鉄道車両業界の世界市場シェアの分析

鉄道車両業界の世界市場シェアと市場規模について分析をしています。中国中車、ボンバルディア 、アルストム 、シーメンス、CAF、シュタッドラー 、日立、川崎重工といった世界大手の鉄道車両会社の一覧も掲載しています。アルストムがボンバルディアの鉄道車両事業を買収するなど業界再編が続きます。

鉄道車両業界の世界市場シェア(2020年)

鉄道車両メーカー各社の2020年度の売上高(⇒参照したデータの詳細情報)を分子に、同業界の市場規模を分母に、鉄道車両メーカー会社各社の2020年の世界市場シェアを計算すると、1位は中国中車、2位はシーメンス、3位はアルストムとなります。

  • 1位 中国中車 24.5%
  • 2位 シーメンス 7.8%
  • 3位 アルストム 7.0%
  • 4位 ボンバルディア 5.9%
  • 5位 日立製作所 3.9%
  • 6位 トリニティ・インダストリーズ 3.8%
  • 7位 トランスマスホールディングス 3.1%
  • 8位 シュタッドラー・レール 2.4%
  • 9位 タレス 1.4%

【参考】 アルストム+ボンバルディア連合の市場シェア 14.8%

鉄道車両業界の世界シェア(2020年)
鉄道車両業界の世界シェア(2020年)

2015年に誕生した中国中車(CRRC)が旺盛な国内のインフラ需要に支えられ世界1位です。2位はシーメンスです。2017年にアルストムとの経営統合を発表し、シーメンス・アルストムの誕生は鉄道車両業界版エアバスの誕生と言われましたが、その後2019年2月に欧州委員会がシーメンスとアルストムの事業統合を却下し、鉄道車両版エアバスの誕生にはなりませんでした。3位はアルストム、4位はカナダのボンバルディアとなります。2020年に発表された高速鉄道に強いアルストムと地下鉄・都市鉄道に強いボンバルディアの鉄道車両部門の経営統合が実現すれば、シーメンスを抜いて、アルストムボンバルディア連合が2位の地位を確実にします。
CRRC、シーメンス、アルストム、ボンバルディア、鉄道車両メーカー四天王と言われています。
5位以下は、日伊連合である日立・アンサルド連合、米国トリニティ、ロシアのトランスマスが追い上げますが、上位4社には大きく規模で引き離されています。

1位 中国中車
2位 シーメンス
3位 アルストム
4位 ボンバルディア
5位 日立製作所
6位 トリニティ・インダストリーズ
7位 タレス
8位 シュタッドラー・レール
9位 トランスマッシュホールディングス

日本の鉄道車両メーカー

日本の鉄道車両メーカーの2019年の売上高ランキングを分析してみると、1位はイタリアのアンサルドを買収した日立が海外売上高を伸ばし1位となっています。2位は川崎重工業となっています。3位はJR東海グループの日本車輛製造、4位は近鉄系の近畿車輛、5位はJR東日本グループの総合車両製作所となっています。

市場規模

当サイトでは、各種公表されている情報をもとに、2020年の鉄道車両業界の世界市場規模を、保守サービスもあわせた1400億ドルとして市場シェアを計算しております。参照にした情報は以下の通りです。
欧州鉄道産業連盟によれば2017~2019年の年平均鉄道車両と保守サービス市場規模はそれぞれ619億ユーロ、650億ユーロです。2025年にかけて年平均2.3%での成長を見込みます。調査会社のアライドマーケットリサーチによると、2018年の鉄道車両の市場規模は586億ドルで、2026年にかけて2.9%の成長を見込みます。鉄道車両のパーツメーカーまでも含めるとすそ野が大きい市場です。特に運行や保守サービスの市場規模は、車両のみの市場規模より大きくなっています。⇒参照したデータの詳細情報

鉄道車両市場規模保守市場規模成長率
2020年700億ドル700億ドル
2019年619億ユーロ650億ユーロ2.3%
2018年586億ドル2.9%
鉄道車両の市場規模推移©ディールラボ

