鉄道車両業界

鉄道車両製造業界の世界市場シェアと市場規模について分析をしています。中国中車、Bombardier(ボンバルディア) 、Alstom(アルストム) 、シーメンス、CAF、Stadler(シュタッドラー) 、日立(アンサルド)、川崎重工といった世界大手の鉄道車両会社の一覧も掲載しています。

世界市場シェア

鉄道関連メーカーは、車両メーカー、鉄道信号制御装置メーカー、車両部品メーカーに大きく分かれます。特に車両メーカーは世界的に見ても数が限られており、仏Alstom(アルストム)、独Siemens(シーメンス)、カナダのBombardier(ボンバルディア)が三大車両メーカーと言われています。
「2020年版鉄道車両メーカーの世界売上高ランキングの分析」における各社の売上高を分子に、同業界の市場規模を分母に、鉄道車両製造会社各社の2019年の世界市場シェアを計算すると1位は中国中車、2位はシーメンス・モビリティ、3位はアルストムとなります。

2019年の市場シェア
1位 中国中車 14.5%
2位 シーメンス・モビリティ 4.6%
3位 アルストム 4.2%
4位 ボンバルディア 4.0%
5位 日立製作所 2.7%
6位 トリニティ・インダストリーズ 1.2%
7位 タレス・トランスポーテーション 1.0%
8位 シュタッドラー・レール 1.0%
9位 トランスマスホールディングス 0.9%

2015年に誕生した中国中車(CRRC)が旺盛な国内のインフラ需要に支えられ世界1位です。
2位はシーメンスです。2017年にアルストムとの経営統合を発表し、シーメンス・アルストムの誕生は鉄道車両業界版エアバスの誕生と言われましたが、その後2019年2月に欧州委員会がシーメンスとアルストムの事業統合を却下し、鉄道車両版エアバスの誕生にはなりませんでした。3位はアルストム、4位はカナダのボンバルディアとなります。2020年に発表された高速鉄道に強いアルストムと地下鉄・都市鉄道に強いボンバルディアの鉄道車両部門の経営統合が実現すれば、シーメンスを抜いて、アルストム・ボンバルディア連合が2位の地位を確実にします。
CRRC、シーメンス、アルストム、ボンバルディア、鉄道車両メーカー四天王と言われています。
5位以下は、日伊連語である日立・アンサルド連合、米国トランスマスが追い上げますが、上位4社には大きく規模で引き離されています。

日本の鉄道車両メーカー

日本の鉄道車両メーカーの、2019年の売上高ランキングを分析してみると、1位は、イタリアのアンサルドを買収した、日立が、海外売上高を伸ばし1位となっています。2位は、川崎重工業となっています。3位は、JR東海の傘下である、日本車輛製造、4位は近鉄系の近畿車輛、5位はJR東日本の傘下となっている、総合車両製作所、となっています。

市場規模

鉄道車両のパーツメーカーまでも含めるとすそ野が大きい市場です。特に運行や保守サービスの市場規模は、車両のみの市場規模より大きくなっています。欧州鉄道産業連盟によれば世界の鉄道車両業界(保守サービス、鉄道車両製造、運行管理、鉄道インフラやそれらのサービスの一括受託)の2017~2019年の年平均の市場規模は、1920億ユーロと推計されています。2019~21年の鉄道車両全体の規模は1853億ユーロ(約23兆円)程度と推計されています。2015~2017年のサービス、鉄道車両、鉄道インフラ、運航管理等の市場規模は年平均1632億ドルです。

業界の再編の歴史

グローバルプレイヤーに各地域の有力鉄道車両会社が挑む形となっております。

2010年 米キャタピラによる米機関車製造大手のEMD買収

2011年 仏アルストムによるロシアのTransmashholdingの25%の株式の買収

2012年 ドイツのジーメンスによる英Invensys Railの買収

2015年 中国の北車集団と南車集団が経営統合をし中国中車が誕生

2015年 日立がイタリアのフィンメカニカ傘下のAnsaldo Brenda(アンサルドブレーダ) とアンサルドSTSを買収

2015年 仏アルストムによるGE鉄道車両事業の買収

2015年 米ワブテックによる仏フェヴレの買収

2017年 アルストムとシーメンスが鉄道車両事業の経営統合で合意

2019年 アルストムとシーメンスの経営統合が欧州委員会により却下

2020年 アルストムとボンバルディアが鉄道車両部門の経営統合で合意

鉄道車両の種類

鉄道車両には、路面電車の進化系ともいえる、ライトレール、地下鉄、通勤電車、新幹線などの高速鉄道、機関車、モノレールという種類があります。鉄道車両メーカーにも、得意とする種類があります。
例えば、ボンバルディアは、ライトレールからモノレールまで、全てを手掛けていますが、一方で日本の川崎重工は、地下鉄、通勤電車や高速鉄道に注力しています。
こうした種類に加えて、鉄道車両関連の鉄道信号やシステムを手掛けているかで、メーカー各社の戦略の違いが分かります。

