鉄鋼・製鉄業界の売上高世界ランキング、世界市場シェア、市場規模、再編、粗鋼生産量について分析しています。宝武鋼鉄、アルセロールミタル、鞍山鋼鉄、日本製鉄等世界大手の鉄鋼メーカー動向も掲載しています。
【鉄鋼・製鉄業界とは】
鉄鋼業界の概略
鉄鋼業とは、原料の鉄鉱石から最終製品の鋼材をつくる産業のことをさします。鉄鉱石から最終の鋼材を作るには様々な加工プロセスを経ることになり、作り方には、大きく高炉(こうろ)と言われる銑鋼一貫製鉄所での作り方と電炉(でんろ)と言われる鉄スクラップを加工する作り方があります。
また鋼材にも様々な用途や種類があります。大きく分けると、高級鋼と言われる自動車、船、飛行機に求められる強い強度を持つ(高張力といいます)高級鋼と建設用等に使われる棒鋼、形鋼、線材等の普通鋼があげられます。
高炉のバリューチェーン

出所:スチールダイナミクス
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【鉄鋼・製鉄業界の世界市場シェア+ランキング】
世界鉄鋼連盟が公表した各社の粗鋼生産量を分子に、2025年の世界の粗鋼生産量を分母に、世界市場シェアを計算すると、1位は宝武鋼鉄、2位はアルセロールミタル、3位は鞍山鋼鉄となります。
| 順位 | Company name (English) |
企業名 (日本語) |
粗鋼生産量 (百万トン) |
市場シェア |
| 1位 | China Baowu Steel Group Corp., Ltd. | 中国宝武鋼鉄集団 | 124.76 | 6.74% |
| 2位 | ArcelorMittal | アルセロール・ミッタル | 63.43 | 3.43% |
| 3位 | Nippon Steel Corporation | 日本製鉄 | 57.78 | 3.12% |
| 4位 | Anshan Iron & Steel Group | 鞍山鋼鉄集団 | 57.61 | 3.11% |
| 5位 | Hebei Iron & Steel Group | 河北鋼鉄集団 | 42.49 | 2.30% |
| 6位 | Jiangsu Shagang Group | 江蘇沙鋼集団 | 39.10 | 2.11% |
| 7位 | Beijing Jianlong Heavy Industry Group Co., Ltd. | 建竜鋼鉄 | 38.02 | 2.05% |
| 8位 | POSCO Co., Ltd. | ポスコ | 37.36 | 2.02% |
| 9位 | Delong Steel | デロンスチール(徳龍鋼鉄) | 32.03 | 1.73% |
| 10位 | Tata Steel Group | タタ・スチール | 30.46 | 1.65% |
| 11位 | Jsw Steel Limited | JSWスチール | 30.28 | 1.64% |
| 12位 | Shougang Group | 首鋼集団 | 30.23 | 1.63% |
| 13位 | Jingye Group | 敬業集団(ジンイェ・グループ) | 23.91 | 1.29% |
| 14位 | JFE Steel Corporation | JFEスチール | 22.69 | 1.23% |
| 15位 | Hunan Steel Group | 湖南鉄鋼集団 | 22.60 | 1.22% |
| 16位 | Nucor Corporation | ニューコア | 22.33 | 1.21% |
| 17位 | Liuzhou Steel* | 柳州鋼鉄* | 21.00 | 1.13% |
| 18位 | SAIL | インド鉄鋼公社 | 19.44 | 1.05% |
| 19位 | Shandong Iron and Steel Group | 山東鋼鉄集団 | 18.26 | 0.99% |
| 20位 | Hyundai Steel Co., Ltd. | 現代製鉄 | 17.95 | 0.97% |
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2025年も中国勢の圧倒的な優位は変わらず、世界粗鋼生産量の上位10社中6社を中国企業が占めました。
首位の宝武鋼鉄(China Baowu Group)は、中国国内の需給調整や不動産市場の停滞により生産量は微減傾向にあるものの、高水準の生産規模を背景に6年連続で1位の座を堅持しています。鞍山鋼鉄(Ansteel Group)をはじめとする業界内の再編・統合を進めており、引き続き圧倒的な世界シェアを誇ります。
