東レの市場シェア・業績推移・売上構成・株価の分析

東レは、1926年に三井物産が設立した東洋レーヨンを祖とする総合化学メーカーです。祖業は繊維で、東レは東洋レーヨンの略です。現在は日本を代表する素材系メーカーとなっています。
水処理分野ではRO膜の分野に強みを持ちます。ダウ、キャボットと並び大手です。炭素繊維では航空機向けに強みを持ちます。
熱硬化性炭素繊維、CFRPにも強く1971年に発売を開始した「トレカ」の商標で販売をしています。航空機分野ではボーイングへの納入実績では他社を圧倒しています。熱可塑性の炭素繊維複合材に強みを持つオランダのテンカーテ・アドバンスト・コンポジット社を2018年に買収し、熱硬化性と熱可塑性の素材に対応できる技術力を高めています。
セパレータはセティーラブランドで展開しています。車載電池向けでは、ボリューム拡大よりも、利幅が大きいとされるハイエンド向けに特化する方針です。ドイツのダイムラーと提携しています。
エアバッグの生地やおむつ等に使用する不織布でも大手です。

業績推移(年次)

2018年度
売上高は2,388,848百万円で、前年度比8%増となりました。営業利益は141,469百万円になりました。営業利益率は5.9%になりました。

2019年度
売上高は2,091,166百万円で、前年度比12%減となりました。営業利益は114,700百万円になりました。営業利益率は5.5%になりました。炭素繊維複合材料事業を除くすべてのセグメントで減収となりました。営業利益は、繊維事業、機能化成品事業を中心に減益となりました。 営業利益の前連結会計年度比増減要因を分析すると、原料価格下落による増益28,800百万円があった一方で、生産・販売数量の減少や費用の増加などによる減益39,000百万円があり、差し引き10,300百万円の減益となりました。

2020年度
売上高は1,883,600百万円で、前年度比10%減となりました。これは、繊維事業で111,700百万円の減収、炭素繊維複合材料事業で54,000百万円の減収、機能性化成品事業で40,800百万円の減収となった為です。繊維事業においては、国内外ともに新型コロナウイルスによる生産活動・消費行動停滞の影響を受けました。衣料用途においては各国でのロックダウンや過剰な流通在庫から需要が低迷、産業用途においては一般資材用途が低調に推移し、販売数量が減少しました。医療用白衣地やマスク用途での不織布需要の増加に加え、第3四半期以降に自動車関連用途において回復の動きが見られましたが、総量の減少をカバーするにはいたりませんでした。炭素繊維複合材料事業においては、一般産業用途では、風力発電翼用途が堅調に推移しましたが、航空宇宙用途において、民間旅客機のビルドレートが減少した影響を受けました。営業利益は55,879百万円になりました。営業利益率は3.0%になりました。

2021年度
売上高は2,228,523百万円で、前年度比18%増となりました。これは、繊維事業で売上が116,900百万円増加したことと、機能化成品事業で売上が189,600百万円増加した為です。繊維事業)においては国内外ともに需要の回復が見られました。衣料用途では、引き続き新型コロナウイルスの影響を受けた用途があるものの、スポーツ・アウトドア用途が好調に推移しました。機能化成品事業においては、コロナ禍の反動と中国経済の回復から、総じて需要が好調に推移しました。営業利益は100,565百万円になりました。営業利益率は4.5%になりました。

2022年度
売上高は2,489,330百万円で、前年度比12%増となりました。これは、繊維事業で売上が163,000百万円増加したことと、炭素繊維複合材料事業で売上が66,500百万円増加した為です。衛材用途は需給バランス悪化の影響で低調に推移しましたが、衣料用途で、コロナ禍からの回復が見られ、産業用途は一部地域で自動車用途の需要が回復傾向となったことが、繊維事業での売上増加の要因です。炭素繊維複合材料事業においては、航空宇宙用途の需要が回復傾向となったほか、一般産業用途において圧力容器用途が拡大しました。営業利益は109,001百万円になりました。営業利益率は4.4%になりました。

東レの業績推移

東レの業績推移

業績推移(四半期)

