水力・蒸気(火力・原子力・地熱)・ガス発電所向けタービン発電機業界の世界シェアや市場規模の情報について分析をしています。アルストム、GE、シーメンス、ドンファン、フォイトハイドロ、オーマット等のタービン発電機メーカーの動向も掲載しています。
タービン発電機業界の世界市場シェア(2019年)
「最新業界別売上高世界ランキング第8巻」に記載の発電タービンメーカー各社の売上高を分子に、また後述する業界の市場規模を分母にして2019年のタービン発電機業界の市場シェアを簡易に試算しますと、1位はGE、2位は三菱重工業、3位はシーメンスとなります。
1位 GE 21%
2位 三菱重工業 16%
3位 シーメンス 9%
4位 ドンファンエレクトリック 5%
5位 東芝 4%
6位 バラート重電機 3%
7位 アンドリッツ 2%
8位 富士電機 1%
9位 ハルビン電機 0.5%
市場規模
当サイトでは、調査会社等の公表データを参考にし、発電タービンメーカー業界の2019年の世界市場規模を900億ドルとして市場シェアを計算しております。参照にしたデータは以下の通りです。
調査会社のグランドビューリサーチによると、2019年のガスタービンの市場規模は196億ドルです。2027年にかけて年平均5.4%での成長を見込みます。アライドマーケットリサーチによると2019年の蒸気タービンの市場規模は241億ドルです。また同社によると、2017年の原子量発電所及び機器の市場規模は、365億ドルです。2027年にかけて年平均2.8%での成長を見込みます。さらに、同社によれば2018年の地熱発電タービンの市場規模は46億ドルです。2026年平均にかけて5%での成長を見込みます。ジオンマーケットリサーチによると、水力発電機の2018年の市場規模は30億ドルとなります。
タービンの種類
用途で分ける場合には、発電所タービン、航空機タービン、船舶タービンといったように分かれます。動力で分ける場合は、風力、ガス、蒸気(火力、原子力、地熱発電用)、水力といった分け方ができます。
業界関連書籍
ガスタービンの基礎と応用
地熱エネルギー技術読本
図解ガスタービン
蒸気タービン要論
世界の有力タービン発電機メーカーの動向
GE
GE(ジェネラル・エレクトロニック)は、1878年にトーマス・エジソンによって設立されたエジソン電気照明会社を源流に持つ世界を代表する総合電機メーカーの老舗です。世界シェア1位か2位以外の事業からは撤退するというナンバーワン・ナンバーツー戦略を実施し、積極的な事業ポートフォリオの入れ替えを行うことでも有名です。インダストリアル・インターネットを成長戦略にしたジェフ・イメルト氏が退任した後、2017年に生え抜きのジョン・フラナリー氏が社長に就任したものの、2018年には外部のダナハーからラリー・カルプ氏が招聘され、新CEOとなるなど、経営陣の交代が続きます。
デジタル・インダストリアル・カンパニーを標ぼうして、IoTの今後の動向を見据えた製造業の変革に積極的に取り組んでいます。2017年には下記7つあった事業本部が、2020年には、電力制御、送電やスマートグリッド等の機器の製造や火力・水力・原子力発電所向けのタービン等の機器を取り扱うパワー事業、CTスキャン等の医療用機器の製造を行うヘルスケア事業、航空機エンジン等の製造を行うアビエーション事業、風力や太陽光発電等の機器の製造を行うリニューアブル・エナジー事業、そしてキャピタル事業の5本部体制となっております。

GE事業ポートフォリオ2017年
出所:同社
ジェットエンジン、エナジーマネジメント、再生エネルギー部門がグループ全体の営業利益の3分の2、売上高の60%近く生み出す稼ぎ頭です。石油やガス関連向けに採掘・生産・パイプライン輸送、化学プラント向けの機器を提供するオイル&ガス事業は、2017年に、イメルト氏の「水より石油」というリーダーシップの下、水処理膜事業や水処理向けのプラントを含む工業用水処理事業のGE Waterをスエズエンバイロメントに売却し、石油サービス大手であるベーカー・ヒューズを買収しています。その後2019年には保有しているベーカー・ヒューズ株式を市場で売却しました。鉄道車両の製造を行うトランスポーテ―ション事業は米国の同業であるワブテックへ売却しました。祖業の照明機器を取り扱うライティング事業も2020年にサバント・システムズへ売却しました。
パワー事業では、ガスタービン、蒸気タービン、ボイラ(熱交換機)、分散電源向け発電機器(イエンバッハ、ワーキシャー、但し2018年に投資ファンドへの売却を発表)、原子力発電所のGE日立ニュークリア、フランスのアルストムより買収した送配電設備、特高変電設備等を製造しています。売上高は186億ドルと巨大な組織です。タービン、送配電、原子力発電の分野では大手です。