業界の主要M&A

グローバルプレイヤーに各地域の有力鉄道車両会社が挑む形となっております。

2010年 米キャタピラによる米機関車製造大手のEMD買収
2011年 仏アルストムによるロシアのTransmashholdingの25%の株式の買収
2012年 ドイツのジーメンスによる英Invensys Railの買収
2015年 中国の北車集団と南車集団が経営統合をし中国中車が誕生
2015年 日立がイタリアのフィンメカニカ傘下のAnsaldo Brenda(アンサルドブレーダ) とアンサルドSTSを買収
2015年 仏アルストムによるGE鉄道車両事業の買収
2015年 米ワブテックによる仏フェヴレの買収
2017年 アルストムとシーメンスが鉄道車両事業の経営統合で合意
2019年 アルストムとシーメンスの経営統合が欧州委員会により却下
2020年 アルストムとボンバルディアが鉄道車両部門の経営統合で合意
2021年 日立が仏タレスの鉄道信号事業を買収

鉄道車両の種類

鉄道車両には、路面電車の進化系ともいえる、ライトレール、地下鉄、通勤電車、新幹線などの高速鉄道、機関車、モノレールという種類があります。鉄道車両メーカーにも、得意とする種類があります。
例えば、ボンバルディアは、ライトレールからモノレールまで、全てを手掛けていますが、一方で日本の川崎重工は、地下鉄、通勤電車や高速鉄道に注力しています。
こうした種類に加えて、鉄道車両関連の鉄道信号やシステムを手掛けているかで、メーカー各社の戦略の違いが分かります。鉄道関連メーカーは、車両メーカー、鉄道信号制御装置メーカー、車両部品メーカーに大きく分かれます。

鉄道車両部品の一覧

鉄道車両部品には、高サ調整装置、ブレーキ制御器、空気管開閉器、基礎ブレーキユニット、ABS、ブレーキ指令器、ブレーキ受量器、ブレーキ制御装置、空気ダメ、インバータ、除湿装置、電動空気圧縮機、速度センサ、戸閉装置等の数多くの部品が必要となります。一般社団法人 日本鉄道車輌工業会によれば、車両は、大きく構体、側窓・側引戸、車両の内装、腰掛、車内放送装置、車内表示器、トイレ、連結幌、パンタグラフ、ボルスタレス台車、車輪・車軸、歯車装置、VVVFインバータ装置、補助電源装置、ブレーキ装置、空調装置、抵抗器、車上演算ATC、ATS車上装置、デジタルATC、ディーゼルエンジン、推進軸、冷却器、変速機、キャリパブレーキ、主電動機、主電動機用軸受、戸閉装置、オイルダンパ、速度発電機、車軸用軸受、空気ばね、床下配管等で構成されています。

世界の主要鉄道車両メーカーの動向

中国中車(China Railway Rolling Stock Corporation、CRRC)

中国南車(CSR)と中国北車(CNR)が2015年に合併をして誕生をした世界最大級の車両メーカーです。広大な中国市場における独占企業として規模では他の競合他社の群を抜いています。中国政府の海外インフラ支援に伴い、今後は海外でも展開も選択肢となっています。

CSR(China South Locomotive & Rolling Stock Corporation Limited、中国南車集団)
2002年に中国国営車両製造集団(China National Railway Locomotive & Rolling Stock Industry Corporation、LORIC)よりスピンオフする形で設立された中国政府系企業です。海外のメーカー等と組み車両を製造していました。

CNR(China North Locomotive and Rolling Stock Industry Corporatio、中国北車集団)
2000年に中国国営車両製造集団(China National Railway Locomotive & Rolling Stock Industry Corporation、LORIC)よりスピンオフする形で設立された中国政府系の大手鉄道車両メーカーです。中国南車集団と双璧です。

Bombardier(ボンバルディア、カナダ)

カナダのケベック州に本拠を置く航空機・鉄道車両の大手メーカーです。2001年にAdtranz(アドトランツ、ドイツ)を買収して鉄道車両事業へ参入しました。鉄道車両製造はBombardier Rail Transportationが行っています。地下鉄・都市鉄道に強みを持ちます。2020年にアルストムへ鉄道事業を売却しました。航空機事業については、機体はCRJで識別されています。2017年にエアバスが、ボンバルディアのA220などを手掛ける小型機部門に出資をしました。2020年に小型機事業の持分をエアバスに売却をしました。

Alstom(アルストム、仏)

アルストム(Alstom)は、フランスの鉄道車両や鉄道信号メーカーです。フランスの高速鉄道の代名詞であるTGVを手掛けた高い技術力を有します。GEがアルストムの送発電事業を買収し、アルストムがGEの鉄道車両事業を買収しました。鉄道信号にも強みを持ちます。2017年に鉄道事業をドイツのシーメンスと経営統合する発表をしましたが、2019年に規制当局の承認が得られず断念しています。また、2020年にボンバルディアの鉄道車両・信号部門の買収を発表しました。続きを読む

