石炭(一般炭と原料炭)業界の世界市場シェアの分析

石炭(一般炭と原料炭)業界の世界シェアと市場規模ついて分析をしています。神華集団、コールインディア、ピーボディ、BHPグループ、アングロアメリカン等の世界大手石炭会社の動向も掲載しています。

【市場シェア】

石炭会社の2020年度の生産量(⇒参照したデータの詳細情報)を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして2020年の石炭業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はコールインディア、2位は神華能源、3位は山東能源となります。

石炭開発生産会社の市場シェアと業界ランキング(2020年)

  • 1位 コールインディア 8.15%
  • 2位 神華能源 3.99%
  • 3位 山東能源 3.98%
  • 4位 ピーボディ・エナジー 1.76%
  • 5位 中煤能源 1.50%
  • 6位 グレンコア 1.45%
  • 7位 BHPグループ 0.87%
  • 8位 アーチ・コール 0.84%
  • 9位 アングロアメリカン 0.51%
  • 10位 ヴァーレ 0.08%
石炭会社の世界市場シェア(2020年)
石炭会社の世界市場シェア(2020年)

石炭生産量世界1位はコールインディア社です。インドの国有石炭開発・生産会社です。2位は中国の石炭最大手の神華と五大電力会社の一角である国電集団が経営統合して誕生した神華能源です。3位は中国の政府系の山東能源です。インドと中国が石炭生産量のトップ3となりました。4位は北米の石炭大手であるピーボディです。二酸化炭素削減の機運が高まる中、BHPグループ、アングロアメリカン、ヴァーレは炭鉱の売却などを通じて生産量を減らしています。石炭、特に一般炭への逆風が吹いており、資源メジャーの石炭開発からの撤退は続いていくと思われます。

【石炭生産量国別シェア】

国別の石炭生産量を分析すると、2020年の1位は中国、2位はインド、3位はインドネシアとなります。

  • 1位 中国 51.15%
  • 2位 インド 10.65%
  • 3位 インドネシア 7.53%
  • 4位 アメリカ合衆国 6.67%
  • 5位 オーストラリア 6.46%
  • 6位 ロシア 5.28%
石炭生産量の国別シェア(2020年)
石炭生産量の国別シェア(2020年)

【市場規模】

調査会社のエネデータによると、2020年の石炭生産量は7317百万トンです。国際エネルギー機関によれば、2019年の同生産量は7953百万トンです。その内、一般炭は8割、原料炭は1割程度の生産量です。石炭は一般炭、原料炭という用途による分類以外に、炭素含有量から無煙炭、瀝青炭、褐炭などへ分類もできます。
石炭の採炭法には、露天式、長壁式、柱房式といった方式があります。

露天採掘(Surface mining)のイメージ
露天採掘(Surface mining)のイメージ 出所:アーチコール
長壁式採炭法のイメージ
長壁式採炭法のイメージ 出所:アーチコール
柱房式採炭法
柱房式採炭法(Room and Pillar mining)のイメージ 出所:アーチコール

石炭の種類

石炭は炭素の濃縮の程度によって、無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭、泥炭へと分類されます。瀝青炭は粘結性の高さによって、製鉄に使用されるコークス原料となる原料炭と発電用の燃料となる一般炭に分かれます。ESGの観点から、一般炭への投資は風当たりが強く、石炭火力発電所に代替するリニューアブル発電所の建設が続いています。

石炭の種類
石炭の種類

石炭の種類

Newcastleコールフューチャーズ(一般炭価格インデックス、ICEフューチャーズ・ヨーロッパに上場)の推移です。2020年から2021年にかけて需要は減っていますが、価格は上昇傾向にあります。2022年以降、ロシアのウクライナへの侵攻を受け、ロシア産天然ガスからの代替資産としての石炭へのニーズが高まっています。

Newcastleコールフューチャーズについて

名称上場日上場市場取引単位
Newcastleコールフューチャーズ2008年ICEフューチャーズ・ヨーロッパ1000トン
Newcastleコールフューチャーズの概要

2022年4月
発電用石炭(一般炭)の国際指標となるNewcastleコールフューチャーズの先物価格は、2022年4月14日に昨年末比82%高くなりました。世界貿易量の2割を占めるロシア産からオーストラリア産などの代替需要が拡大する一方で、産炭国インドネシアの輸出規制が価格高騰に拍車をかけています。

一般炭の価格推移

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TradingView提供のNCF1!チャート

原料炭価格の推移

原料炭先物(大連商品取引所)での原料炭先物の価格推移です。2022年以降、ウクライナでの紛争を受け価格が上昇しています。

原料炭の価格推移

原料炭先物(大連商品取引所)


さらに詳しく業界を理解するためのお薦め書籍

資源と経済 持続可能な金属資源の利用を求めて
トコトンやさしい石炭の本

【会社の概要】

Coal India(コールインディア)

インドの国営石炭会社です。インドの石炭生産量の8割超を同社が担っています。

国家能源投資(China Energy Investment Corp)

中国の国営石炭会社であるChina Shenhua Energy(神華集団有限責任公司、チャイナ・シェンファ・エナジー)と中国五大電力会社の一角であった中国国電集団が2017年に経営統合し誕生しました。石炭では物流まで一貫して開発を行っています。

Peabody Energy(ピーボディ・エナジー)

1883年創業の米国最大の石炭生産企業です。2016年にチャプター11を申請しましたが、その後再上場を果たしています。北米と豪州に炭田を持っております。一般炭と原料炭の両方を手がけています。

