香料業界の世界市場シェアの分析

香料メーカーの世界ランキング、市場シェア、業界再編や市場規模について分析しています。ジボダン、IFF、フィルメニック、シムライズ、高砂香料、マンフィス、長谷川香料等の世界大手香料会社の動向も掲載しています。IFFによるフルトロムやデュポンニュートリション買収等業界再編が続いています。

2020年市場シェア

香料各社の売上高の情報(⇒参照したデータの詳細情報)を分子に、2020年の市場規模として採用した300億ドルを分母にして、簡易的に香料業界の2020年の市場シェアを算出すると、1位はスイスのジボダンの23.1%、2位は米国のIFFの17%、3位はスイスのフィルメニックの14.3%となります。

2020年香料業界世界シェア

  • 1位 ジボダン 23.1%
  • 2位 IFF 17.0%
  • 3位 フィルメニック 14.3%
  • 4位 Symrise 13.6%
  • 5位 ADM/Wild Flavor 9.3%
  • 6位 マン 5.5%
  • 7位 高砂香料 4.6%
  • 8位 センシエント・テクノロジー 2.3%
  • 9位 Huabao 2.10%
  • 10位 ロベルト 2.08%
  • 11位 長谷川香料 1.6%

香料業界の世界シェア(2020年)
香料業界の世界シェア(2020年)

香料業界では、ジボダンが引き続き1位の市場シェアを維持しています。2020年はバイオ成分のAlderys、化粧品成分のIndenaという香料隣接領域を買収し、更なる規模拡大を図っています。2019年はアクティブ コスメティックス事業を手掛けるAMSilk社、フランスの自然成分に強みを持つAlbert Vieille社、ベトナムの香料大手であるGolden Frog社を買収しています。IFFが2018年のフルタロムの買収に続き、2019年にデュポンから食品成分・原料の製造を手掛けるニュートリション事業を262億ドルで買収しました。同事業の売上高は約61億ドルで、香料と食品成分を合算した売上高112億ドルでは世界最大級の会社となる予定です。
3位のフィルメニックも、フランスの植物ベースの化学原料メーカーであるLes Dérivés Résiniqueset Terpéniquesを買収しIFFとジボダンを追いかけています。4位はドイツのシムライズ、5位はADM(ワイルドフレーバーズ)、6位はマンとなっており、中国Huabaoが順位をあげている以外には、2019年と比べて大きな変動はありません。

香料業界の世界市場シェア(2019年)
1位 ジボダン 24.9%
2位 IFF 19.2%
3位 フィルメニック 15.8%
4位 シムライズ 15.1%
5位 ADM/Wild Flavor 10.2%
6位 マン 5.6%
7位 高砂香料 5.5%
8位 センシエント・テクノロジー 2.6%
9位 ロベルトSA 2.2%
10位 フアバオ 2.1%
11位 長谷川香料 1.7%

香料業界の世界市場シェア(2018年)

2019年2月時点における市場シェアの世界1位はジボダン、2位はフルタロムを買収したIFF、3位はフィルメニックとなっています。フルタロムとIFFという業界大手同士の経営統合で順位が変動しています。4位はシムライズ、5位はワイルドフレーバーズを買収した穀物メジャーのADMとなっています。ジボダンの地位は不動ですが、積極買収を仕掛けるシムライズや穀物メジャーが今後の業界再編の台風の目となる可能性があります。

香料とは?

香料は、主に食品香料(フレーバー)と香粧品香料(フレグランス)に分かれます。前者は飲料、冷菓、菓子、即席麺等の加工食品に、後者は化粧品やトイレタリー等に使われます。フレーバーとフレグランスの世界市場規模はほぼ同程度と言われています。各社ともに育成に時間のかかる熟練した香りを調合するフレーバーリスト(フレーバー)やパフューマー(フレグランス)を抱え、香料生産への設備投資が必要であるため、新規参入の障壁が高い業界です。香料の原料は、ラベンダーやシナモン等の天然由来成分と化学合成成分の2種類があり、日本の香料会社は香料の原料をほぼ輸入に頼っている状況です。