Siemens(シーメンス、独)

シーメンス(Siemens AG)は、ドイツのミュンヘンに本拠を置く大手総合電機メーカーです。1847年に、ヴェルナー・フォン・ジーメンス (Werner von Siemens) によって設立されました。世界初の電車を製造したことでも有名です。事業範囲は電力、交通システム、家電、医療等と社会インフラ全般に及びます。事業のポートフォリオを組み替えながら、モノ作りのデジタル化や産業機器のIoT化を含むインダストリー4.0を提唱し、強力に推進しています。米国のライバルであったGEと同じように再編を通じて、その時々の社会ニーズに即した組織体を作り上げる柔軟性のある経営を行っています。鉄道車両はグループ内のモビリティ事業本部が担当しています。ICEで知られるドイツの高速鉄道も手掛けています。2017年には鉄道車両部門でアルストムと経営統合を発表しましたが、2019年に欧州委員会がアルストムとの経営統合を承認せず遂行されませんでした。鉄道信号にも強みを持ち、上位株主には、象徴としてのシーメンス家が引き続き残っています。さらに詳しく

GE

GE Transportationは米GEの車両製造部門でした。機関車製造や鉄道信号を得意とします。2015年にアルストムと鉄道車両事業を統合し、GEトランスポーテーションが設立されました。2018年にGEトランスポーテーションの事業の株式の49.9%を、米機関車・貨客車製造大手ワブテックに売却しました。

GEについて

GE(ジェネラル・エレクトロニック)は、1878年にトーマス・エジソンによって設立されたエジソン電気照明会社を源流に持つ世界を代表する総合電機メーカーの老舗です。世界シェア1位か2位以外の事業からは撤退するというナンバーワン・ナンバーツー戦略を実施し、積極的な事業ポートフォリオの入れ替えを行うことでも有名です。インダストリアル・インターネットを成長戦略にしたジェフ・イメルト氏が退任した後、2017年に生え抜きのジョン・フラナリー氏が社長に就任したものの、2018年には外部のダナハーからラリー・カルプ氏が招聘され、新CEOとなるなど、経営陣の交代が続きます。さらに詳しく

 

CAF(コンストルクシオネス・イ・アウクシリアル・デ・フェロカ Construcciones y Auxiliar de Ferrocarriles)

1917年創業のスペインの最大手鉄道車両メーカーです。マドリード証券取引所に上場しています。

Stadler Rail(シュタッドラー・レール)

1942年創業のスイスの大手鉄道車両メーカーです。

Transmashholding(トランスマッシュホールディングス)

ロシアを代表する鉄道車両メーカーです。Ministry of Transportation of the Russian Federation(ロシア交通省)傘下のロシア鉄道です。仏Alstom(アルストム)等が株式を保有していますが、非公開会社です。

Wabtec(ワブテック、Westinghouse Air Brake Technologies Corp)

米車両製造大手です。NYSEに上場しています。1999年にWestinghouse Air Brake Company (ウェスティンハウス・エアブレーキ、WABCO) とMotivePower Industries Corporation(モーティブパワーインダストリー)の合併で誕生しました。2015年にフランスのFaiveley(フェヴレ)を買収しました。2018年にGEトランスポーテーションの株式の49.9%を取得しており、事業の拡大に積極的です。

Faiveley(フェヴレ)
仏車両製造大手です。ユーロネクストに上場していましたが、2015年に米ワブテックに買収されました。

Vossloh(フォスロ)

ドイツに本拠をおく車両部品メーカーです。1888年に創業し、当初はRoyal Prussian Railway(プロシア王立鉄道)向けに部品を供給していました。現在は鉄道レールの締具などに強みを持ちます。ドイツの富裕ファミリーであるHeinz Hermann Thiele一族が過半の株式を保有しています。フランクフルト証券取引所上場しています。

Škoda Holding(シュコダ・ホールディング)

チェコ共和国の重工コングロマリットの名門企業です。Skoda Transportation(シュコダ・トランスポーテーション)が車両製造を担当しています。

Rotem Hyundai (現代ロテム)