リニューアブル・エナジー事業では、風力発電所のタービン(Haliade 150-6MW等の超大型のものも対応可能)や設備、風車の羽根(ブレード)、水力発電所のポンプや設備を製造。水力発電設備の総発電能力のうち、4分の1以上がGEの発電機器によるものとされます。フランスのアルストムを買収し更なる事業の拡大を図っています。
ヘルスケア事業は、従業員約5万超、世界の約140ヶ国で展開、部門の売上は約200億ドルとGEの売上の約20%を占めるGEの主力事業の一角です。画像診断装置(MRI, CT, MIや超音波診断装置、骨密度測定装置、各種X線撮影装置、心臓カテーテルモニタリングシステム)、麻酔器、生体情報モニタおよびユニークパラメータ、分娩監視装置、新生児黄疸光線治療器、保育器、バイオテクノロジー関連機器・分析ソフト・試薬、バイオ医薬品製造向けシステム等を提供。医療機器分野では世界最大手の一角です。
アビエーション事業は、商用・軍用の航空機エンジンの世界3大メーカーの一角となっています。軍事用も手掛けています。ワイドボディー機向けのエンジンに強みを持ちます。ナローボディ機では、フランスのスネクマとCFM Internationalを展開しています。航空機リースの分野では、GECAS(ジーキャス)が世界最大手クラスです。
2007年 プラスチック部門をサウジアラビアのSABICに売却
2007年 GEセキュリティを米国のUTC(ユナイテッド・テクノロジーズ)に売却
2009年 メディア事業のNBCユニバーサルをコムキャストへ売却
2015年 仏重電大手のアルストムと発電事業及び鉄道車両事業における経営統合
2016年 家電事業を中国のハイアールへ売却
2016年 GEキャピタル傘下の消費者金融部門をシンクロニー・フィナンシャルとして分社化IPO
2017年 GE Waterをスエズエンバイロメントに売却
2017年 フランスで展開する消費者金融のGE Moneyを投資ファンドのサーベラスへ売却
2017年 デンマークのブレードと呼ばれる羽根の部分を製造する風力発電機器メーカー、LMウインド・パワーを買収
2018年 業務用照明部門(カレント)をアメリカン・インダストリアル・パートナーズに売却
2018年 分散型電源対応用のガスエンジンを生産するブランド「イエンバッハ」と「ワーキシャー」をアベンティスに売却
2018年 機関車事業を米鉄道機器メーカーのワブテックと経営統合
2018年 フィールドサービス管理ソフトウェアを提供するServiceMax(サービスマックス)をSilver Lakeに売却
2018年 ヘルスケア部門の分社化を発表
2019年 ベーカー・ヒューズの持分の売却
2019年 GEトランスポーテーションをワブテックへ売却
2020年 照明事業をサバント・システムズへ売却
GE変化の経営
ジェフ・イメルト GEの変わりつづける経営
ウィニング 勝利の経営
GEが目指すインダストリアル・インターネット
GEトランスポーテーションでは、ディーゼル機関車等鉄道用車両や船舶用エンジンなどを製造・販売していました。2017年の売上高は約39億ドル。従業員数は約9000人。2018年に米機関車・貨客車製造大手ワブテックに株式の49.9%を29億ドルで売却されました。
照明事業はGEの祖業です。2018年に業務用照明部門を投資ファンドに売却をしました。消費者向けの照明は2020年にサバント・システムズに売却しました。
アルストム(Alstom)は水力タービンと蒸気タービンの分野に強みがあります。ガスタービンに強いGEとの提携で、タービン分野での強者連合を形成しました。
Siemens(シーメンス)
シーメンス(Siemens AG)は、ドイツのミュンヘンに本拠を置く大手総合電機メーカーです。1847年に、ヴェルナー・フォン・ジーメンス (Werner von Siemens) によって設立されました。世界初の電車を製造したことでも有名です。事業範囲は電力、交通システム、家電、医療等と社会インフラ全般に及びます。事業のポートフォリオを組み替えながら、モノ作りのデジタル化や産業機器のIoT化を含むインダストリー4.0を提唱し、強力に推進しています。米国のライバルであったGEと同じように再編を通じて、その時々の社会ニーズに即した組織体を作り上げる柔軟性のある経営を行っています。鉄道車両はグループ内のモビリティ事業本部が担当しています。ICEで知られるドイツの高速鉄道も手掛けています。2017年には鉄道車両部門でアルストムと経営統合を発表しましたが、2019年に欧州委員会がアルストムとの経営統合を承認せず遂行されませんでした。鉄道信号にも強みを持ち、上位株主には、象徴としてのシーメンス家が引き続き残っています。