業界のバリューチェーン

香料業界のバリューチェーンは、香料原料のサプライヤー(天然由来、化学由来の原材料供給会社)、香料会社(フレグランスとフレーバーの調合会社)、消費財メーカー(日用品メーカー、食品・飲料メーカー)、小売(スーパー、オンラインショップ等)という構図になっています。下図では、同業界のバリューチェーンをまとめています。

出所:イベルケム会社資料

市場規模

本サイトでは、以下の情報を参考にし、2020年の香料業界の市場シェア算出の市場規模として300億ドルを採用しています。

IFFの2021年プレゼンテーション資料によると、同業界の2020年の市場規模は300億ドル、年平均成長率は2-5%を見込みます。調査会社のフォーチュンビジネスインサイツによると、世界の同業界(主に飲料、菓子、製パン、乳製品等の食品、洗剤等の日用品、パーソナルケア製品、化粧品向けの香料成分)の2018年の推定市場規模は265億ドルです。調査会社のグランドビューリサーチによれば2018年の同市場の規模は207.5億ドルとなっています。また調査会社マーケットデータフォーキャストによると、2020年の同市場規模は200億ドルです。2025年にかけて年平均2.65%での成長を見込みます。⇒参照したデータの詳細情報

市場規模(億ドル)想定成長率
20203002-5%
2019265
2018235
香料業界の推定市場規模と成長率の推移©ディールラボ

業界の再編

香料業界の大手プレーヤーであるジボダン、IFF、フィルメニック、シムライズによる規模拡大が続いています。食品成分機能の強化の一環として、穀物メジャーのADMも近年香料分野へ参入しました。また、2019年にはIFFがデュポンのニュートリション事業を買収し、香料と食品成分の両分野で成長を目指しています。

1958年 ジュースメーカーのオランダPolak & Schwarz社と香料メーカーのAmeringen-Haebler社の経営統合でIFFが誕生
2000年 IFFがBush Boake Allenを買収
2000年 ジボダンがロシュから分社化
2002年 ジボダンがネスレの香料部門であるFood Ingredients Specialitiesを買収
2002年 ドイツの化学大手バイエルの香料子会社であるHaamann & Reimer社とDragocoの経営統合でシムライズが誕生
2006年 ジボダンが英国の化学大手ICIよりオランダの香料メーカーのクエスト・インターナショナルを買収
2007年 フィルメニッヒが食品成分大手のオランダDaniscoから香料事業を買収
2014年 シムライズがフランスの香料成分会社であるDianaを買収
2014年 IFFがイスラエルの香料会社であるAromor Flavors & Fragrancesを買収
2014年 ADMがワイルド・フレーバーズを買収
2015年 シムライズが米国のアロマ成分メーカーPinova社とRenessenz社を買収
2015年 フルタロムがドイツの香料メーカーのWibergとオーストリアの食品香料のSAGEMAを買収
2015年 IFFが米国の香料会社であるHenry H. Ottens社を買収
2015年 IFFがカナダの化粧品向け成分会社であるLucas Meyer Cosmetics社を買収
2017年 ジボダンが仏Naturexを買収
2018年 IFFがフルタロムを買収
2019年 IFFによるデュポンからのニュートリション事業の買収
2020年 長谷川香料によるミッションフレーバーズ&フレグランスの買収

世界の主要香料会社

ジボダン(Givaudan)

Givaudan(ジボダン)は、は1768年に創設され、スイスに本拠を置きます。香り(フレグランス)と味(フレーバー)のジャイアントです。1946年に開校したパリのパフューマリースクールでは、フレグランスにかかるパフューマーのおよそ3分の1を育成しています。1963年に製薬メーカーのロシュ傘下に入りましたが、2000年に分社化しスイス証券取引所に上場しました。フレグランス部門はパリ、フレーバー部門は北米に本拠を置きます。売上高は約6,500億円、EBITDAマージンは約20%を超える水準です。世界に46ヶ所の工場、約1万1,000人の従業員を有しています。
売上高の約半分がフレーバー部門となります。フレーバー部門のエンドマーケット(販売先)の構成品では、飲料が約3割、調味料が約4割、菓子が約1割、乳製品が約1.5割程度です。要素となる、シトラス、ビーフ、チキン、コーヒー、デイリー、チーズ、ミント、ティー、ストロベリー、りんご、チェリー、ピーナツ、バニラといった数千種類ものフレーバーの性質を独自に分析し、原料の安定調達を行っていることが強みです。