韓国の大手車両メーカーです。現代精工・大宇重工業・韓進重工業の統合により誕生しました。韓国鉄道車輌株式会社(Korea Rolling Stock)より社名変更しています。

Electro-Motive Diesel(エレクトロ・モーティブ・ディーゼル)

米機関車製造大手メーカーです。現在は米Caterpillar(キャタピラ)傘下となっております。

Knorr-Bremse AG(クノールブレムゼ)

独ミュンヘンに本社を置き、鉄道車両向けのブレーキシステムの製造・販売を行う独立系サプライヤーです。

Trinity Industries(トリニティ・インダストリーズ)

米国車両製造大手です。ホッパー貨車等を手掛けています。

日立

日立製作所は、久原鉱業所日立鉱山付属の修理工場として、1910年に創業された日本を代表する重電メーカーです。IT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフを主要領域とします。配電事業、自動車部品、エレベーター事業や鉄道事業は強化する一方で、日立化成、日立金属、日立キャピタル、日立建機等は外部へ売却をする選択と集中を進めています。さらに詳しく

日立ABB
2020年から事業を開始した日立とABBのパワーグリッド機器の合弁会社です。日立がABBから当該事業の持分80%を買収することで誕生しました。直流送電 (HVDC)技術、変圧器や特別高圧製品等に強みを持ちます。

鉄道事業
日立の鉄道システム事業部が鉄道事業を手掛けています。従来は国内向けの車両生産がメインでしたが、近年海外売上の拡大を模索しています。2015年にAnsaldo Brenda(アンサルドブレーダ、現Hitachi Rail S.p.A.) とアンサルドSTS(現Hitachi Rail STS S.p.A.)の買収を発表し、欧州・米州・アジアで鉄道車両と信号のターンキーソリューションプロバイダーとして中国北車+南車陣営、欧米ビッグ3への追い上げを図っています。

日立建機
日本を代表する大手建機メーカーです。日立製作所の上場関連会社でもあります。2016年に豪州の鉱山機器向け消耗品に強みを持つブラッドケンを買収しました。

エレベーター事業
日立の子会社である1956年に設立された日立ビルシステムが昇降機の製造・販売・保守を担っています。同社は、空調やビルのセキュリティ管理も行っています。2018年に台湾のエレベーター大手である永大機電工業を買収しました。

Ansaldo Brenda(アンサルドブレーダ)
伊政府系の軍産複合企業大手のFinmeccanica(フィンメッカニカ)傘下で伊ナポリに本拠を置く大手車両メーカーです。兄弟会社に鉄道信号大手のAnsaldo STS(アンサルドSTS)があります。2015年に日立が買収をしました。

川崎重工業(Kawasaki)

1896年に松方正義の支援によって川崎正蔵氏によって設立された川崎築地造船所を源流とする日本を代表する宇宙防衛・重電大手メーカーです。戦前の神戸川崎財閥には、川崎造船(川崎重工)の他に、川崎汽船、川崎製鉄(JFE)が属していました。技術者の育成には定評があります。現在は、防衛、航空エンジン、鉄道車両、プラント、油圧機器、溶接やシリコンウエハの搬送等の産業用ロボット、造船、中大型バイク、オフロード四輪車、パーソナルウォータークラフト(ジェットスキーの商標で展開しています)、農機等の汎用エンジンを開発製造しています。さらに詳しく

中国鉄路通信信号(CRSC)

中国政府系の鉄道信号大手です。2015年に香港市場にて株式を公開しました。

Thales(タレス)

タレス(Thales )は、フランスに本拠を置く防衛・重電メーカーです。前身はThomson-CSF社で、現在は航空関連の電子サービス(Flight avionics)、衛星、鉄道信号、マイクロ波、防衛セキュリティ、本人認証サービス等の分野を手掛けています。航空機部品は、ハネウェルやコリンズエアロスペースが競合会社です。エアバス、ATR、ベル、ボーイング、ボンバルディア、ダッソーアビエーション、エンブラエル、ガルフストリーム、レオナルド等へ販売をしています。機内エンターテイメント事業にも強く、グローバルイーグルエンターテイメント、ゴーゴー、パナソニック アビオニクスやゾディアック インフライト イノベーションズ(サフラングループ)と競合しています。マイクロ波およびイメージングサブシステムでは、Varian Medical Systems、CPIやL3Harrisと競合しています。2021年に日立に鉄道信号事業を売却しました。さらに詳しく

参照したデータの詳細情報について


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