鉄鋼業界

鉄鋼業界の売上高世界ランキング、世界市場シェア、市場規模、再編、粗鋼生産量について分析をしています。日本製鉄、アルセロールミタル、宝武鋼鉄集団、ポスコ、JFEスチール、タタスチール等世界大手の鉄鋼メーカー動向も掲載しています。

2019年粗鋼生産量ベースの世界市場シェア

世界鉄鋼連盟が公表した各社の粗鋼生産量を分子に、2019年の世界の粗鋼生産量である1869百万トンを分母に、世界市場シェアを計算すると以下のようになります。世界1位はアルセロールミタル、2位は僅差で宝武鋼鉄、3位は日本製鉄です。日本製鉄+JFEの組み合わせでも、もはやトップ2位には追い付かなくなりました。

1位 アルセロールミタル 5.2%
2位 宝武鋼鉄 5.1%
3位 日本製鉄 2.8%
4位 河北鋼鉄 2.5%
5位 ポスコ 2.3%
6位 江蘇沙鋼 2.2%
7位 鞍山鋼鉄 2.1%
8位 建竜鋼鉄 1.7%
9位 タタ製鉄 1.6%
10位 首鋼集団 1.6%
11位 山東鋼鉄集団 1.5%
12位 JFE 1.5%
13位 湖南華菱鋼鉄 1.3%
14位 ニューコア 1.2%
15位 現代製鉄 1.2%

となっています。アルセロールミタルが引き続き世界1位ですが、2018年の2位の宝武と10位の首鋼が資本提携を発表し、宝武鋼鉄がアルセロールミタルに肉薄する世界2位となりました。

(参照)
2018年製鉄メーカーの世界シェアランキング
1位 アルセロールミタル 5.3%
2位 宝武鋼鉄 3.7%
3位 日本製鉄 2.7%
4位 河北鋼鉄 2.6%
5位 ポスコ  2.4%
6位 江蘇沙鋼 2.2% 
7位 鞍山鋼鉄 2.1%
8位 JFE 1.6%
9位 建竜鋼鉄 1.5%
10位 首鋼  1.5%
11位 タタ製鉄 1.5%
12位 ニューコア 1.4%

2019年売上高ベースの世界市場シェア

売上高の世界1位はアルセロールミタルです。2位には中国政府による鉄鋼業界の再編の流れのなかで2016年に経営統合を発表した中国の鉄鋼メーカーの巨人宝武鋼鉄(バオウースチール、Baowu)です。鉄鋼製品の余剰在庫の問題はありますが、売上及び粗鋼生産量ともに、宝武鋼鉄が日本製鉄やポスコをかわし堂々の2位です。中国では2020年も景気刺激の一環でインフラ投資が盛んに行われており、そうした旺盛な国内需要を取り込むことができる、中国の鉄鋼メーカーに追い風が吹いています。一方で、そうした需要を取り込むことができない、日米欧のメーカーは苦戦を強いられています。
3位には、日本の誇る製鉄メーカーの日本製鉄がそこ力を見せランクインしています。ハイテンやホットスタンプといった高性能・高機能の鉄鋼製品へのシフトを急ぎますが、一方で自動車や航空材料における新素材(炭素繊維やアルミニウム)採用の流れによる鉄鋼製品への需要減という潜在的問題にも対処する必要があります。コロナ禍の影響で需要が減少する自動車向け鋼板に対応する形で東日本製鉄所鹿島地区や関西製鉄所和歌山地区、東日本製鉄所君津地区でそれぞれ高炉1基を一時休止しています。
4位には、韓国のポスコ、5位、6位には中国の江蘇沙鋼、鞍山鋼鉄、7位は日本のJFEとなっております。