Voith Hydro(フォイト・ハイドロ)
独重電メーカーのVoith(フォイト)とシーメンスの合弁会社です。
Dongfang(ドンファン、中国东方电气集团)
中国の政府系重電メーカーです。子会社のDongfang Electric Corporation Limitedは香港証券取引所に上場しています。
Bharat Heavy Electricals Limited(バラート重電機、BHEL)
インドに本拠を置く国営の重電メーカーです。ボイラー、タービン等発電事業関連の事業を手掛けています。
Andritz(アンドリッツ)
オーストリアの大手水力用タービンメーカーです。ウィーン証券取引所に上場しています。
Siloviye Mashiny(シロヴィエ・マシーヌィ、Power Machines)
ロシアの大手タービン・発電機メーカーです。Alexey Yegorov、Vladimir Lukin(セベルスタリグループ – アレクセイ・モルダショフ)氏がオーナーとなっています。
Harbin Electric(ハルビン電機、哈尔滨电机厂有限责任公司)
中国ハルビン創業のタービン・重電メーカーです。香港証券取引所に上場しています。
東芝
東芝は、日本を代表する重電メーカーです。重電5社(日立、三菱電機、富士電機、明電舎)の一角です。芝浦製作所と東京電気が経営統合して、東京芝浦電気(現東芝)が1939年に誕生しました。経団連会長を輩出する等日本を代表するメーカーの1社でもあります。2016年のウェスティンハウスの減損問題発覚以降は、事業の再編を行い、ビジネスモデルを大きく転換しています。
インフラサービス、インフラシステム、デバイスプロダクトが2020年時点での事業の柱となっています。インフラサービスは、産業用モータ、空調設備、照明、鉄道車両電気品、エレベーター、原子力・火力タービン、送配電、上下水道監視といった、ライフサイクの長い機器を取り扱っています。タービンでは、水力発電タービンや蒸気タービンの分野の世界シェアランキングの上位に位置し、強みを持っています。エレベーター分野ではフィンランドのKONE Corporation (コネ)社と合弁を展開していています。
冷暖房空調機とエアコン業界では東芝は旧ユナイテッドテクノロジーズから分社化独立したキャリアとの合弁事業を展開しています。
デバイスプロダクトでは、パワー半導体であるディスクリート、システムLSI、集積回路のHDD、二次電池、精密医療機器が含まれます。半導体・パワー半導体業界や車載カメラ向け画像処理チップ業界でも上位に位置づけています。HDDは富士通のハードディスク事業を統合し、世界3強の一角です。
インフラシステムには、情報セキュリティ、IoTソリューションズなどが含まれます。東芝テックにてPOS端末を手掛けており、国内のPOS端末業界では大手とされています。
2004年 超硬工具・タングステン業界大手の東東芝タンガロイを売却
2006年 沸騰水型原子炉 (BWR)大手のウェスティングハウスを買収
2007年 シリコンウエハ業界大手の東芝セラミックスを売却
2007年 東芝EMIを売却
2010年 携帯電話事業を富士通へ売却
2011年 東芝が電気・ガス・水道メーター業界大手のランディスギアを買収
2016年 東芝ライフスタイルを家電・エレクトロニクス・電機業界大手のMidea Group(美的集团)へ売却
2016年 医療機器・ヘルスケア機器業界大手の東芝メディカルシステムをキャノンへ売却
2017年 ウェスティングハウスが経営破綻
2018年 パソコン(ダイナブック)事業をシャープへ売却
2018年 東芝メモリを分社化・売却
2018年 テレビ事業をハイセンスへ売却
東芝 粉飾の原点 内部告発が暴いた闇
東芝 終わりなき危機 「名門」没落の代償
東芝 不正会計 底なしの闇
失敗の研究 巨大組織が崩れるとき
三菱重工業
日本を代表する重電メーカーです。地熱含む蒸気タービンと大型ガスタービンの分野に強みを持ちます。日立製作所と三菱日立パワーシステムズを設立しましたが、2020年に日立製作所より持分を買い戻し、三菱パワーへの名称変更をしました。
Ormat(オーマット)
米国に本拠を置く地熱発電のオペレーターです。ニューヨーク証券取引所に上場。イスラエル発祥の会社です。
富士電機
日本を代表する重電メーカーです。タービン分野では地熱発電所に強みを持ちます。
主要業界団体等
公益社団法人 日本ガスタービン学会
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