香料業界の世界市場シェアの分析

香料メーカーの世界ランキング、市場シェア、業界再編や市場規模について分析しています。ジボダン、IFF、フィルメニック、シムライズ、高砂香料、マンフィス、長谷川香料といった香料会社の動向も掲載しています。IFFによるフルトロムやデュポンニュートリション買収等業界再編が続いています。

市場シェア

香料各社の2021年度の売上高(⇒参照したデータの詳細情報)を分子に、2021年の市場規模として採用した375億ドルを分母にして、簡易的に香料業界の2021年の市場シェアを算出すると、1位はスイスのジボダンの23.1%、2位は米国のIFFの17%、3位はスイスのフィルメニックの14.3%となります。

香料業界の世界シェア(2021年)

順位会社名市場シェア
1位IFF22.69%
2位ジボダン19.42%
3位フィルメニック12.50%
4位Symrise11.51%
5位ADM8.53%
6位マン4.52%
7位高砂香料3.77%
8位センシエント・テクノロジー3.68%
9位ロベルト1.81%
10位Huabao1.45%
11位長谷川香料1.29%
香料業界の世界シェア(2021年)

香料メーカーの市場シェア(2021年)
香料メーカーの市場シェア(2021年)

2021年のIFFが世界1位となりました。同社は、2018年のフルタロムの買収に続き、2019年にデュポンから食品成分・原料の製造を手掛けるニュートリション事業を262億ドルで買収し、香料業界の最大手となりました。
2位は、長年1位に君臨したジボダンです。2020年はバイオ成分のAlderys、化粧品成分のIndenaという香料隣接領域を買収し、更なる規模拡大を図っています。2019年はアクティブ コスメティックス事業を手掛けるAMSilk社、フランスの自然成分に強みを持つAlbert Vieille社、ベトナムの香料大手であるGolden Frog社を買収しています
3位のフィルメニックも、フランスの植物ベースの化学原料メーカーであるLes Dérivés Résiniqueset Terpéniquesを買収しIFFとジボダンを追いかけています。4位はドイツのシムライズ、5位はADM(ワイルドフレーバーズ)、6位はマンとなっており、中国Huabaoが順位をあげている以外には、2019年と比べて大きな変動はありません。

香料メーカーの収益力・成長性・株主還元比較

ジボダン、IFF、高砂香料と長谷川香料の配当性向、ROE、EBITDA成長率を比較すると以下の通りとなります。

香料トップ2社と日系香料の指標比較(2021年度決算ベース)
香料トップ2社と日系香料の指標比較(2021年度決算ベース)
“*配当性向は直前期の配当額と当期利益から計算しています。
**ROEは直前期の当期利益と期初と期末の自己資本額の平均値から計算をしています。
***EBITDA成長率は直前期を基準に過去5年間の年平均成長率(CAGR)を計算しています。”

香料とは?

香料は、主に食品香料(フレーバー)と香粧品香料(フレグランス)に分かれます。前者は飲料、冷菓、菓子、即席麺等の加工食品に、後者は化粧品やトイレタリー等に使われます。フレーバーとフレグランスの世界市場規模はほぼ同程度と言われています。各社ともに育成に時間のかかる熟練した香りを調合するフレーバーリスト(フレーバー)やパフューマー(フレグランス)を抱え、香料生産への設備投資が必要であるため、新規参入の障壁が高い業界です。香料の原料は、ラベンダーやシナモン等の天然由来成分と化学合成成分の2種類があり、日本の香料会社は香料の原料をほぼ輸入に頼っている状況です。

業界のバリューチェーン

香料業界のバリューチェーンは、香料原料のサプライヤー(天然由来、化学由来の原材料供給会社)、香料会社(フレグランスとフレーバーの調合会社)、消費財メーカー(日用品メーカー、食品・飲料メーカー)、小売(スーパー、オンラインショップ等)という構図になっています。下図では、同業界のバリューチェーンをまとめています。