鉄道車両部品の一覧

鉄道車両部品には、高サ調整装置、ブレーキ制御器、空気管開閉器、基礎ブレーキユニット、ABS、ブレーキ指令器、ブレーキ受量器、ブレーキ制御装置、空気ダメ、インバータ、除湿装置、電動空気圧縮機、速度センサ、戸閉装置等の数多くの部品が必要となります。

一般社団法人 日本鉄道車輌工業会によれば、車両は、大きく構体、側窓・側引戸、車両の内装、腰掛、車内放送装置、車内表示器、トイレ、連結幌、パンタグラフ、ボルスタレス台車、車輪・車軸、歯車装置、VVVFインバータ装置、補助電源装置、ブレーキ装置、空調装置、抵抗器、車上演算ATC、ATS車上装置、デジタルATC、ディーゼルエンジン、推進軸、冷却器、変速機、キャリパブレーキ、主電動機、主電動機用軸受、戸閉装置、オイルダンパ、速度発電機、車軸用軸受、空気ばね、床下配管等で構成されています。

世界の主要鉄道車両メーカーの動向

中国中車(China Railway Rolling Stock Corporation、CRRC)

中国南車と中国北車が2015年に合併をして誕生をした世界最大級の車両製造メーカーです。広大な中国市場における独占企業として規模では他の競合他社の群を抜いています。中国政府の海外インフラ支援に伴い、今後は海外でも展開も選択肢となっています。

(参照)
CSR(China South Locomotive & Rolling Stock Corporation Limited、中国南車集団)
2002年に中国国営車両製造集団(China National Railway Locomotive & Rolling Stock Industry Corporation、LORIC)よりスピンオフする形で設立された中国政府系企業です。海外のメーカー等と組み車両メーカーを製造していました。

CNR(China North Locomotive and Rolling Stock Industry Corporatio、中国北車集団)
2000年に中国国営車両製造集団(China National Railway Locomotive & Rolling Stock Industry Corporation、LORIC)よりスピンオフする形で設立された中国政府系の大手鉄道車両メーカーです。中国南車集団と双璧です。

Bombardier(ボンバルディア、カナダ)

カナダのケベック州に本拠を置く航空機・鉄道車両の大手メーカーです。2001年にAdtranz(アドトランツ、独)を買収して鉄道車両事業へ参入しました。鉄道車両製造はBombardier Rail Transportationが行っています。地下鉄・都市鉄道に強みを持ちます。2020年アルストムとの経営統合を発表しました。

Alstom(アルストム、仏)

仏大手メーカーです。発電設備、送電設備、鉄道車両の製造を行っています。Alstomグループ内では鉄道車両はAlstom Transportが担当しています。フランスの高速鉄道の代名詞のTGVを手掛けた高い技術力を有します。GEがAlstomの送発電事業を買収し、AlstomがGEの鉄道車両事業を買収しました。鉄道信号にも強みを持ちます。2017年に鉄道事業をSiemens(シーメンス、独)と経営統合の発表をしましたが、2019年に規制当局の承認が得られず断念しております。2020年にボンバルディアの鉄道車両・信号部門の買収を発表しました。

Siemens(シーメンス、独)

独ミュンヘンに本拠を置く大手総合電機メーカーです。1847年に、ヴェルナー・フォン・ジーメンス (Werner von Siemens) によって設立されました。世界初の電車を製造したことでも有名です。事業範囲は電力、交通システム、家電、医療等と社会インフラ全般に及びます。モノ作りのデジタル化、産業機器のIoT化を含むインダストリー4.0を提唱し、強力に推進しています。米国のライバルであったGEと同じように再編を通じて、その時々の社会ニーズに即した組織体と作り上げる柔軟性のある経営を行っています。鉄道車両はグループ内のモビリティー事業本部が担当をしています。ICEで知られるドイツの高速鉄道も手掛けています。2017年に鉄道車両部門でアルストムと経営統合を発表しました。2019年に欧州委員会がアルストムとの経営統合を認めず破綻した経緯があります。鉄道信号にも強みを持ちます。

シーメンスの過去の再編

1999年 半導体事業を分社化しインフィニオン・テクノロジーを設立

2001年 製造管理ソフトウェアのイタリアのORSIの買収

2004年 メーター大手のランディスギアを投資ファンドに売却

2007年 3次元CADソフト大手のUGSを買収

2011年 バイオ製造ソフトのブラジルのアクティブの買収

2011年 産業用ソフトの米ビスタジーの買収

2012年 3次元シュミレーションソフトのLMSインターナショナルの買収

2012年 フランスのソフトウェア会社のキネオ買収

2013年 水関連事業を投資ファンドのAEAに売却

2013年 携帯事業をフィンランドのノキアに売却

2013年 製品ライフサイクル管理ソフトのドイツのテシコを買収

2013年 生産計画ソフトの英国のぷリアクターの買収

2014年 油田装置メーカーの米ドレッサー・ランド・グループを買収

2014年 ボッシュに家電事業を売却

2014年 補聴器事業を投資ファンドのEQTへ売却

2016年 米国の半導体設計ソフトのメンター・グラフィックスを買収

2016年 風力発電機の分野でスペインのガメサと経営統合

2016年 3Dプリントメーカーの英マテリアルズ・ソリューションズを買収

2016年 米国の産業用シュミレーションソフトのCDアダプコを買収

2018年 米国のローコードソフトウェアプラットフォーム会社のMendixを買収

2018年 ヘルスケア事業を手掛けるSiemens  Healthineers社を分社化上場

2019年 航空機向けの電気駆動部門をロールス・ロイスに売却

Ansaldo Brenda(アンサルドブレーダ)