1位 ArcelorMittal/アルセロールミタル 8.75%
2位 China Baowu Group/宝武鋼鉄 7.61%
3位 Nippon Steel Corporation/日本製鉄 6.75%
4位 POSCO/ポスコ 6.62%
5位 Shagang Group/江蘇沙鋼 4.37%
6位 Ansteel Group /鞍山鋼鉄 3.74%
7位 JFE Steel Corporation/JFE 3.06%
8位 Nucor Corporation/ニューコア 2.80%
9位 Jianlong Group/建竜鋼鉄 2.64%
10位 Tata Steel Group/タタ製鉄 2.54%
11位 HBIS Group/河北鋼鉄 2.17%
12位 HYUNDAI Steel Company/現代製鉄 2.11%
13位 Valin Group/湖南華菱鋼鉄 1.85%
14位 Shandong Steel Group/山東鋼鉄集団 1.23%
15位 Shougang Group/首鋼集団 1.20%

市場規模

Grand View Researchによれば鉄鋼業界の2016年の世界市場規模は8070億ドルです。
The global steel market size was valued at USD 807 billion in 2016 and is projected to grow at a CAGR of 2.6% from 2017 to 2025. 世界鉄鋼連盟(World Steel Association、WSA)によれば、2019年の粗鋼生産量は19億トン、国別でみると中国が最大の粗鋼生産国となっています。

2017年の粗鋼生産量は、1691百万トンです。
2018年の粗鋼生産量は1884百万トンです。
2019年の粗鋼生産量は1869百万万トンです。

鉄鋼業界の概略

鉄鋼業とは、原料の鉄鉱石から最終製品の鋼材をつくる産業のことをさします。鉄鉱石から最終の鋼材を作るには様々な加工プロセスを経ることになり、作り方には、大きく高炉(こうろ)と言われる銑鋼一貫製鉄所での作り方と電炉(でんろ)と言われる鉄スクラップを加工する作り方があります。
また鋼材にも様々な用途や種類があります。大きく分けると、高級鋼と言われる自動車、船、飛行機に求められる強い強度を持つ(高張力といいます)高級鋼と建設用等に使われる棒鋼、形鋼、線材等の普通鋼があげられます。

鉄鋼業界の再編

鉄鋼業界の再編の歴史年表にはミタルスチール等の再編が時系列でまとまっています。鉄鋼産業の勃興とともに隆盛を誇った欧米鉄鋼メーカーが、規模拡大によるスケールメリットを追求するアジアなどの新興鉄鋼メーカーの傘下に入った歴史が分かります。
一方、鉄鋼メーカーの再編は鉄鉱石生産会社の再編の影響も大きいと思われます。鉄鉱石の生産は、資源メジャーと言われるRio Tint(リオ・ティント)、Vale(ヴァーレ)、BHPビリトン、FMGの4社でほぼ50%超を占められています。

2001年 Arbed、Usinor、Aceraliaが経営統合してArcelor設立
2002年 日本鋼管と川崎製鉄が経営統合をしてJFE設立
2004年 LNMとIspat internationalが経営統合をしてMittal Steelが誕生
2006年 ArcelorとMittal Steelが経営統合をしてArcelorMittalが誕生
2007年 BaosteelがXinjiang Byiを買収
2007年 TataがCorus Groupを買収してTata Steelが誕生
2008年 TangshanとHandanが経営統合をしてHebei Groupが誕生
2008年 Laiwu GroupとJigang Groupが経営統合をしてShandong Groupが誕生
2009年 BaosteelがNingbo Steelを買収
2012年 新日鉄と住友金属が経営統合をして新日鉄住金が誕生
2016年 宝山集団と武漢鋼鉄が経営統合し宝武鋼鉄が誕生
2019年 日本製鉄とアルセロールミタルがインド鉄鋼大手、エッサール・スチールを6400億円で共同買収
2020年 英鉄鋼大手リバティ・スチール・グループがティッセンクルップの鉄鋼事業買収を提案
2020年 アルセロールミタルが北米の製鉄事業(鋼板出荷量は1120万トン。日本製鉄との自動車向け鋼板事業を除く)を33億ドルでクリーブランド・クリスフへ売却

