にはインド2番手のトラクターズ・アンド・ファーム・エクイップメントが入ってきており、新興国メーカーも追い上げて来ています。

その他の農機主要企業としては、イタリアのアルゴ(ARGO)、中国のYTOグループ、イギリスのJCバンフォード・エクスカベターズ(J.C Bamford Excavators)などがあります。

過去5年間の上位5位の推移は以下の通りです。

順位 2019 2021 2023
1位 ディア ディア ディア
2位 クボタ CNH CNH
3位 CNH クボタ クボタ
4位 アグコ アグコ アグコ
5位 クラース  ヤンマー クラース
業界上位3社の成長率と収益力比較
農機業界の上位3社(ディア、CNHインダストリアル、クボタ)の売上高成長率(過去5年平均)、配当性向、ROE(直前期)を比較しました。

農機大手3社の財務指標比較(2023年)@2024 Deallab
*売上高成長率は過去5年平均

CNHインダストリアルは複合企業のため、農機以外の事業からの業績への影響があることに留意が必要です。ディアは売上高成長率・ROEで首位ですが、配当性向は他2社と比べて低めです。

【農機・農業機器メーカーの世界市場規模】

当サイトでは、下記のデータを参照して2023年の農機業界の市場規模を1639.7億ドルとしています。

調査会社グランドビューリサーチによると、2023年の同市場規模は1639.7億ドルです。2023年から2030年にかけて年平均成長率5.3%で成長し、同年には2360.4億ドルになると見込んでいます。

調査会社グローバルマーケットインサイツによると、2023年の同市場規模は1557億ドルです。2024年から2032年にかけて年平均成長率5.5%で成長し、同年には2617億ドルになると見込んでいます。

調査会社のアライドマーケットリサーチによれば、2022年の同規模は1212億ドルです。2023年から2032年にかけて年平均成長率4.6%で成長し、同年には1925億ドルになると見込んでいます。

参照したデータの詳細情報

農機市場規模 成長率見込み
2023 1639.7億ドル
2030 2360.4億ドル 5.3%
農機業界の市場規模の推移 @2024 Deallab

【売上高ランキング】

直近四半期(2023年10〜12月)売上高をベースとした農機メーカーランキングでは、1位ディア・アンド・カンパニー、2位CNHインダストリアル、3位アグコとなっています。年間ランキングではクボタが3位ですが、四半期ベースでみるとアグコがクボタを上回りました。

なお、クラース・グループ、ヤンマー、マヒンドラ、SDF、TAFEについては、非上場会社などの理由で四半期決算を発表しておらず、売上高ランキングからは除外しております。

参照したデータの詳細情報

農機業界の売上高ランキング(四半期ベース)
*ディアは2023年11~2024年1月期のデータを使用

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【M&Aの動向】

主にトップ4社が積極的に海外事業や周辺領域の拡大のための買収を行っています。

2007年 Deere(ディア)が害虫駆除製品を販売するLesco(レスコ)を買収

2007年 Deere(ディア)が中国のトラクター製造会社であるNingbo Benye Tractor & Automobile Manufactureを買収

2008年 Deere(ディア)が灌漑システム大手のPlastro Irrigation Systemsを買収

2010年 アグコが英Sparexを買収

2011年 アグコが穀物貯蔵庫大手のGSI Groupを買収

2012年 アグコがブラジル農機メーカーのSantal Equipamentosを買収

2012年 クボタがノルウェーのKverneland(クバンランド)を171億円で買収

2013年 CNHインダストリアルがCNHグローバルとFiat Industrial(フィアットインダストリアル)を吸収合併し、誕生した

2014年 CNHインダストリアルがMiller-St. Nazianzを買収

2016年 クボタが米国の農用作業機器Great Plains Manufacturingを4.3億ドルで買収

2021年 クボタがインドのトラクター大手Escortsを1400億円で買収

【会社の概要】

Deere and Company(ディア・アンド・カンパニー)

Deere and Company(ディア・アンド・カンパニー)は、1837年に創業された米国を代表する世界最大級の農機具メーカーです。グリーンのボディにイエローのホイールのトラクターとジョンディア (John Deere) の愛称で親しまれている老舗です。

現在では超高級車で知られているランボルギーニ社も、祖業はトラクターであり、現在でも販売しています。トラクターの他に、コンバイン、プランター、ベーダ―、フォークリフト、スキッダー、バックホーローダー、ブルドーザー、トランスミッション等も手掛けています。1000ヘクタール以上の農場向けの500馬力トラクターでは他社の追随を許しません。さらに詳しく

CNH Industrial N.V.(CNHインダストリアルN.V.)