出所:イベルケム会社資料

市場規模

本サイトでは、以下の情報を参考にし、2021年の香料業界の市場シェア算出の市場規模として375億ドルを採用しています。

調査会社スタティスタによると、同業界の2021年の市場規模は375億ドルです。
IFFの2021年プレゼンテーション資料によると、同業界の2020年の市場規模は300億ドル、年平均成長率は2-5%を見込んでいます。
調査会社のフォーチュンビジネスインサイツによると、世界の同業界(主に飲料、菓子、製パン、乳製品等の食品、洗剤等の日用品、パーソナルケア製品、化粧品向けの香料成分)の2018年の推定市場規模は265億ドルです。
調査会社のグランドビューリサーチによれば2018年の同市場の規模は207.5億ドルとなっています。
また調査会社マーケットデータフォーキャストによると、2020年の同市場規模は200億ドルです。2025年にかけて年平均2.65%での成長を見込みます。⇒参照したデータの詳細情報

市場規模(億ドル)前年成長率
2021年375億ドル25%
2020年300億ドル13.2%
2019年265億ドル12.7%
2018年235億ドル
香料業界の推定市場規模と成長率の推移©ディールラボ

業界の再編

香料業界の大手プレーヤーであるジボダン、IFF、フィルメニック、シムライズによる規模拡大が続いています。食品成分機能の強化の一環として、穀物メジャーのADMも近年香料分野へ参入しました。また、2019年にはIFFがデュポンのニュートリション事業を買収し、香料と食品成分の両分野で成長を目指しています。

1958年 ジュースメーカーのオランダPolak & Schwarz社と香料メーカーのAmeringen-Haebler社の経営統合でIFFが誕生
2000年 IFFがBush Boake Allenを買収
2000年 ジボダンがロシュから分社化
2002年 ジボダンがネスレの香料部門であるFood Ingredients Specialitiesを買収
2002年 ドイツの化学大手バイエルの香料子会社であるHaamann & Reimer社とDragocoの経営統合でシムライズが誕生
2006年 ジボダンが英国の化学大手ICIよりオランダの香料メーカーのクエスト・インターナショナルを買収
2007年 フィルメニッヒが食品成分大手のオランダDaniscoから香料事業を買収
2014年 シムライズがフランスの香料成分会社であるDianaを買収
2014年 IFFがイスラエルの香料会社であるAromor Flavors & Fragrancesを買収
2014年 ADMがワイルド・フレーバーズを買収
2015年 シムライズが米国のアロマ成分メーカーPinova社とRenessenz社を買収
2015年 フルタロムがドイツの香料メーカーのWibergとオーストリアの食品香料のSAGEMAを買収
2015年 IFFが米国の香料会社であるHenry H. Ottens社を買収
2015年 IFFがカナダの化粧品向け成分会社であるLucas Meyer Cosmetics社を買収
2017年 ジボダンが仏Naturexを買収
2018年 IFFがフルタロムを買収
2019年 IFFによるデュポンからのニュートリション事業の買収
2020年 長谷川香料によるミッションフレーバーズ&フレグランスの買収

世界の主要香料会社

ジボダン(Givaudan)

Givaudan(ジボダン)は、1768年に創設され、スイスに本拠を置きます。香り(フレグランス)と味(フレーバー)のジャイアントです。1946年に開校したパリのパフューマリースクールでは、フレグランスにかかるパフューマーのおよそ3分の1を育成しています。1963年に製薬メーカーのロシュ傘下に入りましたが、2000年に分社化しスイス証券取引所に上場しました。フレグランス部門はパリ、フレーバー部門は北米に本拠を置きます。さらに詳しく

フィルメニック(Firmenich)

スイスに本拠を置く世界第2位の香料メーカーです。フィルメニック家がオーナーの非上場企業です。過去にはカルバンクライン シーケー ワン/CALVIN KLEIN CK1」やケンゾーの「フラワー・バイ・ケンゾー(FLOWER BY KENZO)」などデザイナーフレグランスの調香を行っていました。2007年にDupon(デュポン)傘下の食品添加物大手のDanisco(ダニスコ)より香料部門を買収しています。

IFF(International Flavors & Fragrances)

1833年に創業された米国に本拠を置く大手香料メーカーです。NYSEに上場しています。国際的な大手食品・飲料メーカーとの取引に強みを有します。中小・中堅食品・飲料との取引を強化するために2018年にイスラエルの香料大手フルタロム(Frutarom)買収を発表しました。2021年にデュポンのニュートリション・バイオサイエンス事業との経営統合を行いました。さらに詳しく