ピーボディの北米炭鉱
ピーボディの北米炭鉱 出所:同社AR

Arch Coal(アーチ・コール)

1969年に設立されたミズーリ州セントルイスに本社を置く石炭生産企業です。1997年に同業のAshland Coalと合併をしました。 2011年に米同業のInternational Coal Group(インターナショナル・コール・グループ)を買収して、Peabody Energyを追撃していました。しかし、2015年にチャプター11を申請し、2016年に再生プロセスが終了しました。2019年にピーボディ・エネジーとPowder River炭田やColorado石炭事業の合弁会社設立を発表しました。

BHPグループ(旧BHPビリトン)

BHP(ビーエイチピー、BHP)は、世界最大の鉱業会社です。2001年に豪ブロークンヒル・プロプライエタリー・カンパニー(Broken Hill Proprietary Company Limited、BHP) と英ビリトン(Billiton plc) の統合により誕生しました。2018年にBHPビリトン(BHP Billiton)からBHPグループへと改称しています。合併後もロンドンとオーストラリアの2つの株式市場に上場するdual-listed companyとして存在しています。
銅、鉄、石炭、石油、ニッケル、ボーキサイト等の鉱石の生産に携わっています。豪州のOlympic Dam鉱山でウランの生産・開発を行っています。ダイヤモンドも手掛けていましたが、2012年にドミニオンダイヤモンドに事業を売却しました。銅鉱山では世界最大規模の生産量を誇るチリのEscondida(エスコンディーダ)を保有しています。ニッケルは、ウェスト・オーストラリア鉱床が、世界最大級の良質なニッケルブリケットやパウダーを生産しています。ウェスト・オーストラリア鉱床においては、Mount Keith(キース山)が、良質なニッケル鉱山です。

BHPビリトン キース山

BHPビリトン キース山
出所:同社

Vale(ヴァーレ)

Vale(ヴァーレ)は、世界最大手のブラジル資源大手です。資源メジャーの1角です。主力商品は鉄鉱石ですが、ニッケルも大手の一角です。カナダのインコ(Inco)社から2006年に180億ドルで買収をしたオンタリオ州のSudbury(サドバリー) Mine、Voisey’s Bay(ボイジーズ・ベイ)をはじめとして、住友金属鉱山も参画しているインドネシアのSorowako(ソロワコ)、ニューカレドニアのVNC-Goro、ブラジルのOnca Puma(オンサ・プーマ)、カナダのThompson(トンプソン)が主要ニッケル鉱山となっています。マンガン、ボーキサイト、アルミニウム、銅、石炭、コバルト、貴金属の鉱山も手掛けています。コバルトは、カナダのSudbury、Voisey‘s Bay、ニューカレドニアで採掘をしています。三井物産との関係が深いことでも有名です。

Glencore(グレンコア)

グレンコア(Glencore)はスイスに本拠を置く資源商社です。1974年にスイスのトレーダーであるマーク・リッチによって設立されました。2012年にカナダの穀物流通大手バイテラを、2013年には資源メジャーであるエクストラータを買収しています。亜鉛、原料炭、一般炭、銅、コバルト、ニッケルなどの採掘やエネルギー及び穀物トレーディングが事業の柱となっています。トレーディング機能と上流権益の開発機能をあわせもつ資源メジャーとも言えます。2017年1月に穀物トレーディング部門をグレンコア・アグリカルチャーとして分社化し、バイテラへと社名変更しました。さらに詳しく

Rio Tinto(リオティント)

Rio Tinto(リオティント)は、世界最大級の鉱業会社です。1995年に英国RTZ と豪CRA が統合して誕生しました。経営統合の経緯から、現在でもロンドンとシドニーの両証券取引所に上場をしています。鉄鉱石やアルミに強みを持ちます。アルミニウムは2007年に買収したリオ・ティント・アルキャンを通じて展開しています。石炭は豪州を中心に注力していましたが、2017年にCoal Allied Industrialをヤンコールへ、2018年にHail Creek炭田をグレンコア、Kestrel炭田をAdaroエナジーなどへ売却して撤退しました。ダイヤモンドにも強みを持ちます。ジンバブエのムロワダイヤモンド鉱山やカナダの鉱山での生産を行っています。

Anglo American(アングロアメリカン)

アングロ・アメリカン(Anglo American)は英大手資源会社です。ロンドン証券取引所に上場しています。銅鉱山ではLos Bronce(ロスブロンセ)鉱山等を運営しています。ニッケルは、ブラジルのBarro Alto(バーホ・アウト)が主要鉱山です。ダイヤモンドのデビアスを傘下に保有しています。金、プラチナにも強みを持ちます。石炭でも原料炭を中心に優良アセットを保有しております。

山東能源

中国政府系の資源開発会社です。2020年に石炭大手のYankuang Groupと経営統合をしました。

Yankuang Group (兖矿)

中国の石炭大手であるYanzhou Coal Mining(イエンチョウ・コール・マイニング、兗州煤業股分有限公司)やその子会社である豪州の炭鉱会社であるYancoal(ヤンコール)の親会社です。採炭以外に石炭輸送鉄道事業も展開しています。ヤンコールはリオティントから炭鉱を買収し、事業を拡大しています。ハンターバレー炭田等で炭鉱をしています。

参照したデータの詳細情報について


参照したデータは以下の通りです。リンク切れなどありましたら、お問い合わせのページからご連絡頂けますと大変有難く存じます。

石炭会社の生産量ランキング

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参照した市場規模の情報

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IEA

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