伊政府系の軍産複合企業大手のFinmeccanica(フィンメッカニカ)傘下で伊ナポリに本拠を置く大手車両製造メーカーです。兄弟会社に鉄道信号大手のAnsaldo STS(アンサルドSTS)があります。2015年に日立が買収をしました。

GE

GE Transportationは米GEの車両製造部門でした。機関車製造や鉄道信号を得意とします。2015年にアルストムと鉄道車両事業を統合し、GEトランスポーテーションが設立されました。2018年にGEトランスポーテションの事業の株式の49.9%を、米機関車・貨客車製造大手ワブテックに売却しました。

CAF(コンストルクシオネス・イ・アウクシリアル・デ・フェロカ Construcciones y Auxiliar de Ferrocarriles)

1917年創業のスペインの最大手鉄道車両製造メーカーです。マドリード証券取引所に上場しています。

Stadler Rail(シュタッドラー・レール)

1942年創業のスイスの大手鉄道車両メーカーです。

Transmashholding(トランスマスホールディングス)

ロシアを代表する鉄道車両メーカーです。Ministry of Transportation of the Russian Federation(ロシア交通省)傘下のロシア鉄道です。仏Alstom(アルストム)等が株式を保有していますが、非公開会社です。

Wabtec(ワブテック、Westinghouse Air Brake Technologies Corp)

米車両製造大手です。NYSEに上場しています。1999年にWestinghouse Air Brake Company (ウェスティンハウス・エアブレーキ、WABCO) とMotivePower Industries Corporation(モーティブパワーインダストリー)の合併で誕生しました。2015年にフランスのFaiveley(フェヴレ)を買収しました。2018年にGEトランスポーテションの株式お49.9%を取得しており、事業の拡大に積極的です。

Vossloh(フォスロ)

独大手車両や車両部品メーカーです。1888年に創業し、当初はRoyal Prussian Railway(プロシア王立鉄道)向けに部品を供給していた。フランクフルト証券取引所上場しています。

Faiveley(フェヴレ)

仏車両製造大手です。ユーロネクストに上場していまし、。2015年に米ワブテックに買収されました。

Škoda Holding(シュコダ・ホールディング)

チェコ共和国の重工コングロマリットの名門企業です。Skoda Transportation(シュコダ・トランスポーテーション)が車両製造を担当しています。

Rotem Hyundai (現代ロテム)

韓国の大手車両製造メーカーです。現代精工・大宇重工業・韓進重工業の統合により誕生しました。韓国鉄道車輌株式会社(Korea Rolling Stock)より社名変更しています。

Electro-Motive Diesel(エレクトロ・モーティブ・ディーゼル)

米機関車製造大手メーカーです。現在は米Caterpillar(キャタピラ)傘下となっております。

Knorr-Bremse AG(クノールブレムゼ)

独ミュンヘンに本社を置き、鉄道車両向けのブレーキシステムの製造・販売を行う独立系サプライヤーです。

Trinity Industries(トリニティ・インダストリーズ)

米国車両製造大手です。ホッパー貨車等を手掛けています。

日立

日立の鉄道システム事業部が鉄道事業を手掛けています。従来は国内向けの車両生産がメインでしたが、近年海外売上の拡大を模索しています。2015年にAnsaldo Brenda(アンサルドブレーダ、現Hitachi Rail S.p.A.) とアンサルドSTS(現Hitachi Rail STS S.p.A.)の買収を発表し、欧州・米州・アジアで鉄道車両と信号のターンキーソリューションプロバイダーとして中国北車+南車陣営、欧米ビッグ3への追い上げを図っています。

川崎重工業(Kawasaki)

川崎重工業車両カンパニーが担当しています。かつては中国南車へ技術供与を行っておりました。日本では日立に次ぐ鉄道車両大手です。

中国鉄路通信信号(CRSC)

中国政府系の鉄道信号大手です。2015年に香港市場にて株式を公開しました。

Thales(タレス)

フランスに本拠をおく防衛・重電メーカーです。前身はThomson-CSF社で、現在は航空関連の電子サービス(Flight avionics)、衛星、鉄道信号、防衛セキュリティ、本人認証サービス等の分野を手掛けています。

参考書籍
このサイトを作成するにあたって、以下の書籍を参考にさせて頂きました。
図解入門業界研究最新鉄道業界の動向とカラクリがよ~くわかる本第3版 [単行本]
あなたの知らない鉄道車両業界―週刊東洋経済eビジネス新書No.06 [Kindle版]
鉄道信号・保安システムがわかる本 [単行本(ソフトカバー)]
鉄道の「鉄」学: 車両と軌道を支える金属材料のお話 [単行本]

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