2022年度第2四半期(07ー09月)
売上高は655,925百万円になりました。営業利益は22,914百万円、営業利益率は3.5%になりました。

2022年度第3四半期(10ー12月)
売上高は640,006百万円になりました。営業利益は24,870百万円、営業利益率は3.9%になりました。

2022年度第4四半期(01ー03月)
売上高は587,530百万円になりました。営業利益は10,334百万円、営業利益率は1.8%になりました。

2023年度第1四半期(04ー06月)
売上高は578,057百万円になりました。営業利益は20,794百万円、営業利益率は3.6%になりました。

2023年度第2四半期(07ー09月)
売上高は621,319百万円になりました。営業利益は23,651百万円、営業利益率は3.8%になりました。

東レの四半期業績推移

東レの四半期業績推移

EPS・1株配当・配当性向の推移

希薄化後EPSは前年度比13%減の45.4円になりました。1株当たりの配当は前年度比13%増の18円になりました。配当性向は40%になりました。

東レのEPS・1株配当・配当性向の推移

東レのEPS・1株配当・配当性向の推移

業績予想

2023年11月
2023年第二四半期の決算短信において、2023年度通期の売上収益は2,540,000百万円、事業利益は120,000百万円を予定していると掲載されています。

売上構成

セグメントは、繊維事業、機能化成品事業、炭素繊維複合材料事業、環境・エンジニアリング事業、ライフサイエンス事業に分類されます。セグメント別の売り上げ構成は以下の通りです。

東レの売上構成(2022年度)

東レの売上構成(2022年度)

繊維事業
ポリエステル・アクリル等の糸・綿・紡績糸及び織編物、不織布、人工皮革、アパレル製品の製造、加工及び販売を実施しています。アパレル用新製品に向けたポリマー、紡糸の要素技術の深化に加え、環境調和型の新規繊維の創出や、極限技術追求による高機能製品や繊維先端材料の創出・拡大に主眼を置いた研究・技術開発を推進しています。

機能化成品事業
ナイロン・ABS・PBT・PPS等の樹脂及び樹脂成形品、ポリオレフィンフォーム、ポリエステル・ポリエチレン・ポリプロピレン等のフィルム及びフィルム加工品、合成繊維・プラスチック原料、ファインケミカル、電子情報材料、印写材料の製造、加工及び販売を実施しています。樹脂・ケミカル、フィルム、電子情報材料の新製品開発、及び既存製品の高性能・高機能化を目指した研究・技術開発に取り組んでいます。その成果として、高耐熱アラミドポリマーの分子設計技術を駆使し、無孔でありながら電池作動を可能とする空気電池用イオン伝導ポリマー膜の創出に成功しました。

炭素繊維複合材料事業
炭素繊維・同複合材料及び同成形品の製造、加工及び販売を実施しています。炭素繊維の高性能化と品質信頼性の追求により世界ナンバーワンを堅持するとともに、地球温暖化問題に貢献する複合材料事業の拡大を目指した研究・技術開発に取り組んでいます。

環境・エンジニアリング事業
総合エンジニアリング、マンション、産業機械類、情報関連機器、水処理用機能膜及び同機器、住宅・建築・土木材料の製造、加工及び販売を実施しています。2022年度は水処理膜とエンジニアリングを軸に成長分野での事業拡大を目指し、研究・技術開発に取り組みました。

ライフサイエンス事業
医薬品、医療機器の製造、加工及び販売を実施しています。ライフイノベーション事業拡大のため医薬品、医療機器、バイオツールの研究・技術開発に取り組んでいます。

その他
分析・調査・研究等のサービス関連事業です。

N&A情報と買収マルチプル

東レはRO膜、香料、不織布や炭素繊維分野で積極的な買収を行っています。

2014年 韓国の現地子会社である東レ尖端素材株式会社を通して、ウンジンケミカル社の株式56.2%を取得することに関し、全ての手続きを完了
2014年 米国のラージトウ炭素繊維メーカーZoltek Companies, Inc. の全株式を取得することに関し、全ての手続きを完了
2015年 日本バイリーン株式会社の株券の公開買付を実施し完了
2017年 三井物産と共同して曽田香料株式会社の普通株式を公開買付けにより取得することを決定
2017年 香港のニット・染色・プリント生地製造販売会社Pacific Textiles Holdings Ltd. の株式を28%取得し、同社に資本参加することを決定
2017年 自動車エンジニアリング事業を手掛ける株式会社東京アールアンドデー(東京都)の株式シェア11.7%を取得し、資本参加することを決定
2018年 オランダの炭素繊維複合材料メーカーTenCate Advanced Composites Holding B.V. の全株式を取得を完了
2020年 スウェーデンのエアバッグ縫製メーカー Alva Sweden AB の全株式取得完了

東レの買収マルチプル(売上高倍率)

東レの買収マルチプル(売上高倍率)

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