世界の大手製鉄メーカー

アルセロールミタル

2006年に高級鋼に強い仏Arcelorと汎用鋼に強いインド発祥のMittal Steelが合併して誕生しました。群雄割拠が続く鉄鋼業界で群を抜く規模となっております。欧州老舗鉄鋼メーカーとアジアの新興鉄鋼メーカーが経営統合したという点も重要です。2016年にイタリア大手鉄鋼メーカーのイブラに買収提案しましたが撤退しました。2019年に日本製鉄とインドのエッサール・スチールを共同買収しています。旧ミタルの主力事業であった北米の製鉄事業は2020年にクーリブランド・クリフスへの売却をしました。売却対象資産には、高炉6拠点、鉄鋼製品加工8拠点、鉄鉱ペレット生産2拠点、コークス加工3拠点が含まれます。

首位を猛追する日本の鉄鋼メーカー

日本の鉄鋼メーカーは自動車向けの高超張力鋼板(ハイテン)といった高機能鋼の技術を高めつつ、規模拡大も目指すという質・量の両面作戦をとっています。

日本製鉄

2012年に国内業界首位の新日鐵と国内業界3位の住友金属が合併し誕生。中国勢の猛追を受ける中、粗鋼生産量の規模拡大で対抗。2017年には合金メッキやステンレス鋼に強い日新製鋼の経営権を取得。最先端素材、超ハイテンや電機自動車のモーター(EVモーター)で用いられる電磁鋼板にも積極的に投資。新日鐵住金から日本製鉄へと社名変更。需要減少に伴い、国内15高炉体制から6高炉を一次休止し、9高炉体制をとっておいります。

JFEホールディングス(JFE Holdings)

日本鋼管と川崎製鉄の合併により誕生しました。国内粗鋼生産量では日本製鉄に次ぐ業界2位ですが、国内の需要減に対応し京浜地区の高炉の休止を決定しております。

POSCO(ポスコ、韓国)

新日鐵の前身の製鉄会社より技術供与を受けるなど結びつきが強いです。韓国最大手で、グローバルでも粗鋼生産量は上位に位置しています。方向性電磁鋼板に関する新日鉄住金との訴訟ではポスコ側が賠償金を支払うことで2015年に和解しています。

U.S. Steel(ユーエス・スチール、米国)

米最大手の鉄鋼メーカーです。かつて世界の粗鋼生産量で首位でしたが、最近は電炉メーカーであるニューコアの後塵を拝しております。

Cleveland-Cliffs(クリーブランド・クリスフ)
1847年に設立された鉄鉱石ペレット生産会社です。2020年に買収した子会社のAKスチールを通じて、製鉄事業も本格化させ、自動車向けの平鋼、圧延鋼板、電磁鋼板、ステンレスを製造・販売しています。2020年から高品質のホットブリケットアイアン(還元鉄を成型して押し固めた鉄)の生産も開始しました。

同社の直近の鉄鋼生産量は以下の通りです。
2018年 5.6百万トン
2019年 5.3百万トン

ThyssenKrupp(ティッセンクルップ、独)

ドイツ最大手の鉄鋼メーカーです。1999年に独重工業メーカーのThyssen(ティッセン)とKrupp(クルップ)の合併により誕生しました。2017年にブラジルの高炉事業アトランティコ製鉄(CSA)を南米大手のテルニウムに売却するなど、高炉事業の縮小を図っています。2018年にタタスチールと経営統合し、ティッセンクルップ・タタスチールが誕生する予定でしたが、当局の承認がおりませんでした。稼ぎ頭のエレベーター事業を売却して、鉄鋼事業の立て直しを図っています。2020年に英鉄鋼大手リバティ・スチール・グループから買収の提案を受けています。

世界の粗鋼生産量では上位との差は大きいですが、欧州における平鋼生産量では、下図の通り1位アルセロールミタル、2位ティッセンクルップ・タタ、3位イタリアのイルバ、4位オーストリアのフェストアルピーネ、5位はドイツのザルツギッター、6位はSSAB(スェーデンスチール)と上位に入っています。