2位のアルセロールミタル(ArcelorMittal)は、欧州・米州・中東・アフリカをまたぐ広域展開を維持しているものの、中国市場の規模拡大や地政学リスクの影響を受け、首位宝武鋼鉄との生産規模の差は依然として開いたままとなっています。
大きな変化が見られたのが3位です。日本製鉄(Nippon Steel Corporation)は、米USスチールの買収完了と連結化および海外拠点の統合効果により、前年の4位から3位へと浮上しました。国内での高炉集約・構造改革を進めつつ、成長市場である北米やインドでのM&A・事業拡大を通じたグローバル展開が実を結ぶ形となっています。
【鉄鋼・製鉄業界の世界市場規模】
世界鉄鋼連盟によれば、2025年の粗鋼生産量は1850百万トン、2024年は1885百万トン、2023年は1892百万トンです。国別でみると中国が最大の粗鋼生産国となっています。 ⇒参照したデータの詳細情報
| 年 | 粗鋼生産量(百万トン) | 前年比成長率 |
| 2016 | 1631 | 0.55% |
| 2017 | 1691 | 3.68% |
| 2018 | 1884 | 11.41% |
| 2019 | 1869 | -0.80% |
| 2020 | 1864 | -0.27% |
| 2021 | 1962 | 5.26% |
| 2022 | 1889 | -3.72% |
| 2023 | 1904 | 0.79% |
| 2024 | 1886 | -0.95% |
| 2025 | 1850 | -1.91% |

【M&Aの動向】
鉄鋼・製鉄業界の再編の歴史は、ミタルスチール(現アルセロールミタル)に代表される大規模なメガマージャーの変遷と深く連動しています。鉄鋼産業の勃興とともに隆盛を誇った欧米の伝統メーカーが、規模拡大によるスケールメリットを追求するアジアや新興国の鉄鋼メーカーの傘下に入り、勢力図が大きく塗り替えられてきた歴史が分かります。
一方で、近年の業界再編は原料である鉄鉱石生産会社の寡占化の影響も極めて大です。鉄鉱石の海上貿易市場は、資源メジャーと呼ばれるRio Tinto(リオ・ティント)、Vale(ヴァーレ)、BHP、FMGの4社でその供給の約7割超が占められています。
こうした売り手(資源メジャー)側の強大な価格支配力に対抗し、購買交渉力(バイイングパワー)を高める目的も、鉄鋼メーカー側がグループ統合やM&Aを通じて超大型化を推し進める強力なインセンティブとなっています。さらに足元では、脱炭素化に向けた高品位鉄鉱石の確保を巡り、資源メジャーとのアライアンスや出資を含めた新たな再編の波が広がっています。
鉄鋼・製鉄業界の再編一覧
2001年 Arbed、Usinor、Aceraliaが経営統合してArcelor設立
2002年 日本鋼管と川崎製鉄が経営統合をしてJFE設立
2004年 LNMとIspat internationalが経営統合をしてMittal Steelが誕生
2006年 ArcelorとMittal Steelが経営統合をしてアルセロールミタルが誕生
2007年 BaosteelがXinjiang Byiを買収
2007年 TataがCorus Groupを買収してTata Steelが誕生
2008年 TangshanとHandanが経営統合をしてHebei Groupが誕生
2008年 Laiwu GroupとJigang Groupが経営統合をしてShandong Groupが誕生
2009年 BaosteelがNingbo Steelを買収
2012年 新日鉄と住友金属が経営統合をして新日鉄住金が誕生
2016年 宝山集団と武漢鋼鉄が経営統合し宝武鋼鉄が誕生
2019年 日本製鉄とアルセロールミタルがインド鉄鋼大手、エッサール・スチールを6400億円で共同買収
2020年 英鉄鋼大手リバティ・スチール・グループがティッセンクルップの鉄鋼事業買収を提案
2020年 アルセロールミタルが北米の製鉄事業(鋼板出荷量は1120万トン。日本製鉄との自動車向け鋼板事業を除く)を33億ドルでクリーブランド・クリスフへ売却
2021年 ベトナムの高炉メーカーであるホアファット(Hoa Phat)が豪州のローパーバレー(Roper Valley)鉱山を買収
2021年 宝武鋼鉄集団と山東鋼鉄集団が経営統合の交渉を開始
2021年 鞍山鋼鉄が本鋼集団の買収を発表
2023年 宝武鋼鉄が山東鋼鉄集団の買収に合意
2024年 日本製鉄がUSスチールを買収
2025年 日本製鉄はUSスチールを完全子会社化
2025年 アルセロールミタルが 日本製鉄との合弁会社 AM/NS Calvert を完全子会社化
2025年 アルセロールミタルlはフランスの Vallourec 株式 28.4% を取得。
2025年 アルセロールミタルはブラジルの大手パイプメーカー Tuper の株式 60% を取得
【会社の概要】