デュポンについて

デュポン・ドゥ・ヌムール(E.I du Pont de Nemours)は、1802年にフランス人のエルテール・イレネー・デュポンによって設立された世界最大級の化学メーカーです。2015年米同業のダウケミカルと経営統合しましたが、特殊産業材事業が分社化され新生デュポンとなりました。2011年にデンマークに本拠を置く食品成分大手であるDanisco(ダニスコ)を買収し、ニュートリション&バイオサイエンス事業で食品成分事業を強化していましたが、同事業は2019年に香料大手のIFFとの経営統合し、香料と食品成分を手掛ける総合食品成分会社となりました。水処理膜事業についてはDuPont Water Technology(デュポンウォーターテクノロジー)で展開しています。RO膜に強みがあります。さらに詳しく

シムライズ(Symrise) 

ドイツの化学大手バイエルの香料子会社であるHaamann & Reimer社とDragocoの経営統合で誕生したドイツの大手香料メーカーです。フランクフルト市場に上場しています。食品成分(food ingredients)大手の仏Dianaを買収しました。

バイエルとは

Bayer AG(バイエル)は、1863年にフリードリヒ・バイエル氏によって設立されたドイツに本拠を置く世界的な医薬品・化学品メーカーです。アスピリンの発明で有名です。第二次世界大戦中には、BASF、ヘキストとともにIG・ファルベンを形成しました。戦後にバイエルとして独立し、数々の買収や事業の売却を行っています。農薬・種子事業、ファーマスーティカル事業、コンシューマーヘルス事業が3本柱です。2015年にはマテリアルサイエンス部門をコベストロ(Covestro)として分社化・独立させています。農薬・種子事業においては、2016年にモンサントを買収し、農薬ビッグ4を一歩引き離す存在となりました。種子分野でも上位に入っています。なお、香料大手であるシムライズは、2002年に同社の子会社の出会ったHaamann & Reimer社とDragoco社が経営統合をし、誕生した経緯があります。
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ワイルドフレーバーズ(Wild Flavors)

スイスに本拠を置く大手香料会社です。創業オーナーのHans-Peter Wildと米プライベートエクイティファンドのKKRが株式を保有していましたが、米穀物メジャーのArcher Daniels Midland (アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド、ADM)に買収され、現在はADM傘下です。

ADMとは

アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)は、1902年に米国のミネソタ州で設立された穀物商社・穀物メジャーです。設立当初は、リネン(亜麻)の圧搾加工に注力するなど、カーギル等と異なり穀物の加工事業から、現在の穀物メジャーの守備範囲である、穀物の集荷・流通・貯蔵・販売事業へと展開していきました。特に、大豆やトウモロコシ、油糧種子加工、食品成分や香料事業に強みを持ちます。続きを読む

高砂香料

1920年に設立された国内最大手の香料会社です。東証に上場しています。フレーバーとフレグランスが事業の両輪です。

マンフィス(MANE FILS SA)

フランスの大手香料会社です。Mane家が創業オーナーの非上場会社です。

フルタロム(Frutarom)

イスラエルに拠点を置く大手香料会社です。ロンドン証券取引所に上場していましたが、2018年に米国のIFFが買収しました。

センシエント・テクノロジー(Sensient Flavors)

米大手香料メーカーです。NYSEに上場しています。食品向けのフレーバー(風味)も手掛けています。

ロベルトSA (Robertet SA)

仏大手香料メーカーです。

長谷川香料

長谷川香料は1961年に設立された国内大手香料メーカーです。乳製品等のフレーバー系に強みを持ちます。2014年にマレーシアの香料加工を行うPeresscol(ペレスコル)社を買収し、ハラル対応が必要なイスラム圏での商圏拡大を狙っています。2020年に米国のMISSION FLAVORS &FRAGRANCES(ミッションフレーバーズ&フレグランス)を買収し、従来の食品香料(調味料・ドレッシング等のセイボリー系フレーバー)に加え、スイート系のフレーバーを補完・強化しています。さらに詳しく

Huabao International Holdings(フアバオ・インターナショナル、華宝国際)

1996年に朱林瑶(Chu Lam Yiu)氏によって創業された中国に本拠を置く香料メーカーです。2006年に香港証券取引所に上場しています。タバコ向け香料や伝統的な中国の風味の調合にも強みを有しています。

その他、国内メーカーには小川香料や三井物産・東レ系の曽田香料があります。

参照したデータの詳細情報について


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