出所:ティッセンクルップ

2020年にイギリスのリバティ・スチール・グループがティッセンクルップの欧州事業の買収を提案しました。

Liberty Steel Group(リバティ・スチール・グループ)
英国に本拠を置く製鉄メーカーです。サンジーブ・グプタ氏率いるコングロマリットであるGFGアライアンス傘下の企業となります。

Tata Steel(タタスチール、印)

タタは、1868年にジャムシェトジー・タタ氏がムンバイで設立した木綿貿易会社が発祥です。インド三大財閥の一角です。規模ではインド最大級で、自動車、IT、鉄鋼、化学、電力等の分野を手掛けるコングロマリットです。

事業構成は大きくIT、鉄鋼、自動車・トラック、化学、飲料に分かれています。

IT:

タタ・コンサルタンシー・サービシズが中核企業です。ITサービス分野、特にBPO・アウトソーシング業界の世界シェアではトップクラスに位置します。

鉄鋼:

タタ製鉄が主軸です。2007年に印Tata SteelによるCorus(コーラス、GBR/NLD)買収により誕生しました。2018年にティッセンクルップと経営統合しましたが、当局の承認がおりず、高止まりしている固定費用の削減が課題となっています。

自動車:

タタ自動車が主軸です。英国のジャガーとランドローバーを買収し、高級ブランドセグメントでの事業拡大を狙っています。商用車はインド国内に圧倒的に強く、海外は韓国の大宇のトラック部門を買収後、タタ大宇商用車(Tata Daewoo Commercial Vehicle)として展開しています。

化学:

タタ化学が主軸です。ソーダ灰業界では世界大手クラスです。

飲料:

タタ・グローバル・ビバレッジが主軸です。紅茶及びコーヒーに強みを持ちます。紅茶はTata Tea、テトリー(Tetley)ブランドを展開しています。2019年の紅茶事業の売上高は520億インドルピーで、1ルピー=0.013ドルの為替レートで米ドル換算売上高は7億ドルです。

その他、タタ電力が電力事業、タタ・コミュニケーションズがデータセンター・通信事業、タージホテルズでホテル事業、ボルタスがエアコン販売を展開しています。

中国の製鉄メーカー

中国勢は生産設備の刷新、製鉄所の規模拡大に向けた統廃合を行っています。用途は建材などの汎用品が多いとされています。

Baosteel Group(宝鋼集団、中国)

新日本製鐵や川崎製鉄の技術支援にて誕生した上海に本拠を置く中国の鉄鋼メーカーです。2016年に中国の武漢鋼鉄との経営統合を発表し、宝武鉄鋼(バオウースチール、Baowu)が誕生しました。2019年に宝武鉄鋼と馬鋼集団とが経営統合しました。さらに宝武鉄鋼が首鋼集団の15%の株式を取得しており、再編の要となっています。

Wuhan Iron and Steel Group(武漢鋼鉄集団、中国)


湖北省武漢に本拠を置く政府系鉄鋼メーカーでした。2016年に宝鋼集団との経営統合を発表し、宝武鉄鋼(バオウースチール、Baowu)が誕生しました。

Jiangsu Shagang Group(江蘇沙鋼集団、シャーガン・スチール、中国)

江蘇省に本拠を置く中国の民間鉄鋼メーカーです。

Hebei Iron & Steel Group(河北鋼鉄集団、フーベイ・アイアン・スチール、中国)

中国政府による鉄鋼メーカーの再編で誕生した中国最大手クラスの政府系鉄鋼メーカーです。

Shougang Group(首鋼集団、ショウガンスチール、中国)

中国の北京に本拠を置く鉄鋼メーカーです。宝武集団と資本提携しています。

Anshan Iron & Steel Group(鞍山鋼鉄集団、アンスチール、CHN)

政府系の大手鉄鋼会社です。

業界関連参考書

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