ジボダン売上構成

ジボダン売上構成
出所:同社AR

売上高の約半分弱がフレグランス部門です。フレグランスの中でも消費財向けが約7割と最も大きくなっています。化学由来の合成香料やパチュリ、ベチバー、イランイラン、トンカ豆、ベンゾイン、ラベンダー、サンダルウッド、バニラ等の天然香料を用いて調香を行っています。

ジボダンのフレグランス事業の売上構成

ジボダンのフレグランス事業の売上構成
出所:同社AR

出所:同社

地域別売上高では、欧州・アフリカ・中東地域が最大です。続いてアジア・オセアニア地域、北米、南米地域と続いています。売上高成長率では北米地域の伸びが大きいのが特徴です。

2002年 ネスレのフレーバー部門FIS社を買収
2003年 発酵技術に優れた米国の企業IBF社を買収
2007年 クエスト・インターナショナル社を買収
2014年 野菜や微生物、微細藻類由来の化粧品有効成分に強みを持つソリアンス社を買収
2015年 生体触媒、メタゲノミクス、生化学的合成に強みを有するインデュケム・ホールディング社の買収し、化粧品有効成分事業へ進出。
2016年 コナグラフーズ社のスパイステック・フレーバーズ&シーズニングス事業の買収。セイボリー分野の強化。
2017年 シーフード成分に強いアクティブ・インターナショナル(Activ International)の買収
2017年 ナチュラルチーズなどの乳製品原料に強いヴィカ(Vika B.V.)の買収
2018年 エクスプレシオン・パフュメ社(Expressions Parfumées)の買収
2018年 フルーツジュースに強いセントロフロラ・ニュートラ(Centroflora Nutra)の買収
2018年 エクスプレッションズ・パフュメ(Expressions Parfumées)の買収
2018年 植物由来の天然成分に強いフランスのナチュレックスを買収
2021年 メイクアップやスキンケア向けの製品を手がける伊b.kolorの25%の株式を買収
ジボダンの買収遍歴

ジボダンの買収遍歴
出所:同社

フィルメニック(Firmenich)

スイスに本拠を置く世界第2位の香料メーカーです。フィルメニック家がオーナーの非上場企業です。過去にはカルバンクライン シーケー ワン/CALVIN KLEIN CK1」やケンゾーの「フラワー・バイ・ケンゾー(FLOWER BY KENZO)」などデザイナーフレグランスの調香を行っていました。2007年にDupon(デュポン)傘下の食品添加物大手のDanisco(ダニスコ)より香料部門を買収しています。

IFF(International Flavors & Fragrances)

米国に本拠を置く大手香料メーカーです。NYSEに上場しています。国際的な大手食品・飲料メーカーとの取引に強みを有します。中小・中堅食品・飲料との取引を強化するために2018年にイスラエルの香料大手のフルタロム(Frutarom)の買収を発表しました。2019年にデュポンのニュートリション事業との経営統合を行いました。

デュポンについて

デュポン(E.I du Pont de Nemours)は、1802年にフランス人のエルテール・イレネー・デュポンによって設立された世界最大級の化学メーカーです。2015年米同業のダウケミカルと経営統合しましたが、特殊産業材事業が分社化され新生デュポンとなりました。ニュートリション&バイオサイエンス事業で食品成分事業を展開しています。2011年にデンマークに本拠を置く食品成分大手であるDanisco(ダニスコ)を買収しています。同事業は2019年に香料大手のIFFとの経営統合し、香料と食品成分を手掛ける総合食品成分会社となりました。水処理膜事業についてはDuPont Water Technology(デュポンウォーターテクノロジー)で展開しています。RO膜に強みがあります。さらに詳しく

シムライズ(Symrise) 