CNHインダストリアルは、2013年のCNHグローバルとフィアット・インダストリアルとの経営統合の結果誕生しました。フィアット創業家であるアニェッリ家が大株主となっています。

建機、農機、商用車(トラック)事業を全世界180ヶ国で展開しています。現在はニューヨーク証券取引所とミラノ証券取引所に株式を上場しています。2022年1月に商用車・トラック事業を担うIveco(イベコ)が分社化上場しました。さらに詳しく

Kubota Corporation(株式会社クボタ)

クボタは日本の最大手農機メーカーです。源流は、1890年に久保田権四郎氏によって設立された鋳物メーカーである大出鋳造所まで辿ることができます。コレラ対策のために、水道管の国産化を実現し飛躍しました。ノルウェーの農機メーカーのKverneland(クバンランド)、北米の種まき・草刈り機大手のグレートプレーンズマニュファクチュアリング社、インドのエスコーツ社を買収し、世界展開を強化しています。日本出自の農機メーカーということで、稲作用の農機に強みを持っています。農機以外にも、エンジン、建設機械、祖業の各種パイプ(ダクタイル鉄管、合成管、ポンプ、バルブ等)、スパイラル鋼管などを製造販売しています。さらに詳しく

AGCO Corporation(アグコ コーポレーション)

米国に本拠を置く大手農機メーカーです。畑作向けの農機に強みを持っています。

 YANMAR HOLDINGS CO., LTD.(ヤンマーホールディングス株式会社)

大阪に本社を置く、日本の農業機械メーカーです。農業機械や建設機械の他に発電機やエンジンの製造も手掛けています。非上場会社です。

CLAAS Group(クラース・グループ)

ドイツに本拠を置く大手農機メーカーです。欧州地域での展開に強みを持ちます。非上場です。

Mahindra & Mahindra Limited(マヒンドラ&マヒンドラ、M&M)

マヒンドラグループ(Mahindra)は、1945年に Kailash Chandra Mahindra(K.C.マヒンドラ)、J.C. Mahindra(J.C.マヒンドラ)とMalik Ghulam Mohammed(マリック・グラム・モハメッド)によって設立されたインドを代表する財閥です。当初はマヒンドラ&モハメッドとして創業しましたが、のちにマヒンドラ&マヒンドラへと社名変更しました。

事業の領域は多岐に亘り、航空宇宙産業、農業、自動車、防衛、エネルギー、農機、金融、物流、不動産、自動車、オートバイ等を行っています。グループ全体の売上高は約2兆円、世界で20万人以上の従業員を有しています。中核企業は、自動車と農機で、約7000-8000億円の売上規模となります。現在は、ハーバード・ビジネス・スクールを修了したJ.C.マヒンドラの孫にあたるアナンド・マヒンドラがCEOを務めています。さらに詳しく

SDF

1927年に設立されたイタリアに本拠を置く農機メーカーです。DEUTZ-FAHR(ドイツファール)、Lamborghini Trattori(ランボルギーニ・トラットリーチ)、Hurlimann(ヒューリマン)、SAME等のブランドで農機を展開しています。SDFはSAME DEUTZ-FAHRの略です。

FIRST TRACTOR COMPANY LIMITED(ファーストトラクター、第一拖拉机股份有限公司)

YTO Group Corporation(中国一拖集团有限公司)傘下の中国最大手農機メーカーです。

ISEKI & CO., LTD.(井関農機株式会社)

トラクターや田植え機、コンバインなどの農機を製造しています。クボタ、ヤンマーに続く国内3番手です。

Tractors and Farm Equipment Limited(トラクターズ・アンド・ファーム・エクイップメント、TAFE)

TAFEはインドに本拠を置く大手農機メーカーです。非上場会社です。

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