中国系企業
China Baowu Steel Group Corp., Ltd.(中国宝武鋼鉄集団)
上海に本拠を置く政府系鉄鋼メーカー。2016年に宝鋼集団と武漢鋼鉄が経営統合して誕生した。さらに2019年に馬鋼集団と経営統合し、太原鋼鉄の買収や、鞍鋼集団・本鋼集団・山東鋼鉄集団・昆明鋼鉄集団を統合する方針を打ち出すなど、業界再編の要となっている。
Anshan Iron & Steel Group(鞍山鋼鉄集団)
遼寧省鞍山市に本拠を置く政府系の大手鉄鋼会社。2021年に本鋼集団(Benxi Steel Group)への出資を発表している。
Hebei Iron & Steel Group(河北鋼鉄集団、HBIS)
1943年に設立された河鋼集団唐鋼公司を中核とする政府系鉄鋼メーカー。政府主導の再編によって中国最大手クラスの政府系鉄鋼メーカーとなった。
Jiangsu Shagang Group(江蘇沙鋼集団)
江蘇省に本拠を置く中国の民間鉄鋼メーカー。
Beijing Jianlong Heavy Industry Group Co., Ltd.(建竜鋼鉄)
北京建龍重工集団傘下の鉄鋼メーカー。北京建龍重工集団は資源、鉄鋼、造船、電気機械などの事業を展開する民間コングロマリット企業。
Delong Steel(德龍鋼鉄、デロングスチール)
中国の河北省に本拠を置く製鉄メーカー。
Shougang Group(首鋼集団)
中国の北京に本拠を置く鉄鋼メーカー。宝武集団と資本提携している。
Jingye Group(敬業集団、ジンイェ・グループ)
中国の鉄鋼・プレハブ建築・ホテル等を展開する民間企業グループ。
Hunan Steel Group(湖南鋼鉄集団、湖南華菱鋼鉄集団)
湖南省に本拠を置く国有の製鉄企業で、華菱集団の略称で知られている。
Liuzhou Steel(柳州鋼鉄)
中国の広西チワン族自治区柳州市に本拠を置く鉄鋼メーカー。
Shandong Iron and Steel Group(山東鋼鉄集団)
山東省に本拠を置く政府系の製鉄メーカー。2008年に済鋼集団と莱蕪鋼鉄集団が経営統合して誕生した。2023年に宝鋼集団が買収することに合意した。
その他の国・地域の企業(日本・インド・欧州・米国・韓国など)
ArcelorMittal(アルセロールミタル)[ルクセンブルク/多国籍]
2006年に高級鋼に強い仏Arcelorと汎用鋼に強いインド発祥のMittal Steelが合併して誕生した。欧州・米州・中東・アフリカをまたぐ広域展開を続ける。2019年に日本製鉄とインドのエッサール・スチールを共同買収し電炉事業を強化。一方、旧ミタルの主力事業であった北米の製鉄事業は2020年にクリーブランド・クリフスへ売却した。
Nippon Steel Corporation(日本製鉄)[日本]
2012年に新日鐵と住友金属が合併し誕生。中国勢の猛追に対し、粗鋼生産量の規模拡大と鉄鋼品質の差別化の両面戦略で対抗している。2017年には日新製鋼の経営権を取得。超ハイテンやEV用電磁鋼板へ積極投資を行うほか、ゼロカーボン・スチール達成に向けた水素製鉄所の研究にも取り組む。2020年には国内15高炉体制から一部休止を実施。
POSCO Co., Ltd.(ポスコ)[韓国]
韓国の大手高炉メーカー。日本製鉄の前身企業より技術供与を受けるなど結びつきが強い。ステンレス鋼では中国の江蘇沙鋼と提携し中国内での生産を強化している。
Tata Steel Group(タタ・スチール)[インド]
1868年にジャムシェトジー・タタ氏がムンバイで設立した木綿貿易会社を発祥とする、インド三大財閥・タタ・グループの鉄鋼大手。鉄鋼のほか多岐にわたる分野で事業を展開し、海外100ヶ国以上で事業を行っている。
JSW Steel Limited(JSWスチール)[インド]
インドの大手民間鉄鋼メーカー。
JFE Steel Corporation(JFEスチール)[日本]
日本鋼管と川崎製鉄の合併により誕生した国内業界2位の鉄鋼メーカー。国内の需要減に対応し京浜地区の高炉休止などを決定している。
Nucor Corporation(ニューコア)[米国]
数々の再編を経て1972年に現在の名前に変更した米国に本拠を置く製鉄メーカー。電炉を用いた粗鋼生産に特化し、高炉メーカーのUSスチールの生産量を上回っている。
SAIL(インド鉄鋼公社、Steel Authority of India Limited)[インド]
インド政府が所有する同国最大級の国有鉄鋼メーカー。
Hyundai Steel Co., Ltd.(現代製鉄)[韓国]
1953年創業の韓国最大の高炉・電炉メーカー。現代自動車が親会社であり、Hビーム、レール、鉄筋、ホットコイル、圧延鋼、ステンレス等幅広い製品を手掛けている。