ドイツの化学大手バイエルの香料子会社であるHaamann & Reimer社とDragocoの経営統合で誕生したドイツの大手香料メーカーです。フランクフルト市場に上場しています。食品成分(food ingredients)大手の仏Dianaを買収しました。

バイエルとは

Bayer AG(バイエル)は、1863年にフリードリヒ・バイエル氏によって設立されたドイツに本拠を置く世界的な医薬品・化学品メーカーです。アスピリンの発明で有名です。第二次世界大戦中には、BASF、ヘキストとともにIG・ファルベンを形成した。戦後にバイエルとして独立し、数々の買収や事業の売却を行っています。農薬・種子事業、ファーマスーティカル事業、コンシューマーヘルス事業が3本柱です。2015年にはマテリアルサイエンス部門をコベストロ(Covestro)として分社化・独立させています。農薬・種子事業においては、2016年にモンサントを買収し、農薬ビッグ4を一歩引き離す存在となりました。種子分野でも上位に入っています。なお、香料大手であるシムライズは、2002年に同社の子会社の出会ったHaamann & Reimer社とDragoco社が経営統合をし、誕生した経緯があります。
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ワイルドフレーバーズ(Wild Flavors)

スイスに本拠を置く大手香料会社です。創業オーナーのHans-Peter Wildと米プライベートエクイティファンドのKKRが株式を保有していましたが、米穀物メジャーのArcher Daniels Midland (アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド、ADM)に買収され、現在はADM傘下です。

ADMとは

アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)は、1902年に米国のミネソタ州で設立された穀物商社・穀物メジャーです。設立当初は、リネン(亜麻)の圧搾加工に注力するなど、カーギル等と異なり穀物の加工事業から、現在の穀物メジャーの守備範囲である、穀物の集荷・流通・貯蔵・販売事業へと展開していきました。特に油糧種子加工、食品成分や香料事業に強みをもっています。
1997年にグレンコアのブラジル事業を買収する等して穀物メジャーとなりました。食品業界全体を見回しても、ネスレやコカコーラと売上規模では匹敵するジャイアントです。非公開企業が多い、穀物商社・穀物メジャーの中で、ブンゲ(バンジ)と同様にニューヨーク証券取引所に上場しています。地域でみると売上の約7割は米国、ドイツ、スイス、事業でみると穀物の集荷・貯蔵・販売事業が5割以上です。一方で利益の面では油糧種子加工が、収益源となっています。
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高砂香料

1920年に設立された国内最大手の香料会社です。東証に上場しています。フレーバーとフレグランスが事業の両輪です。

マンフィス(MANE FILS SA)

フランスの大手香料会社です。Mane家が創業オーナーの非上場会社です。

フルタロム(Frutarom)

イスラエルに拠点を置く大手香料会社です。ロンドン証券取引所に上場していましたが、2018年に米国のIFFが買収しました。

センシエント・テクノロジー(Sensient Flavors)

米大手香料メーカーです。NYSEに上場しています。食品向けのフレーバー(風味)も手掛けています。

ロベルトSA (Robertet SA)

仏大手香料メーカーです。

長谷川香料

1903年に設立された国内大手香料メーカーです。乳製品等のフレーバー系に強みを持ちます。2014年にマレーシアの香料加工を行うPeresscol(ペレスコル)社を買収し、ハラル対応が必要なイスラム圏での商圏拡大を狙っています。2020年に米国のMISSION FLAVORS &FRAGRANCES(ミッションフレーバーズ&フレグランス)を買収し、従来の食品香料(調味料・ドレッシング等のセイボリー系フレーバー)に加え、スイート系のフレーバーを補完・強化しています。

Huabao International Holdings(フアバオ・インターナショナル、華宝国際)

1996年に朱林瑶(Chu Lam Yiu)氏によって創業された中国に本拠を置く香料メーカーです。2006年に香港証券取引所に上場しています。タバコ向け香料や伝統的な中国の風味の調合にも強みを有しています。

その他、国内メーカーには小川香料や三井物産・東レ系の曽田香料があります。

参照したデータの詳細情報について


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